大台ヶ原山は奈良県と三重県の県境にある日本百名山で、世界遺産に登録されている吉野熊野国立公園内にある自然豊かなエリアにある山です。大台ヶ原山は大台ヶ原の森に囲まれ、大台ヶ原の特殊な地形と日本でも有数の降水量によって、種々の不思議な現象をみることができます。そんな大台ヶ原山の日帰り登山コース、山小屋泊登山コース、大台ヶ原山で登山をする際の注意点について紹介します。
大台ヶ原山の特徴
大台ヶ原山には数多くの特徴があります。他の山とは異なった自然環境による不思議な現象や地質的な特徴、大台ケ原で発見された生き物や、大台ケ原の生い立ちによる歴史の深さなどが特筆に値します。大台ヶ原山への登山をする前に知っておくとより楽しむことができる特徴を紹介します。
山の名前 | 大台ヶ原山(おおだいがはらざん) |
都道府県 | 奈良県・三重県 |
標高 | 1,695m |
天気・アクセスなど | 大台ヶ原山の詳細情報 |
自然環境による不思議な現象
大台ケ原は紀伊半島の南東に位置しており、熊野灘までわずか20km足らずの距離に位置します。この20km足らずの距離で標高差1,500mの斜面を形成しているため、太平洋の湿気をたくさん含んだ風がこの斜面を急上昇し、上空で冷やされて雲ができ雨を降らせます。
この多くの雨によって冬には雨氷、5月は美しい新緑を楽しむことができます。また大台ケ原の森の中では雨でもないのにパラパラと大粒の水滴が降ってくることがあります。これは空気中の霧が樹木の葉先などに付いて、それが溜まって雨滴のようになって落ちてくる『樹雨』という現象です。
地質的な特徴と大蛇嵓の雄大な景色
大台ヶ原山の中に大蛇嵓と呼ばれる東ノ川の谷底に向けて、一気に1,000m高度を下げる岩稜があり、上空から見ると包丁の歯を上にして西へ向け立てたような鋭い地形で、登山者の目を楽しませてくれるスポットとして人気があります。
このような岩稜は多くは氷河の侵食により形成されますが、1,000mの高度差を持つ壮大なスケールの地質は珍しく、谷頭浸食(こくとうしんしょく)と呼ばれる、風化と重力に基づく崩壊によって形成されたと考えられています。
大台ケ原で発見された生き物
大台ケ原から高見山に伸びる山脈ではニホンオオカミが最後まで生息したと言われています。またオオダイガハラサンショウウオは日本の固有種で渓流近くの落ち葉や倒木の下などで生活しているようです。
また大台ケ原に行くと鹿と出会う確率が高いです。これは通常よりもはるかに多い密度で鹿が生息している為で、鹿による樹木の悪影響が問題視されています。
大台ヶ原山の難易度別おすすめ登山コース
大台ケ原は大きく2つのエリアに分けることができます。西大台と東大台で、西大台へは事前の手続きが必要となります。
今回紹介する登山コースは3つで、西大台は約9kmの距離を歩く上級向け周回コース、東大台は同じく約9キロの距離を歩く初級向けのコース、最後に山小屋泊が必要となる大杉谷コースがあり、これらを順に紹介していきます。
広大なブナの原生林を歩く西大台コース
スタート地点 | 大台ケ原ビジターセンター |
総距離 | 約8.3km |
累積標高 | 約520m |
コースタイム | 4時間 |
難易度 | ★★★☆☆ |
西大台に入山する場合は事前申請が必要です。ぶなの原生林の中を歩くコースで、神秘的なムードを味わえる一方、迷いやすいため、現地のことを熟知した人と一緒に訪れるようにしましょう。
西大台地区への立入は土日祝日が50人、平日が30人、ゴールデンウィークや新緑シーズン、お盆休みは今シーズンは土日祝日が100人、平日が50人となり、登山中は歩いている人を頼りにすることが難しいことを念頭においておく必要があります。
また沢渡が多いコースとなるので登山時、登山前日に雨が多い日は増水に注意が必要です。
西大台への登山口は大台ケ原ドライブウェイから大台ケ原駐車場に入ってすぐ右手にあります。すぐに登山を開始するのではなく事前申請手続きをした上で大台ケ原ビジターセンターに向かい、事前レクチャーを受講してから入山する必要があります。
まず初めにナゴヤ谷へ向かいます。ここまでは登山口から約30分です。七ツ池に向かいます。
七ツ池から開拓分岐までは約1時間半で、開拓分岐から展望所に行く場合は往復35分ほどとなります。展望所近くにはかぼちゃミズナラと呼ばれる不思議な木があります。また展望所からは正面に大蛇嵓、左手に中ノ滝と雄大な景色を楽しむことができます。
展望台を後に赤い吊り橋を渡りガレ場を歩いた後は元北駐車場へと歩いて行きます。
西大台地区に入るための事前申請方法
西大台地区の立入りにあたっては、自然公園法に基づく申請手続きが必要となります。予約の受付は立ち入り希望日の3ヶ月前からとなります。手続き方法は2種類ありインターネットと電話です。
まずはじめに上北山村商工会に向けて予約を行い、希望日が空いていることを確認できた後に手数料を入金し立ち入り申請を行います。入金額は一人当たり1000円、小学生は500円と定められています。
その後、立入認定証の交付が行われ当日は大台ケ原のビジターセンターで事前レクチャーを受け立入り可能となります。
●インターネットでの予約
http://kinki.env.go.jp/nature/odaigahara/west_odai/riyo_rule.html
●電話での予約
上北山村商工会
【TEL】07468-3-0070
※平日8:30~12:00/13:00~17:00
(8月13日~16日、12月26日~1月5日を除く)
東大台(中道)コース・初心者におすすめの登山
スタート地点 | 大台ケ原ビジターセンター |
総距離 | 約8.0km |
累積標高 | 約367m |
コースタイム | 3時間20分 |
難易度 | ★★☆☆☆ |
眺望の優れた大台ケ原の最高峰の『日出ヶ岳』を登り、険しく雄大な景色をまとう『大蛇嵓』を目の前にし、フラットで広いスペースで休憩にも最適な『牛石ヶ原』、標高1640mに位置し、正面に正木峠が眺められる『正木ヶ原』など、見どころが多く初心者にもおすすめのコースです。
登山道には多くの案内板や動植物の解説が設置されているのでゆっくりと歩きながら大台ケ原の特徴を楽しむことができます。
登山口は大台ケ原ビジターセンターのすぐ横にあり、大台ケ原ビジターセンターの山頂駐車場からのアクセスも良好です。
約40分で大台ケ原の最高峰日出ヶ岳の頂上に到着することができます。大台ケ原の駐車場の標高が1572mなので、日出ヶ岳の標高1,695mとの標高差は約120mです。
日出ヶ岳からは360°の大パノラマが楽しめます。晴れていれば富士山を遠望することもできます。
日出ヶ岳を後に約40分歩くと正木ヶ原に到着します。開けた場所に大きく立派な樹木が点々と立っている様は日本とは思えない雄大な景色です。トウヒの立ち枯れは大台ヶ原山の歴史の長さを感じることができます。
正木ヶ原を後に10分ほどすると尾鷲辻に東屋があり急な雨の避難所としても活用できるのでポイントとして覚えておく事をおすすめします。
その後約20分歩くと大きな平原が魅力の牛石ヶ原です。多くの登山者が休憩ポイントとして使用しており、霧が出ると幻想的な景色を楽しめるポイントです。
ここから約15分歩くと大台ケ原山の人気ナンバーワンスポット『大蛇嵓』です。紅葉の季節は特に素晴らしく、先端に立つことができ、自然の迫力とスリルを思う存分味わうことができます。その後約1時間の道のりを歩き大台ケ原駐車場へと向かいます。
大杉谷登山コース・山小屋泊を交えての登山
スタート地点 | 大杉谷登山口 |
総距離 | 約14.9km |
累積標高 | 約2,504m |
コースタイム | 10時間 |
難易度 | ★★★☆☆ |
このコースは大杉谷登山口から大台ケ原へ抜けるコースで途中桃の木山の家で宿泊する一泊二日の登山となります。
登山口からは多くの吊り橋を渡り清流や滝を楽しみながら歩きを経てシシ淵へと向かいます。シシ淵までの道のりはアップダウンが多く登山道の整備も万全とは言えません。断崖絶壁のような危険箇所は少ないのですが、険しい登山コースと考えておくと良いでしょう。
シシ淵から桃ノ木山の家に向かい、1日目の登山は終了です。桃の木山の家はボリューム満点のご飯とヒノキ風呂が自慢の山小屋です。
大杉谷登山口から桃ノ木山の家までがコースタイム約4時間20分。桃の木山の家から日出ヶ岳を経由し大台ケ原駐車場までは約5時間40分です。
桃の木山の家を出発したら森林浴の多い登山道を歩いて行きます。シャクナゲが自生するシャクナゲ平は5月下旬から見頃を迎えます。
そこから日出ヶ岳へ向かい、体力があれば大蛇嵓展望台まで足を伸ばすのもおすすめです。
大台ヶ原山のトイレ情報
東大台エリアにはトイレが設置されていません。一度入山をすると下山をするまでトイレに行くことができないので注意しましょう。乳酸箇所は大台ケ原ビジターセンターとなるためここに設置されているトイレを利用した後登山をしましょう。
西大台には携帯トイレブースが設置されています
大台ヶ原山の駐車場情報
大台ケ原ビジターセンターに駐車場があります。駐車スペースは約200台で満車になる場合があるので注意が必要です。その場合は大台ケ原まで公共交通機関を使ってアクセスすることになります。
公共交通機関でのアクセスは大台ケ原行き路線バスが近鉄大和八木駅と橿原神宮前駅から運行しています。
大台ヶ原山の観光&グルメスポット&温泉情報
①大台ヶ原ビジターセンター
大台ケ原ビジターセンターでは大台ケ原山の情報収集が可能です。開館時間は午前9時から午後5時までです。ビジターセンター館内には展示ホールとレクチャーホールがあり、展示ホールでは大台ケ原の自然のことや歴史のことを学ぶことができます。
②小処温泉
内湯には打たせ湯と露天風呂があり、温度設定が低いため長く入りながら疲れをとることができます。施設は近代的で居ごこちの良い空間です。神経痛や筋肉痛などの関節のこわばりに適用する温泉成分です。
③入之波温泉
休憩室が併設されており食堂では有名な釜飯を楽しむことができます。柔らかい温泉で温度設定が40°弱と夏場でもゆっくり浸かることができる温泉です。
④フォレストかみきた
広々とした内風呂と露天風呂がある、つるつるとしたアルカリ性単純温泉を楽しめる施設です。温泉だけでなく食事をすることもでき、メニューが豊富でゆっくりと滞在することができます。
⑤山吹
少し割高な料理ですがホテルのシェフが作った地元の食材を楽しめるランチメニューが特徴です。
⑥道の駅 杉の湯川上
道の駅の中では食事を楽しむこともできうどんやそばなどの麺類が豊富です。お土産屋はこじんまりとしており中では少量ですが地元の食材を手に入れることもできます。