メリノウール製のベースレイヤーを選ぶ際には、生地の厚み、メリノウールの混紡比率をチェックすることが重要です。
今回は、メリノウール製のベースレイヤーを種類別で分析をし、登山スタイル別で、どのようなメリノウールウェアを着用するのが理想的かを考えていきたいと思います。
今回の記事では
- 登山者の多くの人が何故メリノウール製のベースレイヤーを愛用しているのかを紹介し
- メリノウール製のベースレイヤーの選び方とどのような種類が存在するかをメーカー別で比較します。
- 最後に、メリノウールの混紡比率によって、どのような違いが生じるのかを紹介します。
登山者が愛用するメリノウールの特徴を紹介
メリノウールの特徴を紹介するのには、ポリエステルを代表とする化繊素材との比較が最もわかりやすいです。
乾きの速度と気化熱の関係

登山で汗をかくと、ベースレイヤーが濡れます。この汗が蒸発する時に体から熱を奪います。 汗の蒸発による気化熱が体温を下げる働きをしています。
汗の乾きが早いポリエステルは、体温が奪われる速度も速くなるため、体が急激に冷えるデメリットがあります。
対してメリノウールは、汗の乾きがゆっくりなので、体温が奪われる速度もゆっくりで、体が急激に冷えることを防ぎます。
このような特徴があるため、標高を上げて気温が低くなる登山では、メリノウール製のベースレイヤーが好まれる傾向があります。
汗の匂いがしづらい

汗は出たばかりは無臭ですが、汗が付着し続けることで、これを餌にした細菌が繁殖し、細菌が作り出した物質により嫌な匂いを人は感じます。
メリノウールは吸湿性のある繊維で最大で自重の35%の湿気を吸収し、肌の表面をさらっと保ち、バクテリアの繁殖を抑えます。
臭いを吸収するとともに、バクテリアの繁殖しない繊維内に匂いを閉じ込めてしまいます。この閉じ込められた匂いは、洗濯をするときに、ウールから一気に放出され、匂いが残らない優れた素材です。
再生可能で土に還る素材

メリノウールは、栄養分をゆっくりと土に還しながら土の中で自然に分解される素材です。
また羊の新毛は毎年算出され、完全に再生可能な繊維として認識されています。
イージーケアでシワになりにくい

特別な手間をかけずとも洗濯機で洗うことができ、長期間、新品時の風合いを保つ特徴があります。
また、ウールの繊維は、コイル状のバネのような形状のため、まげられても元の形に戻る特徴があります。そのためシワになりにくく、旅先で洗って干しておくだけでそのまま着用することができます。
メリノウールはこのような特徴があるため、登山者に大変人気のある素材です。最も肌に近いベースレイヤーやアンダーウェアにメリノウール製のアイテムを取り入れることで、快適な着心地を体感することができます。
メリノウール製のベースレイヤーの選び方
メリノウールのベースレイヤーには、様々な種類があります。メリノウールを選ぶときに、重要なポイントを紹介します。
メリノウールと、それ以外のウール

メリノウールとはメリノ種と呼ばれる羊の毛を指します。あらゆる羊の中で、最も白く、最も細く、最も長く、しなやかな特徴を備えています。
従来のウールはチクチクして、乾きが遅く、手入れに手間がかかることから、敬遠されていましたが、メリノウールはチクチクしづらく、ソフトでしなやかで、伸縮性があり、シワになりにくい特徴があります。
混紡素材と混紡比率をチェック

メリノウールは化繊素材と異なり、耐久性が弱く汗をかいたときの拡散と、それによる乾きがゆっくりなため、大量に汗をかく登山やトレイルランニングでは敬遠されがちです。
この耐久性の問題と、汗の拡散、汗の乾きを早めるために、ポリエステルやテンセルなどの素材を混紡しています。
メリノウールの特徴を引き出すためには、混紡比率は30~50%以上あれば良いとメーカー担当者から聞いたことがあります。以下は根拠を示すデータです。
Wはメリノウール、Pはポリエステルで、数字は混紡比率を表しています。

よって、より汗の乾きと耐久性をメリノウール製のベースレイヤーに求める場合は、メリノウールの混紡比率が低いものを選びましょう。
生地の厚みによって保温性が異なる

1㎡あたりの重さによって生地の厚みを知ることができます。
製品名に数字が記載されていることがあり、厚手のものは200g/㎡、薄手のものだと120から150g/㎡の重量があります。
薄手のものは通気性にたけており、乾きも早いため汗をかきやすいアクティビティにおすすめです。
厚手のものは保温性にたけているため、寒い季節のゆっくりとした行動の登山でおすすめです。
代表的なメリノウール製ベースレイヤーを比較
代表的なメリノウール製ベースレイヤーを比較していきます。それぞれの特徴がわかるように、厚みの違い、混紡比率の違いで検証します。
※横スクロールで表がスクロールできます。メーカー | スマートウール | アイスブレーカー | スーパーナチュラル |
---|---|---|---|
モデル | メリノ150ベースレイヤーショートスリーブ | 200 オアシス | 半袖エッセンシャルSSTシャツ |
厚み | 150g/㎡ | 200g/㎡ | 140g/㎡ |
混紡比率 | ウール87% ナイロン13% | ウ-ル100% | ウール50% ポリエステル50% |
価格 | ¥9,130 | ¥13,750 | ¥7,590 |
今回は、上の3つの製品で汗の乾きの速さを検証しました。
乾きの速さ

乾きが最も早かったのは、スーパーナチュラルのエッセンシャルSSです。汗をかいたときに生地全体に汗が拡散し、乾きを促進します。濡れた感触が少ないのが特徴です。
トレイルランニングなどのハードなアクティビティでも、おすすめできるベースレイヤーです。
保温力の高さ

アイスブレーカーの200オアシスが最も暖かく、寒い季節の保温着に最適です。ウール100%なので、汗を沢山かくアクティビティでは乾きが遅いのでおすすめしません。
ゆっくりとした冬のハイキングで体を温めてくれるベースレイヤーです。
チクチク感
メリノウールの混紡比率が少ないスーパーナチュラルのエッセンシャルSSが最もさらっとしたベースレイヤーに感じます。
耐摩耗性
ポリエステルやナイロンが混紡されているベースレイヤーの方が耐摩耗性は高くなります。
しかし、混紡比率が高いベースレイヤーほど毛玉が付着しやすいと言うことが挙げられます。
これは、摩擦によって生じたメリノウールの毛玉が、ポリエステルなどの強度の高い繊維に絡まってしまうことで、摩擦が多くなる箇所に毛玉が生じてしまいます。
おすすめのメリノウール製ベースレイヤー
メリノウールが混紡されているベースレイヤーは、化繊素材のベースレイヤーと比較すると、価格が高く設定されています。これによってメリノウールのウェアの良さがわからないときの初回購入時に躊躇しがちです。
以下で紹介するメリノウール製ベースレイヤーはいづれも比較的安く購入できるベースレイヤーで着用感に優れています。
汗の拡散と乾きの早さが魅力-スーパーナチュラル『半袖エッセンシャルSSTシャツ』

半袖エッセンシャルSSTシャツは他のブランドと比較して価格が安く、品質が良く、さらに今までメリノウール製のベースレイヤーを着用したことがない人でも、乾きの速さ、着心地の良さに満足することができます。
メリノウール50%にポリエステル50%の混紡比率で乾きの早さと耐久性に優れたベースレイヤーです。トレイルランなどの汗をかくハードなアクティビティにもおすすめです。
薄くて肌触りが良い-パタゴニア『キャプリーン・クール・メリノ・シャツ』

非常に薄く仕上げたメリノウール製ベースレイヤーでメリノウール65%にポリエステル35% の混紡比率のベースレイヤーです。
スーパーナチュラルと比較するとメリノウールが65%と多いので、保温力に優れていると思われがちですが、生地が薄い事から通気性に優れ、涼しい風が通り抜けていく感覚があります。着用していて透けて肌が見えるほどで、程よい保温を追加するような使い方におすすめです。
テンセル混紡の気持ち良い着用感-スマートウール『メリノスポーツ120ショートスリーブ』

アスレチックフィットで体の動きに追従する特徴あるデザインと、テンセルを混紡したことによる柔らかく、シルクのような光沢感が特徴のベースレイヤーです。
テンセルは保湿性と吸湿性が高く、速乾性にも優れているので多くの汗をかくアクティビティで快適な着心地を提供します。
メリノウール53%にテンセル47%の混紡比率が特徴で120gと軽量な仕上がりです。

▼ベースレイヤーの基本についてわかる記事