武甲山は埼玉県秩父盆地より眺められる独立峰で、石灰が取れるため採掘により斜面が大きく削られているのが特徴の山です。日本二百名山の一つでもあります。
独立峰と聞くと火山を思い浮かべますが、武甲山は火山ではなく隆起による山です。太平洋プレートに出来たサンゴ礁の島でプレートの動きに乗って移動してきました。その太平洋プレートが沈み込む際にはがされて隆起し、山になったのが武甲山と成り立ちと言われています。サンゴ礁の島であったので、石灰が採れている事に、なるほどと納得します。
秩父盆地各地から眺めるどっしりと聳え立つその姿はとても大きな存在感を感じる山で、秩父神社の神奈備山(神が宿るご神体)でもあります。
武甲山の標高は現在1304mですが、明治時代の記録では1336mとあり、32mも低くなっています。武甲山の標高が低くなった理由は、石灰岩の採掘により山の北側の斜面から旧山頂が削られたことによります。
武甲山からとれる石灰石は日本屈指の良質であり、豊富に採掘される石灰石は明治以降の日本の近代化に伴い主に首都圏の建築資材として使われています。武甲山が大都市東京を造ったと言っても過言ではありません。そして、武甲山の石灰石を採掘して流通させた人物の一人が、日本資本主義の父と言われる渋沢栄一でした。
武甲山を間近で見ると、大きく削られる姿に山が無くなってしまうのではないかと心配になりそうですが、石灰石は山の北側にしかないので、山自体は今後も小さくなるかもしれませんが無くならないようです。
紹介の山 | 武甲山(ぶこうさん) |
都道府県 | 埼玉県 |
標高 | 1,304m |
天気・アクセスなど | 武甲山の詳細情報 |
信仰の山
秩父神社の御神体ともされる武甲山ですが、山頂には武甲山御嶽神社が祀られており、山名の由来は日本武尊が甲(かぶと)を山の岩室に奉納した伝説によると言われています。この辺りでは日本武尊の伝説が残されており、三峰神社や、釜伏神社と共に、神社の狛犬が狼であることが共通しています。
▲山頂に祀られている武甲山御岳神社
横瀬町にある表参道より登山すると、登山道には参道であったことがわかる江戸時代に造られた石碑があることや、丁目石が山頂まで数多く残されおり、歴史を感じさせられる山でもあります。
武甲山山頂
武甲山御嶽神社の奥に回り込んで進むと、末社を過ぎた先でフェンスが張られている場所があります。その様子で採掘されている事を身近に感じながら進んだ先に山頂があります。本来の山頂は1980年(昭和55年)に採掘の為無くなっており、現在の山頂は2002年(平成14年)に国土地理院により改められています。
▲武甲山山頂の碑と山頂から眺める秩父盆地
山頂からの展望は素晴らしく、秩父盆地、盆地を流れていく荒川、遠くには越後山脈まで見渡せる景色が広がっています。武甲山の標高はあまり高くないのですが、盆地に聳え立つ為、天候が良くなければ山全体が雲に隠れることがあるので、お天気が良い日に登山することをお勧めします。
山頂付近は少しのスペースがありますが、人気の山である為週末などでは混んでいる事もあります。武甲山御嶽神社に降りてくると広場があり、避難所である小屋もありますので、そちらで休憩するのも良いかもしれません。休憩所は南に向いて建てられているので日当たりが良く暖かいです。
山頂にトイレはありますが水が無く、登山者が協力して登山道にある不動の滝より水をくみ上げています。大きなペットボトルが準備されているので、体力に余裕がある方は、是非頑張ってください!山頂まで運べば、トイレの奥に水を入れるマンホールとペットボトル置き場があります。そして、山頂のトイレは冬季に使えないことがありますが、登山口の一の鳥居駐車場に真新しいトイレがあります。
武甲山登山-一の鳥居からのコースが一般的
▲持山寺跡 標高約900m
武甲山への登山は表参道である一の鳥居から登るのが一般的です。一の鳥居からの累積登りは823mであり、登山道は危険な個所は無く安心して登れる山です。登山道各所にある丁目石を見つけながらの登山も楽しいです。数か所不明な丁目石がありますが、最初の丁目石の壱丁目は一の鳥居にある狼型狛犬にあり、最後の丁目石は武甲山御岳神社にある52丁目石です。
▲武甲山の登山道(表参道)にある丁目石 右上が壱丁目
登山コースは、登山口からピストンで登るのも良いですし、体力に余裕があれば持山寺跡コースや、大持山・子持山に周回することもできます。
一ノ鳥居-武甲山 往復コース
一ノ鳥居発着|武甲山周回コース
一ノ鳥居発着|武甲山・小持山・大持山・妻坂峠周回コース
武甲山へのアクセス-一の鳥居駐車場
武甲山一の鳥居駐車場は横瀬町のコンクリート工場が並ぶ場所を通り抜けた先にあります。駐車場に新しくトイレも設置されています。駐車場は比較的広いのですが、人気の山なので休日などでは込み合う事があります。
公共交通機関を利用されるのであればここまでのバスは無く、西武秩父線の横瀬駅から歩くか、タクシーになります。
▲武甲山一の鳥居と二対の狼型狛犬
武甲山下山後のお楽しみ
武甲温泉
横瀬町の国道299号より少し入った場所にある日帰り温泉です。別館に宿泊施設もあります。温泉は無色透明で無臭であり特徴的な個性はありませんが、さらっとしている気持ちが良い温泉です。湯温は高すぎることは無いのでゆっくりと浸かっていられる温泉で、露天風呂が気持ち良いです。
▲武甲温泉
丸山鉱泉 花悦の湯
国道299からかなり奥に進んだ山の中にある温泉旅館で日帰りでも入浴出来ます(要確認)。こちらのお湯もさっぱりとした無色透明のお湯でとても気持ちが良く温まります。温泉旅館でもあるので、日帰り温泉施設のような広さはありませんがとても落ち着いて入浴出来ます。露天風呂が気持ちよく、比較的すいているのでゆったりと入浴出来ます。
▲丸山鉱泉旅館(日帰り入浴可)
道の駅 果樹公園あしがくぼ
横瀬町の国道299号沿いにある道の駅です。飯能市より秩父に抜ける国道299号は立ち寄るお店がほとんどなく距離も長い為、この道の駅に立ち寄る車やバイクが多く時間や曜日によってはかなり混む道の駅です。しかし、地元で採れた新鮮野菜の販売や、自家製のうどんやそばが食べられる食堂、焼き立てパン屋さんもあります。こちらで売られているみそポテトも美味しいです。
▲道の駅あしがくぼ 地元で採れたハチミツのソフトクリーム