戌年が始まって15日と8時間が過ぎていた。
犬のナツが立ち止まって遠くを見ていた。
目線の先を追うと大きな丸い毛皮がギャロップしていた。
戦慄、興奮、集中、思考。
腰を下ろして銃を膝に乗せ、スコープに獲物を載せた。
自信がないが、待っていても状況は悪くなる。
引き金を引くと同時に、一瞬、イノシシが崩れた。
入った。
だが、イノシシは立ち上がって走り出した。
そして逃走と追跡の15分。数発の銃声。
子象のようなイノシシが足元に横たわっていた。
サバイバル登山を写真と散文で紹介します。一の位に3が付く日(3日、13日、23日)に更新されます。
亀田正人

フィールドカメラマン。1980年、東京生まれ。山岳専門誌やアウトドア雑誌を中心に活動。 サバイバル登山からアウトドア料理まで幅広くアウトドアの撮影を行っている。最近はMTB、SUPにはまっている。
服部文祥

登山家。作家。山岳雑誌「岳人」編集者。1969年横浜生まれ。94年東京都立大学フランス文学科卒(ワンダーフォーゲル部)。オールラウンドに高いレベルで登山を実践し、96年世界第2位の高峰K2(8611m)登頂。国内では剱岳八ッ峰北面、黒部別山東面などに冬期初登攀が数本ある。99年から長期山行に装備と食料を極力持ち込まず、食料を現地調達する「サバイバル登山」を始める。妻と三児と横浜に在住。