上高地は登山口として様々な山に登ることができる登山基地として知られる一方、穂高連峰と常念山脈に挟まれ梓川の上流に開けた、非常に美しい景色を楽しむことができるため観光客も訪れるスポットです。今回は上高地を丸ごと楽しむことができる初心者におすすめのハイキングコースを紹介します。
上高地へのアクセス方法
上高地へのアクセス方法は松本方面から、高山方面からの2つの方向からアクセスすることができます。
松本方面から上高地へのアクセス
松本方面から上高地へアクセスする方法は2種類あります。以下の表は車と電車の所要時間とアクセス方法です。
※横スクロールで表がスクロールできます。方法 | 所要時間とアクセス |
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車 | ・長野自動車道 松本ICから沢渡駐車場まで約1時間 ・沢渡駐車場から上高地まで約30分 |
電車 | ・松本電鉄上高地線-新島々駅-路線バス(タクシー)で上高地まで約1時間30分 |
高山方面から上高地へのアクセス
高山方面から上高地へアクセスする方法は2種類あります。以下の表は車と電車の所要時間とアクセス方法です。
※横スクロールで表がスクロールできます。方法 | 所要時間とアクセス |
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車 | ・高山ICから平湯あかんだな駐車場まで約45分 ・平湯あかんだな駐車場から上高地まで約30分 |
電車 | ・高山飛騨バスセンター 路線バス-平湯バスターミナル(シャトルバス・タクシー)で上高地まで約1時間25分 |
この他乗り換えなしで上高地へ直行する方法もあります。
上高地を丸ごと楽しむ-初心者におすすめのハイキングコース
必要日数 | 日帰りハイキング |
コースタイム | 3時間15分(休憩なし) |
距離 | 約11.6km |
累積標高 | 上り:約222m 下り:約216m |
難易度 | ★☆☆☆☆ |
上高地バスターミナルで降りる人が多い中、このコースは大正池でバスを降ります。上高地バスターミナルから奥は比較的人が多く、大正池から田代橋までの上高地自然研究路は景色も素晴らしく、それでいて静かなハイキングを楽しむことができます。
大正池のバス停を降りると大正池のほとりに降りることができます。ここから焼岳を望むのがおすすめです。その昔大正池が焼岳の噴火によってできた歴史を知りながら景色を見ると何とも考え深い気持ちになることでしょう。
自然研究路を歩いていると田代池を歩き田代橋に向かいます。この辺りも非常に綺麗な水の色、広がる田代湿原を楽しみながら散策を楽しむことができます。
田代橋に到着したら上高地温泉ホテル方面に橋を渡り向かいます。上高地ルミエスタホテルの横にウエストン碑があります。
この辺りに来ると上高地の観光地らしい施設などが出てきます。梓川に沿ってしばらく歩くと河童橋に到着します。流れの中に大きなイワナを見つけたり、遠くに見える奥穂高岳と前穂高岳の景色、それを繋ぐ吊り尾根は上高地を象徴するような景色です。
河童橋に到着したら明神方面に向かいます。河童橋から真っ直ぐ歩けば小梨平キャンプ場、左に曲がると岳沢登山口方面となり、どちらから歩いても構いません。
ここは岳沢登山口方面へ向かい自然探勝路を歩いて行きましょう。この辺りは上高地ハイキングコースの中で最も自然の美しさを感じるポイントです。
森林浴と梓川の綺麗な水の色などこのような景色が日本にもまだあるんだと驚く事でしょう。
嘉門次小屋小屋に到着したら穂高神社奥宮に足を運びましょう。時間があれば明神池を周回することができます。
明神池は穂高神社の神域のため300円の拝観料が必要です。お金を払うだけの価値ある景色を堪能しましょう。
明神橋をわたり明神に向かいます。明神館は食事を楽しむことができるスポットでトイレもあります。ここから白沢出合を経由し徳沢ロッジまで歩くと往復約2時間のコース追加となります。時間があれば是非足を運んでみてください。おしゃれなカフェや涸沢と奥穂高登山や蝶ヶ岳登山を楽しむ登山者が多くなります。
明神から河童橋方面に戻ります。この道はアップダウンが少ない快適な道です。
初心者におすすめの上高地ベストスポット
今回紹介した上高地を丸ごと楽しむことができる初心者におすすめのハイキングコースでおすすめのスポットを紹介します。
焼岳の左手に見える大正池
大正4年(1915)に噴火した焼岳の左手に見えるのが大正池です。この池は、噴出した熔岩や泥流によって梓川が堰き止められてできたものです。当初は広大な面積であったため「梓湖」と呼ばれていたようですが、後に「大正池」という名前で知られるようになりました。
大正池は、晴れた日には穂高連峰を美しく映し出す風景が印象的ですが、早朝の景色も見逃せません。特に雨上がりの朝などは靄(もや)が立ち込め、水面に浮かぶ立ち枯れの木々と相まって、白くかすんだ青い世界が幻想的な美しさを演出します。
土砂がせき止められてできた浅い田代池
原生林の中にぽっかりと広がる湿原、それが田代池です。この池は八右衛門沢などからの土砂がせき止められてできた浅い池で、中にはいくつかの島が点在しています。水田地帯のような穏やかな風景が広がっています。
田代池は四季折々に美しい景色が楽しめます。夏にはイチョウバイカモや周辺のニッコウキスゲ、コケモモなどが咲き、まるで箱庭のような美しさを見せてくれます。新緑が美しい5月や黄葉が彩る10月、晩秋には霧氷の光景も素晴らしいです。
特にサギスゲで覆われた田代湿原では、透明度の高い水面に穂高連峰が映し出され、新緑の時期にはレンゲツツジのオレンジ色が絶妙なアクセントを加えています。どれも見逃せない素晴らしい光景です。
日本近代登山の父、W・ウェストンのレリーフ
河童橋から徒歩約20分の梓川のほとりに、英国の宣教師ウォルター・ウェストンのレリーフ(浮彫胸像)があります。彼は登山家として日本各地の名峰を制覇し、明治24年に上高地を訪れて山案内人・上條嘉門次と共に北アルプスに挑みました。彼は著書『日本アルプスの登山と探検』で上高地の魅力を称賛し、日本に「楽しみとしての登山」を広める功績を残しました。
日本山岳会は彼の栄誉を称えて、昭和12年に梓川沿いの広場に額面型のレリーフを掲げましたが、第二次世界大戦勃発後、敵国となった英国人のレリーフはわずか5年余りで取り外されてしまいました。
しかし、空襲で一部が焼損したレリーフは修復され、昭和22年(1947)6月14日に現地に戻されました。この復旧式がウェストン祭の起源であり、以降毎年6月の第一日曜日に開催されています。
上高地のランドマーク河童橋
上高地の象徴と言えるのが河童橋です。この橋は人工的な建造物でありながら、大自然と調和して上高地に特別な雰囲気を与えています。橋の上からは、堂々とそびえる穂高連峰や岳沢、清々しい梓川の流れ、そして陽光に照らされてキラキラ揺れる川辺のケショウヤナギやカラマツが見渡せます。また、振り返ると時折噴煙を上げる焼岳も展望できる絶好のビューポイントです。
最初の橋が架けられた時期は明確ではありませんが、河童橋はかつて梓川の両岸から木材を運ぶための跳ね橋として使われていました。しかし、明治43年(1910)に吊り橋に改築されました。その後、老朽化に伴い昭和5年(1930)、昭和32年(1957)、昭和50年(1975)と架け替えられています。現在の橋は平成9年(1997)に架け替えられた5代目の吊り橋です。
「河童橋」という名前の由来には複数の説があります。「昔、ここに河童が住んでいそうな深い淵があった」とか、「橋がない時代、川を渡る人々が衣類を頭にのせている姿が、河童に似ていた」といった説があります。また、芥川龍之介が昭和2年(1927)に発表した小説『河童』の中で、上高地や河童橋が描写されていたことで、その名前が広く知られるようになりました。
原生林の中に広がる岳沢湿原
上高地バスターミナルから河童橋を渡り、梓川右岸遊歩道を明神方面に15分ほど歩くと、魅力的な岳沢湿原が広がります。こちらは岳沢と善六沢が合流する地点に広がる小さな湿原で、サワラやチョウセンゴヨウなどの原生林に囲まれ、透き通った清らかな水が魅力です。日差しに照らされると水面がキラキラと輝き、空の青と調和して非常に美しい光景を見せてくれます。
湿原の上には展望ウッドデッキが設置されているので、ここからの眺めは絶景です。正面には六百山(標高2,450m)がそびえ、立ち枯れの木々と澄んだ湧水が独特の趣を漂わせています。
徳本峠の入口にあたる早くから開けた歴史ある明神
標高2,931mの明神岳は、その鋭い尖った形状から「穂高明神の為の山」という意味で呼ばれていました。昔、上高地へは徳本峠と呼ばれる峠を越えて入山するのが一般的で、峠を越えた先には「明神の地」として知られる場所がありました。この地でアルプス鎮守の神・穂高明神岳を見上げた人々は、その神々しい姿に感動し、崇拝したことでしょう。江戸時代の「上高地」という地名は、現在の明神地区を指していました。
現在の明神岳は、昭和時代になって穂高岳と前穂高岳に分けられた名称です。明神地区からは明神岳のみが見えます。今でも麓の明神地区には穂高神社奥宮があり、多くの人々に信仰されています。
河童橋から明神までは、梓川左岸を上流に向かって1時間ほどの道のりです。途中、小梨平の上高地ビジターセンターに立ち寄ることで、上高地の花や昆虫・鳥の資料、歴史などを学ぶことができます。