「一年の計は元旦にあり」という言葉がありますが、正月の作法は寝ることだと心得ていますので、大した計画も立てずに日がな一日ぐうたらと過ごすのが毎年の恒例となっています。そのため、新年1発目の山登りの際には年末年始の運動不足と暴飲暴食がたたり、毎回辛い思いをしています。心当たりがあるのは僕だけではないはずです。
2022年、最初の山登りも御多分に洩れず、辛い山歩きとなりました。
今回は僕が経験した元旦の雪山登山におけるトラブルを紹介します。紹介する蓬莱山に限らず、どこの雪山でも起こりえるトラブルだと思います。確認を頂いて安全な登山にお役立てください。
登山口までの移動手段におけるトラブル
1月中旬、今年最初の山登りの目的地として向かったのは滋賀県西部に聳える比良山地。その中でも最高峰の武奈ヶ岳に登ろうと、早朝の電車に乗って一人、堅田駅へと向かいました。
堅田駅に着いて、早速辛い事案が発生。なんと去年まで運行していたはずの登山口を経由するバスが運行休止になっていたのです。
「まじかあ…」運休を伝える張り紙を前に途方に暮れていました。
しばらく(と言っても数分ですが)立ち尽くしていると、登山装備の二人組がやって来まして、僕と同じく運休の張り紙を見て呆然としています。
数分前の自分を見ているようでした。
行き先を伺ってみると、蓬莱山の登山口の一つである平バス停に行く予定とのこと。「僕は武奈に行く予定だったんですよー」などと話していると、お二人の方から「タクシーで一緒に行きますか?」と大変嬉しい申し出が!「良いんですか!?ありがとうございます!」と遠慮もせずに同乗させていただきました。
僕自身も冬の蓬莱山に行ってみたいなあと思っていたので、急遽行き先を変更し、蓬莱山に登ることにしました。平バス停から権現山、ホッケ山を経由して蓬莱山に登るルートです。
平バス停までは堅田駅から30分ほど。料金は5,000円ほどだったかと思います。下車すると登る準備を整えて、お二人にお礼を言い登山スタートです。
雪山登山開始!ワカンがあっても安心することなかれ
2022年の比良山地は例年より雪が多く、この日も前日に降雪したこともあってか登山口から多くの雪が積もっていました。序盤は緩やかな登りです。凛とした静かな森の中を進みます。この森の静けさも冬山の魅力の1つだと思います。
1時間ほど登ると「アラキ峠」に到着しました。ここまではツボ足で登ってこられましたが、標高が上がるにつれて雪に足がズボズボと埋まることも増えてきました。少しなら楽しいのですが、さすがに足が取られて辛いです。と言うわけでここからはワカンを着けて登ることにします。
アラキ峠からさらに標高を上げるべくえっさえっさと登っていました。権現山のピークの直前あたりで少しトレースから外れたところを歩いていると…、「ズボッ!!」思い切り踏み抜いてしまいました。
腰の高さほどまで雪に埋まってしまい、周りの雪を押さえて抜け出そうとしても崩れて踏ん張れません。もがいても雪が崩れるだけでなかなか這い出せず、「遭難」という言葉が一瞬頭をよぎりました。
ただ、幸いなことに後ろから人の声が聞こえて登山者が何人かやって来ましたので、「すいませーん、助けてくださあい」とお願いし引っこ抜いてもらいました。その後、無事に権現山に登頂できたのですが、焦ってもがいた分、どっと疲れました。
権現山からは白く染まった比良の街と、琵琶湖が一望できます。
そして、ここらからホッケ山、蓬莱山へと続く稜線が今回のハイライトです。少し雲が多いですが、とても見晴らしの良い稜線歩きが楽しめます。
右手には常に琵琶湖を眺めることができ、緩やかにアップダウンを繰り返しながら今回の最高峰である蓬莱山を目指します。
良い景色に足取りも軽い…となれば良いのですが、稜線上も雪が多くワカンを着けていても足が取られ、体力が削られます。雪があったとしても普段なら屁でもない高低差と距離なのにと、この頃になると気づくわけです。
ああ年末年始の不摂生が祟ったなと。
数週間前の自分を呪いつつ、重い足をなんとか進めます。樹氷で真っ白になった木々や、関西ではなかなか見れない大きさの雪庇、そして時折覗く青空など、絶景に励まされながら、何とか蓬莱山に登頂しました。
蓬莱山からは琵琶湖バレイの敷地内を歩いて下山用のロープウェイを目指します。多くの人がスキーやスノボーを楽しんでいるゲレンデの端を一心不乱に歩きます。周りの方の珍しいものを見るような視線は少し辛いですが、「これも年末年始を怠惰に過ごした自分への戒めだ」と少し卑屈になりつつも歩みを進め、ロープウェイ乗り場に到着しました。
文明の力で楽々下山をしている際、「来年こそは有意義で実りある年末年始を過ごすぞ!」と、これまで何度破られたか分からない誓いを立て、比良山地を後にしました。
雪山登山のトラブルをおさらいと対策
●雪山シーズンは公共交通手段が運休している場合がある
→事前に電話確認をしましょう。
●ワカンがあっても踏み固められていない場所では踏み抜く可能性がある
→人が歩いている日程と場所を選ぼう。
●普段なら屁でもない高低差と距離なのに雪山だと勝手が異なる
→登山コースを計画するときはコースタイムを余分に考えよう