雪山シーズンとなるとアルプスの小屋は一部を除いて冬季閉鎖となり、入山できるルートはかなり限られてくる。その中で、八ヶ岳は通年営業の小屋が多く、またルートも豊富でレベルに合わせた雪山登山が可能なフィールドと言える。今回は、小屋泊による年末の北八ヶ岳の周回コースをご紹介したい。
北八ヶ岳ロープウェイ山頂駅〜坪庭周回
ロープウェイから降りたら、まずは足慣らしとして坪庭を周回しよう。20分〜30分あれば十分周回でき、足元もスノーシューやアイゼンなど状況に合わせたもので問題ない。技術的にも特に難しいところはないが、冬の八ヶ岳らしく気温はかなり低いので、特に風が強い時などは冬用のウェアリングが必要だ。天気が良ければ、ロープウェイの駅越しに中央アルプス、南アルプスを望むことができる。
山頂駅〜麦草峠〜高見石小屋
麦草峠へのルートとしては、縞枯山・茶臼山を越えるルートとそれらのピークを通らない比較的平坦なルートの2つがある。今回は2日間での周回を予定していたため、好天予報の2日目に好展望のピーク超えをすることにし、往路は平坦なルートを選択した。
全体としてはやや下り基調の樹林帯歩きであり、樹氷を纏った木や遠くに真っ白な中央アルプスを眺めながら雪道を楽しもう。オトギリ平を過ぎると冬季通行止めのメルヘン街道に出るので麦草峠までは車道歩きとなる。
麦草峠〜高見石小屋
この区間も2つのルートがあり、往路は丸山を経由して高見石小屋へ向かうことにした。麦草ヒュッテから少し登ったところで振り返ると、浅間山が見える。丸山までの登り、特に山頂直下は結構な急坂となっており、甘く見ていると痛い目にあう。ここを登り切れば小屋までは下るだけとなり、10分程度で到着することができる。
高見石小屋
この日の宿泊は高見石小屋にお世話になった。ランプの灯りや薪ストーブの雰囲気も素晴らしいが、おそらく最も有名なのは揚げパンではないだろうか。ぜひ喫茶時間までに小屋に到着して5個セットで堪能していただきたいと思う。また、高見石展望台に登ることも忘れないように。展望台からの夕日、朝日は必見だ。夕食後には天気が良ければスタッフによる星の解説など、到着から翌日の出発まで盛りだくさんの満足できる時間となるだろう。
高見石小屋〜白駒池〜麦草峠
翌日は朝食後に展望台からの日の出を眺めてから白駒池へと下る。急な下りとなるので、登山道の状況によってはアイゼンを装着した方が安心して歩ける。白駒池が完全に凍結していればその上を歩くことができ、スノーシューがあればより楽しい。ただし、凍結状態には十分な注意が必要だ。凍った池の上を歩く体験はなかなかできないので、十分満喫してから麦草峠へと進む。
麦草峠〜茶臼山〜縞枯山〜ロープウェイ山頂駅
茶臼山へはほぼ樹林帯の登りであり、特に地図上の中木場というポイントを過ぎてしばらく進んでからの山頂までの直登は今回紹介したルート随一の急な直登だ。登り切った先の山頂は展望がないが、そこから1〜2分の展望台からは、南八ヶ岳、アルプスの山々が一望できるので、好天であればぜひ立ち寄りたい。
茶臼・縞枯の肩に一度下ってから縞枯山への登り返しとなるが、ここはそれほどキツくない。途中展望台があり、茶臼山では見えなかった浅間山方面の展望を得ることができるので立ち寄っておこう。山頂からは一気の下りとなる。かなりの斜度になるので、不安であればアイゼンを履くことを推奨する。雨池峠からは駅まで平坦な道となり、特に危険箇所はない。三角の屋根がかわいい縞枯山荘で休憩するのもいいだろう。山頂駅からはロープウェイのほか、歩いての下山もできる。時間があれば北横岳に立ち寄ることもできるので、天候や体力、時間などを考えて決定しよう。
冬の八ヶ岳
営業小屋の多さや登山口(駐車場)へのアプローチの便利さ、コースの豊富さなど冬季でも人気の高い山域であり、その中でも北八ヶ岳エリアは、危険箇所が比較的少ないことや、ロープウェイによるアクセスの便利さなど、雑誌等で冬山入門として紹介されることも多い。
ただ、天気に恵まれた今回の山行でも温度計はマイナス10℃前後を指すなど、低山の雪山とは一線を画するフィールドであり、夏山以上にリスクもまた大きくなることもあるので、計画・準備段階からしっかりと準備してその魅力を堪能したい。
今回のコースで通った山小屋情報
麦草ヒュッテ
- 開設期間:通年
- 完全予約制
- 定休日:水曜日(年末年始・祭日・7月中旬~8月を除く)
- 090-7426-0036(現地)
高見石小屋
- 開設期間:通年(閑散期、不定休あり)
- 完全予約制
- 080-2188-4429(現地)
白駒荘
- 開設期間:通年
- 完全予約制
- 0266-78-2029
縞枯山荘
- 開設期間:通年(冬期のみ食事の提供をお休み)
- 完全予約制
- 090-2235-4499(現地)|0266-55-6550