大楠山(おおぐすやま)は、神奈川県横須賀市にある三浦半島でいちばん高い山です。関東100名山の100番目の山で、標高は241mとそれほど高くありません。初心者でも気軽に日帰り登山が楽しめるため、ファミリーハイキングにおすすめです。
大楠山の基本情報と魅力
大楠山は、横須賀市および三浦半島最高峰の山ですが、標高が241mと低い上に登山道がよく整備されており、また東京都心から近いこともあって、初心者でも気軽にハイキングが楽しめる山として親しまれています。
大楠山という山名は、昔山頂に楠の老樹があったことが由来とされていますが、現在の山頂に楠はなく、昼食をとるのに最適な広場となっており、展望塔や休憩所、トイレがあります。
(注)2023年7月現在、山頂の休憩所、トイレ、展望塔は休業しています。
山頂は見晴らしが良く、相模湾、東京湾、房総半島に、天気が良ければ富士山や伊豆半島、大島まで見渡せ、海と陸の景観を楽しめます。
大楠山は温暖な気候で知られる三浦半島にあるため年間を通じてハイキングが楽しますが、おすすめなのは菜の花や桜がきれいな春とツツジや新緑がまぶしい初夏、紅葉が見事な秋です。
そして意外な穴場は真冬。澄み切った空気の中で雄大な富士と海の眺望が楽しめるのは、大楠山ハイキングの見どころの1つといえるでしょう。
山の名前 | 大楠山(おおぐすやま) |
標高 | 241m |
都道府県 | 神奈川県 |
エリア | 関東 |
山域 | 三浦丘陵 |
地図・天気など | 詳細情報 |
魅力その①:山頂からの眺望が楽しめる
大楠山は低山ですが、周囲に高い山々がないため、山頂からは360度の眺望が広がります。その素晴らしさは、歴史小説家の司馬遼太郎氏が著書「三浦半島記」の中で「その山頂からの眺望は、日本国のどの名山よりもすぐれている」と記すほど。
三方を海に囲まれている三浦半島にあるため、東京湾、相模湾、房総半島、伊豆半島、箱根連山、富士山、さらに横浜ランドマークタワーや東京スカイツリーなど山と海と街の景観が楽しめます。
四季折々の自然が楽しめる
大楠山は都心の近くにありながら、四季折々の自然を満喫できる山です。春は桜や菜の花が美しく、初夏から夏にかけてはホトトギスの鳴き声とみずみずしい新緑、前田川の清流が心のデトックスをしてくれます。晩秋から初冬にかけては木々があでやかに色づき、冬は澄み渡る空と海の青と、クッキリとそびえる富士山のコントラストが見事です。
初心者も無理なくハイキングが楽しめる
大楠山は低山な上に整備された登山道がいくつもあるので、山歩き初心者の方でも無理なくハイキングが楽しめる山です。体力に応じてコースを組み合わせたり、他山との縦走も可能。都心から簡単にアクセスできることもあって、休日ともなると山頂は家族連れなどでにぎわいます。
大楠山の難易度別おすすめ登山コース
横須賀市が公式に発表している大楠山ハイキングコースは、大楠芦名口コース、前田橋コース、塚山・阿部倉コース、衣笠コース、湘南国際村コースの5つあります。ここではおすすめのコースを3つ紹介します。
【初心者でも安心】大楠山往復・湘南国際村コース
大楠山ハイキングコースの中で最も短時間で歩けます。コースの半分ほどが舗装路で、山に入っても整備された階段を歩くため初心者の方や子供連れにおすすめです。
ルート紹介
湘南国際村→(40分)→大楠山→(55分)→湘南国際村
※休憩時間:約16分
必要日数 | 日帰り |
総距離 | 4.5㎞ |
コースタイム | 1時間42分 |
累積標高 | 上り:301m 、下り:292m |
難易度 | ★☆☆☆☆ |
詳細レポート
湘南国際村センター前バス停から駐車場に向かって500mほど歩くとハイキングコース入口です。舗装路を1.6㎞程歩いたら山道へ。
標識に沿って進んでいくと展望塔のある山頂に到着します。
駐車場
湘南国際村の無料駐車場を利用します。大楠山登山コースの登山口付近に駐車場があるのは、この湘南国際村コースだけです。マイカーでアクセスしたい子供連れの方などは、このコースを利用するといいでしょう。飲料水などの設備はありませんが、駐車場は非常に広く、無料です。
- 収容台数:200台
- 料金:無料
- 時間:7時~21時
- 標高:166m
- トイレ:あり
- 登山ポスト:なし
- 自販機:なし
【三浦半島の景色を満喫】大楠山周回・前田橋~大楠芦名口コース
前田川の遊歩道を歩く「前田橋コース」で大楠山に登り、平坦な道の多い「大楠芦名コース」で下山する大楠山登山のスタンダードコース。川、山、海と三浦半島らしい自然の風景をたっぷり味わえます。
ルート紹介
前田橋バス停→(2分)→前田川遊歩道→(15分)→大楠山ハイキングコース入口→(55分)→大楠山→(45分)→大楠芦名口バス停
※休憩時間:約11分
必要日数 | 日帰り |
総距離 | 6.3㎞ |
コースタイム | 2時間14分 |
累積標高 | 上り:327m 、下り:321m |
難易度 | ★☆☆☆☆ |
詳細レポート
前田橋バス停からすぐ、前田川のせせらぎに沿って清流が心地良い遊歩道を歩き始めます。
橋を渡ったところから登山道がスタート。頂上手前には国土交通省の大楠山レーダ雨量観測所の白い展望台とトイレがあります。
山頂から大楠芦名口バス停方向への下山道は道幅もあり、ある程度舗装されているため歩きやすくなっています。帰りのバスは海岸沿いを走るため爽快。初冬の水平線上にそびえる富士山と夕日の眺めは絶景の一言です。
駐車場
登山口付近に駐車場はありません。立石(たていし)バス停奥の県立立石駐車場がいちばん近い駐車場です。この駐車場は「秋谷の立石」という景勝地にあり、富士山のビュースポットであるため平日でも混雑し、すぐに満車になってしまいます。大楠山登山者というよりも、立石海岸や周辺の飲食店利用者のための駐車場なのでトイレ以外に登山関連の設備はありません。
- 収容台数:62台
- 料金:無料
- 時間:24時間。ただし7月1日~8月31日は6時から20時まで
- 標高:12m
- トイレ:あり
- 登山ポスト:なし
- 自販機:なし
【三浦半島横断】大楠山~武山~砲台山~三浦富士縦走コース
大楠山ハイキングに、武山、三浦富士の登山も加えた縦走コース。低山を歩きつつ三浦半島を横断します。大楠山だけでは物足りない、歩き足りないという方におすすめです。
ルート紹介
前田橋バス停→(1分)→前田川遊歩道→(15分)→大楠山ハイキングコース入口→(55分)→大楠山→(50分)→登山口→(15分)→よこすか関口牧場→(45分)→竹川バス停→(15分)→武山登山口→(30分)→武山→(10分)→砲台山→(20分)→三浦富士→(30分)→三浦富士登山口→(10分)→京急長沢駅
※休憩時間:約30分
必要日数 | 日帰り |
総距離 | 14.8㎞ |
コースタイム | 5時間15分 |
累積標高 | 上り:727m 、下り:727m |
難易度 | ★★☆☆☆ |
詳細レポート
前田橋バス停からスタート。前に述べた前田橋コースで大楠山山頂へ行きます。
下山は大楠芦名口方面へ。国道134号線に出たら横須賀市民病院方向に向かってまっすぐ進みます。途中、りらくる長坂店のT字路を左に入って道なりに進むとよこすか関口牧場へ。自家製ソフトクリームが人気です。
134号線に戻り、横須賀市民病院を通って自衛隊駐屯地がある林交差点を三崎街道/県道26号線に折れます。いくつかバス停を過ぎて竹川バス停へ。
竹川バス停からは案内板に従い、住宅街を通って武山登山口へ。案内板に従って坂道を登ると山頂に到着します。武山はツツジのきれいなスポットで展望台があり、休憩スペースもあります。
武山から標識に従い砲台山へ。戦争の面影が偲ばれます。
尾根道を歩いていくと三浦富士山頂に到着します。
三浦富士からは京急長沢駅方向に向かって下山します。
駐車場
縦走コースのため、マイカーは不向き。バスを利用しましょう。
大楠山のQ&A
大楠山で多い質問は、ヤマビル、通行止め、駐車場などです。回答と併せて紹介します。
Q1:大楠山にヤマビルは出ますか?
大楠山にヤマビルの報告はないようです。しかし、季節にもよりますが蜂や蛇が出ることがあります。
Q2:大楠山に通行止めの箇所はありますか?
2023年7月現在、大楠山ハイキングコースに通行止めの箇所はありません。ただし、前田橋コースと衣笠コース(エコミル~山頂)の一部に倒木が発生しています。ほかにも倒木が発生する可能性がある箇所が複数あるので注意して通行してください。
Q3:大楠山に駐車場はありますか?
大楠山山頂下、雨量観測所がある大楠平と呼ばれる一帯に無料駐車場とトイレがあります。大楠芦名口からこの駐車場まで車で来ることもできますが、一般車両の進入は自粛が求められています。先に紹介した湘南国際村駐車場か県立立石駐車場、周辺のコインパーキングなどを利用してください。
登山口へのアクセス・各種情報
先に述べたおすすめの登山コースの起点となる登山口を紹介します。
湘南国際村めぐりの森入口
湘南国際村コースの起点となる登山口です。
マイカーでのアクセス
湘南国際村へは、横浜横須賀道路の横須賀ICから逗葉新道、県道217号を経て約10㎞、所要時間約15分です。駐車場入口脇が、めぐりの森入口になっています。案内版に従い舗装路を歩いていきましょう。
バスでのアクセス
JR逗子駅または京急線逗子葉山駅から京急バスの湘南国際村センター前行きに乗り、湘南国際村センター前バス停下車。所要時間は約35分です。バスを降りたら駐車場方向に向かいます、駐車場脇にあるめぐりの森の案内板に従って舗装路を歩いていきましょう。
前田橋
前田川の遊歩道を通って登山道へと入る前田橋コースの起点は、前田橋バス停または県立立石駐車場です。
マイカーでのアクセス
立石駐車場は立石公園の隣、国道134号線沿いにあります。横浜横須賀道路の逗子ICから約31分、28㎞程の距離です。夏場や富士山のきれいな初冬は大変込むので注意してください。駐車場から車道をそのまま800mほど南進し、前田橋交差点を左に入りまっすぐ進むと前田橋コースの登山口があります。
バスでのアクセス
JR逗子駅または京急線逗子葉山駅から、京急バスの大楠芦名口行き、横須賀市民病院行き、長井行きで前田橋バス停下車。所要時間は約30分です。バス停から木工房くこを通ってまっすぐ歩いていくと前田橋遊歩道があり、前田橋コースに入ります。
大楠山周辺のおすすめ山旅スポット
大楠山があるエリアにはおすすめの立ち寄りスポットがあります。
横須賀しょうぶ園
毎年5月から6月にかけて咲く、約14万株のしょうぶの花が見事な庭園。しょうぶのほか藤、シャクナゲなどもあります。
SHOKU-YABO農園
自家菜園で取れた無農薬野菜を中心に、体に優しい食事を提供するレストラン。食品添加物や化学調味料を使わないシンプルな味付けが好評です。
立石(たていし)海岸
海に突き出た奇岩「立石」を中心とした海岸一帯が、かながわの景勝50選になっています。水平線上にそびえる富士山とのコントラストが見事で、かつては初代安藤広重や、明治の西洋画家・五姓田(ごせだ)義松らが描き、現在は多くの写真家がカメラを構える風光明媚なスポットです。