里山や低山を歩いていると峠道があって、そこにお地蔵さんが鎮座していたりするんですね。こういう場所ってガイドブックで紹介される事は少ないんだけど、でも絶対意味があると考えて調べてみるとやっぱり意味があって。
意味のある道を歩く楽しさ
例えば『この峠道は東京から山梨に通じる道で昔は多くの商人が歩いていた』ということが解って面白いなあと感じたりするんです。そういう事を知ってて歩くとタイムスリップした気分になれるんです。
そうやって思いを馳せる感じが好きで、以前より歩きたいと思っていた徳本峠に2016年行ってきたんです。
歴史を振り返る上高地までの道のり
1933年に梓川沿いの車道が開通するまでは、島々という集落から8~10時間ぐらいかけて上高地に入っていたんですね。いまでこそ気軽にバスで行くことができますが、それまではその道を歩いて徳本峠を通って上高地まで行ってたんです。『昔の人ってどういう景色をみて歩いてたんだろうなあ』っていう素朴な疑問から好奇心がありました。
ウォルター・ウェストンが明治26年に前穂高岳に登頂しているんですね。この時に案内役で地元猟師の上條嘉門次を雇って今もある集落「島々」から上高地に向かってるんです。その時と同じ道を今自分も歩いていると思うと感慨深くなります。
岩魚留小屋で小休止
今は休業中なのですが岩魚留小屋という明治時代に建てられた歴史ある小屋が残っていてそこで休憩できるんです。
この小屋の前に川が流れていて『ここまでは岩魚が泳いでこれるけど、ここから先は上がっていけない、という意味できっと名前が付けられたんだろう』と考えながら、自然の環境と照らし合わせて景色を楽しむのも面白いんです。
例えば『この小屋で岩魚を塩焼きにして振舞ってたのかなあ~』とか、そういうのを想像するとあっという間に時間も過ぎちゃいます。
ひとりで行くという山旅の楽しさ
1人で行くと時間がいっぱいあるんですね。周りを気にしなくていいから足を止めて妄想したりと自由です。パーティーで行くと気づけなかっただろう場所も気づけたりするのは1人旅ならではですよね。
1日目は徳本峠のテント場で泊まって、2日目は常念山脈最南端、日本二百名山にも選定されている霞沢岳へピストン。
樹林帯を延々と歩いていると飽きてしまうことがあるんですが、このルートは山の景観だけでなく、岩魚留小屋をはじめとした歴史を感じる建造物や山を彩る高山植物など、途中途中で出会う景観が凄くきれいなんですね。
今回の山旅で楽しめた美しい景色
中でも衣笠草(きぬがさそう)という葉が衣笠のように形作っていて、その上に花がぱっと咲いているんです。登山道脇に見られる種のようで徳本峠の小屋のご主人曰く『この辺りの衣笠草はモリモリと大きく育つ』らしく、わざわざこの場所まで撮影に来る人もいるとの事でした。
単純にピークハントを目指して山へ向かうのもいいですが、その過程の楽しみ方を自分なりに考えて旅にでかけてみるのも面白いと思います。