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東北のトレイル『七時雨山の登山』Vol.1

東北のトレイル『七時雨山の登山』Vol.1

『東北のトレイルはおもしろい。まだ多くの人たちに知られていない魅力的な山が沢山ある。』
そんな話を僕はよく耳にしていた。

その魅力を探りたいと思いはするものの、どこから調べればいいのか解らない。百名山など名のある山々に足を運べば景色に魅了されることも解っているんだけど、僕が興味をそそられるのはそこではない。『まだ多くの人たちに知られていない』という地域密着性がある山で、そこで地元民の人たちとのふれあいを通じて旅のエッセンスを大いに味わいたいという想いがあった。

七時雨山荘

そんな想いがこみ上げる10月初旬、ふとしたきっかけで七時雨山という岩手にある山で、地元のトレイルランナーの方々と新しく開拓したばかりのトレイルを走り、夜は七時雨山荘で皆んなでバーベキューを楽しむという、なんとも僕の気持ちを見透かされたような企画に参加させてもらえることになったのだ。

七時雨山

七時雨山と書いて「ななしぐれやま」と呼ぶこの山は、岩手県八幡平市の最北端に位置する1,063mの山。「一日に七回もしぐれるほど天気が変わりやすい」という名の由来を持つ程に、日に何度も天候が変わるという。

七時雨山のカルデラ景色

この七時雨山の山旅を誘ってくれた土屋さんに魅力を聞くと、出たキーワードは3つ。
田代平カルデラという美しい景観を楽しめるということ。

山麓は古くから、南部馬の産地となっていて、現在でも酪農が盛んだから牛の放牧を眺めることができるということ。

七時雨山荘で楽しめる食事の美味しさ、バーベキューで楽しめるだろう地元の食材を堪能できるということ。これらは僕をウキウキさせて『とにかく早く行きたい!』というせっかちな気持ちが僕を後押しした。

七時雨山のカルデラ景色

そうして当日。深夜バスに揺られて盛岡駅に到着し、地元トレイルチーム『七時雨トレイルランニングクラブ』の中川くん、ケンジさんに車で迎えに来てもらい七時雨山荘へと移動。街なみから山の中へ。道中「岩手山」の眺めに車中のメンバーも感激の声。今日の晴れ模様に胸も高鳴る。そうして徐々に標高をあげると共に紅葉も美しくなる。

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七時雨山荘へ到着すると既に多くのメンバーが。岩手県メンバー以外にも、隣県の青森からも秋田からもクラブのメンバーが集まり、今日のランニングを楽しむという。『俺、足手まといになるんじゃないか?』と不安を感じつつも、紅葉の美しさに魅了されっぱなし。

立花さんから説明

さあ、いよいよ七時雨山でのトレランがスタートする。その前に今回の新しいトレイルがどのようなものか?注意喚起を含めて七時雨マウンテントレイルフェスの実行委員会に携わる立花さんから説明を受ける。

七時雨マウンテントレイルフェス

今回の企画は毎年6月に開催され、今年で4回目を迎えた「七時雨マウンテントレイルフェス」の試走会。今回走らせてもらうトレイルは来年行われる第五回七時雨マウンテントレイルフェスで検討中のコース。ここを実際に走ってみて今日参加するメンバーから意見を徴集し、本番にむけてより良いトレイル作りに役立てるということだ。

1つのレースが出来上がっていくそのプロセスに自分もほんのちょっと関われるという喜びと、レースの裏方にいる方々の見えない努力を感じ取れる機会に恵まれたという喜びに心をポカポカさせながら話を聞いていた。

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「熊に出会う可能性もあるから、音を鳴らしながらグループになって」という言葉にポカポカから瞬時にヒヤヒヤへ。そんなこともあろうかと熊鈴はもちろん、熊よけスプレーも持参していたので準備は整っている。「いつでも現れてみろ!」

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1日目と2日目と2回の試走を楽しめる中、今日は25キロのコースを走る。山荘をスタート兼ゴール地点として、まずは七時雨山の北峰へ向かう。

広大な牧草地

最初に現れるのは広大な牧草地。そこには草を食む牛がいる。こういう景色はなかなか出会えないだろう。一緒に歩むテクニカの土屋さんに「足元気を付けてね。ほやほやの牛の糞はもちろん、少し日数が経過した糞も、踏んでしまうと結構な異臭を覚悟しなくちゃいけないからね」ということ。経験済みなのだろうか?こういう注意も初体験。

七時雨山でトレラン

初めてご対面する七時雨トレイルランニングクラブのメンバーの皆んなと話し合いながら七時雨山の北峰へ。スタートからガッツリ走り始めると思いきや、みんな景色を楽しみながらゆるりと歩みを進めていく。

七時雨山でトレラン

走れるところでは走るし、きついと思えばゆっくりと歩いていく。トレラン初心者の僕には大変嬉しいペースだった。

七時雨山でトレラン

樹林帯に入ると紅葉が美しい。この辺りのルートは以前のレースでも使用されているトレイルということなので踏み固められた走りやすいトレイル。こんなにも美しい紅葉に囲まれるトレイルを走っているのは僕らだけ。結局北峰に到着するまで誰一人として人と出会うことなくトレイルを楽しめた。

七時雨山でトレラン

こんな環境も都内近郊ではなかなかない。紅葉の美しさを求めて週末山に出かければ、それなりの混雑に出加うし、そうすると行き帰りの移動や公共施設の利用などでマイペースな行動は必然と制限される。

七時雨山の北峰

北峰に到着するとその景色に息を飲む。「わおスポット到着?」と声をする方に目を向けると数人の女子がこの景色をみて「わお!」と叫ぶ。『おお〜岩手では“わおスポット”と言うのか〜』と感動しつつ、地元で使う言葉なのか聞いてみたら、「私が今作った言葉(笑)」という事だった。

七時雨山の北峰

どうやら僕は既にこの仲間たちと一緒に走れているだけで嬉しさに溢れており、その上この景色に有頂天になっていた。きっとカラスが飛んできても大きな感激に包まれるだろう。そんな圧倒的な空気に身を包まれていたわけだ。

七時雨山の北峰

「みんなー!写真撮るので集まって」とパシャり。既にこの写真は僕の部屋の片隅に額装して飾ってある。これを見ればちょっと辛いことがあっても回復しそうな気がする。(笑)

おにぎりジェル

ランナーの桜田君が「これ見てみて」と“おにぎりジェル”と言う不思議なジェルを出してきた。これはまだ世には出ていない試作品らしく、秋田の米を使って作ったジェルだという。こういう東北発信の山アイテムがあるのは興味深い。ちょっと舐めさせてもらったら梅おにぎりの味がして美味しかった。

七時雨山の南峰

北峰を後にして次は南峰へ。北峰1,060mに対して、南峰は1,063mとほぼ同じ高さの2つのピークをもつ、いわゆる登山用語で言うところの双耳峰(そうじほう)が七時雨山の特徴の1つ。有名な山でいうと北アルプスの鹿島槍ヶ岳や筑波山、谷川岳が有名どころ。七時雨山は地元で「おっぱい山」なんていう呼ばれ方をしているということ。

七時雨山の南峰

南峰の斜面から先ほど登った北峰を眺めれば、斜面を彩る紅葉に「わお!」

七時雨山の南峰
七時雨山の南峰

南峰は北峰に比べると開けており気持ちの良い空間。眺める向こうにそびえる岩手山も気持ち近づいた感。岩手山以外にも姫神山や八幡平の山々も拝めることができる。「こんなに青空が広がって景色が見渡せるのも珍しい。今日はすごく恵まれた天気だね!」と一同。

不動の滝方面へと向かう

ここからは下山をするわけだが、不動の滝方面の高清水コース、西根寺田コースの2コースがあるが今回のコースは不動の滝方面へと向かう。2日目のファンランでは西根寺田コースを登ってくるのだが勾配がかなりキツかった。その分見渡せる景色も雄大で、2日目の登山ではこれに感動するのだけど、この話はまた後ほど。

こうして下山を行い感動的な景色と新しく切り開いたトレイルをこの後走り抜ける。1日目後半はさらに僕の心を鷲掴みにする様々な出来事が待っていたわけだが、この時点ではまだ予期することはできなかった。


・東北のトレイルの魅力を探る『七時雨山』Vol.1
東北のトレイルの魅力を探る『七時雨山』Vol.2
東北のトレイルの魅力を探る『七時雨山』Vol.3


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