10月後半から初春にかけてのテント泊は防寒対策が重要になってくるため、ダウンウェア、シュラフ、マット等耐候性に優れたものを選ぶ必要があり、そのために装備重量が嵩んできます。そんな中でも今回はテントマットの代表格サーマレストのテントマットに焦点を当てて、冬山登山におけるテントマットの選び方を考えていきたいと思います。
テントマットの役割
テントマットの役割は寒い季節では特に、寝心地の良さよりも地面からの冷気をどれだけ遮断してくれるかに重きを置いています。そこで長年活用しているのがサーマレストのネオエアーXサーモです。サーマレストのネオエアーシリーズで最も断熱性が高いマットレスです。重量はレギュラーサイズで430グラム、暖かい時期に活用しているサーマレストのネオエアーウーバーライトがレギュラーで250グラムなので180グラムの重量差があります。
今回装備重量の軽量化を目的にネオエアーウーバーライトを使用して、寒い季節における就寝が快適かどうかを試してみました。ネオエアーウーバーライトだけではさすがに不安なので、いくつかの方法で寒さをしのげるか試してみました。
テストするサーマレストのテントマットスペック表
ブランド名 | サーマレスト | サーマレスト |
商品名 | ネオエアーXサーモ(レギュラー) | ネオエアーウーバーライト(レギュラー) |
価格 | ¥30,000(税抜) | ¥26,000(税抜) |
商品説明 | ネオエアーシリーズで最も断熱性が高いマットレスです。 | アルピニストからスルーハイカーまで待望の最軽量エアーマットレスです。 |
重量 | 430g | 250g |
サイズ | 51×183cm(収納サイズ:23×10cm) | 51×183cm(収納サイズ:15×9cm) |
冬山登山における比較評価
商品名 | ネオエアーXサーモ | ネオエアーウーバーライト |
総合評価 | ★★★★☆ | ★★★☆☆ |
快適性 | ★★★★★ | ★★★☆☆ |
軽量性 | ★★★☆☆ | ★★★★★ |
コンパクト性 | ★★★☆☆ | ★★★★★ |
コストパフォーマンス | ★★★★☆ | ★★★★☆ |
サーマレストのテントマットテスト内容
就寝始まりではSOLのエスケープライトヴィヴィをシュラフの上に追加するという手段でスタート。この場合ポンプサック、収納袋を入れた総重量は約465グラム。対してネオエアーXサーモのポンプサック収納袋を入れた総重量は530グラムで、この場合65グラムの軽量化が行えます。
その後にコクーンのリップストップシルクマミーライナー(120グラム)をシュラフの中に追加するという手段。この場合、465グラム+120グラム=585グラムと重くなってしまいますが、体を取り囲む暖かさが増すことで快適な就寝が可能か試してみました。
このとき使用する就寝着は、ダウンパンツにマウンテンイクイップメントのパウダーパンツ(210グラム)、ダウンジャケットにアークテリクスのセリウムSLフーディ(215グラム)を着込みます。
ダウンシュラフはシートゥーサミットのスパークSP2(505グラム)を活用します。シュラフはリミット温度−2°、コンフォート温度+4°というのがオフィシャルで提示されている温度域となっています。
今回テストを行った場所は赤岳鉱泉で、標高は約2,220メートルで、晩秋らしい降雪あり。最低気温+1°、最高気温+4°という環境です。一番寒くなる時間帯が朝方なので、寒さで目を覚まさなければ合格という判断です。
サーマレストのテントマットでのテスト結果
シュラフに入って寝始めた時間は夜8時頃でした。テントマットを上から触った感じはネオエアーウーバーライトがネオエアーXサーモと比べて圧倒的に冷たく就寝前から不安を感じました。
テントマットをこのような形でテストするのは初めてでしたが、断熱性が高いマットが重宝される意味を理解した気持ちでした。
実際に寝てみると、エスケープライトヴィヴィでは、シュラフとの接点に若干の結露が生じ、使用しているシュラフがダウンの場合は難を感じました。また夜中1時頃に目が覚めてしまいコクーンのマミーライナーを追加しましたが、夜中の3時頃に再度目が覚めてしまいました。
いずれも地面からの冷気を感じる寒さで、寒さから逃げることができないという環境です。寝返りをうつとシュラフのダウン嵩によって瞬間寒さから逃れることができるのですが、体の重さでシュラフのダウンが潰れてマットに触れている側の体が冷たく感じるというループです。
ネオエアーXサーモについては全くそのようなことがなく、快適な就寝を送ることができました。
結果、ネオエアーウーバーライトは夜中3時頃まで使用し複数回、地面からの寒さによって目が覚め、その後ネオエアーXサーモに変更して、気がついたら朝になっていたというテスト結果となりました。
結論寒い季節によるテントマットは地面からの冷気というのを特に気にする必要があると考え、軽量化よりも断熱性に優れたテントマットを持っていくことが重要だと気づきました。
寒さというのはパーソナルな部分があるので一概にこれが答えとは言えないという点はありますが、今回のテストでは色々な軽量アイテムを駆使するより、ネオエアーXサーモ単体の方が私は安眠できました。
サーマレストの使いやすいバルブ
寝心地はネオエアーXサーモもネオエアーウーバーライトもさほど大きな違いは感じられません。
特記して紹介したいのは2020年のモデルからサーマレストのスリーピングマットレスのバルブが一新された点です。
この新しいバルブはマットレスに付属されたポンプサックを使用して素早くマットを膨張させることができ、とにかく早く準備を整えることができるので、今回テストを行った寒い環境下では体を冷やすというリスクが軽減できるので大変助かります。
撤収時においてもテントマットに空気が残ってたたみづらいというのがなくなり、素早く空気が抜け撤収スピードが改善されました
ポンプサックからテントマットへ空気を送る仕組みは非常にシンプルで、ポンプサックをテントマットのバルブに差し込み空気を送り込むだけです。バルブはウイングロックバルブといって従来のクラッシックバルブと比較するとバルブが大きくなっていますが、口径を広くすることで約1/3の時間で空気を入れる&抜くことができ、また逆止弁が入っているので入れた空気が戻ってくることが無くなっています。
回転させるとバルブが持ち上がり空気の出し入れが可能になります。
送りこむときに空気が一方通行になるように、赤いロック部分を上の写真のように閉じておきます。こうすることで、逆止弁が働き入れた空気がマットから漏れる心配がなくなります。
空気を抜くときは上の写真のように、ロックを開いて空気を抜きます。
便利なテントマット用アクセサリー
サーマレストのポンプサックはスタッフサックとしても活用することができます。そこで一つ目に紹介するのがサーマレストのブロッカーライトポンプサックです。
これはテントマットに付属しているポンプサックとは異なり、ポンプ機能を付加したドライサックとなっています。
シールラインのブロッカーライトドライサックをベースに作られており、生地のつなぎ目はシーム溶着によって中のものを濡らさずに雨から守ってくれます。容量20Lの防水ドライサックとして活用ができます。ギュッと圧縮して、ポンプの通気口から空気を出して、その後蓋をすることで、中のものを圧縮できます。ダウンウェアなどを入れておくのにとても便利です。
もう一つがネオエアーマイクロポンプです。これは単4電池2本を使用して使えるコンパクトな電動ポンプです。レギュラーサイズのマットレスに約3分で空気を入れることができ、さらに空気を抜くことも電動で可能です。
ポンプサックは必要なく直接マットレスのバルブに指すような形で使用します。キャンプなど重量を重視しないアウトドアで活躍してくれる大変便利なアイテムです。
エアーマットのデメリットであった膨らませる・空気を抜くと"大変さ"いう点を克服したNEWバルブを搭載したサーマレストのネオエアーシリーズ。軽量ながら寒さに強いXサーモ、超軽量なウーバーライト、4シーズン様々なアクティビティを通してもはや敵なし!ではないでしょうか。