関東の山岳エリアであり、神奈川県の屋根とも呼ばれる山岳地域、丹沢。初心者から中級者まで毎年多くの登山者が訪れるエリアの中で、日帰りルートながら急峻で技術を要する、経験者に人気の山があります。大山三峰山は丹沢の東方に位置する、玄人好みの山頂で、刺激的な登山がしたい方におすすめです。今回は大山三峰山のルートをご紹介します。
大山三峰山登山が人気の理由
人気①:登山者を待ち受ける急峻な登山ルート
大山三峰山は地図にも示されている一般ルートの中でも、急峻で緊張感がある場所が随所にあります。鎖場、ナイフリッジ、足元が緩い斜面など、気を許す暇はほとんどなく、山頂を含むルート上は木々に囲まれているので、いつ着くのかも不安になるなど、何で好き好んでこの山を登ってるんだろうと後悔してしまいます。
しかし、山頂に着いてみると不思議な達成感を感じてしまい、あの辛かった道のりが清らかな川の流れのように美しくなってしまい、下山した頃には、次は反対側から登ろうかな、と算段を立ててしまいます。
普段の山にはない緊張感が、大山三峰山の大きな魅力です。
人気②:眺望がないのも良い−木々に囲まれた静かに聳える山
大山三峰山は、360度の大パノラマや、山域の峰々が一望できるような場所はなく、時折見えるわずかな眺望程度で、周辺は木々に囲まれています。お世辞にも万人受けする山ではなく、初めての山登りではまず選ばれません。
ただ、それがこの山の大きな魅力でもあります。
誰にも知られずに静かに歩いていると、どんどん自分だけの世界に没頭していき、気がつけば他のことは一切忘れ、山頂を目指すという思考に包まれます。この研ぎ澄まされた感覚と、人知れず険しい山頂を制するという充実感は、有名な山頂では感じられない感覚を味わえます。
人気③:一般ルートからバリエーションまで豊富なルート
大山三峰山は、広沢寺温泉方面か、煤ヶ谷方面から山頂を目指すのが一般的ですが、この他にもバリエーションルートや、マイカーアクセスであればより短時間で登れる計画を立てることも可能など、豊富なルートにより多彩な山行計画を立てることができます。
大山三峰山登山のQ&A
難易度は?
一般的な登山道と比較して足場が悪く、鎖場も連続します。またルートによっては道迷いの可能性もあるため、大山三峰山は登山経験者向きの山です。
装備は基本的な装備は漏れなく必要で、特に地図とコンパスは必携です。コンパスと地図の使い方は、講習や書籍等で覚えておくのが良いです。
アクセスと駐車場は?
メインの登山口となる煤ヶ谷方面、広沢寺方面へは本厚木駅よりバスが出ています。マイカーの場合、煤ヶ谷側は清川村役場、道の駅清川の駐車場が利用可能で、広沢寺側にも駐車場があります。
また大山三峰山の登山口の1つである谷太郎川終点にも駐車場があります。短時間で登頂したい場合はこちらが便利です。
水場とトイレは?
広沢寺前の駐車場に水場とトイレがあり、煤ヶ谷方面は、道の駅清川にトイレと自販機があります。
トイレは以降の登山道上にも幾つかありますが、登山前に利用しておくのが良いです。マイカーであれば途中にコンビニが点在しているので、水分と食料の購入はそちらを利用するのがおすすめです。
雪は?
12月頃より降雪があり、4月頃まで雪が残ります。標高は1,000m以下で深く積もることも少ないので、冬季は軽アイゼン、チェーンアイゼンを持っておくと安心です。
大山三峰山登山の難易度別おすすめルート紹介
紹介した山 | 三峰山 |
都道府県 | 神奈川県 |
標高 | 934m |
天気・アクセスなど | 三峰山の詳細情報 |
広沢寺温泉から大山三峰山へ−山と人の歴史を感じる山旅
スタート地点 | 広沢寺温泉 |
ゴール地点 | 大山三峰山 |
地点間の距離 | 5.6km |
片道コースタイム | 3時間10分 |
難易度 | ★★☆☆☆ |
広沢寺温泉をスタートして山神隧道を抜け、不動尻から山頂を目指すスタンダードなルートです。前半は舗装路を歩くので迷うことはありませんが、不動尻以降は鎖場や痩せた登山道が連続するので、不安定な足場に慣れていない方は注意が必要です。
大山三峰山の山容を肌で感じられるので、初めて登られる方はこのルートがおすすめです。
まずは舗装路を歩いて山神隧道を目指します。
ゲートを抜けて。
山神隧道に到着です。出口は見えているのですが、中は真っ暗なのでヘッドライトを使用します。
明かりをつけるとこんな感じ。
真っ暗です。
トンネルを抜けると再び舗装路です。
ルート上には沢が流れていて、癒やされます。
不動尻を抜けて、本格的な登山道に入ります。
気を引き締めます。
鎖場が連続します。しっかり足元を確認して登れば大丈夫です。
沢沿いを越えて標高を上げていくと、大山方面との分岐に到着します。
狭い切り立った登山道が連続します。高度感がある場所も通るので、慎重に。
山頂に到着です。山頂は狭いですがベンチが設置されています。ようやく気が休まる瞬間です。眺望はありませんが、丹沢の静寂な空間を存分に満喫できるのが、大山三峰山の良いところです。
ここから来た道を戻りますが、不動尻までは転滑落に十分注意して下山します。
谷太郎川より周回−バリエーションで丹沢の趣を知る充実ルート
スタート地点 | 谷太郎川駐車場 |
ゴール地点 | 谷太郎川駐車場 |
地点間の距離 | 9.1km |
コースタイム | 5時間30分 |
難易度 | ★★★☆☆ |
谷太郎林道の終点からスタートし、沢沿いを通って不動尻に至り、山頂に至ります。下山は唐沢峠方面を経由して不動尻に降り、登山口に戻る周回ルートになります。序盤は足場は狭いものの沢沿いの静かな山歩きが楽しめ、下山路はルートを確認しながら進むという、登山のスキルアップに最適な区間を歩きます。
弥太郎林道終点よりスタートです。駐車スペースは5台前後駐車可能です。
沢沿いを歩きます。不動尻まではゆっくり標高を上げていくので、体力的にも苦労なく登れます。
狭い道ですが、気を抜かず歩けば大丈夫です。
広沢寺方面との道に合流します。
不動尻はミツマタの群生地として知られています。この日は綺麗に咲き誇り、しばらく足を止めて眺めていました。
綺麗です。
沢を越えると切り立った登山道が続きます。いつ来ても緊張します。
登頂。唐沢峠方面の分岐まで戻ります。
ここまで戻ります。ベンチの左上にあるルートが唐沢峠方面です。
広い道ですが、ところどころ細い尾根に分かれており、方位を確認しないと吸い込まれそうになります。方角を随時確認して進みます。
道が分かれているので、慎重に。
不動尻方面への分岐に到着です。ここまで来れば道迷いの可能性も下がり、道に沿って行けば不動尻に降りれます。
不動尻まで降りると、ミツマタが迎えてくれている気がしました。
大山三峰山バリエーションルート−緊張と充実の日帰り登山
スタート地点 | 谷太郎川駐車場 |
ゴール地点 | 谷太郎川駐車場 |
地点間の距離 | 6.6km |
コースタイム | 5時間 |
難易度 | ★★★☆☆ |
谷太郎林道終点をスタートし、境界尾根と呼ばれるバリエーションルートを登り、一般登山道に合流後、山頂に至るルートです。序盤はルートを見失わなければ危険箇所は少ないですが、後半は切り立った道や不安定な足場を通るので、十分な体力と集中力が必要になります。ルートを終えて登山道に合流した瞬間の安堵感、自分がひとつ成長した充実感を感じられる、次のステップに進みたい方におすすめのルートです。
谷太郎林道終点よりスタートです。
地形図と照らし合わせて見ると、尾根の取り付きはすぐに見つかります。
序盤は明瞭な踏み跡を辿っていきます。
視界が開けるところもあり、市街地が良く見えます。
徐々に高度感が増してきます。
足場をよく確認して登ります。
場所によっては残置ロープがあります。下りも慎重に。
登山道に合流です。ここまで来れば安全圏。ここから山頂までは一般登山道で向かいます。
大山三峰山の温泉情報
玉翠楼
登山口付近にある温泉で、丹沢を登られる方には馴染みの、小田急線開通当初から続いている歴史ある温泉です。タイムスリップしたかのような館内と、開業当初からほとんど変わらない浴槽は、どこか懐かしく、日帰りで入浴するにはもったいない時間を過ごせます。露天風呂のロケーションもバッチリで、季節が変わる毎に訪れたくなる味わいがあります。
登山で冷えた身体を温めて、汗を流して帰るだけでなく、山旅の締めくくりに最高の思い出を作れます。
大山三峰山で登山の深い魅力を感じよう
大山三峰山は、丹沢の東方に位置する山で、急峻な山容から成る経験者向きの登山ルートが人気です。眺望はないものの登頂の達成感と周辺の自然、麓の温泉を始めとした観光など、日帰りながら非常に充実した山旅を満喫できます。
眺望だけではない登山の深い魅力に、大山三峰山でぜひ触れてみてください。