独特な地質や植生から、山域が国の特別天然記念物に指定されている『早池峰山』。とくに希少な高山植物が見られることで、お花の時期は登山者でにぎわっています。ここでは、早池峰山の魅力や登山コースについてご紹介します。
早池峰山ってどんな山?
岩手県東部に位置する、北上高地の最高峰『早池峰山』。花の百名山として知られ、岩れき帯に数多くの高山植物が咲き誇ります。また、早池峰山の固有種であるハヤチネウスユキソウは、国の特別天然記念物にも指定されており、早池峰山を代表する高山植物です。
山名 | 早池峰山(はやちねさん) |
場所 | 岩手県宮古市、遠野市、花巻市の境 |
標高 | 1,917m |
天気・アクセス | 早池峰山の詳細情報 |
北上高地の最高峰【早池峰山】の魅力
日本百名山・花の百名山の一つとして知られる早池峰山。以下では早池峰山の魅力についてシンプルにご紹介します。
森林限界が低い岩峰
早池峰山は、約5億年前の早池峰複合岩類といわれる蛇紋岩やかんらん岩から構成されています。これらの岩は超塩基性のため、植物が育ちにくい環境です。そのため、森林限界が標高1,300m付近と低くなり、巨岩がいたるところに露出しています。
特異な地質により珍しい植生が見られるため、早池峰山の山域は国の特別天然記念物に指定されています。
日本のエーデルワイスと呼ばれる【ハヤチネウスユキソウ】
ハヤチネウスユキソウは、全体がうっすらと雪をかぶったかのように白い綿毛で被われており、アルプスに咲くエーデルワイスに似ていることでも有名です。他にも、ナンブトラノオやナンブトウウチソウなど、特有の高山植物が見られます。ハヤチネウスユキソウの見頃は6月下旬~7月下旬頃です。
岩峰の頂から見る全方位の山岳風景
早池峰山の山頂には、大岩が荒々しく積み重なっており、山頂自体が神殿であるかのような雰囲気をかもし出しています。山頂の展望は全方位で、岩手山や五葉山、焼石岳などの岩手県内の名峰が一望できます。また、天候がよければ鳥海山や太平洋などの遠方を眺められます。
早池峰山の難易度別登山コース
早池峰山の登山コースは、南側から登る『小田越コース』が人気です。そのほかに、西側の鶏頭山へ縦走するコースや、北側から登る門馬コースがあります。以下に、それぞれのコースの詳細についてご紹介します。
※河原坊コースは、大雨による登山道崩壊のため、2022年9月現在コースが閉鎖されています
短時間で登れる人気ルート【小田越コース】
小田越コースは比較的標高差が少なく、短時間で登れるため人気のコースです。小田越コースの1合目あたりから森林限界になり、視界を遮る高い木がなくなります。目の前には早池峰山の岩稜帯、振り返ると薬師岳の山容が見られます。また、中腹から見られるハヤチネウスユキソウなどのお花畑も見物です。
早池峰剣ヶ峰分岐の手前にはしご場があります。巨岩につけられた鉄はしごは、3~5m程度のものが2段。1段目ははしごを登らず脇道を通ることができます。雨天や強風時は、滑落しないよう注意しながら登りましょう。
※総所要時間は休憩時間の1時間18分を含む
健脚者向け縦走ルート【乳頭山縦走コース】
小田越登山口から早池峰山に登り、西側の中岳と鶏頭山へ縦走するコースです。早池峰山から中岳へは、眺望のよい稜線歩きが楽しめます。登山道は岩場の道が続くため、岩稜歩きが好きな方におすすめのコースです。歩行距離が長く、累積標高差が大きいので、健脚者向けのコースになります。
※総所要時間は休憩時間の2時間5分を含む
登りがいのある静かな山歩き【門馬コース】
門馬コースは、早池峰山北側から登るマイナーなコースです。登山者が少なく、樹林帯が長く続く道のため、静かな山歩きが楽しめます。早池峰山北側は、アカエゾマツ自生南限地として国の天然記念物に指定されており、本州では早池峰山でしか見られない希少な植生が見られます。
※総所要時間は休憩時間55分を含む
早池峰山登山口のアクセス方法
早池峰山の各登山コースにおける登山口へのアクセス方法について解説します。
各登山口のマップはこちらから
小田越登山口へのアクセス方法
・マイカー
東北自動車道花巻I.C.~河原坊駐車場 車で約50分(約42km)
河原坊駐車場~小田越登山口 徒歩約40分
小田越登山口周辺は駐車場がないため、河原坊登山口近くの駐車場を利用するのがよいでしょう。
・電車/バス
東京駅~新花巻駅 東北新幹線で約2時間40分
新花巻駅~小田越登山口 早池峰環境保全バスで約1時間20分(片道1,800円)
※早池峰環境保全バスは完全予約制で、期間限定の運行です
▼早池峰環境保全バスの詳細はこちらから
早池峰国定公園 トップページ|花巻市 (city.hanamaki.iwate.jp)
握沢登山口(門馬コース)へのアクセス方法
・マイカー
東北自動車道 盛岡南I.C.より車で約1時間(約41km)
・電車/バス
東京駅~盛岡駅 東北新幹線で約2時間20分
盛岡駅~門馬バス停 岩手県県北バス(宮古駅前行き)で約1時間(片道1,050円)
門馬バス停~握沢登山口まで徒歩で約1時間
▼岩手県県北バスの詳細はこちらから
盛岡駅前[東口] - 門馬 発着停留所検索 | 岩手県北バス(公式サイト)
早池峰山のおすすめ登山時期は【6~8月】
早池峰山は花の名山のため、夏季の6~8月に登るのがおすすめです。早池峰山の固有種のハヤチネウスユキソウやナンブトラノオ、ナンブトウウチソウなど珍しい高山植物が咲き誇ります。そのほかにもたくさんの高山植物が見られるため、植物図鑑を片手に、調べながら歩くと楽しいでしょう。
▼早池峰山の花カレンダーはこちらから
早池峰花カレンダー|花巻市 (city.hanamaki.iwate.jp)
早池峰山登山時の注意点
早池峰山に登山するにあたって、いくつか注意しなければならない点があります。注意点は以下の通りです。
登山道から外れない
早池峰山の山域は国の特別天然記念物になっているため、自然の生態系を壊さないよう注意しなければいけません。具体的には、登山道を外れないようにしましょう。貴重な高山植物を近くで写真に収めたくなりますが、登山道を越えて写真を撮るのはマナー違反になります。
携帯トイレを持参しましょう
早池峰山のトイレは携帯トイレ専用のブースになっています。こちらも、自然環境保護のための配慮です。そのため、携帯トイレを持参していくことをおすすめします。もし忘れてしまった場合は、早池峰山頂避難小屋や小田越監視員詰所の無人販売箱で購入することができます。
トイレブースは以下の場所にあります。
・小田越登山口
・小田越1合目
・早池峰山山頂
※河原坊駐車場にトイレ有
夏山シーズンは交通規制あり
夏山シーズンは混雑するため、6~8月の土日祝日は車両交通規制があります。規制区間は河原坊・小田越登山口を含む、主要地方道紫波江繋線です。規制期間中はシャトルバスが運行されているので、シャトルバスに乗って登山口に向かうことになります。
▼車両交通規制の詳細はこちらから
早池峰国定公園 トップページ|花巻市 (city.hanamaki.iwate.jp)
クマ対策をしましょう
早池峰山では、2022年6月11日、小田越登山道5合目付近で登山者がクマに襲われたとの情報があります。そのため、クマ鈴やクマ撃退スプレーを携帯しておくとよいでしょう。
▼クマの被害情報はこちらから
早池峰山で男性がクマに襲われ負傷 小田越登山道5合目付近で | 岩手日報 IWATE NIPPO (iwate-np.co.jp)
早池峰山下山後の山旅スポット
早池峰山下山後に寄りたい山旅スポットとして、『早池峰ダム』と『峰南荘』についてご紹介します。
四季折々の景色を楽しめる【早池峰ダム】
早池峰ダムは花巻市大迫町内川目にある多目的ダムです。ダム湖周辺に、道の駅はやちねと6つの公園があり、四季折々の景色を楽しめます。道の駅には山バッジが販売されているので、登頂の思い出に山バッジを買うのもよいでしょう。
▼早池峰ダムの詳細はこちらから
早池峰ダム | 遊ぶ【花巻観光協会公式サイト】 (kanko-hanamaki.ne.jp)
お山カフェ【峰南荘・アスチルベ】
早池峰山のふもとにある『峰南荘』。峰南荘にはカフェが併設されており、川のせせらぎや鳥の声を聞きながら軽食をとることができます。下山後に自然を感じながらゆっくり過ごすのもよいでしょう。また、前泊として利用し、早朝に早池峰山に登るのもおすすめです。
名称 | 峰南荘(ほうなんそう)・アスチルベ |
住所 | 岩手県花巻市大迫町内川目1-72 |
カフェの営業時間 | 11時~16時 |
カフェの定休日 | 水・木曜日 |
▼峰南荘・アスチルベの詳細はこちらから
早池峰ロッヂ 峰南荘 (eyado.net)
早池峰山の魅力、そして3つの登山コースをご紹介しました。山域自体が国の特別天然記念物にしているため、見どころが数多くあります。とくに人気なのが小田越コースで、登りがいのある岩稜歩きや希少な高山植物が見られるのが魅力です。山の植生を荒らさないよう気をつけながら登山を楽しみましょう。