「伊豆」と聞くと静岡県の観光地を思い浮かべるかもしれませんが、伊豆ヶ岳は埼玉県飯能市にある山で、関東百名山のひとつです。日帰り可能で、初心者からベテランまで多くの人が登っています。今回は万人に愛される伊豆ヶ岳の魅力や難易度別のコース、周辺のおすすめスポットを紹介します。
伊豆ヶ岳の基本情報と3つの魅力
伊豆ヶ岳は秩父・奥武蔵エリアに所属しています。秩父・奥武蔵エリアには武甲山や日和田山など気軽に登山を楽しめる山が複数ありますが、中でも伊豆ヶ岳は人気No.1。登山ルートの途中にある正丸峠は、昭和30年に昭和天皇も訪れています。
山の名前 | 伊豆ヶ岳(いずがたけ) |
標高 | 851m |
都道府県 | 埼玉県 |
詳細情報 | 伊豆ヶ岳の地図・天気 |
山頂にある看板によると、「伊豆ヶ岳」の名前の由来は以下4つの説があるそうです。
- アイヌ語で「突峰状の山容」の意味である「イズ」からとったアイヌ語説
- 快晴の日に山頂に登ると伊豆まで見えるから「伊豆ヶ岳」説
- 柚の木が多くあったからという「柚ヶ岳」説
- ふもとの湯の沢で温泉が湧き出ており、その前の山だから「湯津ヶ岳」説
諸説ありますが、アイヌ語説が有力で、それ以外の3つは地元で伝えられている説とのこと。
「アイヌ」と聞くと北海道のイメージですが、埼玉県までアイヌ語が浸透していたとは驚きですね。
魅力その①:レベルに応じてコース選択できる
伊豆ヶ岳は標高851mの低山ですが、初心者からベテランまで楽しめます。理由は実力に応じてコース選択できるからです。
伊豆ヶ岳の主なコースは以下の2つ。
- 初心者でも登頂可能な正丸峠周回コース
- ベテラン健脚者も納得の奥武蔵縦走コース
正丸峠周回コースは初心者でも安心なルートなので、子どもからご年配の方まで楽しめます。奥武蔵縦走コースは6時間30分の歩きごたえのあるルートで、道中に「足腰の神仏」をまつる「子の権現」があることからベテラン登山家からも評判です。
伊豆ヶ岳は初心者はもちろんベテランも満足感を得られます。
魅力その②:1年を通して登山可能
伊豆ヶ岳は季節を問わず、1年中登ることが可能です。
特におすすめのシーズンはこちら。
- 花が咲き誇る4~5月
- 紅葉の美しい10~11月
天気のよい日は山頂から西武ドームや都心の高層ビル群、群馬県と長野県の県境である浅間山まで見渡せます。
登山は1年を通して可能ですが、冬は積雪があるため冬装備でのぞみましょう。
魅力その③:電車も車アクセス抜群!
伊豆ヶ岳はアクセスの良さが魅力です。最寄り駅は西武秩父線正丸(しょうまる)駅。池袋駅から約1時間30分で到着するので、都心からも気軽に来られます。正丸駅からはバスを使わず徒歩で登山口にアプローチできるので便利です。
また、正丸駅の隣にコインパーキングがあるため、車で来ることも可能。
交通手段が選べて、駅から登山口まで歩いて行けるのは嬉しいポイントです。
伊豆ヶ岳の難易度別おすすめ登山コース
伊豆ヶ岳は実力に応じてコース選択ができ、初心者からベテランまで楽しめる山です。
難易度別に2つのコースを紹介します。
【初心者におすすめ】正丸峠周遊コース
①正丸駅→30分→②伊豆ヶ岳登山口(大蔵山コース)→65分→③小高山→25分→④五輪山→15分→⑤伊豆ヶ岳→15分→⑥五輪山→20分→⑦大蔵山→50分→⑧伊豆ヶ岳登山口(大蔵山コース)→25分→⑨正丸駅
必要日数 | 日帰り |
コースタイム(休憩を含まない) | 4時間5分 |
距離 | 約7.7㎞ |
累積標高 | 611m |
正丸駅から登山口までは舗装された道路、その後はトレイルを歩きます。初心者向けコースではありますが、歩きごたえのある登山道です。そばに小川が流れているため、せせらぎ音を楽しみながら登れます。
基本的には歩きやすい登山道になっていますが、丸太や沢を渡る場面もあるので、滑らないように注意が必要です。
また、山頂付近には「男坂」と呼ばれる鎖場があります。以前は伊豆ヶ岳の名所でしたが、現在は落石の危険があるためロープが張られており、通行禁止です。安全のためにも男坂は避けて、女坂から山頂を目指しましょう。
帰り道は、五輪山以降の下りは、登りとは別ルートで登山口まで降りるので飽きずに楽しめますよ。
【しっかり歩きたいベテラン向け】奥武蔵縦走コース
①正丸駅→30分→②伊豆ヶ岳登山口(大蔵山コース)→65分→③五輪山→15分→④伊豆ヶ岳→30分→⑤古御岳→40分→⑥高畑山→45分→⑦天目指峠→25分→⑧愛宕山→35分→⑨子ノ山→50分→⑩浅見茶屋→55分→⑪吾野駅
必要日数 | 日帰り |
コースタイム(休憩を含まない) | 6時間30分 |
距離 | 13.0㎞ |
累積標高 | 上り:1010m 下り:1125m |
正丸峠周回コースと同じ正丸駅からスタートし、吾野駅がゴールです。
低山とはいえ、繰り返すアップダウンが侮れない健脚者向けのロングコースになっています。しかし、途中の伊豆ヶ岳と天目指峠の2ヶ所にエスケープルートがあるので安心して挑戦が可能。古御岳や高畑山、天目指峠にもベンチや東屋があり、終盤には浅見茶屋もあるので休憩スポットにも事欠きません。
道中に「足腰の神仏」をまつる「子の権現」があるので、足腰にケガなく登山が続けられるようお祈りしてはいかがですか。
伊豆ヶ岳登山口へのアクセス・各種情報
伊豆ヶ岳は電車も車もアクセス良好です。最寄り駅は西部秩父線正丸駅で、駅から徒歩で登山口まで行けます。
駐車場・コンビニ情報
登山口に駐車場はありませんが、正丸駅の隣にコインパーキングがあります。1日500円で10台ほど駐車可能です。付近にコンビニはなく、正丸駅前に売店と自動販売機があります。
トイレ情報
登山口にトイレはないので、正丸駅で必ず立ち寄りましょう。
また、山頂にトイレはありませんが、途中の正丸峠にある「奥村茶屋」という食事処にあります。カレーやうどん、ジンギスカンのほか、甘味やコーヒーも。正丸峠が一望できるテラス席で絶景とともにランチがいただけるので、休憩にもおすすめです。
伊豆ヶ岳Q&A
Q1:伊豆ヶ岳に危険なところはある?
山頂直下に「男坂」という鎖場があります。伊豆ヶ岳の名所でしたが、岩場が壊れやすく滑落の危険があるため、現在は通行禁止です。「女坂」を登って山頂まで向かいましょう。
Q2:伊豆ヶ岳は雪が積もる?
冬は積雪があります。アイゼンやトレッキングポールなどの冬装備で行きましょう。
Q3:伊豆ヶ岳にテント場はある?
伊豆ヶ岳にテント場はありません。
伊豆ヶ岳周辺のおすすめ山旅スポット
子ノ権現天龍寺
子の権現天龍寺は奥武蔵縦走コースの道中にあり、「足腰守護の神仏」として信仰を集めています。そのため登山家から人気で「1年の最初の登山は子の権現お参りのために伊豆ヶ岳」という人もいるほど。
重さ2トンもある日本一の鉄ワラジや夫婦下駄、埼玉県指定天然記念物になっている二本杉など見どころもたっぷりです。
また、「足腰守り」として手作りのワラジお守りも売っています。ワラジは古来より善事を運び届ける象徴とされているそうなので、登山リュックにつけるのもおすすめです。
正丸峠周回コースを選んだ方もご安心ください。駐車場完備で寺までの山道は全面舗装されているので、下山後に車でも行けますよ。
竹寺
竹寺の正式名称は「医王山薬寿院八王子」といい、山岳信仰の道場として1000年余の歴史がある、明治維新の神仏分離から逃れた神仏習合の寺です。見事な竹林があることから「竹寺」の愛称で親しまれています。
境内には竹の器で料理をいただける竹寺ならではの食事処も。店内にも竹が生えており、雰囲気のある食事処です。メニューは蕎麦やうどんなどの食事だけでなく、かき氷やだんご、竹笹ようかんなどの甘味も。
また、四季の山菜や薬草を使った精進料理もあり、「住職の法話を聞きながら精進料理をいただく」という贅沢な時間を過ごせます。ただし精進料理は予約制なので、希望の際はお忘れなく。
浅見茶屋
浅見茶屋は奥武蔵縦走コースの終盤、吾野駅の3.2㎞手前にある茶屋です。古民家のような外見をしており、趣を感じられます。
浅見茶屋は登山客以外にもわざわざ山奥まで食べにくるお客さんがたくさんいる、うどんの名店です。ミネラル豊富な子ノ山天然水で製麺したうどんはかなり太めで、硬くコシがあります。
また、うどんだけでんなく自家製バニラアイスやところてん、クリームみつ豆など甘味もたくさん。
頑張って歩いた最後にご褒美として、浅見茶屋で一服するのもいいですね。
営業時間は11時~16時と短めなので、立ち寄る時刻にはご注意ください。
休暇村奥武蔵
休暇村奥武蔵は日帰り入浴も可能なリゾートホテルです。
正丸駅から車で10分ほど。正丸駅から2駅の吾野駅から無料送迎バスも出ています。
日帰り入浴は平日のみでしたが、2023年4月1日から土日祝日の営業も再開されました。
※ゴールデンウイーク、夏季・年末年始は休止
登山でかいた汗を流し、体の疲れを癒せたら最高の締めくくりですね。