日本の山岳地域を代表する長野県に隣接し、北アルプス、南アルプスなどを擁するエリアにも引けを取らない山深さと人気を誇る奥秩父。豊かな森林と渓谷を持ち、山岳信仰としても歴史を持つ奥秩父には、深田久弥氏が選定した日本百名山を抱くことからも、その魅力は登山者なら一度は訪れてみたい山頂も多くあります。今回は奥秩父に来たら必ず登りたい、同エリアの日本百名山を紹介します。
奥秩父の百名山の特徴
奥秩父の百名山は、甲武信ヶ岳、金峰山、瑞牆山、雲取山、大菩薩嶺、両神山の6つのピークで、両神山を除く5座は2,000mを超える場所にあります。
3県を跨る甲武信ヶ岳、山頂のシンボルである五丈岩が特徴的な金峰山など、山頂からの眺望のみならず、山容から頂上に至るルートまで、日本百名山の一峰として相応しい美しさを持っています。
首都圏からのアクセスは比較的良好で、雲取山は距離があり健脚向けではありますが、どの山も日帰りで頂上へ登ることが可能です。
難易度
各山で難易度は異なりますが、概ね基本的な登山技術があれば頂上まで登れます。最も易しい大菩薩嶺はハイカーに人気があり、峻険なルートを持つ両神山は岩場が多いですが、程良い緊張感で登山の醍醐味を存分に堪能できます。
また日帰り圏内ではありますが、深い自然に囲まれた場所にそれぞれのピークがあり、贅沢に1泊2日で麓でキャンプをしたり、頂上付近のテント場で一夜を過ごすのもおすすめです。行程に余裕を持ち、十分な休息を経て登山ができるので、より安全に頂上を目指すことが可能となります。
頂上付近に山小屋がある山もありますが、基本的なテント泊技術と装備を持っておくのが良いです。
下山後の楽しみ
山の奥地に佇む奥秩父の日本百名山。街まで降りて観光地に寄るのも良いですが、登山の疲れを癒やす温泉が随所にあり、定番ではありますが、名湯に浸かっていくのが奥秩父登山後のおすすめです。
アクセスの道中に温泉があるエリアもあり、下山後の予定を含めてスケジュールが組みやすいのも、奥秩父エリアの魅力です。
山梨県・埼玉県・長野県の3県境『甲武信ヶ岳』
紹介した山 | 甲武信ヶ岳 |
都道府県 | 埼玉県・山梨県・長野県 |
標高 | 2,475m |
天気・アクセスなど | 甲武信ヶ岳の詳細情報 |
山梨県・埼玉県・長野県の3県の境に位置するのが、甲武信ヶ岳です。奥秩父の中でも人気の高い山で、山頂までのルートもさることながら、この山が持つ歴史や、各県の水源ともなっている地理的魅力など、立体的で深い魅力を持っていることも人気の一つです。
山頂からの眺望は奥秩父の山々が望め、深い自然の中にいる開放感と、山に抱かれている安心を感じられる好展望です。
アクセスはルートによりますが、電車、バス、マイカーと選ぶことができ、明瞭な道を辿っていくので道迷いの心配も少なく安心です。
かつて、甲武信ヶ岳を起点として金峰山までの縦走を行ったことがあり、甲武信ヶ岳で迎えた朝はなんとも晴れやかで、甲武信ヶ岳付近より見る金峰山まで続く稜線は、長い山旅を想起させてくれ、胸が高鳴りワクワクしたのを覚えています。
頂上付近には甲武信小屋があり、小屋泊からテント泊まで対応してくれます。
山頂までのルート
山頂までは長野県側の毛木平、または山梨県の西沢渓谷からのアプローチが一般的です。西沢渓谷からのルートは徳ちゃん新道と呼ばれ、西沢渓谷の渓谷美を堪能した後、山頂まで尾根道を登っていきます。甲武信小屋で小屋泊、もしくはテント泊がおすすめです。
毛木平からは主にマイカーでのアクセスとなりますが、千曲川の源流を、心地良い沢の音を聞きながらゆっくりと標高を上げていく癒やしのルートです。
奥秩父随一の人気を誇る『金峰山』
紹介した山 | 金峰山 |
都道府県 | 山梨県・長野県 |
標高 | 2,599m |
天気・アクセスなど | 金峰山の詳細情報 |
麓からも確認できる特徴的な岩が鎮座している奥秩父随一の人気を誇るのが金峰山です。五丈岩と呼ばれるシンボルは、古くは信仰の対象として存在しています。
金峰山は人の歴史が山の大きな魅力となり、古くからここを訪れた人々に想いを馳せながら登るという、人と自然の距離が近い日本の山ならではの登山が楽しめます。
眺望も奥秩父山域内の百名山の中では特に優れており、富士山、南北アルプス、八ヶ岳などが望めます。森林限界を超えた高所登山も比較的楽に楽しめるので、夏の時期に初めての2,000m以上の登山としてもおすすめです。
山頂までのルート
夏の時期は山梨県、長野県の境に位置する大弛峠を起点として、山頂まで片道2時間程度で到達できます。大弛峠は標高2,360mの高所にあり、金峰山までの標高差も少なく歩きやすく、眺望も優れているため、金峰山を目指すルートの中でも人気が高いです。
大弛峠までのルートは林道の開通期間があり、かつ駐車場にも限りがあるので、登る際には早めの到着がおすすめです。
大弛峠と比肩して人気があるのが、瑞牆山荘からのルートです。早めに出発すれば日帰り圏内であり、途中にある富士見平小屋で小屋泊、テント泊で目指すと、余裕を持った行程で楽しめます。
金峰山は他にも廻り目平キャンプ場からのルートや甲武信ヶ岳方面からの縦走ルートなど、多彩な予定を組むことができ、金峰山登山を通して奥秩父の豊かな自然を感じられるので、是非何度も足を運んでほしいです。
奥秩父で日帰り登山が楽しめる『瑞牆山』
紹介した山 | 瑞牆山 |
都道府県 | 山梨県 |
標高 | 2,230m |
天気・アクセスなど | 瑞牆山の詳細情報 |
特徴的な山容を持つ岩峰で、奥秩父で日帰り登山が楽しめる一峰として親しまれています。
また奥秩父主脈縦走の起点、もしくは終点の山としても知られ、縦走する登山者にとって非常に大きな意味を持つピークです。
山頂からは遠くに金峰山が望め、次なる山への期待が抱ける、奥秩父デビューの山としておすすめです。
山頂までのルート
瑞牆山荘からのルートが一般的に知られています。金峰山へのルートとの分岐である富士見平小屋から分かれ、一旦標高を下げた後、瑞牆山特有の岩場を経て山頂に至ります。
東京都の最高峰『雲取山』
紹介した山 | 雲取山 |
都道府県 | 東京都・埼玉県・山梨県 |
標高 | 2,017m |
天気・アクセスなど | 雲取山の詳細情報 |
東京都の最高峰にして、奥秩父主脈の最東端に位置する山です。標高は2,017mあり、東京都唯一の2,000m峰としても知られています。東京都、山梨県、埼玉県に跨っており、東京都最西端の位置が示す通りの山深さが雲取山の魅力であり、日本百名山、最高峰などの名に恥じない豊かな自然を有しています。
2017年、山頂の標高と同じということで1年間限定の記念碑が立てられ、ちょっとしたブームになりました。
山頂までのルート
最も利用者の多いのが鴨沢ルートで、片道5時間はかかる長時間のルートです。雲取山荘での小屋泊、もしくはテント泊がおすすめですが、健脚者であれば日帰りも可能です。この他にも日帰り向きの三峰ルート、アクセスが難しいですが三条の湯ルートがあり、技術や行程に合わせたプランを組むことができます。
奥秩父内の百名山で最も峻険なルートを持つ『両神山』
紹介した山 | 雲取山 |
都道府県 | 埼玉県 |
標高 | 1,723m |
天気・アクセスなど | 両神山の詳細情報 |
奥秩父内の百名山で最も峻険なルートを持つのが両神山です。古くから霊峰として知られ、麓には深い信仰の山であることを思わせる場所が随所にあります。登山では日帰り圏内でありながらもルートによっては緊張する行程が多いですが、山頂に達したときの充足感は、眺望だけではない山の魅力のひとつを実感させてくれます。
山頂までのルート
山頂に続くルートで最も登られているのが表参道ルートで、山頂までのルートの中では最も登りやすく、鎖場を幾つか通って山頂に至ります。この他にも現在通行可能なルートとしては八丁峠からのルートがあり、鎖場、岩場が連続して基本的なクライミングの動きが必要とされる経験者向きのルートとなっています。
八丁峠は私が初めて両神山を登ったときのルートで、よくここを登山道としたなと驚いたのを覚えています。
奥秩父の百名山の中で最も手軽に登ることが出来る『大菩薩嶺』
紹介した山 | 大菩薩嶺 |
都道府県 | 山梨県 |
標高 | 2,057m |
天気・アクセスなど | 大菩薩嶺の詳細情報 |
奥秩父の百名山の中で、最も手軽に登ることが出来るのが大菩薩嶺です。
林道が開き上日川峠まで上がれる時期であれば4時間程度で周回できます。
大菩薩嶺のハイライトは、大菩薩峠から山頂に至るまでの区間で、大菩薩嶺山頂は樹林帯で眺望はありませんが、山頂までの区間は富士山を望みながら奥秩父の眺望を終始堪能できます。
難しい箇所もないのでハイキングにもおすすめで、ロッヂ長兵衛や福ちゃん荘で宿泊、テント泊を加えれば、付近の山へ足を伸ばしたりと、充実した山旅を楽しめます。
山頂までのルート
上日川峠からの周回ルートが最も利用者が多いですが、麓から上日川峠まで至るルートもあり、林道が閉鎖しても公共交通機関でアクセスが可能です。技量や体力、日程に合わせて無理のない行程を組めるので、年間を通して四季折々の大菩薩嶺を楽しんだり、同行者の技量に合わせたりと、様々なニーズに合わせた登山が可能です。
下山後の温泉
丹波山温泉 のめこい湯
道の駅たばやまに併設された温泉で、雲取山登山後の利用におすすめです。
綺麗に整った浴室は清潔感があり、もちろん露天風呂も備えています。登山で疲れた身体を癒す他、入浴後はお肌がつるつるしっとりとなることも嬉しいポイント。現地の方言ののめっこいが温泉の由来になっています。
道の駅と併設されているので、観光にもおすすめです。
増富の湯
瑞牆山荘へ向かう途中にある温泉で、国内にある有名なラジウム温泉地のひとつです。金峰山、瑞牆山へ登った際に利用するのにおすすめで、温度も4種類から選べ、ゆっくり浸かることができます。
マイカーでのアクセスも便利ですが、バスが出ている時期であれば瑞牆山荘から韮崎駅までの経路上にあるので、途中で立ち寄ることも可能です。
大菩薩の湯
上日川峠に向かう道中にある温泉です。お湯はアルカリ性で、登山で疲れ、汚れた身体もしっかり癒やし、洗い流してくれます。湯加減も大人から子どもまで誰もが入れる温度です。公共交通機関なら塩山駅から大菩薩峠登山口行きのバスに乗り、途中下車で立ち寄れます。大菩薩嶺方面の登山後の利用におすすめです。
奥秩父の百名山を登って、山の魅力を堪能しよう!
奥秩父は都心からのアクセスが良好な位置の山域です。豊かな自然と特徴的な峰々を抱くエリアで、百名山としても名の知られる6つの山は、奥秩父山域の中でも信仰、山容、眺望など、特に魅力的な山として知られます。日帰りで登れますが、山小屋、テント、麓のキャンプ場などを利用して、山の魅力を骨の髄まで堪能するのがおすすめです。下山後は温泉に浸かれば、奥秩父の自然を登山以外の視点で満喫できます。
奥秩父の百名山に登って、登山の魅力と醍醐味を味わってくださいね。