遭難や非常時に必須の道具となるツェルト。携行性に優れ、冷えた体を保温し、時にはシェルターとなって風雨から守るツェルトは、同じく宿泊山行では欠かせない登山道具であるテントとは相反して、非常時に特化したアイテムです。そんなツェルトの携行性とテントの快適性を取り込んだ自立式ドーム型ツェルト、mont-bellのU.L.ドームシェルターをご紹介します。
ツェルトとは?
日没、滑落、転倒など、行動不能に陥った際に緊急的な野営(ビバーク)をする必要があります。その際にテントに似たシェルターの役割を担い登山者を守るのが、ツェルトです。重量は数百グラムと軽量で、350ml缶程度のサイズで携行性に優れているため、今や登山時の必須アイテムともいえる重要な装備です。近年、UL(ウルトラライト)嗜好が注目されたことも相まってその存在が見直され、緊急時以外でも活用できる実用性の高いツェルトが見られるようになりました。
テントとツェルトの違い
室内に入り一夜を越す、というところでは違いがないテントとツェルト、それでは何が違うのでしょうか。
※横スクロールで表がスクロールできます。商品名 | U.L.ドームシェルター1 | ライトツェルト |
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イメージ | ||
総重量 | 775g | 470g |
価格(税込) | ¥39,600 | ¥15,730 |
違い①:快適性
一番にして最大の違いが、この快適性です。室内に入ればその差は一目瞭然、空間が広く確保されたテントはツェルトと比較して快適に過ごすことが出来ます。テントでは「荷物を横に置く」「足を伸ばして眠る」事が出来ますが緊急一時的に使用することが想定されているため、「横になって休む程度」の広さが確保されています。
違い②:重量
テントでは軽くて1kg弱の重量ですが、ツェルトは300g以下のモデルがあります。日帰りから宿泊までストレス無く対応できる重量で、たまに「持っているのを忘れる」ほどの重量感です。積極的にツェルトを使うことで得られるテントとの大きなアドバンテージで、軽い分移動距離を稼げます。長期山行の場合、移動距離を長くして日程を短縮すれば、悪天候に見舞われる時間、確率を減らす事に繋がり、結果として「安全な登山」が出来ます。私は行く山に応じて重量を優先するかを決めますが、隣に超軽量スタイルで登る仲間を見て羨ましく思うことがあり「ザック交換しようよ」が定番のコミュニケーションになっています。
違い③:防風性
テントはポールを使ってテンションをかけ、防風性に優れたシルエットと構造を持っています。ツェルトは基本的にポールを必要としませんが風に煽られやすく、強風ではバタバタと生地が暴れることも。この防風性は登山者の設営方法にも左右されます。ポールで自立させる現代の主流である自立式の登山用テントでは、しっかりペグダウンすれば本体の防風性に大きな差は出ませんが、ツェルトはテンションをかけるために様々な工夫を施すため、防風性をフルに発揮するには「経験」を必要とします。初めてツェルトを設営した際、しぼんだ風船のような形に「これで大丈夫かなぁ・・・」と心細くなったのを覚えています。
違い④:携行性
収納時には350ml缶程度までコンパクトに収まるツェルトは携行性に優れ、ツェルトをテントの代わりに使えば、1サイズ小さいザックで宿泊山行が可能です。テントを使った宿泊山行には容量が40L以上のザックが推奨とされますが、ツェルトであれば30Lサイズからでも十分に対応できます。これは携行性だけでなく、前述の重量も関わっており、30Lのザックでも耐えられる携行性と重量をツェルトは備えているからこそです。私もツェルト泊では主に30Lのザックを使用しています。
違い⑤:防水透湿性
重量と携行性でテントより優位性があるツェルトですが、その分テントより劣る部分が防水透湿性です。場所にもよりますが、気がつくと「室内で雨でも降ったのか?」と思うほどに結露したり、雨に耐えられる限界値も低いため、荒天時はツェルト内といえど緊張が高まります。防水性を補うためにタープを用意することもありますが、軽量性がウリのツェルトを宿泊山行で使う場合は「だったらテントかな」と思う判断基準にもなります。
mont-bell U.L.ドームシェルターとは
一見して自立式テントの形をしたU.L.ドームシェルター。モンベルではテントではなく「自立式のツェルト」として位置づけられています。しかしこのU.L.ドームシェルター、使えば使うほどおすすめしたくなる、ツェルトの域を超えたアイテムであることが実感できます。
「テントの特徴を備えた超軽量型シェルター」
一言でU.L.ドームシェルターを表現するならこの言葉が私としてはピッタリの表現です。ツェルトが持つ軽量で携行性に優れたメリットを持ちながらも、テントに肉迫する快適性能を備えたのが、このU.L.ドームシェルターです。自立式ツェルトは他メーカーでも展開されていますが、このU.L.ドームシェルター、これまで多種多様なアイテムを生み出してきたモンベルならではの工夫が随所に見られます。
管理人の評価・レビュー
総合評価 | ★★★★☆ |
快適性 | ★★★★☆ |
軽量性 | ★★★★★ |
コンパクト性 | ★★★★★ |
コストパフォーマンス | ★★★★★ |
U.L.ドームシェルターの特徴
特徴①:ツェルトとは思えない快適空間
ポールで自立するため、テントと変わらない空間を確保することが出来ます。ツェルトが持つ「最低限の空間」のイメージとは一転、足を伸ばして眠ることも問題ありません。非自立式のツェルトと比較するとポールがプラスされる分重量はありますが「非常時でも快適性を重視したい」という人にもおすすめです。
特徴②:自立式シングルウォールのスピード設営
ツェルトの設営は一種の慣れが必要ですが、U.L.ドームシェルターはポールを通すだけで自立し、ペグダウンを省けば3分以内で設営することも可能です。疲労の末ようやく辿り着いたテント場「早くテント設営して休みたい・・」と思う時、U.L.ドームシェルターは非常に強い味方になってくれます。これまでダブルウォールのテントを3シーズンに使ってきましたが、あまりに短時間で設営できてしまうので、持っているテントの中で最も出番が多いです。
特徴③:軽量コンパクト
私が所有しているU.L.ドームシェルター2は、総重量860g、収納サイズは本体26cm×12∅、ポールが45cm×5∅です。重量は軽量と分類されるテントよりはるかに軽量、かつ収納サイズもストレスのない範囲です。軽量コンパクトな上にテントと同等の空間を持ち、設営も素早く出来るU.L.ドームシェルター。使わないわけにはいかないほど魅力的です。
特徴④:優れた耐風性
ツェルトの弱点と言える風への対策も、2本のポールを使うことでしっかりカバーされています。同ブランドのフラッグシップモデルであるステラリッジテントをはじめ、テントと呼称されるアイテムと比較すれば見劣りは否めませんが、あくまでツェルトであることを忘れずに見れば気にはなりません。無積雪期ではU.L.ドームシェルターをメインで使っており、2,000mを越えた場所でも、多少の風が吹いても問題なく、快眠でした。
U.L.ドームシェルターのここに注意
ツェルトとテントの機能をバランス良く備えたU.L.ドームシェルター。あくまでツェルトであるので、対応できるのは3シーズンです。換気が必要なため常時開いているメッシュのベンチレーションがあり、降雪時に使えば酸欠になる可能性があります。防水性はありますが冬季に結露すれば、内部までカチンコチンに凍ってしまい、酸欠状態に陥ります。使用される実例もありますが自己責任の範囲であり、特徴を理解した上での使用になるので、3シーズンでの利用が良いです。
U.L.ドームシェルターで快適便利な山旅を!
U.L.ドームシェルターはテントとツェルトの特徴を一体化させた自立式ツェルトとして、非常にバランスの取れたモデルです。軽量コンパクト、なおかつ高い居住性は「ツェルトだけど積極的に使いたい」と思える高い性能を有しています。独自素材を生み出し、創業以来豊富なノウハウを持つモンベルのU.L.ドームシェルターは、期待を裏切らない快適な山旅を提供してくれますよ。
U.L.ドームシェルター以外のおすすめアイテム
U.L.ドームシェルター同様の特徴を備えたアイテムを紹介します。