日本には15,000以上もの山があり、その中でもアクセスが良好で登山道が整備されている場所が多い低山は、初めての登山、仲間と楽しむ気軽な山登りの場として選ばれ、親しまれています。1,000m前後の山々があり、地域によって独特の個性を持つ関東の低山は、何度でも足を運びたくなる魅力に溢れています。今回は関東の低山の中から、おすすめの5座をご紹介します。
関東の低山の特徴
1年中が山シーズン-通年登れる山が沢山
関東の低山の特徴として挙がる最大のポイントは、1年を通して登れる山が随所にあるということです。
「低いから登れる」という事ももちろんありますが、後述のアクセスの便利さ、降雪量も全国で比較すれば少なく、様々な面で登れる状況が整っている事もあり、1年を通して登れる山が多いというのは、関東の山ならではです。
都心を中心とした便利なアクセス
関東の各山岳エリアへは、電車・バス・タクシーといった公共交通機関を利用してのアクセスが可能な山が多いのが特徴です。
関東エリアの山で、登山者でなくてもその名が知られている有名な高尾山は、東京から電車で90分以内、京王高尾線の高尾山口駅のほぼ目の前に登山口があり、駅のそばに温泉、食事にケーブルカーにと、至れり尽くせりの環境です。
バスも本数がしっかり確保されている場所が豊富にあるので、足が棒になってヨレヨレになって下山したら、バスに乗り遅れて3時間待ちなんていう悲劇に見舞われることもないのがGOODです。
登山者のニーズに合わせた多彩な山々
低山といえば「日帰りできて歩きやすい」というイメージがありますが、関東の低山はそうした気軽に登れる山の他にも、地図読み講習に向いた複雑な山、日帰りで沢も稜線も楽しみたい、岩場ありのハードな山といった、登る人のニーズに合わせた山がファミリーレストランのグランドメニューばりに揃っています。
私は月に1度は遠出をして北アルプスや八ヶ岳といった有名山岳エリアに足を運んでいますが、基本的には地元である神奈川県の低山や隣県の山を登っています。
お金や時間という切実なところも正直ありますが「今日は沢登りかな」「静かに稜線歩きでも」など、登りたいシチュエーションがニクいほどに揃っています。
関東の低山おすすめ5選
おすすめ①:大山-1年を通して多様なニーズに応える丹沢の独立峰
標高1,252mの独立峰である大山は、古くは信仰登山の対象として登られ、現在もその歴史を継承しつつ、地域のシンボルとも言える山容と、整備された登山道、富士山や関東平野を見渡せる清々しい眺望などから、沢山の登山者に親しまれ、登られています。
付近の高い山が並んでいない独立峰らしく、東西南北に登山道があり、静かに登りたい、会社の仲間を登山に誘いたい、バリエーションでヒィヒィ喘ぎたいなど、好みに合わせて年中登れるのは、公共交通機関、マイカー共にアクセスが良好な大山らしい魅力です。
ご紹介のルートは、電車とバスで大山ケーブルバス停までアクセスし、表参道と見晴らし台を周回するルートです。利用者が多く人気があり、ケーブルカーでショートカットも出来ます。
おすすめ②:金時山-関東有数の観光地にある金太郎伝説の山
日本有数の観光地のひとつである箱根に位置する標高1,212mの山で、金太郎伝説と深い関わりのある山として知られています。
麓の小田原駅や箱根湯本駅から仙石原バス停にアクセスすれば、箱根外輪山の一峰である金時山まで片道90分前後で登頂可能です。
ご紹介のルートは日帰り短時間で登れるルートにありますが、外見は聳え立つ鋭鋒とも呼べる厳つい山容で、頂上直下は急勾配で、山に来ているのを実感させてくれる登り応えのある山です。
頂上からの眺望も素晴らしく、岩峰らしい岩場で腰を落ち着けて休みながら、箱根と富士の眺めを味わえます。
観光地らしく帰りは温泉に土産物など、山登りと観光がセットで楽しめます。
おすすめ③:景信山-高尾山の奥を歩く静かな山歩き
世界一の登山者数を誇る東京の高尾山の奥、稜線を歩き小仏城山を過ぎ、小仏峠を越え先に位置する景信山は標高727mの山です。
沢山の人で賑わう高尾山から先の登山道は、ハイカー・トレイルランナーといった経験者の方が歩かれる道として、高尾山域が持つ自然に包まれるような時間を過ごせることで人気があります。
低山らしく四季折々の姿を楽しめるのがこのルートの魅力で、関東平野の街並みと相模湖方面の自然溢れる眺望の2つを見られ、山の頂上ならではの景観が楽しめます。
頂上には茶屋や休憩スペースが充実していて、グループ登山にも最適です。
ご紹介のルートは高尾山口から縦走し頂上を目指し、下山は小仏バス停となっていますが、高尾山口駅に戻って温泉に浸かるのも良いですね。
おすすめ④:棒ノ折山-渓谷美を味わいながら目指す奥武蔵の名峰
奥武蔵・奥多摩の境に位置する969mの山で、多彩な登山道と適度な登り応え、頂上に至るまでのルートの個性から人気のある名峰です。
棒ノ折山の人気を不動のものにしているのは、さわらびの湯方面から登る沢沿いのルート。
遊歩道のように整備されず、沢登りで見る渓谷から頂上を目指すという、山頂からの眺望にはない登山ならではの美しさを手軽に経験できる貴重なルートで、頂上を目指すのが惜しいと思えるという、なんだか矛盾した感情を抱いてしまいます。
ソロで登るのも良いですが、個人的にはグループで登って山登りの感動を共有するのにピッタリな山で、頂上に登る過程も含めて山の美しさなのだということを気づかせてくれます。山登りの楽しさに芽生えた方が登ると、ズルズルと登山沼にハマってしまう危険な山です。
ご紹介しているさわらびの湯方面からの往復ルート以外にも、縦走登山も計画できるので、スキルや希望に合わせた登山を立案できるのも魅力です。
おすすめ⑤:高麗山-湘南に佇むファミリーハイクにおすすめの里山
湘南の名で知られる神奈川県沿岸部に面した標高168mの山です。丘陵の東端にあり、ここから地元の観光地として知られる湘南平まで縦走でき、ファミリーハイクにおすすめです。
168mの低山ながら、コンパクトにまとまったハイキング道は地元の植生を始め、ルート上から垣間見る湘南の海も、付近では最も間近に捉えられる山として人気があり、ハイライトである湘南平は、かつては千畳敷とも呼ばれたとおり眺望に優れています。
湘南平はかながわの景勝50選にも選ばれ、富士山、丹沢、相模湾を一望、レストハウスでのお食事やパンケーキなど、山頂周辺での観光もできるので、半日で湘南エリアの魅力を楽しむのに最適です。
公共交通機関では大磯駅から徒歩でアプローチして周回ルートで歩くのが人気で、マイカーなら生涯学習センターに駐車して登ることも可能です。
おすすめ登山道具
Helinox(ヘリノックス) チェアゼロ
低山ならではのゆったりとした頂上時間は、登山をする方にとって待ちに待ったご褒美タイム。とはいえ休日にはベンチがいっぱいだったり、雨季や凍結していた地面に日が当たりぬかるんでいる場合などは、座るのも億劫になります。
そんな時に役立つのが登山でも使える椅子で、収納性に優れたコンパクトなモデルから、テント泊での滞在に適した快適性に優れたモデルなど、豊富なアイテムが展開されています。
私が最近使っているのは、ヘリノックスが展開している軽量モデルのチェアゼロで、収納袋こみの重量が510gで、20L前後のバックパックにも収納できるコンパクト性が魅力のアイテムです。
簡単に組み立てられる本体は、放ると宇宙にいるかのような軽さを実現し、座ってみれば耐荷重120kgの安心感と、山にいるのを忘れてしまいそうな座り心地で、私は低山や荷物に余裕があるテント泊には必ず持ち歩いています。
これを手にしてから、頂上休憩での場所選びに難儀する必要がなくなり、好きなポイントで頂上の眺望を楽しめるようになりました。
登山で使える驚異的な軽量コンパクト性を誇るチェアゼロ、持っていて損はないおすすめアイテムです。
関東の低山で山の楽しさに触れよう
1000m前後の山々を持つ関東の山岳エリアは、登山初心者から経験者まで1年を通して楽しめる地域として親しまれています。個性を持つピークやルートによって、柔軟な登山計画を立てられ、アクセス良好な登山口も多いことから何度でも足を運びたくなるといった、山の楽しみを存分に感じられる環境に恵まれています。
ソロからグループまで、ぜひ関東の山に沢山登ってみてください