三本槍岳は那須岳のなかでも比較的登山客が少なく静かな登山ができる山です。栃木県側からと福島県側からアクセスでき、北東麓に甲子温泉、隠居倉西麓に三斗小屋温泉、東麓に鹿の湯・北温泉など名湯がひしめく、山と温泉を堪能できる一粒で二度おいしいエリアです。
今回は、登山初心者がロープウェイを使って気軽に登れるルートと裏那須のルートをご紹介します。
三本槍岳はルートも見どころも多彩初心者からベテランまで楽しめる
山の名前 | 三本槍岳(さんぼんやりだけ) |
標高 | 1,916.9m |
エリア | 福島県・栃木県 |
基本情報 | 三本槍岳の地図・天気 |
三本槍岳は名前と山容のギャップに驚く
三本槍岳は、福島県西白河郡西郷村と栃木県那須塩原市との堺にある標高1,916.9mの那須岳最高峰の山で、「関東の百名山」または那須岳として「日本百名山」にも選定されています。その名前から尖った山のようにイメージしてしまいますが、実はふくよかでどっしりとした山容を誇ります。日光国立公園に属し一等三角点が設置されています。
三本槍岳山頂に立てば広がる稜線と大パノラマに圧倒される
三本槍岳からの眺望は、東に八溝山、西には日光連山・南会津の山々や大峠を経て流石山・大倉山・三倉山の山並みが続き、南に茶臼岳そして北には磐梯山や遠く飯豊山と、目を見張るほどの大パノラマが広がり感動すら覚えます。
北に位置し神秘の沼とよばれる鏡ヶ沼は直径100mの爆裂火口で、その後水をたたえモリアオガエル・クロサンショウウオが生息する現在の姿になりました。
三本槍岳周辺には名湯がひしめく
三本槍岳を含む那須岳周辺には那須七湯(那須温泉元湯・鹿の湯、北温泉、大丸温泉、高雄温泉、八幡温泉、三斗小屋温泉、弁天温泉)、北麓には甲子温泉と名湯が点在しています。
那須温泉元湯・鹿の湯においては開湯1,300年という歴史の重みを、乃木希典陸軍大将と那須御用邸ゆかりの大丸温泉。そして映画テルマエ・ロマエの撮影が行われた北温泉、白河藩主松平定信公が愛した甲子温泉・大黒屋などなど、どこの湯に浸かろうか迷ってしまうほどの名湯ぞろい。もちろん車で行けないランプの秘湯、三斗小屋温泉も忘れてはいけません。
三本槍岳の難易度別おすすめ登山コース
初心者におすすめなロープウェイを利用した表那須コースを2コースと、福島県下郷町から登る裏那須のコースをご紹介します。
那須ゴンドラ〜三本槍岳ピストン
誰もがあこがれる三本槍岳ですが、マウントジーンズ那須ゴンドラを使えば初心者でも無理なく登ることができます。
スタート | マウントジーンズ那須ゴンドラ山頂駅 |
ゴール | マウントジーンズ那須ゴンドラ山頂駅 |
距離 | 8.5Km |
累積標高 | 上り631m/下り630m |
コースタイム | 4時間20分(休憩約30分含む) |
難易度/体力 | ★☆☆☆☆/★★☆☆☆ |
- 山頂駅→(15分)マウントジーンズスキー場分岐→(60分)赤面山分岐→(15分)スダレ山→(10分)三本槍岳・中の大倉尾根・北温泉分岐→(30分)三本槍岳 上り合計タイム130分
- 三本槍岳→(20分)三本槍岳・中の大倉尾根・北温泉分岐→(10分)スダレ山→(10分)赤面山分岐→(40分)マウントジーンズスキー場分岐→(10分)山頂駅 下り合計タイム90分
ゴンドラで約10分間の空中散歩を楽しみ山頂駅からのスタート。ゴヨウツツジの運行期間であれば純白の花が出迎えてくれます。
中の大倉尾根歩きは眺望を楽しみながら気持ちよく歩けますが、途中金属ネットが張ってあるところやぬかるんだところがありますので足元に注意して進みましょう。
中の大倉尾根を登り切れば尾瀬の燧ヶ岳や会津駒ヶ岳を見ることができ、三本槍岳山頂には360゜の眺望が待っています。
那須ロープウェイ〜茶臼岳〜三本槍岳
那須ロープウェイを使って茶臼岳を経由し、三本槍岳を目指すロングトレイルになります。
スタート | 那須ロープウェイ山頂駅 |
ゴール | 峠の茶屋登山口~那須ロープウェイ山麓駅 |
距離 | 約12.7Km |
累積標高 | 上り1154m/下り1152m |
コースタイム | 6時間25分(休憩約40分含む) |
難易度/体力 | ★★☆☆☆/★★★☆☆ |
- 山頂駅→(5分)牛ヶ首分岐→(20分)山頂口→(10分)茶臼岳山頂→(25分)茶臼岳お釜口→(30分)峰の茶屋跡避難小屋~剣が峰→(10分)恵比寿大黒→(20分)朝日の肩→(10分)→朝日岳→(15分)熊見曽根→(5分)1900m峰→(15)清水平→(10分)三本槍岳・中の大倉尾根・北温泉分岐→(25分)三本槍岳 上り合計タイム200分
- 三本槍岳→(20分)三本槍岳・中の大倉尾根・北温泉分岐→(10分)清水平→(10分)1900m峰→(5分)熊見曽根→(10分)朝日の肩→(10分)恵比寿大黒→(20分)→峰の茶屋跡避難小屋→(15分)中の茶屋跡→(15分)登山指導所・登山ポスト→(5分)峠の茶屋駐車場→(15分)那須ロープウェイ山麓駅駐車場 下り合計タイム135分
ロープウェイを使うのは上りだけ、下りは峠の茶屋登山口まで下ります。
山頂駅から茶臼岳山頂までは、途中からガレ場になり非常に歩きにくくなっています。
3,000m級にも引けを取らない、標高2,000m以下でこの圧巻の眺望です。
峰の茶屋から10分ほどでトラバース道、その後ゴツゴツした岩場~鎖場と続き朝日岳へ向かいます。
朝日岳は尖った山頂であるため狭く、人が多いとなかなかゆっくりできませんが眺望は三山のなかでは一番です。
熊見曽根から1900m峰を越えると、湿地のため木道が設置された清水平まで下ります。
三本槍岳・中の大倉尾根・北温泉分岐に出れば三本槍岳へはなだらかな上りになりますが、意外にここは体力が必要です。頑張りましょう、三本槍岳山頂はもうすぐです。
那須三山を縦走する贅沢なコースで、難易度はそれほど高くありませんが距離を歩くため、初心者で体力に自信がない人はそれなりの準備が必要です。
ロープウェイの山頂駅までは茶臼岳の登り返しがあるため山行の終盤には結構こたえますので、歩いて峠の茶屋まで下るほうが時間的にも体力的にも楽だと思います。
下りは峰の茶屋跡避難小屋から中の茶屋跡を経て峠の茶屋登山口へ。そこから那須ロープウェイ山麓駅駐車場まで下りてきます。
裏那須から三本槍岳~大峠周回
表那須の賑わいとは裏腹に、静まりかえった鏡が池を巡りながら三本槍岳をめざします。戊辰戦争で西軍が会津に侵入したことで知らる大峠には、そのときに造られた塹壕跡があります。遠く古人に思いを馳せてみるのも良いのではないでしょうか。
スタート | 林道大峠線終点駐車場 |
ゴール | 林道大峠線終点駐車場 |
距離 | 9.4Km |
累積標高 | 上り695m/下り706m |
コースタイム | 4時間50分(休憩約30分含む) |
難易度/体力 | ★★☆☆☆/★★☆☆☆ |
- 林道大峠線終点駐車場→(15分)鏡沼分岐点→(50分)鏡が沼→(25分)三本槍岳・甲子山・鏡が沼分岐→(30分)三本槍岳・甲子山・大峠・三斗小屋温泉分岐→(15分)三本槍岳 上り合計タイム135分
- 三本槍岳→(10分)三本槍岳・甲子山・大峠・三斗小屋温泉分岐→(60分)大峠→(30分)鏡沼分岐点→(15分)林道大峠線終点駐車場 下り合計タイム115分
駐車場から少しのあいだは林道を歩きますが鏡沼分岐から急登となります。刈り払いされている笹薮の道をしばらく進むと鏡が沼に到着。もともとは爆裂火口。水面に景色が映りこむ。しばし神秘的な静寂の時間を楽しみましょう。
尾根に出ると視界が開け、三本槍岳・甲子山・大峠・三斗小屋温泉分岐に来れば三本槍岳山頂までもう少し。
すばらしい稜線、言葉が出ませんね。
三本槍岳のQ&A
三本槍岳の名前の由来は?
三本槍という名は、会津藩・那須藩・黒羽藩の三藩が藩の境界を確認するため毎年山頂に槍を立てたことに由来します。明治初期の地図には「三方槍」という別名も確認されました。
三本槍岳に登るなら適期はいつ?
三本槍岳は、新緑の5月から紅葉の10月まで楽しめる山であり、特に紅(黄)葉はすばらしく、那須岳一帯の秋は日本一という声も聞かれるほど人気があります。
また、那須の山々は標高2,000m弱でありながら涼冷な気候のせいで、標高2,500m以上で見られる高山植物が自生している珍しい地域であり、標高1,600m付近でもハイマツを見ることができます。
登山口へのアクセス・各種情報
三本槍岳を含む那須岳の登山ルートは多彩なため、登山口も数か所あります。主な登山口は以下の通りになります。
峠の茶屋
那須岳登山の代表的な登山口。
ここからのスタートが一番多いため週末には多くの車が訪れ、トップシーズン(紅葉時期)は朝4時ごろには満車になります。ここが満車になると大丸県営駐車場まで戻らなくてはなりません。
駐車台数 | 167台 |
駐車料金 | 無料 |
注意事項 | *駐車場の入口・出口は一方通行になっています、ご注意ください。 |
峠の茶屋へのアクセス
マイカー
- 東北自動車道那須インターを下りたら右折し那須街道(県道17号線)を那須高原方面へ。
- 一般道の場合は国道4号線から那須街道(県道17号線)を那須高原方面へ。
那須湯本、大丸温泉駐車場、那須ロープウェイを過ぎると終点が峠の茶屋駐車場です。
高速バス
- 新型コロナウィルスの影響により全面運休中です。
JR新幹線
- 那須塩原駅下車、路線バスにて70分。
JR宇都宮線
- 黒磯駅下車、路線バスにて60分。
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峠の茶屋駐車場ライブカメラ
那須ロープウェイ利用
山麓駅から山頂駅まで標高差200mを約4分で結ぶロープウェイ。山頂駅から茶臼岳山頂まではおよそ40分です。
トップシーズン(紅葉時期)には駐車場に入る車で混雑し、8時を過ぎるころには渋滞が発生します。
収容台数 | 約150台(駐車場は3か所に分かれます) |
駐車料金 | 無料 |
営業時間 | 8:30~16:30(上り最終16:00 下り最終16:20) |
営業期間 | 3月中旬~12月中旬 |
ゴンドラ料金 | (大人)往復1,800円 片道1,200円 |
運行時刻 | 毎時 00分・20分・40分 20分間隔での運行です(始発と最終は営業時間) |
TEL | 0287-76-2449 |
その他施設 | トイレ 自販機 軽食 |
那須ロープウェイへのアクセスは峠の茶屋と同じルートです。上記を参照ください。
▼詳細はこちらから
那須ロープウェイ(公式ホームページ)
マウントジーンズスキー場 那須ゴンドラ
三本槍岳へのアクセスはここからが最短です。
山頂駅を降りれば国内最大級約3万本のゴヨウツツジの群生が。ゴヨウツツジといえば敬宮愛子内親王のお印の花。純白の花のトンネル(5月中旬ごろ)が迎えてくれる、一周約45分のゴヨウツツジ遊歩道もあります。
またゴンドラ山頂にはカフェやドッグラン、トランポリンやハンモックなどの施設が充実しています。
収容台数 | 800台 |
駐車料金 | 無料 |
営業時間 | 8:30~15:00(下り最終15:30) |
運行スケジュール | ゴヨウツツジ那須ゴンドラ:4月下旬~6月初旬 清涼那須ゴンドラ:7月中旬~8月下旬 紅葉那須ゴンドラ:9月初旬は金・土・日のみ 9月中旬~11月中旬まで *詳しいことはお問合せください |
ゴンドラ料金 | (大人)往復1,700円 片道1,400円 |
TEL | 0287-77-2300 |
その他施設 | トイレ 自販機 山頂カフェ |
マウントジーンズ那須ゴンドラへのアクセス
マイカー
- 東北自動車道那須高原SAスマートインターチェンジを下り、国道4号線から県道305号線(豊原大島線)を那須高原方面へ。那須どうぶつ王国を過ぎたら突き当りが駐車場です。那須高原SAから20分
- 一般道も国道4号線からは同じルート、県道305号線を那須高原方面へ。
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マウントジーンズ那須【Mt.JEANS】
林道大峠線終点駐車場
収容台数 | 約20台 |
駐車料金 | 無料 |
その他施設 | トイレ、水場、自販機なし |
2023年6月現在、ヨロヒ沢手前で通行止めとなっており林道大峠線終点駐車場まで車で入ることはできません。しかし通行止めになっているところに駐車できるスペースがあります。
トイレ他何もありませんが、手前の観音沼森林公園にきれいなトイレがあります。
三本槍岳周辺のおすすめ山旅スポット
八幡園地のツツジ群落
23haに20万本のヤマツツジやレンゲツツジが群生し、5月中旬ごろから6月中旬ごろまでエリア一帯を真っ赤に染める光景は圧巻で、環境省の「かおり風景100選」にも選定されています。
正面には八溝山、眼下には白河市や那須塩原市黒磯の市街地など抜群の眺望を誇ります。
▼詳細はこちらから
那須自然研究路と八幡つつじコース
那須平成の森
現在の上皇陛下御在位20年の節目の年に、那須の豊かな自然に国民が直接ふれあえるようにとの上皇陛下のお言葉を受け、那須御用邸のおよそ半分にあたる約560haが宮内庁から環境省に移管されました。その後、平成23年の5月に「那須平成の森」として開園しました。
インタープリターと呼ばれるスタッフがさまざまなプログラムを実施しております。昭和天皇が愛した那須の自然を感じてみてはいかがでしょうか。
TEL/0287-74-6808 (9:00~17:00)
▼詳細はこちらから
那須平成の森
三本槍岳周辺の名湯
三本槍岳周辺には由緒ある名湯が点在しています。
那須温泉元湯・鹿の湯
開湯は7世紀前半、約1,300年前といわれ、傷ついた鹿が傷を癒していたことから鹿の湯と名付けられました。「かぶり湯200回」という独特な入浴法を体験してみてください。
営業時間 | 8:00~18:00(最終受付17:30) 年中無休 |
料金 | 大人500円 小学生300円 |
TEL | 0287-76-3098 |
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那須温泉 鹿の湯
大丸温泉
江戸中期に発見され300年の歴史を誇る大丸温泉は標高1500mの高所に湧く温泉で、明治期には乃木希典陸軍大将夫婦が足しげく訪れ、当時の着物や日記・手紙など貴重な遺品がロビーの一角に展示されております。また那須御用邸の温泉は、ここ大丸温泉から引き湯されています。
日帰り入浴時間 | 11:30~15:00(最終受付14:30) |
日帰り入浴料金 | 大人1,000円 3歳から小学生700円 |
TEL | 0287-76-3050 |
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大丸温泉旅館 公式サイト
北温泉
奥那須の湯治場として古くから親しまれてきた秘湯です。宝亀年間(770年)に天狗が発見したとされ、現在の宿は安政5年(1858年)に建築されたものが今も使われております。映画テルマエ・ロマエで上戸彩の実家という設定で撮影が行われました。
日帰り入浴時間 | 8:30~17:30(最終受付16:30) |
日帰り入浴料金 | 大人700円 子供400円(4歳から) |
TEL | 0287-76-2008 |
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北温泉旅館
甲子温泉 大黒屋
▼詳細はこちらから
甲子温泉大黒屋