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笈ヶ岳の日帰り登山-二百名山最難関!?残雪期5月の登山難易度

笈ヶ岳の日帰り登山-二百名山最難関!?残雪期5月の登山難易度

日本百名山の著者である深田久弥が、未踏のため百名山に選べなかったといわれている笈ヶ岳。故に「幻の百名山」とも言われています。両白山地の北部に位置するこの山には登山道がなく、某登山番組では前人未到の挑戦を成し遂げたあの方でさえ藪に苦しめられ、「二度と来ねぇ!」と言わしめた山としても有名です。

手強いイメージの笈ヶ岳ですが、実は比較的登りやすくなる時期があるのです。それが、残雪期のこれから。雪が落ち着いて締まり、なおかつ藪が埋没している早春の僅かな時期が狙い目で、この時期を狙って多くの登山者がこの山に挑みます。実は筆者もその一人。昨年5月初旬、実際に日帰り登山した際のことをお伝えします。

笈ヶ岳へはどのルートで登る?

残雪期の笈ヶ岳には、主に2つのルートで登る方が多いようです。

1つは一里野温泉スキー場の下部からスタートして山毛欅尾山(ぶなおやま)を経由するコースもう一つは中宮展示館(ビジターセンター)から登る比較的距離の短いコースです。距離が短いとはいえ、往復約16kmの道のりです。

筆者が選んだのは後者でした。決め手は、日帰りできそうなので装備が最小限で済むということ。ただこの登山口には、白山白川郷ホワイトロードという冬季閉鎖される林道が通れるようにならないと辿り着くことができません。林道の開通日や通行可能時間、天候や藪の具合など、複合的な要素を考慮して日程を決めました。

前者の場合、日帰りできるのはかなりの健脚者になるので、テント装備を整えた一泊二日で入山する方が多いようです。その場合は林道の通行状況などを考慮する必要がないので、日程が組みやすくなるかもしれません。

【前半】トンネル、渡渉、そして急登の連続

登山口は中宮展示場の横にあり、蛇谷自然観察路をしばらく歩きます。すると、ちょっと不気味な歩行者用トンネルが2カ所。ここをくぐって先に進みます。

程なく渡渉です。水量によっては渡れない時もあるようなので下調べ必須です。また、朝は渡ることができても、帰りは水量が増えて渡渉しづらくなる場合もあるようです。

渡渉が終わると本格的な登山が始まるのですが、最初は急登の連続。終わりの見えない急登をよじ登るようにひたすら登り続けます。幸い、この時期を狙っての登山客が多かったので、みんなで励ましあいながら進むことができたのが救いでした。特に、筆者たちは女子二人のパーティーだったので、気にかけてくれる方が多かった気もします。

当初は無雪でしたが、徐々に残雪が出てき始め、その後木々の小枝が鬱陶しい状況になってきました。急登が一段落して開けた場所に出たので、ここで休憩を兼ねてアイゼンを装着しました。

【中盤】冬瓜山(かもうりやま)、シリタカ山へ

中盤に差し掛かり、他の登山者から「冬瓜山を登るか、巻くか」という話が聞こえてくるようになりました。それまでの行程が比較的順調だった筆者たちは、冬瓜山に登ることにしましたが、他の登山者の中には登らずにトラバースした方もいたようです。

冬瓜山の登りは藪の中を歩きました。もう少し早い時期なら残雪があり、藪を避けられたかもしれませんが、この日は霧氷が付いた小枝をかき分けて進みました。また山頂付近には「ミニ蟻の戸渡り」のようなヤセ尾根がありました。そこから一旦雪面を下ったのですが、前を歩く方が軽く滑落するのを目の当たりにしたので、ピッケルを投入。一歩ずつ慎重に下りました。

シリタカ山への道は楽しかった記憶があります。一面真っ白で丸みを帯びた山容に、テンションが上がりました。山頂からの見晴らしがよく、前方には笈ヶ岳が、振り返れば白山がドーン! 気も緩みがちになりましたが、本当の試練はここからでした。

【後半】本格的な藪に突入! そして山頂へ

シリタカ山から笈ヶ岳はすぐ近くに見えるのですが、ここからかなり下って登り返すことになります。ここまでの道中、何度登り返しに苦しめられて来たことか。

その後は残雪と藪が何度も交互にやって来ます。この辺りの藪は笹が生い茂っており非常に厄介で、イライラが募りました。先行者が見えないと「この道で合っているのか?」と不安になりましたが、前方から登頂を果たした方々が下りて来るのが見えてホッとする、の繰り返しでした。

そうこうしているうちに藪が消え、山頂へ向かう白いビクトリーロード。程なく山頂に到着しました。もう半端ない達成感! 山頂に居合わせた方とハイタッチして喜びを分かち合い、笹寿司を頬張りました。

下山はシリタカ山・冬瓜山をトラバースして冬瓜平方面に進みましたが、この辺りの斜面も急なところが多く、ピッケルを携えて慎重に進みました。また、小規模な雪崩の跡が数カ所あったので、安全かつ早めに通り抜けました。登りで苦しめられた急登を下るのも、疲労困憊の体には堪えました。

笈ヶ岳登山を振り返る

登山自体はほぼ計画通りに進み、問題なく無事に終えることができましたが、今思えば、女子二人の笈ヶ岳は大冒険だったなぁと思います。ただ、近くに他の登山者がいてくれることが多く、安心感がありました。

日程選びは慎重に行いました。実は、前年の同じ時期に笈ヶ岳登山を計画していたのですが、悪天候のため断念。その前日には遭難者も出ていました。なので、とにかく天気の安定している日を選び、安全面に最大限の注意を払いました。

事前準備に関しても、近くの山に登って藪の状況を確認したり、筆者の同行者は林道開通後に中宮展示場へ下見に出かけ、下山後の方から情報を得たりと、可能な限りの情報収集を行いました。また、ツェルトなどのビバーク装備も揃えました。これらの下準備があったからこそ、ある程度の自信を持って笈ヶ岳に挑むことができたと思います。

今年笈ヶ岳を目指す方へ

例年なら4月中旬から5月初旬にかけての時期が、残雪や藪の状態がベストだと言われていますが、残雪の少ない2023年は登山に適した時期が早まる可能性が高いと思われます。自身の力量を考慮しながら、登山日を設定することが重要だと思います。例年なら利用できる近くの温泉旅館の「笈ヶ岳登山特別宿泊プラン」も、今年は時期が合わない可能性があるので要確認です。当該施設や関係機関に直接聞いてみるのがいいでしょう。

比較的登りやすい時期とは言え笈ヶ岳登山は厳しい山行になるのは間違いないでしょう。ただ、しっかりとした準備を行えば決して登れない山ではありません。あなたも「オイズリスト」の仲間入りを果たしてみませんか?

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