燧ヶ岳は至仏山と並んで頂上からの尾瀬ヶ原の景色が雄大な山として知られています。そして燧ヶ岳は東北最高峰の山で5つのピークから成り立ちます。今回は燧ヶ岳の4つのコースと燧ヶ岳の魅力や特徴を紹介します。
燧ヶ岳の4つのコースの共通点を知ろう
燧ヶ岳はいずれのコースも急斜面、ぬかるみが多く、ガレバなど難易度が高いコースです。上り標準4時間以上を考えておきましょう。また下りも標準3時間前後と考えて最低7時間を見積もって登山計画を立てるようにしましょう。また4つのコースのうち3つのコースは基本1泊以上必要です。日帰り登山をする場合は必然的に尾瀬外からの登山口である御池から熊沢代田となります。
- 燧ヶ岳北面:日帰り登山可能(御池から熊沢代田)
- 燧ヶ岳西面:1泊以上必要(見晴新道)
- 燧ヶ岳南面:1泊以上必要(ナデッ窪)
- 燧ヶ岳東面:1泊以上必要(長英新道)
山の名前 | 燧ヶ岳 |
都道府県 | 福島県 |
標高 | 2,356m |
天気・アクセスなど | 燧ヶ岳の詳細情報 |
燧ヶ岳の魅力と特徴
燧ヶ岳の雄大な景色と歴史を楽しめる
燧ヶ岳は柴安嵓、俎板嵓、ミノブチ岳、赤ナグレ岳、御池岳の5山から成りたちます。最高峰は柴安嵓(しばやすぐら)(2356m)、爼嵓(まないたぐら)(2346m)には三角点が置かれています。約8000年前山体崩壊でできたとされる堰止湖が尾瀬沼で、これらの歴史を知って登山をすると雄大な景色もまた違ったものに見えることでしょう。
素晴らしい眺望を楽しめる東北一の山
東北方面には燧ヶ岳以上に高い山がないため広く景色を見渡すことができます。谷川連峰から越後三山、眼下には尾瀬ヶ原と尾瀬沼を俯瞰することができます。また天気が良い時には富士山を確認することもできます。
四季折々で楽しめる燧ヶ岳のベストシーズン
尾瀬ハイキングシーズンの幕開けは5月中旬から下旬でやまやまの残雪とのコントラストが美しい季節です。
5月下旬になると雪の表面が赤い土を撒いたようになる『アカシボ』と呼ばれる現象が見られるようになります。
5月下旬から6月中旬は残雪がなくなる頃で尾瀬ヶ原のベストシーズンとして知られています。特にミズバショウが尾瀬ヶ原に咲き乱れる景色は素晴らしいです。
7月中旬から8月上旬にかけてはワタスゲ、ニッコウキスゲが美しい季節となります。
8月下旬から9月中旬は草紅葉が始まり、金色に輝く尾瀬ヶ原の雄大な景色を燧ヶ岳頂上から楽しむことができるでしょう。
ベストシーズンと呼ばれるものは高山植物を楽しみたい場合は7月中旬から8月上旬にかけて、紅葉を楽しみたい場合は8月下旬から9月中旬がおすすめです。
1.御池から燧ヶ岳-日帰り登山が可能な登山ルート
場所 | 福島県・尾瀬周辺 |
必要日数 | 日帰り登山 |
往復コースタイム※ | 5時間20分 |
距離 | 約8.5km |
累積標高 | 約946m |
難易度 | ★★★☆☆ |
このコースは燧ヶ岳の北面を上ることができる唯一のコースです。そして日帰り登山をするのならばこのコースを選択することとなります。
最初はブナ林の中を登山をし、傾斜も緩やかです。広沢田代の湿原手前は岩が露出した急坂となり、木の根や大きな石を乗り越えながら歩いて行きます。
広沢田代に到着すると池塘が点在する優雅な景色と湿原の中央に木道が伸びる雄大な景色に疲れが吹き飛ぶことでしょう。7月下旬はこの辺りにキンコウカの花が咲き乱れ美しい黄色に染めてくれます。
広沢田代から熊沢田代へは約45分、熊沢田代は広沢田代とほぼ同規模ですが、池塘が少ない代わりに燧ヶ岳や日光連山などの景色に恵まれています。
熊沢田代から残り1時間30分の登山で燧ヶ岳に到着します。浮石の多い急斜面で燧ヶ岳の厳しい登山を最も感じることができます。
見晴新道から燧ヶ岳-尾瀬ヶ原を背に登る登山ルート
必要日数 | 1泊2日登山 |
上りコースタイム※ | 4時間5分 |
距離 | 約4.2km |
累積標高 | 約992m |
難易度 | ★★★☆☆ |
見晴らしキャンプ場まで行くのには登山口から歩いても半日以上はかかります。プランとしては登山口となる見晴に1泊をして2日目に燧ヶ岳の登山が良いでしょう。
登山口から15分ほど登山をすると分岐に到着します。左手に曲がり、ヌカルンダ道を下っていき見晴らし新道新ルートに取りつきます。この辺りは落石が多いポイントなので注意しましょう。
頂上に向かうにしたがって徐々に勾配がキツくなり、ハードな登山を強いられます。苔むした樹林帯の登山道は滑りやすく、またガレ場も多い登山道となります。特に頂上付近は勾配がキツく最後は踏ん張り頂上に立ちましょう。
ナデッ窪道から燧ヶ岳-急峻な登山道が堪える上級ルート
必要日数 | 1泊2日登山 |
上りコースタイム※ | 4時間 |
距離 | 約5.1km |
累積標高 | 約708m |
難易度 | ★★★★☆ |
尾瀬沼畔の沼尻平と燧ヶ岳頂上を結ぶナデッ窪は紹介する4つのコースの中で最も急峻な登山道です。ナデは雪崩の事を指し、雪の季節にはその昔雪崩がよく起きていたようです。
この登山道も上で紹介したコースと同様、頂上に近づくに連れて急斜面になります。また燧ヶ岳は頂上付近で岩が露出した歩きにくい登山道となることも覚えておきましょう。
長英新道から燧ヶ岳-最もよく知られている登山ルート
必要日数 | 1泊2日登山 |
上りコースタイム※ | 3時間15分 |
距離 | 約5.2km |
累積標高 | 約710m |
難易度 | ★★★☆☆ |
ナデッ窪の右側に柔らかく曲がりながら頂上に向かう登山道が長英新道です。長蔵小屋の二代目主人、平野長英翁によって開かれた道で、この人物は尾瀬を語るうえで重要な人物です。長英小屋で様々な歴史を聞くことができるので、登山前に是非立ち寄ってみましょう。
この登山道は火打ヶ岳の頂上に向かう登山道の中で最もよく利用されています。登山ルートをち地図上でなぞってもわかる通り、ナデッ窪と比較しても距離が長く、それだけ登山道の傾斜も緩やかであることが解ります。
しかしながら頂上付近は砂礫の急斜面があったりと中々厳しい登山道です。
尾瀬の歴史とを知ることができる書籍・長英小屋おすすめ
尾瀬 —山小屋三代の記
尾瀬を拓いた平野長蔵が沼畔に山小屋を建てて九十余年。以来、長蔵小屋の親子三代は、つつましく自然と「共生」する道を模索してきたが、ときには電力会社による取水に、ときには自動車道路の建設に、身を挺して戦うことを余儀なくされもした。 — 三代の肖像を、いくたびも破壊の危機に瀕してきた端正な自然を背景に描く。(ブックレビューより)
尾瀬に死す
1971年12月、尾瀬の長蔵小屋から下山途中遭難、平野長靖の短かすぎる生涯は自然保護運動の先駆者的足跡とともに語り継がれている。初代の環境庁長官に就任したばかりの大石武一長官への訴えは、長官の「蛮勇」を引き出し、三平峠に迫っていたブルドーザーを止め行政の決定を覆すという、事態の劇的転換を成し遂げた。彼の最後の言葉に、「まもる/峠の緑の道を/鳥たちのすみかを/みんなの尾瀬を/人間にとって/ほんとうに大切なものを」とある。(ブックレビューより)
尾瀬を守る人びと
美しい自然が太古のままに残されて、世界の自然環境の宝庫と言われる「尾瀬」。その尾瀬に住み、尾瀬を拓き、尾瀬を環境破壊や無用な開発からまもった長蔵小屋の三代の男。平野長蔵・長英・長靖の父子孫三人のそれぞれの生き方は、環境問題のバイブルと言われる「尾瀬」を考えるとき、尾瀬の将来だけでなく、自然に人間がどう接するべきなのかを教えてくれます。 平野長靖と沼田高校同級生だった著者が、悲劇的な遭難死をとげた級友に、痛切な哀悼をこめて贈る書。
(ブックレビューより)