茶臼岳は長野県飯田市と静岡県静岡市葵区の間に位置している標高2,604mの山です。日本三百名山に数えられ、山頂が茶碗を伏せたような形に見えるのが名前の由来です。南アルプス国立公園内にあり国の特別天然記念物のライチョウの生息地で、運がよければ登山中に遭遇するかもしれません。
茶臼岳は南アルプス南部の山の中で、もっとも登山口までのアクセスがよく登山道は危険な箇所が少ないことから、本格的な登山を始めたい人の入門の山といわれています。
茶臼岳の基本情報と魅力
茶臼岳の登山道は樹林帯におおわれていて、直射日光から身も守りながら登山できる山です。山頂の手前で森林限界を迎えるため頂上は見晴らしがよく、すばらしい景色を楽しめます。
山の名前 | 茶臼岳 |
標高 | 2,604m |
エリア | 南アルプス(長野県・静岡県) |
詳細情報 | 茶臼岳の地図・天気 |
基本情報
茶臼岳は登山口から山頂までの標高差が約1,600mあり登頂にはかなりの体力が必要です。総コース距離は18kmを超え、標準コースタイムでは11時間以上かかります。日帰りのピストンは可能ですが、山頂の手前にある茶臼小屋で1泊して山頂を目指すこともできるので、それぞれの体力や技術に合わせて登山計画を立てるとよいでしょう。
山頂には視界をさえぎるものはなく、見渡す限りの大パノラマです。
登山客がもっとも訪れるのは7月〜8月の夏山シーズンで、梅雨が終わったあとの茶臼岳は植物の宝庫と化し、大自然を満喫できる人気の時期を迎えます。
標高2,600mを超える茶臼岳山頂付近は、お盆を過ぎる頃には早くも秋の気配を感じられます。
魅力その①茶臼岳山頂からの富士山や南アルプスの美しい景色
茶臼岳の最大の魅力は山頂からの景色が素晴らしいことです。茶臼岳の山頂は見晴らしがよく、全方位に景観が広がります。
晴れていれば東に美しい富士山を眺められ、西には恵那山、南に大無間山、北には聖岳、明石岳、悪沢岳、上河内岳を見ることができます。
魅力その②茶臼岳山頂付近にある高山植物の群生地
茶臼岳の山頂から北に約1.2kmのところに「御花畑」といわれる高山植物の群生地帯があります。風雪の影響で曲がって成長を遂げたダケカンバや直系1〜3mの多角形模様が形成されている亀甲状土にウシノケグサやミヤマアキノキリンソウ、タカネハリスゲなどの高山植物を見ることができるのです。
また、亀甲浄土周辺にはシラビソなどの針葉樹も生息しています。
魅力その③茶臼岳から南アルプスの山々に縦走を楽しめる
茶臼岳山頂を起点に南アルプスの山々へ縦走を楽しめます。茶臼岳山頂からは上河内岳(標高2,803m)や聖岳(標高3,013m)、光岳(2,591m)に稜線をたどってわたることができます。
縦走は日帰りでも楽しめますが、かなりハードなスケジュールになるため、できれば山小屋に宿泊することを前提にプランを立てるのがよいでしょう。
茶臼岳の難易度別登山ルート
茶臼岳の主な登山ルートは2つあります。
- 茶臼岳登山ルート
- 鳥小屋尾根登山ルート
登山道として推奨されているのは、ヤレヤレ峠を通り山頂を目指す茶臼岳登山ルートです。
鳥小屋尾根登山ルートは昭和32年に整備されたものの、現在は廃道になっている畑薙山(標高1,836m)を通るコースです。
本格的登山の登竜門|標高差1,600mの急登を行く茶臼岳登山ルート
必要日数 | 1泊2日登山 |
総コースタイム | 30時間(休憩時間16時間50分含む) |
距離 | 20.5km |
累積標高 | 2,355m |
難易度 | ★★★☆☆ |
DAY1 ①沼平ゲート→40分→②茶臼岳登山口→30分→③ヤレヤレ峠→1時間→④ウソッコ沢小屋→2時間10分→⑤横窪沢小屋→2時間50分→⑥茶臼小屋(休憩8時間50分含む)
DAY2 ①茶臼小屋→30分→②茶臼岳山頂→50分→③茶臼小屋→2時間→④横窪沢小屋→1時間30分→⑤ヤレヤレ峠→30分→⑥茶臼岳登山口→40分→⑦沼平ゲート(休憩時間8時間分含む)
茶臼岳登山ルートはいくつもの吊橋をわたったり、急な坂が続いたり、複数の山小屋があったりで変化に富んだ登山コースを楽しめます。
今回は山頂手前の山小屋で宿泊する、1泊2日のピストン登山で茶臼岳に挑みました。
茶臼岳登山ルートDAY1
登山のスタートは畑薙第一ダムの畑薙湖の東岸にある沼平ゲートです。このゲートから林道を茶臼岳登山口まで約40分歩きます。
茶臼岳登山口の前には全長181mの畑薙大吊橋があり、これをわたって登山道に入ります。
畑薙大吊橋(標高967m)は川面から高さ30mを渡る吊橋で、高いところが苦手な人には登山が始まる前に越えなければならない大きな関門です。
畑薙大吊橋を渡り登山道に入ると、しばらくして沢の近くの急登を登ります。
ヤレヤレ峠(標高1,058m)を通過するとウソッコ沢避難小屋まで吊橋が4本、ウソッコ沢小屋を超えてから吊橋が1本かかっています。
茶臼岳登山道の1号から5号まである吊橋は、新しく作り替えられたものや古いままのものが入り混じっていてスリリングなコースです。
それぞれの吊橋には定員があり、揺れるため注意しながらわたらなくてはいけません。
4号吊橋を過ぎて登山道をすすむと、ウソッコ沢避難小屋があらわれます。
ウソッコ沢避難小屋には水場とトイレがあります。ウソッコ沢避難小屋の近くを流れる沢は水量が豊富で、清涼感を感じられるでしょう。
ウソッコ沢避難小屋を超えて5号吊橋をわたり約2時間急登を上がると、横窪峠(標高1,633m)と横窪沢小屋に到着しました。
横窪沢小屋にもトイレと水場、テント場があります。
横窪沢小屋を出てさらに1時間ほど急登が続き、標高1,935m地点に展望ベンチがあらわれます。ここからは、天気がよければ大無間山を眺められます。
展望ベンチの先には横窪沢小屋と茶臼小屋の中間地点に当たる倒木ベンチ(標高2,026m)があります。倒木ベンチを過ぎてさらに急登を進むと茶臼小屋の少し手前から高木が少なくなり、視界が開けるでしょう。
さらに急登を進むと標高2,412m地点の茶臼小屋に到着します。
茶臼小屋にはトイレや水場、テント場があります。茶臼岳は日帰り登山が可能ですが、茶臼小屋で1泊してから山頂を目指す登山客も多くいます。
今回は山頂の手前にある茶臼小屋で1泊しました。
茶臼岳登山ルートDAY2
2日目の早朝、茶臼小屋を出発して約30分で茶臼岳山頂(標高2,604m)に到着しました。
茶臼岳の山頂からは富士山や聖岳、上河内岳、光岳などの美しい眺望が見られます。
また、稜線上には多くの高山植物が生息しています。
茶臼岳と上河内岳の稜線の間には、高山植物が見られる御花畑と呼ばれる場所があるのです。
山頂からの眺望を楽しみ高山植物を鑑賞したあと、茶臼小屋を経由してピストンで下山しました。
沼平駐車場情報
標高 | 950m |
駐車スペース | 40台 |
駐車料金 | 無料 |
トイレの有無 | 有り |
登山ポストの有無 | 有り |
茶臼岳登山口は最寄りの駐車場から徒歩40分のところにあります。
駐車場から沼平ゲートを通って林道を歩いて登山口を目指してください。
駐車場にはトイレがあり、登山ポストは沼平ゲート手前の南アルプス登山指導センターに設置されています。
畑薙夏季臨時駐車場情報(営業期間7月中旬〜10月中旬)
標高 | 925m |
駐車スペース | 150台 |
駐車料金 | 無料 |
トイレの有無 | 有り |
登山ポストの有無 | なし |
畑薙夏季臨時駐車場は7月中旬〜10月中旬の夏山登山シーズンのみの期間限定営業です。
畑薙夏季臨時駐車場からは、畑薙大吊橋まで無料送迎バスが出ています。この送迎バスに乗るには、井川地区の宿泊施設や茶臼小屋、横窪沢小屋に宿泊する必要があります。
登山マップが読める上級者向け|廃道コースを登る鳥小屋尾根ルート
沼平ゲート→40分→①茶臼岳登山口→1時間30分→②畑薙山→2時間30分→③茶臼岳山頂→1時間→④上河内岳→40分⑤茶臼小屋→2時間→⑥横窪沢小屋→1時間30分→⑦ヤレヤレ峠→30分→⑧茶臼岳登山口→40分→沼平ゲート(休憩時間1時間分含む)
必要日数 | 日帰り登山 |
総コースタイム | 11時間(休憩1時間含む) |
距離 | 23.6km |
累積標高 | 2,543m |
難易度 | ★★★★☆ |
鳥小屋尾根ルートは畑薙大吊橋の登山口から畑薙山を通るコースで、現在はほとんど利用されず廃道になっています。
一般登山道の茶臼岳登山道とは異なり、バリエーションルートである小鳥尾根登山道は地図読みができることが必須です。
畑薙大吊橋をわたり茶臼岳登山道に入ると、鉄塔が鳥小屋尾根ルートの分岐です。
鳥小屋尾根ルートは比較的マーキングの多い廃道コースです。しっかりと地図読みとコンパスワークで登山道を進んでください。
かなりのきつい登りが続くコースで、トラバースもほとんどなく急登をひたすら登り続けます。
標高1,836mの畑薙山に到達すると、廃道らしいレトロな看板が置いてあります。
さらに急な登りが続く鳥小屋尾根ルートは、ハイマツなどのブッシュをかき分けて稜線まで登ります。
稜線に取り付いて、さらにすすむと茶臼岳山頂です。
茶臼山山頂からは稜線をたどって上河内岳に縦走しました。
上河内岳で美しい南アルプスの山々や富士山を眺めたあと、下山は一般登山道の茶臼岳登山ルートを使って周回を楽しみました。
沼平駐車場情報
標高 | 950m |
駐車スペース | 40台 |
駐車料金 | 無料 |
トイレの有無 | 有り |
登山ポストの有無 | 有り |
畑薙夏季臨時駐車場情報(営業期間7月中旬〜10月中旬)
標高 | 925m |
駐車スペース | 150台 |
駐車料金 | 無料 |
トイレの有無 | 有り |
登山ポストの有無 | なし |
鳥小屋尾根ルートと茶臼岳登山ルートの駐車場は同じです。
茶臼岳のQ&A
茶臼岳は登頂から下山まで長い時間を要するため、山小屋に宿泊する人もいます。茶臼岳登山に関する質問には、山小屋や宿泊の疑問点ついて多くいただいています。
Q.1泊2日の茶臼岳登山を計画しているのですが、2日目の食事はどうしたらよいですか?
A.茶臼岳登山で1泊する場合は茶臼小屋で宿泊するケースが多いですが、茶臼小屋は食事の提供を行っていないので自分で用意する必要があります。おすすめはアルファ米と魚肉ソーセージで済ませる方法です。アルファ米は水で戻して食べられます。魚肉ソーセージは常温で持ち運びできるのでとても便利な食材です。
Q.茶臼岳は初心者でも登れる山ですか?
A.茶臼岳は中級者以上向けの山なので、登山を始めたばかりの方にはおすすめできません。しかし、初心者の方でもある程度登山経験を積んでいて、スキルを上げたいと思っている人がステップアップのためにチャレンジするには適しています。
Q.茶臼岳の登山道にトイレのある場所はありますか?
A.茶臼岳は登山口から山頂の間に山小屋が3つあり、すべてにトイレが設置されています。
茶臼岳登山口へのアクセス・各種情報
茶臼岳登山口に行く場合、車と公共交通機関を利用する方法があります。
車でのアクセス
茶臼岳登山口に車でアクセスする場合、最寄りの高速道路のICは東名高速静岡ICです。登山口に一番近い沼平駐車場と静岡ICの距離は約85kmです。マイカーは沼平ゲートより先は侵入禁止なため、駐車場から登山口まで徒歩で約40分林道を進みます。
畑薙第一ダムの下流にある畑薙夏季臨時駐車場は、茶臼岳登山口まで徒歩で1時間ほどかかってしまうため、井川観光協会が運営する送迎バスの利用をおすすめします。井川観光協会の送迎バスを使うと、登山口の畑薙大吊橋までアクセスできます。
なお、井川観光協会の送迎バスは茶臼小屋と横窪沢小屋に宿泊する登山客と、井川にある旅館や民宿に宿泊した人に限り利用可能です。テント泊の登山客は送迎バスを利用できません。
茶臼岳登山口の登山ポストは、沼平ゲートの南アルプス登山指導センターと畑薙大吊橋に設置されています。
公共交通機関でのアクセス
公共交通機関で登山口までアクセスする場合は、しずてつジャストラインバスの南アルプス登山線がJR静岡駅から畑薙第一ダムバス間を1日1往復しています。
運行期間は7月中旬から8月末で、予約が必要です。
茶臼岳の周辺おすすめ山旅スポット
茶臼岳のある静岡県はB級グルメで有名です。茶臼岳登山の帰りには、地元の特徴を生かしたここでしか食べられないご当地グルメを堪能してください。
さわやか新静岡セノバ店
さわやかはレアでも食べられる上質なひき肉を使った爆弾ハンバーグが有名で、手頃な価格で食べさせてくれる良心的な店です。静岡県出身の女優、長澤まさみさんやももいろクローバーZの百田夏菜子さんがテレビ番組で絶賛して話題になりました。
さわやかは肉質を維持するために静岡県内のみでチェーン展開をしているため、他県では食べられない味なのです。茶臼岳登山でおなかが空いたら、静岡県のご当地グルメNO.1のさわやかの爆弾ハンバーグを味わってください。
青葉おでん街・青葉横丁
静岡のご当地グルメで外せないのは静岡おでんです。JR静岡駅周辺には青葉おでん街と青葉横丁という2つのおでん街があり、昭和レトロの雰囲気の中でおいしい静岡おでんが食べられます。
静岡おでんは具材を色の黒いだし汁で煮込み、青のりや魚粉をかけて食べる独特のスタイルです。
おでんといえば冬のイメージですが、静岡おでんは季節に関係なく1年中食べられています。
うるおいてい本店
静岡B級グルメといえば、富士宮焼きそばを思い浮かべる人は多いでしょう。富士宮焼きそばを食べるなら、富士宮市にあるうるおいてい本店がおすすめです。
富士宮焼きそばはB-1グルメグランプリで2回ゴールドグランプリに輝き、殿堂入りを果たした静岡を代表する名物です。その中でもうるおいてい本店は歯応えのある特注めんを8種類のブレンドソースでいただく最高の一品です。
茶臼岳登山の帰りにご当地名物を食すなら、富士宮まで足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。
南アルプス赤石温泉白樺荘
白樺荘は茶臼岳登山にとても便利な天然温泉のある市営の宿泊施設です。白樺荘と茶臼岳登山口は車で20分の距離なのでアクセスがしやすく、宿泊すれば茶臼岳登山口の手前までの無料送迎バスに乗れるのです。
白樺荘の温泉の泉質は単純硫黄泉で筋肉痛や疲労回復に効能があります。日帰り入浴も可能なので、登山の帰りに立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
茶臼岳登山は自分の実力に合わせたルートを選びましょう
茶臼岳は登山口から山頂まで高低差が約1,600メートルある急登の山です。
登頂に体力は必要ですが、登山道に避難小屋が点在しこれといった危険な箇所も少ないため、本格的な登山に挑む人が経験を積む山として非常に向いています。
山頂からの眺めも最高で、間近に富士山や南アルプスの山々の絶景を見ることができます。
山小屋での宿泊やテント泊にも対応している山なので、無理のない計画で茶臼岳登山を楽しんでください。