ドイツのフリードリヒスハーフェン・メッセを会場に行われているアウトドアショー『OutDoor』。こちらのアウトドアショー2017で、トレッキング部門でみごとWINNERに輝いたのは、テクニカの登山靴『FORGE』。
このテクニカの『FORGE』、今までにはない、まったく新しい考え方でデザインされたブーツなんです。なんと、個人の足に合わせることのできるユニークなラストをつかい、パーフェクトにパーソナライズされたブーツを提供するというもので、今後のアウトドアギアの考え方の先駆けとも言える、なんとも使い手としては楽しくて、便利で、登山・山あそびがもっと楽しくなる登山靴なんです。
2018年のアウトドアマーケットに投入されるという、今後のテクニカ製品の礎(マイルストーン)となるような、この『FORGE』。今回特別にサンプルをお借りすることができ、実際にトレッキングを楽しんできたので、そのレポートを公開させて頂きます。
パーソナライズされた登山靴とは
『個人の足に合わせることのできるユニークなラストをつかい、パーフェクトにパーソナライズされたブーツ』って果たしてどんなものなんでしょう?
実際にサンプルをお借りする際に、テクニカ本社に向かいました。そこで驚いたのは、僕の足に合わせて熱形成して、抜群のフィット感を生み出すというものなんです。
テクニカは全てのフットウェアでもっとも重要なことは『FIT(フィット)』であると、これを重要視し、4つのユニークな解決策をあみ出したんです。
テクニカ『FORGE』の4つのユニークな解決策
- 解剖学的なラスト(木型)
- カスタマイズ可能な最高仕様のソール
- 熱形成でフィットさせるアッパー
- 新しい構造のオーバーラップデザイン
これらのデザイン、構造はどれも斬新で、『今までに見たことがない』という見た目の驚きと共に、そのはき心地の良さ、歩きやすさ、疲れにくさには心底驚かされます。あまりにも全てが新しすぎて、何から話してゆけば良いのか迷いますが、1つ1つ順番に紹介していきます。
テクニカFORGEが採用した解剖学的なラスト(木型)
通常のブーツで採用されている木型と、今回テクニカFORGEが採用した木型の違いを見てもらうと一目瞭然なんですが、解剖学的とあるように、足の甲、くるぶし、土踏まず、踵といった足の形状に合わせて、足先から足首に到るまでの、見事なアーチをまとった形状のラストは非常に美しく、このラストを採用したFORGEは、熱形成されていない状態でも、足を入れるだけで今までにないフィット感を感じることができました。
「ここまでフィット感があって、ここから更にパーソナライズされるのか…」と考えずにはいられませんでした。
テクニカFORGEが採用したカスタマイズ可能な最高仕様のソール
このラスト(木型)にマッチするインソールは、世の中で出回っている様々なインソールと比べても、最高仕様と言えるものを採用しているので、インソールを追加で購入する必要はなく、また足裏の形状に合わせて切り取ったりする必要もないんです。
更にFORGEにあった、見事なアーチを採用したインソールに自分の足裏にマッチするように熱形成をしてくれるんです。この熱形成の方法はシンプルで、まずソールを専用の機械で熱を加え、その後、自分の足裏に一定時間ある程度の力でフィットさせ時間を置いて、形状をパーソナライズするというものなんです。
テクニカFORGEが採用した熱形成でフィットさせるアッパー
ソールが完成したら次はブーツのアッパーを熱形成でパーソナライズします。方法はインソールと同じように、専用の機械で熱を加えて行うのですが、これによって高いレベルのホールド、サポート、快適性が実現されるんです。
テクニカの三田村さん曰く、『この熱形成によってフィット感に凄く驚く人と、そうでもない人と別れます。そもそもラストが非常に日本人向けでありながらアナトミカル(解剖学的)な形状なので、熱形成しなくともフィット感を感じる方もいるんですね。そういう方は熱形成した後も、あんまり驚かれないです』という。
僕はこの『あんまり驚かない派』だったわけだが、熱形成する前にブーツに足を入れて『驚いた』、いわば『驚き・熱形成前派』だったわけです。
テクニカFORGEが採用した新しい構造のオーバーラップデザイン
驚き・熱形成前派と言っておきながら、本当に驚いたのはやっぱり実際に自然の中で歩いてみての、その驚きの履き心地の良さでした。これを実現しているのはもう1つ、いや2つのテクニカFORGEのその構造によってだと思っています。その1つにブーツのタン(ベロ)がないんです。
この構造は内踝周りから無駄な素材を省いて、ブーツの内側へプレッシャーを与える素材を取り除いたオーバーラップデザインという構造なんですが、歩いていて足首周りのストレスが全くないんです。そうしてシューレースをキュキュッと締め付けての足首のフィット感が抜群なんです。
テクニカFORGEが採用したシューレース
皆さんが想像するブーツのシューレース部分ってどうなっていますか?僕が思い浮かぶのはメタルのフックや、アイレットが使われているブーツを思い浮かべるんですが、FORGEは全く違って、高い耐久性のあるKEVLAR素材を採用しているんです。KEVLARって軽量で耐久性があり、極めて強靭という、防護服なんかにも採用されている繊維です。
これによって、ブーツを閉めるときに、結んでいる最中に緩くなったり、また歩いている最中に解けてしまったりという心配が、絡み合うシューレースの接点が増えることで軽減されるんですね。
僕は長い縦走をするときに、よくブーツの紐が緩んできて、途中で止まって靴紐を再度締めることがあって、これが凄く億劫だったんです。また疲れている体で、靴紐を結ぶって意外と難儀で、手が悴んでいると尚更なんですね。これが大分軽減されることを考えると、なんとも嬉しい気持ちになります。
ラグの深さが特徴のビブラムソール
FORGEが採用しているソールはビブラム社製のラグの深さが特徴のソールなんですが、ラグが深いことで、接地面へのコンタクトが高まるので、勾配のある登山道での登り降りを、安全で快適なものにしてくれます。ラグって凹凸のある意匠のアウトソールのことを指すんですが、自分の体力をちゃんと確かめて、ソールの形状は考えるべきで、そういう意味では安定感と安心感のあるソールを採用した登山靴と言えると思います。
GORE-TEX採用だから全天候で使える安心感
登山靴を選ぶときに、気にしたいのが雨の侵入や通気性ですが、これにも優れたゴアテックスを採用したのもFORGEの特徴です。細かな部分を見るとなんとも優れたデザイン性で、普段からも履きたくなる格好よさがあるんです。
このブーツを借りてから、まだ期間を使った、それこそ縦走登山などで試し履きが出来ていないのですが、2、3ハイキングで試してみた感想は重量が595グラムなわりに、なんとも軽く感じて、なんだったら走れちゃうんです。
これってフィット感の良さから来るものなんだと感動しました。
また登山を終えて登山靴を脱いだ瞬間の開放感ってあると思うんですが、ずっと履いていても窮屈感を感じないし、脱いだ瞬間の開放感は、FORGEでは残念ながらあまりないんですね。サンダルに履き替えて歩いたときに、流石に軽さは感じますが、それにしてもなんと履き心地がいいんだ!と驚くばかりでした。
今年は北アルプスの読売新道を楽しもうと思っているので、ヘビーウェイトな装備を背負って、足元はFORGEで登山を楽しみたいと思ってます。