神奈川県を代表する山岳地域の丹沢。1,000m級の山々が連なり、複雑な地形と海から程近い位置にあることで、ハイキングから縦走、沢登りなどといった、登山を総合的に楽しめるエリアとして、首都圏の登山者に親しまれています。沢山のピークがある丹沢の中で、日本百名山として選ばれている丹沢山は、丹沢の奥地にある静かな山頂として知られています。今回は日本百名山の一峰、丹沢山をご紹介します。
丹沢山の登山が人気の理由
標高1,567m、丹沢の中でも高峰にあるのが丹沢山です。丹沢の主峰のひとつである塔ノ岳から最高峰の蛭ヶ岳を結ぶ主脈に位置しており、日本百名山完踏を目指す人には欠かせない山頂です。その魅力は丹沢が本来持つ自然豊かな山の美しさと静寂にあります。
山の名前 | 丹沢山 |
都道府県 | 神奈川県 |
標高 | 1,567m |
天気・アクセスなど | 丹沢山の詳細情報 |
静かな山歩きを楽しめる丹沢山
丹沢山に行き着く登山道である主脈の稜線、塩水橋からのルートは、いずれも登山者が少なく静かな登山が楽しめます。登山者が少ない=人気がないわけではなく、主脈を歩くには体力と時間が必要となったり、塩水橋まではアクセスが主にマイカー・バイクとなるといった条件がつくため、必然的に塔ノ岳周辺の登山者の多いエリアより人が少なくなる傾向にあります。
また、眺望という点では南方に位置する主峰、塔ノ岳が優れており、塔ノ岳の登頂で十分な満足感を得られることもあり、塔ノ岳から丹沢山を目指す人は、眺望だけではない山の楽しみを持ち、かつ登山経験を持っている人が多いため、丹沢山は玄人向けの人気山の代表格と言っても過言ではない、丹沢の静かなる名峰です。
色濃く残る原生林に癒やされる山登り
丹沢の標高の低い場所は、場所によっては植林帯が多く見られます。植林帯を登り続けていると、あまりに同じ景色に気持ちが萎えてしまうこともありますが、丹沢山に至る標高が高いエリアは、丹沢が持つ原生林が見られ「山に登っているんだ」という高揚感と自然の美しさをより間近に感じることができます。
丹沢山の周辺でも、笹原やバイケイソウの群生を始めとした植物の姿があり、多様な植生に驚かされます。また原生林から入る陽光は最高の森林浴となり、山の新たな楽しさに目覚めさせてくれるのが、丹沢山登山の大きな魅力です。
街の景色と山深さのグラーデションを楽しめる山登り
丹沢の中でも奥地に位置する丹沢山。街と山がコラボレーションされた眺望が丹沢の魅力ですが、より山深い眺望と、そこで感じる静寂が丹沢山の大きな魅力です。山域の山々と原生林、静かな山の時間は、下山するのが惜しくなります。
風の音、鳥類を始めとした動物の鳴き声、植物の揺れる音、静寂の中にあるわずかな音を聴くだけで、俗世間から外れ、自分が山の一部となった様な感覚になり、誰もが夢中になります。
丹沢山の難易度別おすすめ登山コース
丹沢山への登頂は主に塩水橋、もしくは大倉からのピストンによる日帰りが主流です。どちらも早めに出発すれば余裕を持った下山が可能ですが、丹沢特有の急勾配の登りは初めて丹沢を登る方には面食らうかもしれません。
体力的に不安がある方には、みやま山荘という山頂にある山小屋を利用すれば、より余裕を持った計画を立てることができ、丹沢山を通過点とした丹沢の縦走プランを立てるにも小屋泊がおすすめです。
今回は塩水橋、大倉からの日帰りプランの他、1泊の贅沢縦走プランをご紹介します。
表丹沢の玄関口−大倉から丹沢山を目指す日帰りプラン
スタート地点 | 大倉 |
ゴール地点 | 丹沢山 |
地点間の距離 | 9.1km |
片道コースタイム | 5時間35分 |
難易度 | ★★★☆☆ |
丹沢の中でも登山者の多い塔ノ岳、鍋割山、三ノ塔へと続く登山口、大倉から丹沢山へ登頂するルートです。
大倉から塔ノ岳までの、急勾配で体力を求められるこの尾根は大倉尾根と呼ばれ、数千回も登っている方がいるほどの人気ルートです。花立山荘直下までは樹林帯を歩き、同山荘以降は鍋割山へ続く稜線、遠く大山を望める稜線など、開けた眺望の中塔ノ岳へ向けた歩を進めます。
塔ノ岳を過ぎ、その後は登り降りを繰り返しながら丹沢山までの稜線を歩きます。丹沢の原生林を歩きながら都市部と丹沢深部の眺望を見ながら歩けるこの稜線は、丹沢の醍醐味を心ゆくまで楽しめるおすすめの区間です。
みやま山荘を目印とする丹沢山の山頂はとても静かで、休憩には丁度よい空間です。ここで休んだら、来た道を戻って大倉へ下山します。
丹沢山への最短ルート−天王寺尾根を利用して山頂へ
スタート地点 | 塩水橋 |
ゴール地点 | 丹沢山 |
地点間の距離 | 5.6km |
片道コースタイム | 3時間30分 |
難易度 | ★★★☆☆ |
宮ケ瀬とヤビツ峠間を結ぶ70号線の途中にある塩水橋から丹沢山へアプローチするプランです。
マイカーやバイクでの移動限定のルートですが、表丹沢と比較して登山者も少ないので、静かな山歩きとなるのも特徴です。
丹沢山へ至る最短ルートとして知られていますが、大倉尾根と同様に勾配が急なところもあり、登りごたえがあります。標高を上げるにつれて丹沢らしい山の奥深さを感じる景色が見られ、飽きさせません。
山頂からの下山時は堂平方面へと下って塩水橋へ戻るルートを取ることもできます。
みやま山荘で一泊−宮ケ瀬方面へ下山の充実ルート
スタート地点 | 大倉 |
ゴール地点 | 宮ヶ瀬 |
地点間の距離 | 18.9km |
片道コースタイム | 10時間10分 |
難易度 | ★★★☆☆ |
大倉をスタートして大倉尾根、主脈を経て丹沢山に登頂後、みやま山荘で一泊。翌日は神奈川県の水瓶である宮ヶ瀬に下山するプランです。
市街地に近い大倉から入山し、自然の多い宮ケ瀬方面に下山するため、丹沢の多様な姿と眺望が楽しめるルートとなっており、街の喧騒から離れた丹沢での夜は特別な時間となります。
宮ケ瀬方面への下りはやや荒れており歩き慣れていない方は注意が必要ですが、余裕のある行程となっているので安心して下山できます。
山小屋・テント場情報
みやま山荘
丹沢山の頂上に位置する山小屋です。館内は静かで落ち着いた雰囲気があり、丹沢山のイメージをそのまま形にしたような趣が魅力です。丹沢の奥地にありながら通年営業というのが嬉しく、丹沢縦走における重要な場所として、長く登山者に親しまれています。
丹沢山のトイレ情報
登山口の大倉にはトイレがあり、大倉尾根から丹沢山までの各山小屋にはトイレが設置されています。塩水橋にはトイレがないので、道中のヤビツ峠周辺で済ませておくのが良いです。
下山先の三叉路にもトイレはありませんが、15分ほど歩いた先にある宮ヶ瀬にトイレがあります。
丹沢山の駐車場情報
大倉に戸川公園の有料駐車場があり、利用できます。利用時間が決まっているので、気になる方は周辺の24時間利用可能な有料駐車場も利用できます。
塩水橋にも駐車スペースがあります。駐車可能台数が限られているので、土日や特定シーズンは早めの到着が良いです。
丹沢山周辺の観光情報
丹沢山の登山口である大倉が位置する秦野を始めとした表丹沢周辺は、豊富な水源と自然を有し、お食事処や身近なアウトドアを楽しめるということで、入浴施設もあります。2022年に新東名高速も大倉付近に開通したことで、各地からのアクセスも向上し、ちょっとした寄り道して余裕を持って帰路につくことが出来るようになりました。下山後、登山の思い出に彩りを添える場所として立ち寄れるスポットをご紹介します。
秦野天然温泉さざんか
小田急線、東海大学前駅徒歩7分ほどの場所にある温泉施設です。秦野21号線という源泉を持ち、湯冷めしにくい塩化物温泉で、傷癒やしの湯ともいわれ、登山にはありがたい効能です。またアルカリ性度合いも高いため、美肌効果もあります。タレカツ丼や秦野の名水冷奴などがあるお食事処もあるので、温泉、食事がセットで楽しめます。
弘法の里湯
大倉アクセスの最寄り駅である小田急線渋沢駅。新宿方面に向かう途中駅の鶴巻温泉駅の近くにある温泉施設です。
効能は登山後にはありがたい筋肉痛に効き、カルシウムが多く含まれた出湯で身体が良く温まります。夜まで受付しているので、焦らず利用できるのも嬉しいですね。
はだのじばさんず
JA秦野が運営する、地元の食材を取り扱っているお店で、旬のお野菜、果物のほか、秦野名産の落花生などもあります。食材のほか、ご当地サイダーやピーナッツクリーム、焼肉のたれといった、お土産から日常使いにありがたい加工品もあり、お車やバイクで登山した際には立ち寄りたいおすすめスポットです。
神奈川の屋根の丹沢で静かな稜線歩きを
丹沢山は日本百名山の一峰として知られ、アクセスの良さとは裏腹に豊かな自然と山頂までの秀逸な眺望の稜線が特徴の山です。決して華やかではないイメージの丹沢山ですが、静寂が辺りを包む山頂は、山が本来持つ魅力を放ち、山で過ごす時間の贅沢さを実感できる唯一無二のピークです。
丹沢山を登って、神奈川の山の魅力を是非感じてみてください。