多摩川を育む奥多摩の山々は、首都圏の登山者に、格別の愛着を感じさせる。都心からでも日帰りか1泊で奥多摩の山や渓流に分け入り、心身をリフレッシュすることができる。奥多摩を含む広大な山域は1950年に秩父多摩甲斐国立公園に指定された。また、このエリアのほぼ全域が東京都の水源林でもある。

    登山者を魅了する奥多摩

    奥多摩の地理

    晴れた日曜日の朝、奥多摩行きのJR青梅線は登山客でいっぱいだ。おそらく乗客の6~7割を越えるといっても大げさではないだろう。軍畑駅で降りるのは高水山に向かうパーティーだろうか。御嶽駅では観光客や参拝客に混じって登山者がどっと降り、そして終点・奥多摩駅前のバス乗り場には列ができる。首都圏に住む登山者にとって、奥多摩はまさに「近くてよい山」なのだ。

    奥多摩の地理

    地理的に近いのはもちろん、心理的にも近く、親しい山域といえるのではなかろうか。立川か国立あたりで多摩川の堤防に立ち、西の山並みを眺めてみよう。南西の方角で地平線から立ち上がった丹沢山塊が右に伸び、背後に富士山がそびえる。右に道志や甲武相の山々が続き、奥に大菩薩連嶺が重なる。このあたりが真西で、その右が奥多摩の領域である。左から三頭山、御前山、大岳山の奥多摩三山が並び、雲取山から鷹ノ巣山、六ッ石山と続く石尾根、その右に本仁田山、川苔山が連なる。さらに右は奥武蔵の山並みとなり、武甲山あたりで高度を下げて関東平野に沈む。

    奥多摩の地理

    都心の高層ビルの窓からも、また中央線の車窓からも見られるこのパノラマの中で、最も近距離に位置し、標高の割に高く見えるのが奥多摩の山々である。首都圏に住む人々は、最も身近なこれらの山々を「東京の奥庭」などと呼んで親しんできた。

    奥多摩エリアとは?

    「奥多摩」とは、どこからどこまでのエリアを指すのだろうか?これには諸説ある。最も広く考えれば、多摩川の水源を育む山域すべてを包含する範囲で、奥秩父や大菩薩連嶺の一部とも重なる。一方、雲取山と後山川を結ぶ線の東側を指すことも多い。

    奥多摩エリア

    奥多摩全域は、大まかに4つのブロックに分けられる。北から順に、

    1. 日廣川北岸の山々。長沢背稜とその東に連なる蕎麦粒山~坊ノ折山と川苔山~本仁田山の各稜線。
    2. 雲取山から東に伸びる石尾根の山々。
    3. 三頭山、御前山、大岳山の奥多摩三山を結ぶ奥多摩主脈稜線。
    4. 南秋川流域の山々。笹尾根、浅間尾根と戸倉三山。
    奥多摩エリア

    となる。概して、この順に山が深く、登山行程も長い。さて、奥多摩の魅力は、なんといってもその森林と渓谷の美しさにある。新緑や紅葉の頃には、登山者のみでなく、多くの観光客が訪れる。首都圏の一角に、このような自然美が保たれてきたのは、水源林管理によるところが大きい。多摩川流域は「都民の水源」として大切に守られてきた。奥多摩にはひとつのゴルフ場もない。周遊道路や都民の森は無くもがな、ともいえるが、既存の施設は自然へのローインパクトを心がけたうえで有効利用したい。また、人里近い山域で交通の便も良い。道標や避難小屋も随所にある。登山道の他に仕事道や巡視路も縦横に走っている(それだけに、錯綜した山道に迷うことも多いが…)。標高も雲取山と飛龍山が2000mをわずかに越すほかは1000m級かそれ以下の低山で、森林限界を越えるピークはない。奥多摩は、身近な自然と触れ合い、日帰りや1泊程度の山歩きを楽しみながら、心身ともにリフレッシュできる近郊の山々なのだ。

    奥多摩の自然

    地形と地質

    奥多摩の自然

    奥多摩の山々は、関東山地が関東平野に接する東南端に位置する。多摩川水系が浸食したV字谷が、この山域の地形を特徴づけている。北部の多摩川左岸や日原川流域は谷も山も深く、峻険。対照的に、南部の秋川流域は明るく開け、山容も穏やかだ。標高は西端の飛龍山~雲取山が2000m前後で最も高く、東にいくにつれて下がり、青梅付近の丘陵で400m程度になる。地質的には、仏像構造線から北の秩父層群、南の小河内層群、さらに南に五日市~川上構造線の南側から桂川にかけての小仏層群に三分される。秩父層群は、砂岩・粘板岩・チャート・石灰岩から成る古生代石炭紀~中生代ジュラ紀の地層である。石灰岩やチャートは浸食に強く独立岩峰(日原稲村岩や梵天岩など)が多い。石灰岩層には鍾乳洞も発達している。小河内層群は、砂岩や粘板岩から成る中生代ジュラ紀~白亜紀の地層で、雲取山頂はこれに含まれる。山頂付近に散在する赤褐色や灰緑色の輝緑凝灰岩は海底火山の噴火で堆積したものといわれる。小仏層群は中生代白亜紀の砂岩と粘板岩の互層で、笹尾根から陣馬山あたりにかけて見られる。

    動植物

    奥多摩の森林は、自然林も人工林も「水源林」として大切に守られ、その美しさを保ってきた。樹種は、約800mまではナラ、クリ、杉、桧など。800~1500mではシオジ、ブナ、シラカバ、カラマツなどとなる。三頭山や雲取山の1500mあたりのブナ林はみごとだ。1500~2000mの針広混交帯ではイヌブナ、コメツガ、シャクナゲなどが見られる。

    奥多摩の自然

    山を彩る花々も豊富である。早春のカタクリやスミレ類。5~6月のツツジ類。夏にはお花畑にマルバダケブキ、ハンゴンソウ、ツリガネニンジン、オオバギボウシ等々が咲き競う。雲取山のヤナギランは残念なことに姿を消してしまった。夏にタマガワホトトギスが林縁を飾り、秋の尾根道にはリンドウが咲く。

    地味豊かな森林と温暖な気候は動物の生育にも好適だ。ツキノワグマ、ニホンジカ、ニホンカモシカやイノシシなどの大型哺乳類をはじめ、タヌキ、リス、ヤマネなどが生息し、ニホンザルの群もいくつか確認されている。山小屋や山麓の神社周辺にはムササビやモモンガも見られる。鳥類は年間を通して延べ130余種。カラ類やウグイス、ヒヨドリ、コジュケイなどの留鳥の他に多種の渡り鳥や漂鳥が見られる。ハ虫類ではヤマカガシ、アオダイショウ、マムシなどのヘビの他にトカゲ類、両生類ではタゴガエル、モリアオガエルやヒダサンショウウオ、ハコネサンショウウオなどが見られる。山地の渓流にはイワナ、ヤマメやアブラハヤなどの淡水魚が生息する。

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