高千穂峰(たかちほのみね)は宮崎県と鹿児島県にまたがる標高1,574mの山で、日本二百名山に選ばれています。高千穂峰は約1万年前に噴火によってできた比較的新しい山で、西部に活火山の御鉢と東部に寄生火山の二ツ石で山容が構成されています。
高千穂峰は古くから霊峰として崇められていて、天照大神の孫であるニニギノミコトが降臨した地であるという言い伝えがあり、日本書紀にも記述が残っています。高千穂峰の山頂にはニニギノミコトが降臨したときに突き刺したという天の逆鉾が残っていて、日本の神話が実際の出来事であるかのように感じられるでしょう。
高千穂峰の登山にかかる標準コースタイムは約3時間で日帰り登山が可能な山です。山肌には火山灰が堆積して滑りやすい箇所もありますが、登山道はしっかり整備されているので初心者にもおすすめです。
高千穂峰の基本情報と魅力
高千穂峰は九州南部に広がる火山群の霧島連山の第二峰です。2011年に同じ霧島連山の新燃岳(標高1,421m)が300年ぶりにマグマをともなう噴火が起こり、2018年にも噴火しています。高千穂峰も1913年に御鉢が噴火し、現在も火口から硫黄のにおいが立ち込めています。
山の名前 | 高千穂峰(たかちほのみね) |
標高 | 1,574m |
エリア | 九州・沖縄 霧島連峰(宮崎県) |
詳細情報 | 高千穂峰の地図・天気 |
基本情報
高千穂峰は坂本龍馬が妻のおりょうと日本初の新婚旅行で登った山としても有名です。2人は高千穂峰の山頂で天の逆鉾を引き抜いたというエピソードが残っています。龍馬が姉の乙女に送った手紙に天の逆鉾を引き抜いたときの詳細な記述があり、その手紙は京都国立博物館に現存しています。
高千穂峰の登山適期は無雪期の4月から11月ですが、もっとも登山客が訪れるのはミヤマキリシマが見頃をむかえる5月から6月です。この時期の高千穂峰の登山道では、ピンク色のかわいい花をつけたミヤマキリシマを見ることができるでしょう。
高千穂峰の魅力その① 山頂に広がる360°の大パノラマ
高千穂峰の山頂は周囲に視界を妨げるものはなく、360°の素晴らしい眺望を楽しめます。
北西には霧島連山の最高峰である韓国岳(標高1,700m)や噴火が頻発する新燃岳(標高1,421m)の雄大な山容を眺められ、南には桜島を望むことができます。
高千穂峰の魅力その② 吸い込まれそうな巨大火口の御鉢
高千穂峰には御鉢と呼ばれる幅600m、深さ200mの巨大な火口があり、登山道からのぞき込むと大自然の壮大さに心が震えます。高千穂河原から登る登山ルートでは、火口の北側にある幅約150cmのスリリングな馬の背を進まなくてはいけません。
御鉢の迫力に圧倒されながら足のすくむような登山道を、慎重に歩みを進め山頂を目指します。
高千穂峰の魅力その③ 火山灰に咲くミヤマキリシマのピンクのじゅうたん
ミヤマキリシマは火山活動で生態系がくずれた山肌で優占種として生存する品種です。
そのため、5月下旬から6月の中旬にかけて森林限界より上の火山灰でおおわれた地表で、ミヤマキリシマだけがピンク色の花を咲かせる光景が見られます。それはまるで山肌にピンク色のじゅうたんが敷き詰められたようです。坂本龍馬も新婚旅行で登ったときに見た高千穂峰の美しいミヤマキリシマを「きり島つつじが一面にはへてみのりつくり立し如くきれいなり」と姉への手紙に書いています。
高千穂峰の火山灰の上にミヤマキリシマがけなげに咲く光景を見ると、生命の息吹を強く感じられるでしょう。
高千穂峰の難易度別おすすめ登山ルート
高千穂峰の代表的な登山ルートは4つあります。
- 高千穂峰登山ルート
- 二子石登山ルート
- 夢ヶ丘登山口ルート
- 天孫降臨登山口ルート
雄大な御鉢を通る初心者向き|高千穂峰登山ルート
①高千穂河原ビジターセンター→5分→②高千穂河原登山口→1時間30分→③御鉢→35分→④高千穂峰→30分→⑤御鉢→1時間5分→⑥高千穂河原登山口→5分→⑦高千穂河原ビジターセンター(休憩30分含む)
必要日数 | 日帰り登山 |
総コースタイム | 3時間50分(休憩30分含む) |
距離 | 5.1km |
累積標高 | 628m |
難易度 | ★★☆☆☆ |
高千穂峰登山ルートのスタート地点は高千穂河原ビジターセンターです。
高千穂河原ビジターセンター近くの登山口から登山道に入ると石畳の階段があらわれました。登山道はよく整備されていて歩きやすくなっています。
しばらく緩やかな坂道の樹林帯の中を進みます。
標高が上がり背の高い樹木がなくなると登山道は砂地の急登に変化します。地面はかなり滑りやすくなっているので注意して登らなくてはいけません。
火山灰が堆積し火山岩があちこちに転がるきつい坂道をさらに登ると御鉢に到着します。御鉢をのぞき込むとその大迫力に圧倒されてしまいました。
御鉢から馬の背と呼ばれる稜線をたどって高千穂峰の山頂を目指します。
馬の背は道幅がせまく、歩きながらの景色はまるで空中を散歩しているようです。
馬の背を渡りきるといったん下り、そこから高千穂峰山頂まできつい登り坂がつづきます。
登山道は木の階段などで整備されていますが、滑りやすいのでかなり体力を奪われます。滑る登山道に足を取られながらも急登を登りきると、山頂に到着です。
高千穂峰の山頂には天孫降臨でニニギノミコトが突き刺したという天の逆鉾があります。
高千穂峰の山頂からの眺望は素晴らしく、韓国岳や新燃岳など霧島連山の絶景が見られます。
山頂の素晴らしい眺めを楽しんだあと下山を開始しました。下山するときも登山道は滑りやすいので注意して下りなければいけません。
高千穂河原駐車場情報
標高 | 965m |
駐車スペース | 150台 |
駐車料金 | 500円(24時間) |
トイレの有無 | 有り |
登山ポストの有無 | 有り |
高千穂河原駐車場は高千穂峰登山客だけでなく、新燃岳や中岳に登る人も利用します。
駐車場は有料で1日500円必要です。コインパーキングになっていて出庫の時に料金を支払います。お札は千円しか使えないので注意してください。
神秘の巨石を仰ぎ見る|二子石登山ルート
①霧島東神社→2時間40分→②二子石→1時間10分→③高千穂峰→1時間→④二子石→2時間→⑤霧島東神社(休憩時間1時間含む)
必要日数 | 日帰り登山 |
総コースタイム | 6時間50分(休憩時間1時間含む) |
距離 | 9.7km |
累積標高 | 1,212m |
難易度 | ★★★☆☆ |
二子石登山ルートは高千穂峰の東にある二子石(標高1,260m)という巨石を通過するコースです。
標高差が約1,200mあり距離が長いため体力が必要なコースです。二子石登山ルートは中級者向きのコースといえるでしょう。
二子石登山ルートは霧島東神社から出発します。
登り始めるとしばらく樹林帯が続きます。登山道は整備されていますが、きつい登坂が続きます。徐々に高木が少なくなり視界がひらけ景色がひらけてきました。
登山道をさらに進むと目の前に二子石があらわれます。
二子石を越えて標高1,300m地点に来ると夢ヶ丘登山ルートと合流しました。夢ヶ丘登山ルートと合流した登山道はさらに勾配がきつく、長い急登が高千穂峰山頂まで伸びています。
はてしない勾配を登りきると高千穂峰山頂に到着です。
高千穂峰山頂から素晴らしい景色を堪能したあと、ピストンで下山しました。
霧島東神社(登山者専用)駐車場情報
標高 | 460m |
駐車スペース | 10台 |
駐車料金 | 無料 |
トイレの有無 | あり |
登山ポストの有無 | あり |
二子石登山ルートを利用する登山者は、霧島東神社にある登山者専用駐車場が利用可能です。霧島東神社のトイレは、とてもキレイで安心して使えます。登山届はポストにQRコードがついていて、スマホから届けを出すことも可能です。
登山道から桜島の眺望が楽しめる|夢ヶ丘登山口ルート
①夢ヶ丘登山口→2時間30分→②高千穂峰→2時間→③夢ヶ丘登山口(休憩30分含む)
必要日数 | 日帰り登山 |
総コースタイム | 4時間30分(休憩30分含む) |
距離 | 6.8km |
累積標高 | 932m |
難易度 | ★★☆☆☆ |
夢ヶ丘登山口ルートは登山道に入ると、しばらく歩きやすい緩やかな登りがつづきます。夢ヶ丘登山口ルートは、他のコースに比べ樹林帯の割合が多い登山道です。
4号目を過ぎる頃から高木が減り少しずつ景色がひらけてきます。登山道の途中では天気がよければ桜島を眺められるでしょう。
5号目を過ぎると二子石登山ルートと合流します。
二子石ルートの合流地点から先は、山頂まできつい勾配がつづきます。きつい勾配を登りきると天の逆鉾のある高千穂峰山頂に到着です。
山頂で霧島連山の素晴らしい山容を眺めたあと、来た道を下山しました。
夢ヶ丘登山口駐車場情報
標高 | 650m |
駐車スペース | 10台 |
駐車料金 | 無料 |
トイレの有無 | あり |
登山ポストの有無 | あり |
夢ヶ丘登山口駐車場は林道の終点に位置し、登山口のすぐそばにあります。駐車場までの林道は舗装路なので、普通車でも十分アクセス可能です。
神話の世界に思いをはせる|天孫降臨登山口ルート
①天孫降臨登山口→2時間30分→②高千穂峰→2時間→③天孫降臨登山口(休憩20分含む)
必要日数 | 日帰り登山 |
総コースタイム | 4時間30分(休憩20分含む) |
距離 | 5.6km |
累積標高 | 913m |
難易度 | ★★☆☆☆ |
天孫降臨登山口ルートは高千穂峰の北側から登るコースです。登山道は各所に標識が出ているので安心して登れます。
駐車場を出発し、宮崎砂防ダムを横切ると本格的な登山道に入ります。
登山道は急登がつづくのでかなり体力が必要です。しばらくきつい坂を登ると皇子原分岐があらわれ、皇子原龍駒コースと高千穂峰山頂に向かうコースに分かれます。
分岐で高千穂峰山頂へ向かうコースを選び登山道を進むと、次第に背の高い樹木はなくなり、地面は火山灰の堆積した道に変化しました。
標高1,200mに到達すると、美しい霧島連山が眺められます。
きつい勾配をさらに進むと、二子石ルートと合流します。二子石ルートと合流したあとも、永遠につづくと錯覚してしまうような急登がつづき、かなり体力を消耗しました。
急な坂を登りきると、その先はニニギノミコトが降臨したと伝えられる神話の地、高千穂峰の山頂です。
山頂には避難小屋と携帯トイレブースが設置されています。山頂で眺望を堪能し休憩をとったあと同じルートを使って下山しました。
天孫降臨登山口駐車場情報
標高 | 720m |
駐車スペース | 20台 |
駐車料金 | 無料 |
トイレの有無 | なし |
登山ポストの有無 | あり |
天孫降臨登山口の駐車場は林道の終点に位置し、雄大な高千穂峰の山容を下から眺められます。天孫降臨登山口の駐車場と登山口にはトイレがないので事前に済ませておきましょう。
高千穂峰Q&A
高千穂峰の質問には登山初心者の方からの疑問を多くいただいています。
Q.高千穂峰は初心者でも登山可能ですか?
A.高千穂峰は初心者でも登山可能です。登山道が整備されているので、迷いやすい場所はなく、危険箇所が少ない山です。しかし、登山道は火山灰でおおわれていて滑りやすいので登山靴は必須アイテムです。
Q.高千穂峰の登山道や山頂にトイレはありますか?
A.高千穂峰は登山道の途中にトイレはありませんが、山頂には携帯トイレブースがあります。高千穂峰登山では、携帯トイレを用意して登ることをおすすめします。
Q.高千穂峰の登山道で初心者が避けた方がよい登山道はありますか?
A.高千穂峰の登山道に初心者におすすめできない登山道はありませんが、二子石登山ルートは比較的難易度が高いので自信がない場合は高千穂峰登山ルートを利用してください。
高千穂峰登山口情報
高千穂峰の4つの登山口へのアクセス方法についてお伝えします。
高千穂河原登山口
高千穂河原登山口は高千穂河原ビジターセンターに隣接しています。高千穂河原登山口は駐車場のそばにあり、到着後すぐに登山を開始できます。
高千穂河原登山口へ車でのアクセス
最寄りの横川ICから高千穂河原登山口までの距離は、約33kmです。高千穂河原登山口への車でのアクセスは横川ICを下りて、県道50号と県道480号を経由して約45分です。
高千穂河原登山口へ公共交通機関でのアクセス
最寄り駅のJR霧島神宮駅から鹿児島交通のバスで霧島いわさきホテル行きに乗ります。霧島いわさきホテルから霧島連山周遊バスに乗り換えて高千穂河原バス停で降車します。高千穂河原バス停から徒歩3分です。
二子石登山口(霧島東神社)
二子石登山口は霧島東神社から登山道に入ります。
高千穂峰の二子石登山口へ車でのアクセス
高原ICから二子石登山口までは約11kmで、約10分です。国道223号線を経由するルートが最短ルートです。
二子石登山口へ公共交通機関でのアクセス
二子石登山口へ公共交通機関を使っていくには、JR高原駅からバスで祓川バス停に向かいます。祓川バス停から二子石登山口までは徒歩で約1時間です。
夢ヶ丘登山口
夢ヶ丘登山口は都城市立御池小学校の近くにあります。夢ヶ丘登山口は駐車場に隣接しています。
夢ヶ丘登山口へ車でのアクセス
夢ヶ丘登山口への車でのアクセスは、距離が約24kmで時間は25分ほどかかります。夢ヶ丘登山口へ車でのアクセスは、小林ICからえびのスカイラインを経由して県道1号に入ります。県道1号からみやまきりしまロードに入りひむか神話街道、きりしまバードラインを経て国道223号線に入り到着です。
夢ヶ丘登山口へ公共交通機関でのアクセス
夢ヶ丘登山口へ公共交通機関でのアクセスは、高原駅から宮崎交通バスに乗ります。祓川バス停で降車して、祓川バス停から徒歩約1時間30分で到着します。
天孫降臨登山口
天孫降臨登山口は駐車場のすぐそばにあります。
天孫降臨登山口は駐車場にも登山口にもトイレがないので、到着前にトイレを済ませておくとよいでしょう。天孫降臨登山口は、最寄りのバス停がないため、アクセスは車しかできません。
天孫降臨登山口へ車でのアクセス
最寄りの高原ICから天孫降臨登山口までは距離が約12kmで時間は約21分かかります。国道223号と県道406号を経由してレイン堂を進むと到着します。
高千穂峰周辺のおすすめ山旅スポット
高千穂峰は霧島火山群を構成する山塊の一つで、周辺は温泉地としても有名です。また、九州南部は焼酎の生産が盛んで、蔵元も観光スポットになっています。
高千穂峰周辺のおすすめスポット|皇子原温泉健康村
高千穂峰登山のあとに温泉に入るなら、宮崎県高原町にある日帰り温泉の皇子原(おうじばる)温泉健康村がおすすめです。皇子原温泉健康村は100%源泉掛け流し温泉で、ぜいたくな気分を味わえるでしょう。また、施設には霧島連山の裂罅(れっか)水の冷たい水風呂が用意されていて、高温サウナの後に冷水浴としてつかると、ととのい方が普段とは違うはずです。
温泉の泉質は炭酸鉄泉で疲労回復や健康増進に効能があります。皇子原温泉は登山後の疲労回復にぴったりの温泉といえるでしょう。
高千穂峰周辺のおすすめスポット|焼酎の里霧島ファクトリーガーデン
焼酎の里霧島ファクトリーガーデンは、黒霧島が有名な霧島酒造が運営する焼酎のテーマパークです。
工場見学は事前に予約が必要ですが、無料です。工場見学のあとには焼酎の試飲もできるので、原材料作りから仕込み、蒸留などの工程を学び、味わう焼酎の味は格別なものになるでしょう。
焼酎の里霧島ファクトリーガーデンにはレストランやグッズのショップなどもあるので、お酒を飲まない方にも楽しめる施設です。
高千穂峰周辺のおすすめスポット|たちばな天文台
高千穂峰の麓にある都城市高崎町は「日本一星空の美しい町」に7回選出されたことのある町です。都城市高崎町は澄んだ空気の流れる地域で、光害が少なくより鮮明に星空を観測できる環境にあります。
その町に建っているたちばな天文台は口径500mmの巨大な反射望遠鏡があり、天体の解説を聞きながら星が満点に輝く夜空を眺められる施設です。
登山のあとにたちばな天文台を訪れて、美しい星空に癒やされてみてはいかがでしょうか。
高千穂峰の登山は自分にあったルートを選びましょう!
高千穂峰は日本書紀に記された天孫降臨の舞台となった山で、古くから信仰を集めてきました。近代では、日本で初めてとされる新婚旅行で坂本龍馬が訪れた山として知られています。
高千穂峰は登山ルートが整備されていて登山口から山頂までの高低差が比較的小さいので、初心者が日帰り登山のできる山としても人気です。
高千穂峰は複数の登山ルートがあり、それぞれ難易度が異なるため、自分の