バックカントリースキーにおけるハイクアップはスキー板を履いた状態で登ることを想定しています。この時に使用する道具で最重要装備にスキーシールがあります。厳冬期のラッセルが必要な雪と、春山に見られる雪というように雪質と斜面によってスキーシールを変える必要があります。今回はナイロン製スキーシール「アセンションスキン」とモヘアとナイロンのミックススキン「グライドライト ミックススキン」の違いと使い方の紹介をします。
ブラックダイヤモンドのスキーシールの素材3種
ハイクアップをする時になくてはならないアイテムにスキーシール(クライミングスキン)があります。ブラックダイヤモンドのスキーシールは用途と長さで選べるようになっています。素材は3種類あってナイロンを使用したアセンション、モヘアと呼ばれるヤギの毛にナイロンをミックスしたグライドライトミックス、3種類の中で最も薄く軽量なウルトラライトミックスSTSがあります。
商品名 | アセンション スキン | グライドライト ミックススキン | ウルトラライト モヘアミックスSTS |
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素材 | ナイロン製プラッシュドマテリアル | 65%モヘア/35%ナイロン | 65%モヘア/35%ナイロン |
重量 | 175~186cm=761g | 175~186cm=695g | 650g(110mm) |
幅 | 133mm | 133mm | 125mm |
価格(税込) | ¥20,900 | ¥23,100 | ¥22,550 |
スキーシールにおけるナイロンとモヘアの違い
ナイロンとモヘアの違いですが、ナイロンは毛が硬いのでザラメ雪、固い雪面の斜面、急な斜面でのグリップ力に優れています。ナイロンの性質上水濡れに強くタオルなどで拭いて乾かしやすく、丈夫で耐久性に優れています。
ナイロンのスキーシールのデメリットは、強いグリップ力と引き換えに歩いている時の抵抗がモヘアに比べて大きく、重く嵩張る点です。
モヘアは毛がしなやかで歩いている時の抵抗が少ないので、新雪のラッセルや長距離の移動に適したスキーシールと言えます。また軽量で嵩張りもナイロンに比べると少ない点が優れています。
モヘアのスキーシールのデメリットは、ザラメ雪、固い雪面の斜面、急な斜面でのグリップ力に劣ること、耐久性もナイロンと比べると低い点です。
3月以降からの春のバックカントリースキーではこれらの理由からブラックダイヤモンドのナイロン製アセンションスキンを使用しています。
購入をしたらスキー板の長さや形に合わせてカットをします。クライミングスキンのトリミング方法はスキーシールを購入するとついてくる説明書でも良いのですが、以下の動画が解りやすいので、これを見ながら行えば間違いないです。
スキーシールに雪がつかない貼り方
スキーシールは表と裏があり接着面をスキー板に貼ります。粘着によってスキー板から取れないようにするわけですが、接着面に雪が付着することで粘着力が失われてしまうのでバックカントリーでは雪が付着しないように気をつける必要があります。
スキーシールは折り畳む
スキーシールは折りたたんで持って行きます。折りたたみ方は3つ折ぐらいにすることで少しずつ剥がしながら板に貼ることができます。一気に接着面が露出してしまうと雪が付着する可能性が高くなります。
1/3ずつ貼っていく
シールを貼る時には1/3ずつ、最初は板を立ててシールを貼り、次にスキーのトップを雪面に置き、板のボトムがお腹に当たるようにしてシールを引っ張りながら剥がし貼っていきます。貼る前にもしも雪や水滴が付いていたらタオルなどで拭くと良いです。
最後はスキーポールの側面部分を使ってシールの下に逆らわないように押し貼っていくことで剥がれづらくすることができます。
スキーシールに雪が付かない剥がし方
貼り方も工夫が必要ですが、剥がし方にも工夫が必要です。スキー板を剥がす時は自分が谷側に位置し山側に板を置いて剥がすようにしましょう。
スキー板を体の目の前で、ビンディングが雪面になるようにして横にしておいたら、スキーシールは一気に剥がさず、少しずつ剥がして張り合わせていくようにしましょう。
厳冬期などの寒い季節では粘着力をひきだすために、スキーシールを折りたたんだらハードシェルの内側にしまうようにしています。スキーシールはハードシェルのポケットに入れる必要はなく、ハードシェルの内側に入れるだけでも、ザックのウェストハーネスで落ちないので大丈夫です。
スキーシールをつけて歩きやすくするための工夫
ナイロンのスキーシールは強いグリップ力と引き換えに歩いている時の抵抗があるため、スキーシールの上からワックスを塗ることをおすすめします。僕が使っているのはコールテックスのスキン+スキーワックスです。こうすることで滑りが良くなりスキー板を前に出す時の抵抗が少なくなり足の負担が軽減します。
スキーシールを使って歩くときに注意していること
登山と同様バックカントリースキーでのハイクアップ時には疲れないように歩くコツがあります。
滑らすように足を運ぶ
まず一つは足を上げずに滑るように歩くことです。一回一回足を上げるような歩き方だと、足で板を持ち上げる筋肉を使うことになってしまうため疲れてしまいます。滑るように足を前に運んだら、しっかりと前足に重心を預けて、次に後ろ足を前に運ぶような動作の繰り返しによってスキーが滑らず、安定した足運びが可能です。
重心を板に預ける場合はつま先ではなく股関節の上に体重を乗せることで踵に重心がかかり板が滑りづらくなります。これを覚えておくと斜度のある場所で安全なハイクアップが可能になります。
歩くペースは一定
バックカントリースキーではパーティーで行くことが多いと思います。皆さんそれぞれに経験が異なり歩くスピードも異なることでしょう。前の人との間隔が開いてしまって、無理に詰めようとするとペースが乱れます。一定のペースを守って歩くことで疲れづらくなるので、コミュニケーションで離れてしまわないようにしましょう。
一定の斜度を見つけて歩く
バックカントリースキーに出かけるということは自分でラインを見つけて登ることができます。登山道はありません。前に歩いた人のトレースをたどって歩く必要はありません。自分で一定の斜度のラインを見つけて歩くことで、安全で疲れにくく登ることができます。