初の北アルプス冬山登山として選んだのは、中房温泉から合戦尾根を通って燕山荘での山小屋泊というプラン。燕山荘からは燕岳〜北燕岳をピストンで登山も楽しむ。
目次
今回の登山の目的
- 中房温泉から合戦尾根のルートを満喫
- 久しぶりの山小屋泊と燕山荘の魅力を探る
- 燕山荘の食事とお酒で宴会
- 燕岳のイルカ岩を槍ヶ岳バックに写真撮影
- 燕山荘から眺めるモルゲンロートを楽しむ
- 夜と朝の堺を山の頂上から眺める
燕岳登山ルート
- 難易度:中級
- 合計所要時間:4時間35分
- 累積標高:1,365m
- 距離:約4.7km
- コースタイム:中房・燕岳登山口-(70分)→第2ベンチ-(110分)→合戦小屋-(65分)→燕山荘-(30分)→燕岳
登山前の事前確認
燕山荘から発信される情報を頼りに装備を選択し登山に挑んだ。燕山荘は Facebook やブログなどで日々の情報がアップされるので、雪の状況や気温や風について確認ができる。

また、山小屋泊の予約を事前に済ませておくことで、宿泊期間の天気や風の情報が、前々日にメールで送られてくる。
これらの情報と、山の天気や周辺の天気などがわかるアプリやサイトを頼りに、登山当日の状況を想定した。
その上で、僕らが楽しむ11月中旬の燕山荘周辺は暖かな陽気に包まれ、雪も日に日に溶けていって晩秋へと逆戻りしているかのような状況ということが把握できた。
今年はラニーニャの影響もあって寒い冬になると言われていたので積雪量のある燕岳を楽しめると思っていたが、それはもう少し先のことになりそうだ。
情報を踏まえた登山装備
普段はテント泊を楽しむのだが、今回は山小屋泊ということと、暖かいとはいえ北アルプスの冬山登山であるということを踏まえた装備を準備した。

行動着
ベースレイヤー
- ファイントラックのスキンメッシュ
- パタゴニアのキャプリーンジップネックフーディ

ミッドレイヤー
- アークテリクスの Atom SL ベスト
- ノースフェイスのホワイトランニングジャケット

ハードシェル
- パタゴニアのトリオレットジャケット

パンツ
- マウンテンハードウェアのビズルパワータイツ
- ホグロフスのリムシリーズパンツ

登山靴
- スカルパのニュートロン G

その他
- Houdini のダイナミックビーニー
- TALEX のオズニスフラット09
- シールスキンズの防水ソックス

装備
ダウンウェア
- マウンテンイクイップメントのクラウドデュべ
- マウンテンイクイップメントのパウダーパンツ
- エクスペドのダウンソック

トレッキングポール
- ブラックダイヤモンドのディスタンスカーボン Z ポール120cm
- スノーバスケット


チェーンアイゼン
- ブラックダイヤモンドのアクセススパイク

ヘッドライト
- レッドレンザーの MH 5
魔法瓶
- タイガーのステンレスボトル
グローブ
- ヘストラのウィンドストッパーアクティブ
- テムレスのレイングローブ
その他
- コクーンのマミーライナー
- 宴会用のおつまみ
- プラティパスに入れた白ワイン
- 行動食
- エマージェンシーキット
- ウィルドゥのフォールダーカップ
- クワイエットオンの耳栓
晩秋に戻りつつあるような融雪の進んだ登山だったために以下の装備について変更を加えたことを付け足しておく。
- 登山靴はスカルパのモンブランプロから、冬用のトレイルランニングシューズに変更
- アイゼン、ゲイターは装備から軽量化のため外す

行動着装備に関する備忘録
- シールスキンズの防水ソックスの防寒性能は非常に良かった。蒸れが心配だったが0度前後の気温には最適だった。
- 手の指先が冷える場面が何度かあったが、薄手のメリノグローブがあるとより良いと感じた。
- 燕山荘では温かいお湯をもらうことができたのでテルモスの持参は非常に良かった。
- テルモスの中にお湯を入れて飲んでいたが、甘みがあると休憩時におけるホッと休まる感じが断然違う。
- 休憩時にすぐにコップを出せると暖かな飲み物を登山仲間と分かち合うことができる
- チェーンスパイクの爪の大きさによってグリップ感が大きく変わることを実感した。状況に応じて爪のあるアイゼンは重要だし、融雪が進んだ山でも保険としてあると安全
- ハードシェルはワンサイズ大きめだと中にダウンを着込めるし、動きにストレスなく快適だった
- 撥水ダウンのダウンジャケットというだけで安心感が高い
- 山小屋の中といえどもストーブがない場所は寒いのでダウンソックスは役立った
- 眠る時にいびきが四方で響いていたのだが、QuietOnの耳栓で無音。快適な就寝だった。
- ファイントラックのスキンメッシュを取り入れたが、ずっとドライで快適だった。
登山レポート1日目
前日の夜に車で出発をした僕たちは、直接中房温泉の登山口駐車場へ向かう。
中房温泉の登山口で標高が1,450メートル。車の中といえどもエンジンを切ると非常に寒くなる、という状況を把握している信頼する僕の友人の気の効き方は、毎度驚きの連続だ。
自作のサンシェードで外からの明かりを遮り、テントマットと暖かなシュラフを車中泊用に準備をしてくれ、優雅な眠りで一夜を明かすことができた。
中房温泉の登山口は、今まで他の登山口では見たことがない登山開始がウキウキするような景色に包まれている。



少し下ると水場がある。11月のこの時期で水は浅瀬にちょろちょろと流れていた。


中房温泉からは合戦尾根を通り第一ベンチ、第二ベンチ、第三ベンチ、そして富士見ベンチへと進む。道標の案内ポイントが毎回同じで、燕山荘までの距離が縮まり、中房温泉口から離れているのが解るだろう。




富士見ベンチからはその名前の通り富士山を眺めることができ、景色を楽しみながら休憩をすることができる。

この富士見ベンチまでがコースタイム1.0で約2時間。富士見ベンチから30分ほど歩くと合戦小屋に到着する。

合戦小屋はスイカが名物なのは有名だが、冬は何が名物なのだろうと小屋を覗き込むと、
【寒い時はおでんで温まりましょう。700円】

という看板が目に入った。残念ながらこの日はポカポカ陽気で、登山で火照った体でおでんには手が伸びなかったが美味しそうだった。
合戦小屋から燕山荘までは一時間10分。歩みを進めるごとに大天井岳の奥から槍ヶ岳が顔を出す。


槍ヶ岳の尖った頭を楽しみつつ、大喰岳、中岳、南岳、北穂高岳と槍穂の稜線が見えてくると、今度は奥から笠ヶ岳の顔が出てくる。


大キレットの怖かった思い出や、表銀座と裏銀座の楽しみの違いなどの話をかわしながら、歩みを進めると燕山荘が見えてきた。

事前情報通り、雪は非常に少なく、それでも燕山荘近くになると急登になってくるのでチェーンスパイクを装着し歩みを進める。後ろを振り向くと、富士山と雲海の景色が素晴らしい。


燕山荘に到着すると声が出ないほどの感動につつまれる景色が広がる。
燕山荘をバックに左手には燕山荘から大天井岳までの表銀座縦走コースの美しい稜線。

そこから槍ヶ岳から奥穂高岳までの稜線。

左手から正面に向かって槍ヶ岳から双六岳、三俣蓮華岳、鷲羽岳、水晶岳と雄大な西鎌尾根から先の山々の稜線。

正面から右手に目を移すと赤牛岳、手前に野口五郎岳、烏帽子岳から立山へと向かう稜線。
右手には風化した花崗岩が美しく彩る燕岳。その奥には鹿島槍ヶ岳、五竜岳とおぼしき稜線。

燕山荘の人気、燕岳への憧れ、この景色を見ると至極納得する。
時間は11時、まだ山小屋に入って宴会するには早い時間だったので、燕岳〜北燕岳へと歩みを進め、日本海側に向かう飛騨山脈の稜線の景色を楽しみに出かける。

途中目的だったイルカ岩に遭遇。写真で見たとおりのイルカ感。

せっかくなので槍ヶ岳を食べさせてみた。

次回は燕山荘から大天井岳へ続く稜線上にある蛙岩を是非見てみたいと思う。
花崗岩体の奇石が多く点在し、景色に飽きがなくあっという間の登頂だった。

北燕岳まで足を伸ばすと大きな立山の山塊が眺められる。
北燕岳から見る燕岳の景色もまた素晴らしく、燕岳から見る燕山荘の景色も楽しい。


燕山荘 山小屋レポート
1日目の登山を終了し燕山荘でチェックインを行う。燕山荘は他の山小屋にはない雰囲気がある。燕山荘の創設は大正10年で来年2021年で100年目を迎えるという。

山小屋は当時からほぼ変わらず現存し続け、その独特な雰囲気は居心地が良く温かみがある。

燕山荘のスタッフの方々の明るく真摯な対応も素晴らしく、疲れた登山者の心を癒してくれる。
燕山荘の宿泊は go to travel キャンペーンが利用できるので、通常は大人11,000円の宿泊料金なのだが、大人一人7,150円と35%オフが適用され、さらに山小屋で使える地域共通クーポンがいただける。
顔写真のある本人確認ができる書類を用意しておけばキャンペーン適用となるので忘れずに持参をしておきたい。
宿泊場所に案内された後に早速地域共通クーポンでビールとおつまみを購入し、さらに持参したワインと日本酒とおつまみで食事前の宴会を楽しむ。
燕山荘のサンルームは、喫茶サンルームとしてコーヒーやケーキ、生ビールを楽しめるのだが営業は11月3日で終了している。

ここからは時間の経過とともに夕焼けに染まっていく燕岳の景色を楽しめる。
なんとも贅沢な空間でおつまみもお酒も普段とは違った味わいだ。
夕食の時間は時期により異なるようだか、17時半からと18時半からという時間割だった。
日の沈む景色を燕山荘の周りで堪能したあと、すぐに美味しい食事にありつけるのはテント泊にはない贅沢だ。
太陽は双六岳の先へと沈んでいく。


双六岳と対峙するかのように僕らの位置からは富士山が見える。

夜を迎える時間が早い東側の景色と、色鮮やかなオレンジにつつまれる西側の景色の、境目には、槍ヶ岳があり、その雄大な地球を感じる景色に息を呑む。

太陽が見えなくなった瞬間の、天に向かっていく色のグラデーションが何ともいえなく美しい。雪がついた稜線も夏に見る景色とはまた違った趣があり、どっさりと雪がついた冬の景色はどうだったのだろうと想像を豊かにする。
この日は日が沈んでも風は穏やかで、凛とした冷たい空気が肌をさすものの、暖かなダウンに身を包みながら景色を堪能する時間が愛おしく、日が沈んだ後もしばし周りの景色を楽しむ。


時計を見ると6時半、そろそろ夕食時ということで山小屋へと戻る。
席へ案内されるとそこには煮物とハンバーグと焼き魚が並ぶ。燕山荘の料理は豪華だった。

お味噌汁とご飯を盛り付け、余ったクーポン券で赤ワインをボトルで購入し、贅沢なディナーを楽しむ。

食事が始まるとオーナーの赤沼さんが登場し、山のお話の後アルプホルンを聞かせてくれた。
燕山荘のコンテンツは非常に魅力的で、この他にも登山教室やバイオリンコンサート、ケーキフェアやアルプス銀座祭りといった様々なイベントが楽しめる。
オーナーの赤沼さんが聞かせてくれた山のお話は、大変ためになるものばかりで、知ったかぶりしていた自分の知識が恥ずかしい。
お話の後に、赤沼さん本人に山旅旅のことを簡単に紹介させていただき、今回の山のお話の内容をサイトで紹介したい旨について、快く承諾をいただけたので、別の記事で紹介する。
食事を終えると燕山荘の外に出て夜の景色を堪能する。
空には満天の星が広がる。

カメラで撮影すると天の川が見える。肉眼では見えない景色がカメラで撮影すると見えるというのが不思議だ。普段あまり北アルプスでは見かけないカメラ撮影をメインに楽しむ登山者というのが燕山荘には多くいた。

下に目を向けると松本市、安曇野市の夜景が楽しめる。
正面には千曲川が流れる上田市の夜景と、四阿山があり、その上空にオリオン座が輝く。

明るい時間帯に見ると分からなかった都市別の標高がわかるのが面白い。
こんなにも星空を堪能したのは初めてかもしれない。風も弱く極寒というほどでもない気温に恵まれてありがたかった。

こうしてお腹いっぱいの1日目は終了した。
登山レポート2日目
朝5時半に起きた僕たちは、防寒着に身を包み、まだ夜があけてない外へと出る。

富士山の影をくっきりと映す朝焼け。

残り30分で太陽が顔を出す。
燕山荘の正面のデッキにはカメラを準備した登山客の人たちが今か今かと御来光を待つ。


太陽が顔を出すと、槍ヶ岳のモルゲンロートが楽しめる。

東にご来光、西にモルゲンロートという贅沢な景色を堪能する登山者の足取りは忙しい。

燕岳の白い花崗岩がオレンジ色に染まる幻想的な景色にも感動する。
この燕山荘から楽しむ景色は宿泊者だけの楽しみかと思いきや、夜中に中房温泉を出発して、朝一に燕山荘に到着してこの景色を堪能するという強者もちらほらと見かける。
朝のダイナミックな時間を堪能したら、美味しい朝ごはんが待っている。
焼き魚をメインに、お米とお味噌汁。冷えた体を温めてくれた。

下山道は登山道と同様に合戦尾根を歩いて中房温泉へと向かう。駐車場について着替えをピックアップし、登山道入り口にある日帰り入浴可能な中房温泉で体を温める。

山旅はこれだけでは終わらない。
松本市で美味しいコーヒーとランチを堪能
お腹を空かせた僕たちは、松本駅へと車を走らせる。
向かったのはクラフトビールと自家焙煎のスペシャルティコーヒーが楽しめるホップフロッグカフェ。

ここは松本駅から徒歩12分ほどにあるビアカフェで、珍しいクラフトビールと浅煎りの酸味が特徴的な自家焙煎のコーヒーか楽しめる。
僕たちは今週の定食『豚バラ肉の赤ワイン煮込み』と、おすすめの自家焙煎珈琲を頂いた。

コーヒーって食後に楽しむものと思っていたけど、食事と一緒に楽しむことができるフルーティーなホップフロッグのコーヒーには驚いた。
ここはひとつ自分と妻のお土産にと自家焙煎珈琲と、この極旨なコーヒー登山でも楽しみたいと思い『ぽちゃんとコーヒー』を購入。



ぽちゃんとコーヒーはティーバッグ式のコーヒーで、お湯を注いで楽しめる登山者には嬉しいアイテム。ウェブショップでコーヒーもぽちゃんとコーヒーも手に入れることができる。
このようなアイデア商品があるのは、店主の吉川和平さんと妻の直子さんが山に精通している人だから。
山旅旅で愛用の商品を紹介いただいている山に精通したコントリビューターの方々を知っていたり、飲食だけでなく面白い話も堪能し有意義な時間を過ごすことができた。
場所は松本駅からあがたの森公園に向かって直進徒歩12分。「菊の湯」さんとなり。
今回一緒に出かけた友人おすすめのお土産を買いに松本駅へと移動する。
松本駅3階にあるニューデイズ松本銘品館内であづみ堂というおやきと漬物の専門店がある。
ここのおやきが美味しいんだよと教えてくれて購入したのは、お土産用の冷凍おやきと長芋のお漬物。

冷凍以外にもその場で温めて熱々のおやきを手に入れることができるので、電車で帰るのだったら、ぜひ購入して車内で楽しんでみたいと思った。
登山を終えてそのまま帰宅するのではなく、旅の要素を存分に楽しむのだったら、是非とも立ち寄ってもらいたいおすすめスポット2選だ。