剱岳といえば、一般登山ルート最難関と言われる別山尾根や長大な早月尾根での「登山」がまず連想されるが、登らなくとも単純に眺めるだけでカッコいい山でもある。剱沢から見上げる剱岳や唐松岳などの後立山連峰から望む剱岳がその代表だろう。

今回は、剱は剱でも「裏剱」を目指し、山の日連休でも比較的登山者の少ないルートを2泊3日のテント泊で歩いてきた。

初日:黒部ダム〜池ノ平小屋 C T:10時間

池ノ平へはいくつかのルートがあるが、今回は最も早く歩き始めることができる黒部ダムから内蔵助平を通るルートを選択した。最初の関門である扇沢の駐車場は、2時半着でどうにか突破、仮眠して始発の電気バスに乗車した。黒部ダム駅では、「下ノ廊下」方面の出口から外に出て、まずは黒部川へ向けて林道を下っていくと橋があり、黒部ダムを見ることができる。

*黒部ダムを下から見ることができる

*黒部ダムを下から見ることができる

橋を渡ってからが本格的な登山道であり、最初は平坦な道であるが、下ノ廊下方面との分岐(内蔵助出合)を過ぎると登りとなる。随所に現れる急登や谷側への滑落に注意しながら内蔵助平へと登っていく。内蔵助平で一息ついたら、ハシゴ谷乗越まで再びの登りとなる。標高を上げていくと次第に景色が開け、振り返ると内蔵助平やその背後の針ノ木岳が見えてくる。ハシゴ谷乗越では展望台にも立ち寄っておこう。ちなみに、ここから目的地である池ノ平小屋が見えるが、果てしなく遠くに見えるので探さないほうがいいかもしれない。

*ハシゴ谷乗越展望台からの内蔵助平。歩いていると分からないが、確かに平らだ。

*ハシゴ谷乗越展望台からの内蔵助平。歩いていると分からないが、確かに平らだ。

*右のピークが仙人峠で、写真では見えないがその肩に小屋がある。遠い。

*右のピークが仙人峠で、写真では見えないがその肩に小屋がある。遠い。

ここからは下りとなり、少し進んだところでようやく剱岳が目の前に現れる。ハシゴが連続するほか、ザレで滑りやすくなっているため、転倒には十分注意しよう。やがて剱沢の右岸に出るので、ピンクテープに従って下流方面に少し進むとハシゴ谷橋(※)があり、ここで左岸に渡る。その後も沢沿いを下っていくが、途中写真のように岩壁をへつる箇所がある。鎖と足場が整備されているが、上流から見て最初の鎖が少し長いのでバランスが取りにくいかもしれない。落ち着いて通過しよう。

*鎖と足場の丸太を使って通過する(復路で撮影)

*鎖と足場の丸太を使って通過する(復路で撮影)

その先の二股の吊橋(※)からは、三ノ窓雪渓を見上げることができる。ここから最後の登りである仙人新道となるが、標高差が400m以上あるのでここで休憩して備えよう。

※2つの橋はシーズンのみの架橋であり、ハシゴ谷橋は大雨等で流出することもあるので出発前に必ず現地情報の確認を!

*二股吊橋から見上げる三ノ窓雪渓

*二股吊橋から見上げる三ノ窓雪渓

仙人新道は、急登も多いうえ、序盤は風が通りにくく気温が高いとかなり暑さを感じる。また、ロープのあるトラバース通過にも注意が必要だ。途中現れる鹿島槍ヶ岳や五竜岳、近づいてくる三ノ窓雪渓を眺めながら登っていこう。仙人峠に近づくと白馬岳方面まで展望が広がってくる。仙人峠が池ノ平小屋と仙人池ヒュッテとの分岐となり、仙人池ヒュッテ方面からは阿曽原温泉を経て欅平へ降りることもできる。

*五竜岳(左)と鹿島槍ヶ岳 

*五竜岳(左)と鹿島槍ヶ岳 

今回はテント泊のため、池ノ平小屋方面へと向かう。お花畑を過ぎるとベンチがあり、正面にチンネ、振り返ると後立山という眺望スポットとなっている。池ノ平小屋では、宿泊者の数やタイミングにもよるが、テント泊利用者でも入浴できることがあるので、チンネを眺めながら存分に本日の疲れを癒そう。

*池ノ平小屋の五右衛門風呂(煙突の下のあたり)

*池ノ平小屋の五右衛門風呂(煙突の下のあたり)

*内風呂(チンネの湯)からの裏剱。なお、窓の開け方には初級〜上級がある。 

*内風呂(チンネの湯)からの裏剱。なお、窓の開け方には初級〜上級がある。 

テント場の特等席はヘリの着陸ポイントとのこと。剱岳が映る平ノ池はテント場から少し下ったところにある。また、往復1時間程度の行程にはなるが、逆さ剱で知られる仙人池まで足を運んでみるのも良いだろう。

*テント場からの平ノ池と裏剱。一番奥は針ノ木岳

*テント場からの平ノ池と裏剱。一番奥は針ノ木岳

*仙人池に映る裏剱の夕焼け

*仙人池に映る裏剱の夕焼け

2日目:池ノ平小屋〜剱沢キャンプ場 C T:6時間45分

仙人池で日の出を迎えるために、4時半過ぎに出発。少し雲が多く、真っ赤な朝焼けにはならなかったが、それでも美しい裏剱を見ることができた。その後、展望ベンチに戻って朝食をとり、6時半に再出発した。行動時間はそれほど長くはないが、雪渓の状態に大きく左右されることもあるため、余裕を持って出発することをお勧めする。

*赤く染まる裏剱

*赤く染まる裏剱

*白馬岳方面(前日夕方撮影)

*白馬岳方面(前日夕方撮影)

ハシゴ谷橋分岐までは前日の行程を戻り、そこから真砂沢ロッジは10分ほどであるが、三の沢雪渓の状態によってルートが変わることもあるため、案内表示を見落とさないように。真砂沢ロッジを過ぎると、いよいよ剱沢雪渓の登りとなる。斜面が急なところもあるので、少なくとも軽アイゼンやチェーンスパイクはあったほうがいい。途中、長次郎谷や平蔵谷を見上げながら登っていくが、雪渓上を吹く風は冷たいので、特に休憩時などは服装に注意が必要だ。今回は、ナムの滝を越えたところから剣山荘からのルートの出合まで雪渓上を通ることができたが、今後夏道経由となると、コースタイムより時間がかかることになる。

*剱沢雪渓を登っていく

*剱沢雪渓を登っていく

*大岩が目印の平蔵谷出合。熟練者以外立入禁止

*大岩が目印の平蔵谷出合。熟練者以外立入禁止

雪渓から夏道に入り、最後ひと上りすると剣沢小屋に到着する。テント場はここからさらに上にあり、そちらには売店がないので、ここで購入しておこう。小屋前からは、大迫力の剱岳を望むことができる。昨日の裏剱とは違い、こちらは定番の、言わば「表」剱ということになろうが、一度で表・裏両方の剱岳を楽しめるのが今回の行程のポイントだろう。

*まさに「岩の殿堂」と呼ぶにふさわしい剱岳

*まさに「岩の殿堂」と呼ぶにふさわしい剱岳

*別山尾根ルートは、どこを登るのか分からないくらい険しく見える

*別山尾根ルートは、どこを登るのか分からないくらい険しく見える

3日目:剱沢キャンプ場〜別山〜室堂 C T:約5時間

最終日の行程は天候や体調、時間によって自由に考えることができる。今回は、別山から剱岳を眺めた後、立山三山経由で室堂へ下山するルートを考えていたが、真砂岳辺りでガスが広がり始めたため、雷鳥沢経由のルートに変更した。できるだけ運賃を節約するなら、一ノ越から黒部ダムまで歩けばいいし、車でなければ室堂から富山側に下りてもよい。もちろん剱岳に登ることもできるが、その場合は暗いうちから登り出すか、一泊することになる。

*別山直登ルートから剱岳を振り返る。後方は白馬岳方面

*別山直登ルートから剱岳を振り返る。後方は白馬岳方面

*別山からの剱岳

*別山からの剱岳

*立山三山。別山から三山経由で室堂までは約3時間半のコースタイムだ

*立山三山。別山から三山経由で室堂までは約3時間半のコースタイムだ

今回は比較的天気にも恵まれたため、予定通りの行程で剱岳の周りを歩くことができた。ただ、執筆時点ではハシゴ谷橋が流出したほか、雪渓が場所によって通行不可となっていたり、かなり薄くなってきているという情報が発表されている。そのため、同じプランで同じように歩くというのは難しく、出発直前や途中で変更の判断が必要となることも予想される。黒四ダム以降剱沢キャンプ場まで携帯の電波が入らない場所でもあるので、安全第一にチャレンジしていただければと思う。

現地情報

▼池ノ平小屋
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▼富山県警察山岳警備隊

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