国内屈指の山岳地域である北アルプス。山域内には名峰が連なり、山を登る人なら誰もがその地を歩きたいと憧れます。そんな数ある北アルプスの中でも、かつては秘境とも言うべき場所に位置し、静かに佇む山頂があります。静寂な山頂の双六岳は、人気の槍ヶ岳、奥穂高岳などに比肩する北アルプスの名峰として知られており、今回はその魅力とルートをご紹介します。
双六岳登山が人気の理由
人気①:歩いているだけで楽しい−小池新道によって開かれた日本の秘境
双六岳は双六谷の源頭部に位置し、一般的には日帰りが困難な奥地にあります。双六岳のメインルートである小池新道は、かつては登頂が困難であった双六岳に通じる登山道であり、ここから見る景色はダイナミックな北アルプスの渓谷美と、槍ヶ岳や奥穂高岳を始めとした同山域の名峰の数々を眺めながら歩くことができます。
雄大な日本の自然に入り込む高揚感、抗うことを許さない堂々たる峰々、可憐に咲く花々など、小池新道は北アルプスの雄大さを感じられる登山道であり、双六岳に多くの方々が登られる人気の理由でもあります。
人気②:北アルプス縦走の要−双六小屋で過ごす夜
双六岳に登る場合、一番利用することが多いのが双六小屋です。北アルプスの稜線上に位置し、目の前にある双六池、小屋の前から見れる山々など、ロケーションはバッチリ。サービスも充実している人気の山小屋です。テント泊と小屋泊が利用でき、北アルプスの奥地で泊まるという貴重な体験ができます。日本の奥地で泊まれる贅沢、見上げれば満点の星空に酔いしれ、自然に抱かれながら眠る時間は、忘れられない山旅となることは間違いありません。
人気③:多数の高山植物が自生する花の宝庫
双六岳は花の百名山に選ばれており、コバイケイソウを始めとした多くの植物が自生しています。小池新道の終盤、弓折岳以降に位置する花見平ではコバイケイソウが、双六小屋の周辺ではイワカガミやミヤマキンポウゲなど、双六岳周辺には一度の山行では撮りきれないほどの花々を見ることができます。
雄大さのみならず、恐怖すら感じる北アルプスの山々ですが、厳しい環境の中でも咲き続ける花々は、山の風景をより美しく彩り、その健気さはいつまでも見ていられるほどです。
双六岳登山のQ&A
難易度は?
技術的な難所は少ないですが、宿泊山行の荷物を背負い、8時間を連日歩ける体力が求められます。テント泊の場合は設営技術も備える必要があるので、自宅での設営練習だけでなく、事前に低山を始めとした他の山域、キャンプ場などで泊まってみるのも良いです。また天候が急変する場合もあるので、安全に下山までを計画できる知識も必要となります。事前に基本的な登山技術の講習を受けておくと安心して双六岳を目指すことができます。
アクセスと駐車場は?
小池新道を利用する場合、新穂高温泉が登山口となります。新穂高温泉へは松本方面からのバスを利用してアクセスするか、マイカーの場合は新穂高温泉付近に登山者用の駐車場が利用できます。ハイシーズンの場合は周辺の有料駐車場も利用できます。ハイシーズンは非常に混み合うので、余裕を持ってアクセスするのが良いです。
水場とトイレは?
トイレは新穂高温泉にあり、自販機もあります。ルート上にある笠新道入口に水場があり、以降は各山小屋にトイレと水分を始めとした食料が購入できます。非常時を含めて行動に支障がない程度に所持しておく必要はありますが、営業期間中購入できるのはとても助かります。
山小屋は?
双六岳に達する小池新道には、わさび平小屋・鏡平山荘・双六小屋があります。各山小屋は7月頃から10月頃まで営業しており、双六岳を目指す登山者のオアシスと安全基地として機能しています。テント泊は特定日は予約が必要なので、山行予定日にテント泊の宿泊予約が必要かを事前に確認しておくと良いです。トイレの利用には小銭が必要なので、こちらも事前に持っておくと現地で焦らなくて良いです。
わさび平小屋
鏡平山荘
双六小屋
雪は?
10月頃より降雪があり、通年で雪が残ります。夏場の残雪はほとんど影響がありませんが、しっかりと残雪が残る6月頃までは十分な雪山技術が必要です。厳冬期は厳しい冬山の世界となり山小屋は閉鎖されているので、入念な計画と知識、技術が求められます。夏場と異なり冬の北アルプスは人を寄せ付けない別世界に変わり、冬の双六岳を制する感動は、夏山とは違う達成感を味わえます。
双六岳登山のおすすめルート紹介
紹介した山 | 双六岳 |
都道府県 | 長野県・岐阜県 |
標高 | 2,860m |
天気・アクセスなど | 双六岳の詳細情報 |
小池新道で目指す双六岳−北アルプスの絶景を楽しむ山旅
スタート地点 | 新穂高温泉 |
ゴール地点 | 新穂高温泉 |
地点間の距離 | 28.2km |
コースタイム | 14時間 |
難易度 | ★★★☆☆ |
新穂高温泉をスタートし、小池義清氏らによって開かれた小池新道を通って山頂を目指すルートです。序盤は沢沿いを歩き、中盤から本格的な登りに突入、終盤は稜線沿いを歩いて山頂に至ります。ルート上には山小屋が点在しており、休憩しながら付近の自然、風景を愛でるなど、早めに出発すれば余裕を持って登ることが可能です。事前の十分な睡眠、装備の準備をして臨みたいルートです。
新穂高温泉。情報収集やトイレ、装備の最終確認をして出発です。
新穂高ロープウェイ。西穂高岳方面へ向かう際に重宝します。
ゲート横を通って林道を歩きます。
歪んだ橋。ヒヤヒヤします。
わさび平小屋までの間に笠新道の登山口があり、ここでは水が補給できます。
わさび平小屋。夏野菜や果物、飲料などを始め、夢のようなメニューが並びます。そばには沢が流れ、アイシングに丁度良いキリッとした水温です。
わさび平小屋以降はしばらく視界が開けます。北アルプスらしい風景に、つい顔が緩みます。
小池新道入り口に着きました。この先から勾配のある上りが続きます。
上りの途中を振り返る。岩場はしっかりしていて歩きやすいです。
秩父沢出合。この辺りで小休止するのが気持ち良くておすすめです。
なおも登りは続きます。
鏡平山荘着。ここまで来れば初日の宿泊地である双六小屋まで射程圏内です。
稜線を捉えます。トラバースしながら標高を上げ、弓折岳分岐から稜線歩きになります。
しんどくなってきました。
弓折岳分岐に到着です。分岐にはベンチがあり、腰を下ろして休めます。
花見平付近には雪が残ります。思わぬ雪に心身の疲労が和らぎます。
花見平。この世の最後の楽園に見えます。
花見平を過ぎると、双六小屋が見えてきます。ついに来たと気持ちが高揚します。
双六小屋までもう少し。写真は双六谷の源頭部。
双六池とテント場
双六小屋に到着です。受付を済ませてテントを張ります。
テント設営して1時間後くらいに雨が。水はけも良く、浸水することなく雨をやり過ごせました。少しお酒を飲んで就寝です。
2日目。夜明け前に登り始めます。
眼下の双六小屋。
双六岳方面。
槍ヶ岳が見えました。一際強い存在感を放っています。
日の出。美しすぎてしばらくその場で立ち尽くします。
稜線は360度の大パノラマの中を歩きます。双六岳山頂も目視。
山頂まであと少し。
ついに頭頂です。言葉にできない達成感と自然の迫力が相まって、無心で北アルプスの山々を眺めていました。
三俣蓮華岳方面。この時の計画では雲ノ平まで行く予定でしたが、翌日から天候が荒れる予報だったため、苦渋の下山となりました。
槍ヶ岳、穂高岳方面。次はあそこに登りたいと、もう次の山のことを考えていました。
おすすめ温泉情報
奥飛騨ガーデンホテル焼岳
エメラルド色の源泉を持つホテルで、日帰り入浴が可能です。源泉は肌の水分、熱を逃げにくくする塩化物泉で、美人成分とされるメタケイ酸も豊富であることから、お肌に嬉しい温泉でもあります。新穂高温泉方面での登山後、日帰り入浴はもちろん、宿泊にもおすすめのお宿で、名物の温泉せいろ蒸しを始めとした素朴ながら唸る料理が、山旅の締め括りにピッタリです。
双六岳登山で北アルプスの雄大な自然を満喫しよう
双六岳は北アルプスにある歴史ある山で、小池新道の開通後、多くの登山者に登られ、親しまれています。山頂は花の百名山としても知られ、貴重な花々を始め、多様な動植物が棲まう自然豊かなエリアとなっており、山行中は沢山の出会いが待っています。
双六岳に登って、ここでしか見られない北アルプスの絶景にぜひ出会ってみてください。