登山の楽しみ方は十人十色、テント泊や沢登り、アルパインクライミングまで多様な登り方があります。その中でも、山頂と山頂を登り歩く縦走登山は人気が高く、高所では眺望を、低山では深い自然の姿を満喫できるという魅力があります。縦走登山といえば1泊2日以上というイメージがありますが、今回は日帰りでも楽しめる、関東の縦走ルートをご紹介します。
関東の山岳エリア
関東地方にある山岳エリアは、東京都に属する奥多摩・高尾、埼玉県の奥武蔵、神奈川県の丹沢などがあり、1,000m前後の低山を中心とした山々が連なっています。
どのエリアも里から程近く自然との距離感が程良い環境にあるため、登山初心者から経験者まで幅広い層の方々が訪れ、日帰りから1泊程度の登山をするのに人気があります。
地域の魅力を再発見できるのが低山のポイントで、関東の山々を歩き終えると、ありきたりですが「東京にもこんな場所があったんだ」「いつも見えてた山を歩くとこんな景色が見えるんだ」と、愛着が湧きやすいのも関東の山岳エリアの特徴です。
関東エリアの縦走登山の楽しみ方
侮るなかれ:高所にも負けない眺望
高山の魅力といえば、大自然の一部となったような爽快感を感じられる眺望ですが、関東エリアの眺望も負けていません。
例えば、市街地と山間部、海にも面した丹沢から見る眺望は、街・海・山という環境を一度に望める個性があり、高尾では都心部の街並みを山から見渡せるという魅力を持っています。
私は丹沢の近くに住んでいて、職場の人間が地方に観光に行って「良い景色だった」みたいな話をされるたび「神奈川でも見れるよ」と、心のどこかでヘソを曲げてしまうほど丹沢には愛着があり、丹沢の縦走で見る眺望は有名アルプスにも負けない魅力を持っていると感じています。
脳の奥から野生を呼び覚ますような強烈な眺望はありませんが、スッと力が抜ける様な癒やしの景色が広がっており、関東エリアの縦走では、山が自分を迎えてくれるような幸福な時間が待っています。
セットで楽しい:登山と下山後の温泉やご飯
日頃の仕事で多忙を極める人達にとって、時間をかけて登る縦走登山というのはビッグイベントです。窓の隙間をくぐる猫のごとく、仕事の合間を縫って有名アルプスを縦走しようものなら、朦朧とした意識で登山をすることになり「一体何のために・・」と自問自答することになります。ちなみに、そんな経験が私にもありました。
関東エリアでの縦走は半日から1日で歩ける場所が多く、朝一で登れば日の入りには余裕を持って下山が可能です。交通網も良好な場所があるので、下山後は駅近で地元の料理を楽しんだり、車なら温泉を探してのんびり浸かったりと、縦走登山で得た地域の魅力の後に堪能するからこそ、その喜びはちょっとした観光では味わえないほどに膨れが上がります。
山域踏破:大きな達成感を味わう
有名アルプスの縦断、横断といった広大な山域を踏破というのは、登山を続けていると視界に入ってくる目標のひとつです。山域を知り、歩き切るという達成感は筆舌に尽くしがたいものがあり、縦走登山の中でも一際輝く栄光でもあります。
北アルプスや南アルプスといった数日をかけるのはタイミングや自身のコンディションなどが整わないと難しいですが、関東の山域であれば通年での挑戦が可能です。
気軽に楽しめる、といえばそうではないのですが、東西で異なる自然の眺望や人の営み、山域と両端でこうも違うかという発見は、関東エリアの縦走ならではの楽しみがあります。
関東のおすすめ縦走ルート5選
おすすめ①丹沢の定番縦走ルート-表尾根:所要時間7時間30分
ヤビツ峠から入山し、二ノ塔・三ノ塔・烏尾山などを順に縦走、丹沢の名峰、塔ノ岳を目指す縦走ルートです。
標高761mからスタート、舗装路を経て登山道に入り、丹沢を代表する独立峰、大山や相模湾をバックに気持ち良く高度を上げていきます。
ビューポイントである三ノ塔からの眺望は、神奈川の屋根と呼ぶに相応しい山並みが眼前に広がります。避難小屋や頂上で一息入れたら縦走の核心部に突入します。
上り下り、鎖場を経て辿り着いた先にある塔ノ岳からは、これまで歩いてきた縦走路を始め、富士山、懐深い丹沢の山々、遠望で南アルプスなどが望める大パノラマ。険しいルートを歩いた先にある景色は登った人にしか見えない輝きがあり、表尾根はそんな特別な感動を見せてくれます。
初心者の方には一度は登ってほしい、日帰りなのに満足度の高い縦走ルートです。
おすすめ②東京・神奈川間を歩く-高尾山から陣馬山への縦走ルート:所要時間7時間15分
東京都・神奈川県の境に位置する峰々を歩く、高尾エリアを歩いたことのある方なら意識せずにはいられない縦走ルートです。
このルートの面白さは、世界1位の年間登山者数を記録した高尾山と、ハイカー御用達の陣馬山で変わる世界観であり、自然から文明圏へと変わっていく感覚は、まるで浦島太郎の様です。
基本的には樹林帯を歩きますが、小仏城山、景信山を始めとしたピーク、途中で見えるビュースポットからは、次の山を期待したくなる山々が広がっています。
低山ながら歩きごたえは十分。陣馬山からスタートすれば、帰りは高尾山口駅が目の前で、隣接の温泉にも立ち寄れ、プチ観光にも最適です。
おすすめ③玄人好みの低山縦走-三浦アルプス:所要時間5時間
神奈川県の知る人ぞ知る縦走ルートで、仙元山から乳頭山までを縦走します。
どちらかといえば海!や夏!のイメージが強い逗子エリアですが、三浦半島には幾つかのピークが存在し、ちょっと癖のある縦走を楽しみたい人におすすめなのが、三浦アルプスです。
標高100mから200m程の小さな山々が連なる縦走ルートで、仙元山から見る空と海の青さに惹かれ、キャッキャウフフな気持ちの良いハイキングが始まるかと思ったら、以降に続く迷宮といっても差し支えない縦走路が始まります。
この迷宮こそが三浦アルプスの醍醐味で、地図読みの練習にピッタリ。
静かに背中を伝う緊張感、森を抜けて自分が意図した場所に辿り着く安堵感と達成感を里山縦走で感じられる貴重な場所です。
おすすめ④奥武蔵の世界を味わう日帰り縦走-伊豆ヶ岳から武川岳・二子山へ:所要時間7時間45分
関東エリアの登山で有名な奥武蔵エリアの中部にある伊豆ヶ岳から、西部の武川岳方面へ縦走するルートです。
都心から電車アクセスが可能で、かつ深い里山の自然を残している奥武蔵エリアの縦走は、四季折々で見せる山の姿の移り変わりがとても美しく、1年を通して訪れたくなる、里山が好きな方にはおすすめの場所です。
おすすめの時期は春や花の咲く時期で、ヤマザクラ、ツツジを始めとした植物を愛でながら歩け、里山が魅せる懐かしさと相まって、奥武蔵ならではの縦走を楽しめます。
まるで山に抱かれているかのような安心を感じながら登れる縦走路です。
おすすめ⑤御岳山から大岳山縦走-奥多摩初縦走に最適なルート:所要時間8時間
東京の奥多摩登山といえば外せない山、御岳山。ここを登るだけでも始めは登山の清々しさを感じるものですが、この先にある大岳山への縦走は、縦走登山にぴったりの歩きごたえ抜群のおすすめルートです。
鎖場あり、岩場ありの道が続き、その先にある大岳山からの眺望。縦走で体験できる感動メニューを、まるで高級フレンチのフルコースの様に味わえる面白さがあります。
往復で歩く道も安心感があって良いですが、そのまま奥多摩駅方面に下山すると、奥多摩の姿を沢山見られます。
所要時間は8時間ですが、序盤の御嶽駅から登山口までをバス利用、さらにケーブルを利用すれば、片道2時間ほど短縮できます。
おすすめアイテム
デジタルカメラ:OLYMPUS Tough TG-6
登山中の撮影といえば今やスマートフォンが主流で、より良い画像を求めるとデジタル一眼といった、軽量コンパクト性かハイクオリティを求めるかの2択になります。
私が普段使っているのが、オリンパスのTough TG-6というモデルで、コンパクトデジタルカメラ(コンデジ)の中で、アウトドアに必要な防水性、耐衝撃性、防塵性などの基本性能が整っており、加えて高画質、かつ被写体を近距離で撮影するマクロ撮影に秀でた点に魅力を感じ、登山での撮影はこれ1つで行っています。
縦走登山では、鳥になったかのような美しい眺望が広がりますが、昆虫や野草、一輪の花など、夢中で歩いていると見逃してしまいそうなところに出会いが沢山あります。
こうしたときに本モデルの出番。腕前の10倍は上手く撮れているんじゃないかと思うほど綺麗に撮影でき、もちろん眺望も持ち前の高画質でしっかり記録に残せます。
スマートフォン全盛の時代ですが、落下や雨、汚れから守りながらだとアウトドア向けのコンデジが頼もしく携行性も高いので、ぜひ使ってみてほしい逸品です。
日帰り縦走登山で、登山の醍醐味を体験しよう
関東の山岳エリアは、1,000m前後を中心とした山々が連なり、初心者から経験者まで多くの方々が登られています。
主に日帰りで登られている山が多い中、1日で山から山を繋いで歩く日帰り縦走登山は人気が高く、様々な縦走ルートがあります。日帰りで1,000m前後と侮るなかれ、登山の醍醐味と低山ならではの出会いとワクワクが詰まった関東の縦走ルートは、山登りが持つ魅力が花畑の様に一面に咲き誇り、歩いているだけで充実します。
関東の日帰り縦走ルートに、ぜひ足を運んでみてください。