キルト型のシュラフは、マミー型に比べて、その見た目から色々なものが省かれているので快適に寝ることができるのか不安に感じる方も多いと思います。
このキルト型シュラフの特徴を知ることで、快適な就寝、汎用的な使い方による防寒対策がかないます。そしてキルト型が軽量であるという間違いにも気付いて欲しいです。
キルト型とマミー型の比較
キルト型の特徴を理解するのには、マミー型との違いを理解するのが手っ取り早いです。以下の表はマミー型との違いを表で表したものです。
※横スクロールで表がスクロールできます。タイプ | キルト型 | マミー型 |
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形 | 布団形状から包み込む形状に変化 | 人型に包み込む形状 |
背中部分 | なし(足元のみ閉じているタイプあり) | あり |
ジッパー | なし | あり |
フード | なし | あり |
次に7つのポイントでキルト型とマミー型の違いを説明していきます。
ポイント1:保温力の違い
マミー型は人型に包み込む形状によって暖かい空気を逃がさず、密閉することによって保温力が高いと思われる方が多いと思います。
しかし実際に使ってみるとキルト型にも様々なものがありますが、保温力が高くマミー型と比べても寒いと感じることが少ないことに気づくでしょう。
キルト型は背中側のダウンが省かれていますが、マミー型は背中側のダウンが体重によって潰れてしまうため、マミー型と比べて底冷えの違いに大差はありません。
次にフードのありなしについてですが、これはキルト型ダウンシュラフの作りによって大きく異なります。Sea to Summitのエンバーダウンキルトは、首を温めるためのスナップボタンが付いており、これによってマミー型のシュラフより暖かく感じます。
顔や頭周りについてはマミー型はフードがあるので保温力に優れていますが、ダウンジャケットにフードがついているものを持っていれば応用が効きます。
ポイント2:軽量性とコンパクト性の違い
キルト型は背中側が省かれており、さらにフードがついていないため軽くてコンパクト性に優れていると説明しているサイトが多いですが、これは正しくありません。
例えばSea to Summitのエンバーダウンキルトとスパーク SP1の重量を比較してみると以下の表のようにキルトタイプの方が70g重いです。ダウン重量以外の重量を見てもキルト型の方が50g重いです。
※横スクロールで表がスクロールできます。タイプ | キルト型 | マミー型 |
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商品名 | エンバーEbI | スパークSpI |
重量 | 420g | 350g |
ダウン重量 | 200g | 180g |
ダウン以外重量 | 220g | 170g |
適合身長 | 最大183cm | 最大183cm |
中綿 | 850+フィルパワー ウルトラドライプレミアムグースダウン | 850+フィルパワー ウルトラドライプレミアムグースダウン |
コンフォート温度(EN13537) | 4~10度 | 9度 |
キルト型だから、より軽量に作られているモデルというのは実はそんなにありません。以下はキルト型シュラフをリリースしているキュムラス、ウエスタンマウンテニアリングのキルト型とマミー型の比較表です。チェックすべきポイントはダウン以外の重量です。これをみることでダウン以外の純粋な素材の重量を確認することができます。
キュムラスのキルト型とマミー型の比較
※横スクロールで表がスクロールできます。タイプ | キルト型 | マミー型 |
---|---|---|
商品名 | QUILT350 | X-LITE 300 |
重量 | 600g | 465g |
ダウン重量 | 350g | 300g |
ダウン以外重量 | 250g | 165g |
適合身長 | 最大185cm | 最大185cm |
中綿 | 850+フィルパワー | 900フィルパワー |
快適温度 | 2度 | -6℃ |
ウエスタンマウンテニアリングのキルト型とマミー型の比較
※横スクロールで表がスクロールできます。タイプ | キルト型 | マミー型 |
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商品名 | モノライト | フライライト |
重量 | 390g | 405g |
ダウン重量 | 206g | 217g |
ダウン以外重量 | 184g | 188g |
適合身長 | 180cm | 180cm |
中綿 | 850+ フィルパワーグースダウン | 850+ フィルパワーグースダウン |
使用温度域 | 3度 | 2度 |
ではなぜキルト型の方が重いのかというと、キルト型の方が体積が大きく作られているからです。キルト型はテントマットを包み込む構造で、就寝中に体を動かしやすく作られているため、どうしても体積が大きくなります。
また、キルト型はジッパーが使われていない変わりにスナップボタンやベルクロテープ、ドローコードが使用されており、これによって重量が追加されています。
ポイント3:温度調整の違い
マミー型の場合はシュラフに潜って暑ければジッパーを開閉することで温度調整を行います。キルト型は、暑い場合様々な調整方法が可能です。
テントマットに固定せず掛け布団のように使用したり、足を出して寝たり、特に夏山、低山などでのテント泊、キャンプシーンにおいては快適性の高さが顕著に現れます。
ポイント4:寝心地の違い
マミー型のシュラフは足が曲げづらいとか、寝返りが打ちづらいなど煩わしさを感じる方も多いと思います。キルト型はテントマットとシュラフが固定されているので寝返りをうってもキルトがずれることもなく、フードの位置を調整する必要もなく足の動きを妨げるものもなく快適な寝心地が特徴です。
ポイント5:シュラフからの出やすさ
就寝中にトイレに行きたくなったらシュラフから出ます。もしもこの時キルト型のシュラフを掛け布団のように使用しているのならば、すんなりとシュラフから出ることができます。テントマットにキルトを固定している場合も、首元のシュラフを胸に向かって位置をずらせばシュラフから出ることができますが、横から出ることはできないため煩わしさを感じることもしばしばです。
ポイント6:就寝中に寒くなったときの対応
登山のテント泊の場合、最も寒くなるのが夜中の2時です。就寝開始時は暑くて掛け布団のように寝ていても、夜中の2時に寒くなったからマットに固定して寝たい。そんな風に考えた時にマットに固定するのが面倒です。慣れれば1分もかかりませんが、それでもマミー型のジッパーを閉めるだけ、というわけにはいきません。
ポイント7:汎用性の違い
マミー型は寝るときだけに使う装備だと思います。しかしキルト型は食事をする時、休憩中に暖を取りたい時にも積極的に使えるギアです。
わかりやすく言うと毛布です。あぐらをかいた状態でキルト型シュラフを下半身にかけたり、マントのようにしてキルトを肩からかけたりすることができます。
まとめ
キルト型とマミー型シュラフの比較をしてきました。キルト型は特に夏山登山で快適性が向上するように感じています。就寝時に保温力を重視するような季節になるとマミー型を選びがちですが、キルト型も大変汎用性に優れているので、使い方によっては快適なテント泊を楽しむことができるでしょう。