日本を象徴する山「富士山」。標高は3776m。山梨県と静岡県にある登山者に人気の山です。

富士山と周辺の山の概略

富士山fujiyama
出典:国土地理院

多くの登山者にとっての富士山は、7、8月を中心とした「夏期集中登山」の山といえる。しかも、多くの登山者は山頂到達が最大目的で、山麓歩きは対象外にされている面があり、「中腹から山頂まで」の山ともいえる。また、周辺にあるほとんどの山は富士山の好展望台だ。

富士山の五合目周辺から山頂にかけてはほとんど樹林帯がなく、火山礫の登山道をひたすら登ることになる。最短の場合、標高差1300m程で山頂に達することができる。お鉢めぐりも人気がある。また、大沢崩れまで中腹の御中道で往復が可能だ。山麓から中腹までのルートを歩く人は少ないが、北麓の吉田口登山道、精進口登山道、南東山麓の須山口登山道、南西山麓の富士宮口登山道によって歩くことができる。

富士山周辺の山々

富士五湖周辺には、標高2000mを超える山はない。富士五湖周辺の標高がおおよそ900~1000mあり、登り口から山頂までの標高差はそれほどあるわけではない。しかし、山頂手前が急坂になっている山が多く、冬期には積雪や北面の凍結で難渋する場所もあり、注意が必要だ。

南側の山々

愛鷹(あしたか)連峰の最高峰、越前岳は十里木側から手軽に登ることができる。登山道からは宝永火口を開いた富士山が展望できる。連峰中部の鋸岳周辺は崩落のため、集中豪雨などで度々通行禁止になる。南部の位牌岳から愛鷹山周辺や池ノ平にかけては落ち着いた自然林の山域が広がっている。

東側の山々

籠坂峠(かごさかとうげ)東側に伸びる三国山稜は静かな山歩きができる。山中湖東側の鉄砲木ノ頭、高指山などはカヤトの原が広がり、明るい山頂を持つ。石割山から大平山への尾根歩きでは富士山と山中湖とを組み合わせた眺望が楽しめる。杓子山からは集落を手前にして大きな富士山が眺められる。

北側の山々

三ツ峠山(開運山、御巣鷹山、木無山の総称)は古くから富士山展望の山として知られる。御坂山地、黒岳ハプナなどの自然林が多く、落ち着いた雰囲気を保つ。この山域での盟主・刀ヶ岳周辺の十二ヶ岳、鬼ヶ岳などは稜線上に露岩が見られ、一部の急坂ではロープなどが設置されている。足和田山、三湖台は東海自然歩道が通じて、学童の遠足コースとしても親しまれている。王岳から女坂峠にかけては登山者が比較的少ない。パノラマ台からは富士山の手前に大室山を配して、いわゆる「子抱き富士」が眺められ、左右に精進湖と本栖湖を見下ろす。

西側の山々

本栖湖南側に位置する竜ヶ岳、雨ヶ岳の稜線は登山ルートが整備された後、登りやすくなった。竜ヶ岳山頂は笹が刈り払われて明るく、富士山のほか南アルプスや八ヶ岳方面も望める。毛無山は大きな山体を誇り、山頂からは富士山手前に朝霧高原を見下ろす。長者ヶ岳、天子ヶ岳方面の山からは富士山の大沢崩れを正面に見ることができ、富士山の荒々しい面に接する。

富士山の気象

富士山における気温と体感気温

気温は、例えば東京と比較してみると、富士スバルライン五合目では約13度低く、山頂では約22度低い。盛夏のスバルライン五合目の気温は東京での4月中旬から11月中旬に相当し、山頂の気温は1月頃に相当する。富士山に限らないが、一般に、風に吹かれた場合、風速毎秒1mで体感温度は1度下がるとされる。

【対策】

悪天候時は登山を見合わせる。山では予期せず雨に遭うこともあるので雨具は必携だ。山頂近くでご来光を待つ間は寒風にさらされることがあり、防寒具も用意したい。気圧は、スバルライン五合目は海面の約77%、山頂は海面の約63%だ。

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高山病

高度を増すと酸素摂取量が減少して軽い高山病の症状が出ることがある。個人差があり、五合目に到着した時点で、頭がズキズキしたり、息苦しくなったり、顔面が青白くなったりする人もいる。山頂へ近づくにつれて、登山者は大なり小なり高山病(疑似高山病を含む)に悩まされる。

【対策】

高山病は、下山するとケロッと治る。重症の場合は下るのが最良の対策だ。高山病に弱い体質の人が宿泊(仮眠を含む)する場合、低い標高の山小屋を選ぶのがいい。山頂に近い山小屋で宿泊すると、一晩中、酸素の少ない状態で過ごすことになる。歩行中は、できるだけ酸素吸入の効率化を計ろう。息を吸う場合は、口の中だけに取り込むのではなく、肺の隅々まで送り込むような意識を持つ。ときどき立ち止まって深呼吸して、肺の中の空気を総入れ替えするような気持ちを持とう。そのためには、吸う前に肺の中の空気をまず吐き出そう。口をすぼめてゆっくりと吐き続ける。吐き出してしまったと思った段階で、さらに最後に「ダメ押し気味」に吐き出す。いったん吐き出してしまうと、その後は自然と吸い込むことができる。また、高山病対策としてしっかり水分をとるよう心掛けよう。

強風

富士山は独立峰のため、強風が吹くことでも知られる。体が飛ばされそうなこともあれば、火山砂が飛んで、目を開けていれないこともある。強風時の場合、雨具を通して雨粒に痛いほど叩きつけられる。

【対策】

歩行が困難なほどの強風の時は登山を中止しよう。

落雷

高山では下方で雷が発生することは珍しくない。落雷に襲われるのは頭上からだけとはいいきれない。

【対策】

雷発生が予想される場合は登山を中止して、ただちに山小屋などへ避難しよう。登山前には雷発生の可能性を調べておこう。登山中であれば、指導センター、山小屋などで事情を尋ねてみよう。なお、霧の発生時などに山麓で描く自衛隊演習の音を雷鳴と勘違いする人もいる。

富士登山の登頂成功率を高めるために

夏に富士山頂を目指す人は年間に約23万人前後(令和元年)とされる。正確な統計はないが、そのうち、山頂まで達した割合は50%ほど(初心者・上級者などで大きく変動する)と見られている。山間部で断念した主な理由は悪天候や高山病などの体調不良と思われる。登山ツアーの引率者の話では、好天気であれば登頂率は80%前後だという。富士登山では、日頃あまり山登りをしていない人(いわゆる「にわか登山者」)が目立つ。山歩きに不慣れな人は登頂の成功率を上げるために、せめて事前に低山での山登りを体験して、自分の体力、気象の変化、歩幅、呼吸、歩行ペース、レイヤリング変更のタイミング、休憩の取り方などを体得しておきたい。数日前から体力維持を心がけるべきだ。

登山靴

足のトラブル

靴擦れを避けるため、事前に履き慣らしておこう。トレイルランシューズの場合は小石などが入りやすいので、ゲイターを持ち歩くと良い。また登山パンツは裾が長い方が靴の口を覆えて多少なりとも役立つ。

歩行のペースと速度

山歩きでは、下りきるまでの体力温存を考えて、安定した歩行ペースを保つことが望ましい。現地で登山のベテランを見つけ、歩き方を参考にしよう。歩き始めの30分ほどは、あえてスピードを押さえ気味に歩いてウォーミングアップにつとめる。「他の人に遅れたくない」「疲れない内に山頂に近づきたい」という意識があるとオーバーペースになりがちだ。無理して歩き、六合目あたりでバテている人をよく見かける。歩行速度は必要以上に速めないことだ。日常生活で階段を昇るようなスピード感覚を捨てる。呼吸が乱れたり、汗をかきすぎる場合は速度を落とそう。呼吸と足の運びとのリズムがちぐはぐにならないようにする。歩き方が乱雑だと石を蹴飛ばし、落石を起こす恐れもある。

歩幅

歩幅は狭くして、必要以上に足を上げないで歩く。坂道では歩幅を狭くして、2歩のところを3歩で進むような心がけで歩く。直進にこだわらず、道幅を有効に使おう。斜面では、地面を後方へ蹴るのではなく、地面を踏みしめるような感覚で歩くとよい。足の回転を遅くし、挙げた足を下ろすまでにゆったりした間合いをとると、歩行中にも「休憩」の要素を取り込むことになり、足の疲れが軽減できる。

休み方

休憩は、小休止として1時間ごとに5分前後、大休止として時々15~20分前後の休みをとろう。悪い例は、速めのペースで少し歩いてはすぐに休みをとるパターンだ。これでは、せっかくできかかったペースを崩す元だ。一般的に山小屋では、小屋前のベンチで休む場合は無料だが、小屋内へ入ると有料になる。なお、富士山のトイレは近年整備が進み、ほとんどがバイオ式などに改善された。トイレ利用は有料(環境保全協力費などとして100~200円程度)だ。

登山におすすめの登山靴

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登山プラン

富士登山のプランは大別して、山小屋で宿泊(あるいは仮眠)するか・しないかで分かれる。なお、可能であれば、混雑時(梅雨明け直後、週末、お盆休み)を避けたい。

宿泊しない場合

宿泊しない場合の代表的なプランは、夜間登山だ。しかし日頃経験しない登山道(溶岩が露出したり、ザクザクした火山礫の道)での歩行、徹夜での歩行、しかも高山病の影響がある上での行動は、思った以上に過酷だ。富士スバルライン五合目の場合の典型的なプランは、新宿からの高速バス最終便に乗ってきた人が午後10時すぎに歩きはじめるケースだ。混雑時に前後の登山者のライトで歩けるほどの日もあるが、登山者が途切れたときには暗がりになるし、トイレ使用時や地図などの確認時にはライトは必携だ。夜間登山の利点は、日中の日差しを避けることができて、涼しさ(あるいは寒さ)を感じながら登る点だ。晴れていれば、下界の夜景を眺めることができる。日の出までに山頂へ着き、ご来光を拝んだ後、午前中に五合目へ下ってしまうことも可能だ。

宿泊する場合

どの合目で宿泊するかは、日中にしか行動しないか、山頂で日の出を見るか、日の出には関心がない、混雑時は避けたい、などによって分かれる。高齢者や吉田口一合目から登る人の場合、2泊以上する人もいる。なお、宿泊代(2食付き)は7000円~9500円前後、素泊まりは5000円~6500円前後だ。週末は割増料金制の小屋が多い。

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