奥多摩の良さは尾根歩きだけにあるのではない。多摩川流域は渓谷美でも知られている。よく晴れた夏の日に清流に足を浸して、苔むした小滝やナメ(一枚岩の上を水が流れているところ)を越えていく楽しさは格別だ。新緑や紅葉に包まれる渓流も素晴らしい。

    奥多摩には、上越や日本アルプスの渓谷のような険しく深い山岳渓流はない。人里近い渓流にはわさび田や堤も目立ち、仕事道も多い。水源林に覆われ、巡視路も縦横に走る。しかし、そんな山人の暮らしの匂いが漂う沢歩きこそ、奥多摩の魅力ではないだろうか。

    奥多摩の沢歩き

    沢登りとしてグレードの高いエリアではないが、当然、尾根歩きとは違い、それなりの技術や用具が必要である。もちろん、登山道も道標もない。遡行終了点から登山道に出るためヤプ漕ぎを強いられることもある。いくつかの注意点をあげてみよう。

    奥多摩の沢歩き
    1. 初心者のみでの入渓は避ける。最初のうちは経験豊かなリーダーに同行してもらえば理想的。
    2. 履き物はフェルト底の渓流足袋や渓流シューズがよい。
    3. 服装は水切れのよいものを原則とする。ナイロンやポリプロピレン系のジャージなどが最適。
    4. 倒木や落石から頭部を保護するため、ヘルメットをかぶったほうがよい。
    5. 初歩的な岩登り技術をマスターし、とくにザイルの操作には習熟しておくこと。
    6. わさび田や取水口などの施設を傷つけない。

    等で、他にも多々あるが、自ら経験を積んで工夫していただきたい。沢登りの面白さは、その自由さにある。最近、各地で伐採や林道工事が加速的に進み、渓谷美が失われつつあるが、奥多摩にはまだまだ遡行を楽しめる秀渓がたくさんある。尾根歩きと並行して沢歩きをすれば、奥多摩の良さは倍加されるだろう。

    参考までに、「初心者向き」とされる3本の沢について遡行ガイドを以下記す(なお、ガイド中の「左岸右岸」は下流に向かっての左右を意味する)。

    盆堀川・棡葉窪

    奥多摩の沢歩き 盆堀川・棡葉窪

    秋川支流の盆堀川には、小粒ながら滝も多く楽しい遡行ができる沢が多い。棡葉窪もそんな小沢の一つで、手応えのある小滝が、短い流程にまとまっている。

    JR武蔵五日市駅からのバスを沢戸橋で下車、盆堀川沿いの林道を清水橋までたどる。橋のすぐ上の取水堰に左岸から流入するのが棡葉窪だ。橋の手前から入渓する。出合から小さなゴルジュとなり、堅い岩の小滝が連続する。これらをひとつひとつ楽しみながら登って行くと、いったん下部のゴルジュは途切れる。2段5mの滝は上段が難しい。次いで現れる2段4mのナメ滝からは上部の小ゴルジュとなる。3m滝にはシュリンゲが残置されている。4m滝でゴルジュを抜け二俣に出ると、上流は平凡な小川となる。左岸の踏み跡をたどって仕事道に上がり、これを15分ほど下れば清水橋に戻れる。

    峰谷川・坊主谷

    奥多摩の沢歩き 峰谷川・坊主谷

    奥多摩湖に注ぐ峰谷川の流域は、渓流釣りのエリアとして知られている。遡行者は少ないが、美しいナメと、7~8mの滝が随所にある。新緑や紅葉の頃の美しさは抜群である。ヤブ漕ぎもなく登山道に出られるのも魅力。

    奥多摩駅から峰谷行きのバスに乗り、終点で下車、林道を上がる。三沢橋で左に折れて15分ほどで出合に着く。まずは堰堤を右岸からパスし、小ゴルジュを巻く。半円状の美滝や二条のナメ滝を越え、2段16mは慎重に高巻く。やがてワサビ田跡が現れ、二俣となる。右俣に入り、6mの幅広の滝などを楽しく登って行くと、源流の様相となり、鷹ノ巣山避難小屋の水場に出る。ここは浅間尾根からの登山道で、左に5分で小屋に着く。1時間もあれば鷹ノ巣山頂まで住復できる。帰略は浅間尾根を下って峰谷に出るのが最短コースである。

    日原川・鷹ノ巣谷

    奥多摩の沢歩き 日原川・鷹ノ巣谷

    秀渓の多い日原川流域で、人気度が群を抜いているのが鷹ノ巣谷だ。20mの大滝をはじめとする滝場が魅力。日原から近いアクセスの良さも人気の一因だろう。JR奥多摩駅から日原方面のバスに乗り、終点で下車。鷹ノ巣山への稲村岩コースに入って巳ノ戸橋を渡った先で入渓する。苔むした堰堤を3つ越えた先は土砂が押し出して荒れた渓相となる。3~5mの小滝を次々に登って行くと、10mくノ字滝に出る。ここはシャワーを浴びて左右どちらからでも登れる。しばらく平凡となった後、20m大滝が現れる。直登する場合は、右の階段状を登るが、落差があるのでアンザイレンしたほうがよいだろう。大滝から先は、本流筋の金左小屋窪を詰めて左岸の支尾根に登り、ヤプを漕いで石尾根縦走路に出る。大滝上で支流の水ノ戸沢に入り、稲村岩尾根に出てもよい。

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