大船山(たいせんざん)は大分県竹田市にある標高1,786mの山です。九重連山の東部に位置し、日本三百名山に選ばれています。
山頂からの眺望が素晴らしく、季節に応じてさまざまな色彩を見せるところが大船山の魅力です。初夏にはミヤマキリシマのピンク色が山肌をおおい、秋には燃えるような紅葉が見られます。
大船山は登山道のバリエーションが豊富で、初心者から上級者まで楽しめる山です。初心者におすすめの吉部登山ルートは、標準コースタイムが往復約7時間で日帰り登山も可能です。
大船山の基本情報と魅力
大船山は1300年前に噴火が起こったと推定されるコニーデ式の火山です。コニーデ式火山の特徴は山容が円すい型で頂上付近に火口が残っていることです。大船山も形は円すいで、御池と呼ばれる火口湖があります。
コニーデ式火山の大船山はトロイデ式火山に比べると裾野が長く急斜面が少ないので、初心者でも登りやすい山です。
山の名前 | 大船山(たいせんざん) |
標高 | 1,786m |
エリア | 九州・沖縄(大分県) |
詳細情報 | 大船山の地図と天気 |
基本情報
江戸時代に大船山を含むこの地は、豊後国岡藩主の中川家に統治されとても栄えていました。中川家の支配は明治維新まで13代つづきます。
その中でも、岡藩の教育の普及につとめ英主と称された3代目の久清は、大船山をこよなく愛し人馬鞍(ひとうまのくら)と呼ばれる背負い子に乗って登山をくり返したと伝えられています。久清の遺言により墓は、大船山の標高1,400mに建てられました。1997年に国の史跡に指定された入山公墓と呼ばれるこの墓は、大船山の人気スポットの一つです。
また、一年を通して豊かな色彩を楽しめる大船山ですが、登山客で一番にぎわうのは紅葉の美しい10月です。さらに、ミヤマキリシマが咲きほこる5月から6月も人気のシーズンです。
大船山の魅力その①山頂は360°の大パノラマ
大船山山頂は目の前をさえぎるものが何もありません。そのため眺望は360°の大パノラマを堪能できます。山頂に立って周囲を見渡すと、まるで空を飛んでいるかのような気分を味わえます。
北は北大船山(標高1,706m)や由布岳(標高1,583m)が見え、西は久住山(標高1,786m)や三俣山(標高1,748m)、九州本土最高峰の中岳(1,791m)も眺められます。天気がよければ、東に瀬戸内海を望めるでしょう。
大船山の魅力その②季節ごとに色彩の変化を楽しめる
大船山は紅葉が美しいことで知られています。見頃は10月中旬から11月初旬で山全体が見事に紅葉し、山頂の御池では池のほとりを囲むように木々が色づき幻想的な風景を味わえます。
また、初夏の大船山ではミヤマキリシマが花を咲かせ、坊ガツルから見上げると山頂がまるでピンク色に染まっているかのようです。ミヤマキリシマは九州の高原に生息するツツジの一種で天然記念物に指定されています。ミヤマキリシマは火山活動で生態系が崩れた山肌に優先的に繁殖する植物です。
大船山の魅力その③登山ルートのバリエーションが豊富
大船山は登山ルートのバリエーションが豊富で、初心者から上級者まで楽しめる山です。大船山と久住山の間の標高1,200m地点には坊ガツルという広い盆地があり、テント場があります。さまざまコース設定やテント泊を織り交ぜたプランが立てられるので、レベルに合った楽しみ方ができるのが大船山の大きな魅力です。
また、坊ガツルの近くの標高1,300mには法華院温泉山荘と呼ばれる宿泊施設があり、登山途中に天然温泉につかることができます。
大船山の難易度別おすすめ登山ルート
大船山にはさまざまな登山ルートがあります。その中でも人気の登山道が以下の3つです。
- 吉部登山ルート
- くじゅう登山ルート
- 今水登山ルート
吉部登山ルートは比較的距離の短いコースで、坊ガツルを経由して山頂を目指すコースです。
くじゅう登山ルートはラムサール条約に登録されているタデ原湿原を通るコースで距離はありますが登りは緩やかです。
今水登山ルートは急登がつづくため中級者以上向けです。
迷いにくく 初心者でも安心|吉部登山ルート
①吉部登山口→2時間10分→②坊ガツル→1時間50分→③大船山避難小屋→15分→④大船山→25分→⑤大船山避難小屋→1時間30分→⑥坊ガツル→1時間30分→⑦吉部登山口(休憩1時間30分含む)
必要日数 | 日帰り登山 |
総コースタイム | 7時間40分 |
距離 | 13.8km |
累積標高 | 979m |
難易度 | ★★☆☆☆ |
吉部登山ルートは山頂までの距離が短く迷いやすい箇所がないため、大船山の登山道でもっとも初心者におすすめのコースです。吉部登山口にはすぐ近くに駐車場があり日帰りだと300円で駐車できます。駐車場から約100m先が登山口です。
吉部登山口から登山道に入るとしばらく斜度のきつい樹林帯が続きます。
登山口から40分ほど登ると高さ7m、幅15mの暮雨の滝(くらぞめのたき)の分岐に到着します。暮雨の滝を拝むには登山道から70m下におりなければいけません。登山道からそれて急な坂をくだると清涼感あふれる暮雨の滝があらわれました。
登山道にもどり先をすすむと道が開け、坊ガツルに到着します。
坊ガツルには広いテント場があり、休憩専用の山小屋やトイレ、炊事場があります。
ここでテント泊をして九重連山の山々の縦走を楽しむ人も多くいます。今回はここから大船山に登り日帰りのピストンです。
坊ガツルの大船山入り口から再び登山がスタートします。
大船山の登山道は石が多く足に負担のかかるコースです。大船山は火山なので溶岩でできた岩をあちこちでみられるでしょう。山頂の手前にはコンクリートでできたきれいな避難小屋があります。
避難小屋を過ぎると大船山の山頂です。
山頂は見晴らしがよく全方位に美しい景色が見られます。
また、山頂付近には火口湖の御池があります。
標高1,740mにある湖面は空や周りの風景を映し出し、ファンタジーのような光景が見られるでしょう。
山頂の景色と御池を楽しんだあと、下山して坊ガツルで休憩し吉部ルートで登山口まで戻りました。
吉部登山口駐車場情報
標高 | 935m |
駐車スペース | 50台 |
駐車料金 | 日帰り300円 1泊500円 |
トイレの有無 | あり |
登山ポストの有無 | なし(登山口に登山ポストあり) |
吉部登山口駐車場の料金は前払いで支払います。冬季の12月から2月は100円です。坊ガツルでのテント泊や法華院温泉山荘で宿泊する場合は、1泊につき500円かかります。
トイレは簡易式で用意されています。登山ポストは駐車場から100m離れた登山口にあるので、事前に届出をしていない場合は利用してください。
タデ原湿原や雨ヶ池の湿地帯を巡る|くじゅう登山ルート
DAY1 ①くじゅう登山口→2時間→②雨ヶ池→1時間→③坊ガツル(休憩時間30分含む)
DAY2 ①坊ガツル→2時間→②大船山避難小屋→20分→③大船山→20分→④大船山避難小屋→10分→北大船山→1時間10分→坊ガツル→1時間20分→雨ヶ池→1時間30分→くじゅう登山口(休憩1時間30分含む)
必要日数 | 1泊2日 |
総コースタイム | 9時間50分(休憩時間2時間含む) |
距離 | 15km |
累積標高 | 1,274m |
難易度 | ★★☆☆☆ |
くじゅう登山ルートは長者原登山口からタデ原湿原を通り雨ヶ池から坊ガツルに抜け、そこから大船山にアタックするコースです。
車を長者原(ちょうじゃばる)ビジターセンター駐車場からくじゅう登山ルートに入ります。
タデ原湿原を過ぎて樹林帯に入ってもしばらくは緩やかな道を進みます。
樹林帯を抜けると雨ヶ池と呼ばれる湿地帯です。雨ヶ池の登山道は木道が敷き詰められている雰囲気のよい場所です。雨ヶ池に雨が降ると湿地帯に水が溜まり池に変化します。雨ヶ池を過ぎると再び樹林帯に戻ります。
樹林帯を抜けると坊ガツルがあらわれました。今回は坊ガツルでテント泊をして、翌日大船山から北大船山の縦走を試みます。
翌日、坊ガツルにテントをデポして大船山に登山を開始しました。大船山山頂から北大船山に縦走します。
北大船山からの眺望も素晴らしく、迫力のある九重連山の山並みが一望できました。
北大船山山頂から坊ガツルに下りたあと、テントを片付けてくじゅう登山口までピストンで帰路につきました。
長者原ビジターセンター駐車場情報
標高 | 1,035m |
駐車スペース | 450台 |
駐車料金 | 無料 |
トイレの有無 | あり |
登山ポストの有無 | あり |
くじゅう登山ルートの登山口は長者原ビジターセンターの駐車場です。
長者原ビジターセンターは阿蘇くじゅう国立公園くじゅう地域を紹介する展示施設です。センター内には展望室やテラスがあり、ここから美しい九重連山を眺められます。
歴史が香る入山公墓を経由する|今水登山ルート
①今水登山口→2時30分→②大船山→1時間50分→③今水登山口(休憩時間30分含む)
必要日数 | 日帰り登山 |
総コースタイム | 4時間20分(休憩時間30分含む) |
距離 | 7.4km |
累積標高 | 971m |
難易度 | ★★★☆☆ |
今水登山ルートはガラン台や入山公墓を経由して、御池側から山頂を目指すコースです。コースタイムは比較的短く、大船山の登山ルートの中では短時間で登ることができる登山道です。
勾配のきつい箇所が多く、中級者向けのコースといっていいでしょう。
今水登山ルートは10台ほど止められる無料駐車場からスタートします。
しばらく歩道を歩くとゲートがあらわれ、これを超えて林道を進むとガラン台と呼ばれる見晴らしのよい丘に到着します。
ガラン台を通過すると樹林帯の登山道が始まります。
樹林帯を登ると3代目の岡藩主久清の墓、入山公墓に到着しました。
入山公墓は竹田の城下町が一望できる景色のよい場所に建てられています。
入山公墓を過ぎて山頂を目指すと、登山道は急登に変化します。
坂道に大きな岩が点在し、かなりきつい登りです。
急勾配の登山道を進むと、御池があらわれます。
御池を通過すると大船山山頂に到着します。
大船山山頂から雄大な景色を堪能したあと、今水登山口までピストンで下山しました。
今水登山口駐車場情報
標高 | 815m |
駐車スペース | 10台 |
駐車料金 | 無料 |
トイレの有無 | なし |
登山ポストの有無 | あり |
今水登山口駐車場にはトイレがありません。今水登山口に来る前に済ませておくとよいでしょう。
大船山のQ&A
大船山の質問は、これから本格的に登山を始たい初心者の方から多くいただいています。
Q.初心者で大船山に登ろうと思っているのですが、吉部登山ルートと長者原からのくじゅう登山ルートではどちらがおすすめですか?
A.初心者が大船山に登るなら、吉部登山ルートがおすすめです。吉部登山ルートの方が坊ガツルまでの距離や時間が短いからです。吉部登山ルートは坊ガツルから大船山にアタックするための体力を温存しやすいコースです。
Q坊ガツルのテント泊に場所代などの料金はかかりますか?また、テント場を使用する際の注意事項はありますか?
A.坊ガツルのテント泊は無料です。予約も必要ありません。坊ガツルのテント場の注意事項としては直火が禁止されているので、調理を行う場合はコンロなどを持参する必要があります。
Q.大船山のミヤマキリシマの見頃を教えてください。
A.大船山のミヤマキリシマの見頃は5月下旬から6月中旬です。九重連山の中でも特に大船山のミヤマキリシマの群落は美しいといわれています。この時期は多くの登山客が訪れるため、登山口近くの駐車場は満車になってしまうことが多いので注意が必要です。
登山口へのアクセス・各種情報
大船山の吉部登山口情報
吉部登山口は標高1,058m地点にあります。周辺に最寄り駅やバス停がないため、車でのみアクセスが可能です。登山口には登山ポストが設置されているので、事前に提出していない場合はここで必ず登山届を出しましょう。
大船山の吉部登山口への車でのアクセス
大分自動車道の玖珠ICから吉部登山口までの距離は約28kmです。玖珠ICから国道387号に入り県道681号に出ます。県道40号に入ると県道621号に進み吉部登山口駐車場に到着します。
大船山のくじゅう登山口情報
くじゅう登山口には車とバスの両方でアクセス可能です。
設備の整っている長者原ビジターセンターはくじゅう登山口につながっているので、トイレを済ませたり登山届を提出したりして準備万端で登山を開始しましょう。
大船山のくじゅう登山口へ車でのアクセス
大分自動車道の玖珠ICからの距離は約27kmです。
玖珠ICから国道387号線に入り新長野の交差点を左折します。引治交差点を左折して県道681号に入り県道11号を経て長者原ビジターセンタに到着します。
大船山のくじゅう登山口へ公共交通機関でのアクセス
くじゅう登山口に公共交通機関でのアクセスは、JR豊後中村駅とJR由布院駅からバスが出ています。
JR豊後中村駅からの公共交通機関でのアクセス
JR豊後中村駅から九重コミュニティバスを利用してくじゅう登山口みやまバス停まで約50分です。
くじゅう登山口みやまバス停は登山口の目の前にあります。
JR由布院駅からの公共交通機関でのアクセス
JR由布院駅の由布院駅前バスセンターからリムジンバス熊本空港線か九州横断バスを利用してくじゅう登山口バス停へ約52分ほどで到着します。
くじゅう登山口バス停から登山口まではおよそ1分です。
大船山登山の今水登山口情報
今水登山口は大船山の東部位置しています。今水登山口へはマイカーのみで行くことが可能です。
大船山登山の今水登山口への車でのアクセス
九州横断道路の竹田ICから今水登山口までは約22kmです。竹田ICから県道47号を北西に進み、県道30号に入り奥豊後グリーンロードを経て登山口に到着します。
大船山のおすすめ山旅スポット
大船山の麓にある竹田市は城下町として栄え、現在も江戸時代を彷彿させる古風な街並みが多く残っています。大船山登山で大自然を満喫したあとは、歴史ある風景を探索して見るのもよいかもしれません。
萱島酒類
萱島酒類は城下町の風情が残る街並みに、溶け込むように建っている焼酎の蔵元です。
萱島酒類の体表銘柄である「清明」は米麹を使用した麦焼酎で、一口含むと甘い香りがやさしく鼻に抜ける滑らかな味わいの一品です。
事前に予約すると蔵元の見学と試飲ができるので、杜氏から酒造りへの熱い思いを聞きながら本場大分の麦焼酎を味わってみるのはいかがでしょうか。
茶房だんだん
岡城の城下町にある但馬屋老舗本店は大分県でもっとも古い築150年の和菓子店です。但馬屋老舗本店の「三笠野」はかつて殿様に献上した菓子として有名です。店舗の中にある茶房だんだんは歴史を感じさせる和の空間で、和菓子と抹茶を楽しめます。
竹田温泉 花水月
竹田温泉花水月は休憩所、食堂、売店もある総合温泉施設です。花の湯と月の湯の2つの大浴場があり、日ごとに男女で入れ替わります。
泉質はナトリウム-塩化物泉で神経痛や冷え性に効能があります。大船山登山のあとで日本一の温泉県といわれる大分の天然温泉につかって心と体を癒やしてください。
法華院温泉
法華院温泉山は九州で最も高い場所にある温泉です。
法華院温泉山荘の中にある施設ですが、日帰り入浴も可能で料金は500円です。シャンプーやせっけんは使えないので注意してください。
泉質はカルシウム・マグネシウム・ナトリウム-硫黄塩泉で、自律神経不安定症や、リウマチなどさまざまな効能があります。
大船山に登るならぜひ法華院温泉につかって体をいたわってあげてください。
大船山は自分に合ったルート選びで登山を楽しみましょう
大船山は豊富な登山ルートがあり、初心者から上級者まで楽しめる山です。坊ガツルでのテント泊を組み合わせれば、バリエーションは無限大です。初夏にはミヤマキリシマ、秋には紅葉が楽しめ何回登っても飽きません。
自分に合った登山計画を立てて、大船山を楽しみましょう。