秩父神社の神奈備山(かんなびさん)としてそびえ立ち、神が宿る依り代とされてきた武甲山。日本二百名山・日本百低山・花の百名山と多数の名山に選定されています。また、両神山・三峰山とともに秩父三山としても名を連ね、地元民だけでなく多くの人から親しまれている山です。初心者でも挑戦しやすく、アクセスも良好なことから人気な武甲山。本記事では難易度別におすすめ登山コースを紹介します。武甲山の魅力やアクセス情報、周辺のおすすめスポットまで詳しく解説するので、興味のある方はぜひ最後までご覧ください。
武甲山の基本情報と3つの魅力
武甲山は埼玉県秩父市と横瀬村の境界にある、1,304mの山です。「ヤマトタケルが自身のカブトを武甲山の岩室に奉納して東征の成功を祈願した」という伝説が元禄時代に定着したことからその名がついたとされています。
武甲山は日本屈指の良質な石灰岩の鉱床で、可採鉱量は約4億トンとも。明治時代よりセメントの原料として採掘が開始され、日本の発展に貢献しました。
山の名前 | 武甲山(ぶこうさん) |
都道府県 | 埼玉県 |
標高 | 1,304m |
詳細情報 | 武甲山の地図・天気 |
魅力その①:花の百名山!自然あふれる山
武甲山の魅力1つ目は、自然豊かでたくさんの花が見られることです。花の百名山として「セツブンソウ」が認定されており、その名の通り2月ごろから春先にかけて、白色の小さく可憐な花を咲かせます。
セツブンソウも含めて武甲山には石灰岩質の山特有の植物が豊富。武甲山に生息している植物はこちらです。
- チチブイワザクラ:発見困難
- アカヤシオ:5月上旬
- シロバナエンレイソウ:5月上旬~中旬
チチブイワザクラは埼玉県希少動植物に指定されており、現在は武甲山の一部にのみ自生している珍しい花です。山内で見つけるのは難しいでしょう。お目にかかりたい方は、4月下旬~5月上旬に武甲山資料館にて展示されているので、立ち寄ってみてください。
武甲山資料館公式ホームページ:https://www.bukohzan.jp/
魅力その②:神秘的な絶景!山頂から眺める雲海
武甲山の魅力2つ目は、山頂から雲海を見られることです。条件が良ければ、北アルプスや浅間山などの名峰をバックにした絶景が見られます。雲海は行けば必ず見られるものではなく、運しだいですが、目にした時の感動は計り知れません。
雲海の発生条件はこちら。
- 朝晩が冷え込む時期
- 雨上がりのあと(雨のち晴れの天気予報がベスト)
- 風の弱い夜明け前から早朝
- 秋に発生しやすい
下界が見えないような肉厚な雲から、霧のような薄い雲まで雲海にも種類があり、出会いは一期一会です。非日常を味わえる雲海を目指して武甲山に登るのもおすすめですよ。
魅力その③:武甲山はかわいそう?山容変化の歴史
武甲山の魅力3つ目は、歴史を考えさせられる点です。「武甲山」と検索すると「かわいそう」という予測ワードが出てきますが、これは山の北側斜面が削られ、平らな山容に変化してしまったことに起因します。
武甲山の標高は現在1,304mですが、かつては1,336mでした。30mも低くなってしまった理由は、明治期より盛んに行われた石灰岩採掘の結果です。石灰岩が掘り進められたために旧山頂は失われ、1977年に三角点が1,295m地点に移動されました。その後、2002年に1,304m地点が発見され、現在の山頂に。
武甲山で採掘された石灰岩はセメントとなり首都圏の高層ビルや新幹線、高速道路の整備などに使われています。明るい魅力ではありませんが、武甲山の石灰岩によって我々の生活が成り立っているのも事実です。歴史的背景を知り、感謝の心を持って武甲山に登りましょう。
武甲山の難易度別おすすめ登山コース
武甲山は標識が多く、整備されているため登りやすい山です。一ノ鳥居登山口を1丁目、山頂を52丁目とした丁目石が細かく設置されており、山頂まであとどれくらいかわかりやすくなっています。初心者でも安心して挑戦が可能です。一方でコースによっては険しい道も。
ここからは難易度別に武甲山の登山コースを紹介します。自身のレベルに合わせてコース選択の参考にしてください。
※橋立コースは現在通行止めですが、迂回ルートがあるため崩落危険個所を回避して通行が可能です
【初心者向け】安心安全!武甲山周回コース
①一ノ鳥居駐車場→20分→②15丁目登山口→1時間5分→③武甲山→40分→④持山寺跡→45分→⑤一ノ鳥居駐車場
必要日数 | 日帰り |
コースタイム(休憩を含まない) | 2時間50分 |
距離 | 7.5㎞ |
累積標高 | のぼり:855m くだり:858m |
武甲山周回コースは難所もなく、初心者が気軽に登れます。武甲山の標識でいうと、表参道コースをのぼって持山寺跡コースをくだるルートです。
15丁目までは舗装路が続いており、そこから先は林道になります。沢の流れる音を聞きながら緩やかな坂をのぼるのは気持ちが良いものです。33丁目に「大杉広場」というスポットで休憩をするのがおすすめ。樹齢500年を超えるとされているダイナミックな杉の大木が待ち受けています。
山頂からの眺望も良く、秩父の街並みが一望できるほか、群馬県の浅間山や谷川連峰、栃木県の日光白根山など数々の名山が遠く並んでいる様を見られます。
武甲山周回コースは危険が少なく、満足感とちょうど良い疲労感を得られるコースです。
【中級者向け】車なしでも行ける!横瀬駅-浦山口駅はしごコース
①横瀬駅→1時間15分→②一ノ鳥居駐車場→20分→③15丁目登山口→55分→④武甲山→1時間35分→⑤浦山口駅
必要日数 | 日帰り |
コースタイム(休憩を含まない) | 4時間5分 |
距離 | 15.4㎞ |
累積標高 | のぼり:1,219m くだり:1,225m |
続いては駅から駅をはしごする、都心からのアクセスも良好なコースです。難所は少ないものの、①横瀬駅から②一ノ鳥居駐車場までが長く、総距離も15㎞を超えることから健脚者向けといえます。
しかし、①横瀬駅から②一ノ鳥居駐車場までの道はただ長いだけではありません。工業地帯の道路が続いており、まるで映画のような山とは異なった景色を楽しめます。ただし工業車両が行き交う道路なので、事故には注意してください。
一ノ鳥居登駐車場から山頂までは前章の周回コースと同じルートを辿ります。山頂からは「裏山道コース」と呼ばれるルートをくだって浦山口駅まで。その間に通行止めになっている箇所があるので、迂回ルートを進みましょう。くだり始めはなかなかの急坂ですが、中ごろからはなだらかになります。
「車を持っていないが武甲山に挑戦したい」という方はぜひこのコースを。
【中級者以上】3つの山を渡る!小持山・大持山縦走コース
①一ノ鳥居駐車場→20分→②15丁目登山口→1時間25分→③武甲山→1時間5分→④小持山→30分→⑤大持山→40分→⑥妻坂峠→30分→⑦一ノ鳥駐車場
必要日数 | 日帰り |
コースタイム(休憩を含まない) | 4時間30分 |
距離 | 10㎞ |
累積標高 | のぼり:1188m くだり:1194m |
小持山・大持山縦走コースは前章の横瀬駅-浦山口駅はしごコースより距離は短いものの、勾配の急な岩場などの難所があるため、中級以上の方におすすめです。武甲山から小持山、そして大持山へとのぼりくだりを繰り返すので、アップダウンを楽しめます。
小持山は木が視界を遮るため眺望は乏しいですが、大持山は絶景。
武甲山山頂までは周回コースと同じルートですが、山頂以降は狭い道が多く片側が切れ落ちている箇所もあるので注意が必要です。とはいえ危険な場所を除けば基本的には気持ちの良い林道が続いています。
武甲山だけでは歩き足らない、平和な登山道だけでなくスリルを味わいたいという方にはうってつけのコースです。
武甲山へのアクセス情報
武甲山は車でも電車でもアクセス可能です。ここからは駐車場やトイレなどの各種情報について紹介します。
武甲山の駐車場情報
周回コースおよび小持山・大持山縦走コースの場合は、車で一ノ鳥居登山口までアクセスします。駐車場情報は以下のとおりです。
駐車場名 | 武甲山御嶽神社一ノ鳥居駐車場 |
駐車可能台数 | 30台ほど |
駐車料金 | 無料 |
最寄りIC | 狭山日高ICより約60分 |
武甲山はとても人気なので、午前中で満車ということも珍しくありません。朝早めの行動をおすすめします。
駐車場に2022年に新しくできた綺麗なトイレがあるのは嬉しいポイントです。付近に自動販売機やコンビニはないため、飲み物等は事前に準備をしてください。
横瀬駅へのアクセス情報
公共交通機関を選択する場合、西部秩父線の「横瀬駅」で下車します。都心からのアクセスも良く、便利です。
東京駅から出発する場合の乗り換え例(所要時間:約1時間40分)
- 東京駅から丸の内線に乗車し、池袋駅へ
- 池袋駅にて西武池袋線・飯能行に乗り換え飯能駅へ
- 飯能駅にて西武池袋線・西部秩父行に乗り換え横瀬駅へ到着
なお、横瀬駅から一ノ鳥居までは徒歩で約1時間30分かかります。入山前の長距離歩行を避けたい場合、バスの運行はないので横瀬駅からタクシーに乗車すると良いでしょう。ただし、駅にタクシーがいることは少ないので事前に予約をすると安心です。
横瀬駅にはトイレ、自動販売機と隣接されている売店もあります。飲み物等も横瀬駅で購入可能です。
トイレ情報
武甲山山頂トイレ
武甲山の山頂には水洗トイレがあります。しかし、雨水を貯めて流すタイプのトイレなので水が不足している場合は使用不可なことも。
18丁目付近の「不動滝」に空のペットボトルが置いてあります。不動滝で汲んだ水を山頂へ運ぶボランティアを募っているので、登頂のついでに水を運びましょう。
※冬季は閉鎖
山頂トイレの使用状況は横瀬町のホームページをご覧ください。
横瀬駅から一ノ鳥居登山口までの間にあるトイレ
横瀬駅から一ノ鳥居登山口までは徒歩で約1時間30分かかります。途中で行きたくなった場合のため、立ち寄れるトイレを2ヵ所ご紹介。
・生川観光トイレ
・菱光石灰工業 登山者用公衆トイレ
企業がご厚意で提供してくださっているトイレです。綺麗に使いましょう。
武甲山Q&A
武甲山にテント場はありますか?
武甲山にテント場はありません。
武甲山に雪は積もりますか?
冬季には積雪がありますが、武甲山は年間を通して登れる山です。
雪登山をする場合はアイゼン等の装備を整えて挑みましょう。
武甲山に登る場合、登山届の提出は必要ですか?
登頂前に登山届を提出しましょう。
一ノ鳥居登山口付近に登山届を入れる箱が設置されています。
また、埼玉県の山ではオンラインでの届出も可能です。
オンラインの場合は埼玉県警のホームページより提出してください。
武甲山の周辺おすすめスポット
ここからは武甲山の周辺にあるおすすめ観光スポットを紹介します。下山後も楽しめるスポットがたくさんあるので、ぜひご覧ください。
おすすめスポット①:秩父神社
武甲山周辺のおすすめスポット1つ目は「秩父神社」です。秩父神社は秩父地方の総鎮守であり、パワースポットとしても人気。学業成就と縁結びの神様に、多くの人々が参拝に訪れます。
毎年12月1日~6日に開催される「秩父夜祭」は京都の祇園祭、飛騨の高山祭と並んで日本3大曳山祭・日本3大美祭と称され、ユネスコの無形文化遺産にも認定。提灯で飾り付けられた山車を曳き回し、美しい冬の花火が打ちあがる秩父夜祭は武甲山と深い関わりがあるとも言われています。
また、アニメ好きの方にとっても秩父神社は外せません。人気アニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の第4話に登場し、聖地となっています。
魅力あふれる秩父神社をお参りしてみてはいかがですか。
秩父神社の周辺には美味しいものもたくさん
秩父神社の周辺には飲食店が多数あり、なかでも蕎麦が絶品。秩父は蕎麦の産地としても有名です。秩父神社から徒歩2分のところにある「そばの社」では純手打ちにこだわった風味豊かな蕎麦がいただけます。蕎麦だけでなく、秩父の郷土料理である「みそポテト」や「豚みそ丼」も食べられます。
昼のみの営業かつ売り切れ終いなので、訪れる予定の方は時間に注意してください。
営業時間 | 11時30分~16時 |
定休日 | 毎週水曜日 |
公式ホームページ | http://www.sobanomori.net/ |
おすすめスポット②:羊山公園
武甲山周辺のおすすめスポット2つ目は武甲山の麓にある「羊山公園」です。戦前は畜産場があり、綿羊を飼育していたことからその名がついたとされています。現在も名前にちなみ、市営ふれあい牧場内で飼育しているので、羊に会うことが可能です。
羊山公園で特におすすめなのが、17600平方メートルもの広大な地に咲く「芝桜の丘」。9種類の芝桜が植えられており、ピンクや白、紫など様々な色で彩ります。40万株以上植えられた芝桜と奥にそびえ立つ武甲山のコラボレーションの美しさは圧巻。例年5月初旬が見頃です。
なお、基本的には無料ですが芝桜の開花期間は入場料がかかります。入場料がかかる日付は年によって異なるため、秩父市のサイトをご確認ください。
秩父市公式サイト秩父観光なび:https://navi.city.chichibu.lg.jp/p_flower/1808/
おすすめスポット③:武甲温泉
武甲山周辺のおすすめスポット3つ目は「武甲温泉」です。横瀬駅より徒歩10分の場所にあるので、下山後のアクセスも良好。登山でかいた汗を流せます。
自然を堪能できる露天風呂が名物で、ヒノキ風呂と岩風呂の2種類、そのほかジェットバスやサウナもあります。神経痛や筋肉痛、疲労回復に効果があり、登山後の体を癒すのにぴったりです。
食事処があるため、入浴後はお腹も満たせます。ソースカツ丼やうどんなどのご飯ものから、おつまみになるもつ煮まで。疲れをとるためにも、ゆったりとしたひと時を過ごしてはいかがですか。
営業時間 | 10時~21時 |
定休日 | 年中無休 |
料金(平日) | 一般(中学生以上):700円 小学生以下:400円 2歳以下:無料 |
料金(土日祝) | 一般(中学生以上):900円 小学生以下:500円 2歳以下:無料 |
公式ホームページ | http://www.buko-onsen.co.jp/ |