1,000m前後の山々を有する関東を代表する山岳エリア、丹沢。アクセスが良好で眺望に優れた山が多い表丹沢に対し、西方に位置し丹沢深部で無垢な自然を歩ける西丹沢は、山が持つ大きな魅力に気付ける山々が連なっています。今回は西丹沢デビューにおすすめの山、畦ヶ丸をご紹介します。
畦ヶ丸登山が人気の理由
人気①:涼しい沢のひと時と迫力の大滝
畦ヶ丸山頂に至るには、西沢という沢を通るルートが一般的です。スタートして間もなく沢沿いの道となり、渡渉を繰り返しながら標高を上げていくのですが、この区間が畦ヶ丸が沢山の方に登られている人気の理由であり、山の自然をダイレクトに感じられるところが魅力となっています。
ありのままの自然を残す沢沿いの道を進めば、下棚と本棚という2つの大滝が佇んでおり、2つの滝はルートからそれぞれ5分ほど離れた場所にあるのですが、ぜひ立ち寄って欲しいおすすめスポットです。幾年経っても在り続ける大きな存在にいつまでも惹き込まれてしまいます。
人気②:頂上でゆったり休憩−畦ヶ丸避難小屋
丹沢には、頂上や登山道上に避難小屋が幾つか設置されています。建てられた方々、そして丁寧に使い続ける登山者によって、小屋内は綺麗に整えられ、つい長居してしまう小屋ばかりです。畦ヶ丸の頂上そばに位置する畦ヶ丸避難小屋は、令和2年10月16日にリニューアルされ、畦ヶ丸の静かな雰囲気にマッチする外観、温もりを感じる小屋内が魅力です。万が一の悪天候を回避でき、かつ平時でも安心して気持ちよく利用できる畦ヶ丸避難小屋は、畦ヶ丸登山のオアシスの様な存在として人気があります。
人気③:山との一体感を感じる静かな山頂
頂上から見る360度の大パノラマは登山における大きな魅力ですが、畦ヶ丸はそれとは逆をいく山頂として知られています。眺望はほとんどなく、標識が静かに佇む山頂は、お世辞にも万人受けするものではありません。が、そこが良いのです。
耳をすませば聞こえる風の音、静かに揺れる木々、身近に感じる動植物の存在など、畦ヶ丸は自分が自然の一部となった様な感覚を味わえます。山にいられる喜びを感じられる畦ヶ丸は、西丹沢を象徴する山と言っても過言ではありません。
畦ヶ丸登山のQ&A
難易度は?
畦ヶ丸は登山を何度か経験し、基本的な登山装備を揃えている方から登れる山です。序盤の西沢において沢の渡渉が連続し、ところどころ道が不明瞭になる場所があり、沢区間終了後も登山道が続くため、西丹沢の山の中では短い行程ですが、山を登る基本的な体力が必要になります。
アクセスと駐車場は?
公共交通機関では、登山口である西丹沢ビジターセンターまで、小田急新松田駅からバスが出ています。マイカーの場合は西丹沢ビジターセンターに無料駐車場があり、満車の場合は付近のキャンプ場に有料で停めることもできます。
トイレと水場は?
水場は加入道山方面へ向かう際にひとつ(要煮沸)あり、西丹沢ビジターセンター付近に自販機があります。可能であれば新松田駅そばのコンビニで事前に入手しておくのが良いです。トイレは西丹沢ビジターセンターと畦ヶ丸避難小屋で利用できます。
雪は?
11月頃より降雪があり、4月頃まで雪が残ります。ピッケルやスノーシューなどの本格的な冬山装備は必要ありませんが、序盤の沢沿いは積雪時は凍結で滑りやすくなるので、軽アイゼンを持っておくと安心です。
畦ヶ丸登山のおすすめルート紹介
紹介した山 | 畦ヶ丸 |
都道府県 | 神奈川県 |
標高 | 1,292m |
天気・アクセスなど | 畦ヶ丸の詳細情報 |
西沢を経由して畦ヶ丸山頂へ−丹沢の自然をダイレクトに感じるおすすめルート
スタート地点 | 西丹沢ビジターセンター |
ゴール地点 | 畦ヶ丸 |
地点間の距離 | 4.2km |
片道コースタイム | 3時間10分 |
難易度 | ★★☆☆☆ |
西丹沢ビジターセンターをスタートし、西沢沿いを歩きながら標高を上げ、沢沿いを終えて登山道を登り、山頂に至るルートです。畦ヶ丸を登る際のスタンダードなルートで、清流から静かな登山道、避難小屋でのひと時など、癒やしが沢山詰まったイチオシのプランです。
西丹沢ビジターセンターをスタートし、畦ヶ丸方面へ向かう橋を渡ります。橋を渡ると、登山がスタートしたと思い、気持ちが高揚します。
堰堤を越えていきます。
堰堤を越えると広い河原に出ます。平時は渡れる場所を見つけたり、橋を渡って向こう岸に行くことができます。雨で増水時は渡れなくなる時があるので、事前に天気を調べておきます。
しばらくは沢沿いを気持ち良く歩いていきます。夏は暑ければ沢の水で身体を冷やせるので、涼しい山歩きができます。
沢を終えると登山道に入ります。急登や階段を登り、山頂を目指します。
樹林帯は山頂まで続きます。人や人工的な音は聞こえず、静寂の中で山が楽しめる最高の区間です。晩秋から冬場は葉が散って少し景色が見えてきます。
山頂は静かな空間です。ここで休憩するのも良し、避難小屋は近くにあるので、立ち寄って休んでいくのも良いです。
小屋の中は綺麗に整っています。無料で使わせてもらえるなんて、とても贅沢でありがたいです。
1日充実の周回コース−加入道山・畦ヶ丸縦走ルート
スタート地点 | 西丹沢ビジターセンター |
ゴール地点 | 西丹沢ビジターセンター |
地点間の距離 | 14.5km |
コースタイム | 8時間 |
難易度 | ★★☆☆☆ |
西丹沢ビジターセンターから用木沢出合方面に向かい、加入道山を目指します。木々の合間に見える白石ノ大滝、畦ヶ丸同様の味わいのある加入道山山頂など、西丹沢の魅力を存分に味わえます。
加入道山登頂後、畦ヶ丸に向かい、西沢を経由して下山する周回ルートです。行程が8時間と長いですが、1日がかりの充実したプランです。
西丹沢ビジターセンターから用木沢出合方面へ向かい、用木沢出合を越えるとゲートがあります。ゲートは横から過ぎ、先へ進みます。
しばらくは荒れた舗装路を歩きます。
加入道山へ向かう登山道は荒れているところもありますが、焦らず着実に登ります。
木々の合間に見る白石ノ大滝。間近に見るには技術が必要ですが、ここから見てもその迫力が伝わってきます。
大滝以降も上りが続きます。
白石峠を越えると荒れた様相は減り、登りやすくなります。
加入道山山頂は畦ヶ丸同様、静寂の中にあります。
加入道山避難小屋。ここで少し休んでいくのが良いです。
来た道を一旦戻り、白石峠からは畦ヶ丸方面へ向かいます。畦ヶ丸登頂後は、西沢経由で西丹沢ビジターセンターに戻ります。
おすすめ温泉情報
山北町立 中川温泉ぶなの湯
登山口である西丹沢ビジターセンターに向かうルート上にある温泉で、マイカーでも路線バスでも立ち寄れるので、西丹沢方面を登る登山者に親しまれています。目の前には沢が流れ、畦ヶ丸登山を振り返りながら、丹沢の清流と共に入る温泉は格別です。公共施設ならではの良心的な価格設定も嬉しいポイントです。
畦ヶ丸登山で西丹沢の山深さに触れてみよう
畦ヶ丸は西丹沢を代表する山の1つで、清らかな沢、丹沢名物の大滝、静かに佇む山頂など、多くの魅力を内包しています。山頂そばには避難小屋があり、山と一体化したような時間を過ごせることで人気があり、登山を何度か経験した人にこそおすすめしたい、登山の新たな魅力を発見できるのが畦ヶ丸です。
畦ヶ丸に登って、西丹沢の山深さをぜひ体感してみてください。