愛宕山(あたごやま)は京都市右京区にある標高924mの山で、山頂には全国に約900社あるといわれる愛宕神社の総本宮が建立されています。愛宕神社は火伏せの神として信仰を集めており、防火にご利益があります。
登山道は愛宕神社の参道として整備されているので、初心者や家族連れも登れる山です。愛宕山は四季を通じて登山を楽しめるので、地元の京都や関西のみならず全国から登山愛好家が訪れています。
愛宕山の基本情報と魅力
愛宕山は古くから人々に愛された山で、上方落語の演目としても有名です。古典落語の名作といわれる愛宕山は、作中で京都祇園から愛宕山にピクニックに出かけた旦那と太鼓持ちのエピソードがおもしろおかしく語られています。また、安土桃山時代に活躍した武将の明智光秀が本能寺の変の前に訪れ、君主の織田信長を討つべきか愛宕神社のおみくじを3回引いて占ったという逸話があります。愛宕山は歴史と文化の両面で、人々に影響を与えてきた山なのです。
愛宕山の基本情報
愛宕山が登山客でもっともにぎわうのは、5月の新緑と11月から12月にかけての紅葉の時期です。冬でも登山は可能ですが登山口と山頂の気温差が10度以上あるので、防寒対策とアイゼンなどの冬の装備は必須です。
山の名前 | 愛宕山 |
標高 | 924m |
エリア | 東海・北陸・近畿 (京都府) |
詳細情報 | 愛宕山の地図・天気 |
愛宕山の魅力その①|登山道から京都の街並みを一望
愛宕山は京都の西側に鎮座する山で、登山道から京都の市街地を見下ろせるスポットが点在しています。
愛宕山は標高1,000m以下の低山なので麓から山頂まで森林におおわれていますが、登山道の一部で景色のひらけている場所があり、美しい眺めを堪能できます。京都盆地にひっそりとたたずむ古都の風景は、おもむきを感じずにはいられません。
また、愛宕山で登山者同士がすれ違うときは、登る側は下りる人に「おくだりやす」下る側は登る人に「おのぼりやす」と声をかける風習があるのも、京都のはんなりとした雰囲気を感じます。
愛宕山の魅力その②|静かに紅葉を満喫できる
愛宕山は広葉樹におおわれているため、秋には赤や黄色に色づいた紅葉が楽しめます。特に山頂の愛宕神社は、境内周辺が真っ赤に染まり美しく紅葉します。京都の紅葉シーズンは嵐山を中心に世界中の観光客でごった返しますが、愛宕山の登山道にはそれほど多くの人は詰めかけないので、静かな雰囲気でもみじがりを楽しめるのです。
また、京都市内よりも標高の高い位置にある愛宕山は、嵐山の紅葉の最盛期である11月中旬から12月上旬よりも早い時期に見頃を迎えるため、混雑のピークを避けて紅葉を満喫できます。
愛宕山の魅力その③|年に1度の千日参で夜登山が楽しめる
火伏せの神を祀る愛宕神社は、7月31日の夜から8月1日の朝にかけてお参りすると、1000日間の功徳があるという千日参(せんにちまいり)が行われます。また、3歳までに千日参を行った子どもは、生涯にわたって火の災難から免れる徳を授かるといわれているのです。この日は特別に登山口から山頂の愛宕神社まであかりが灯り、夜の登山を楽しめます。危険を伴う夜間の登山を初心者が経験できる機会はあまりありませんが、愛宕山の千日参では、多くの人出があり登山道を照明が照らしているので安心して登ることができます。
愛宕山の難易度別おすすめ登山コース
愛宕山には多くの登山ルートがありますが、一般的な登山道の平均コースタイムは4時間30分で、初心者でも日帰り登山が可能です。登山口から山頂までの標高差は800m以上であるので、しっかりした装備と体力が必要です。
愛宕山の登山道の中から、初心者におすすめの3コースを難易度別に紹介します。
- 表参道コース
- 月輪寺コース
- 水尾コース
古都の歴史を感じながら愛宕山を登る|表参道コース
①清滝バス停→10分→②表参道登山口→2時間20分→③愛宕神社→20分→④三角点→1時間45分→表参道登山口→10分⑤清滝バス停
必要日数 | 日帰り登山 |
総コースタイム | 4時間45分(休憩20分含む) |
距離 | 10.6km |
累積標高 | 1041m |
難易度 | ★★☆☆☆ |
表参道コースは愛宕山のもっとも利用される登山ルートです。山頂の愛宕神社までしっかり登山道が整備されています。初心者の方が愛宕山に登るなら、このルートを使うのがおすすめです。
表参道登山口へは清滝バス停から徒歩約10分で到着しました。バス停と登山口の間には、公衆トイレや飲み物の自動販売機があります。
登山口にある鳥居をくぐると山登り開始です。
登山道はしっかり整備されているので歩きやすいですが、急な坂道を登るので体力が必要です。
登り始めると京都消防団の嵯峨分団が設置した看板が100mごとにあり、山頂まであとどのくらいのところにいるのかわかるようになっています。
看板にはクスッと笑ってしまうような標語が書かれていて、これを読みながら道をすすむのも楽しいです。
登山道は急な勾配が続きますが、ところどころに休憩できるスペースが用意されているので、休憩をとりながら体力に合わせて登れます。
登山道の途中に、京都の街が見下ろせる絶景スポットがあらわれました。
さらにすすむと山頂と水尾コースの分かれ道に差し掛かりました。
ここにも休憩できる場所があります。
分かれ道を越えて登山道をすすむと大きな黒門があらわれます。
黒門は愛宕神社の門ではなく、愛宕大権現を祀る白雲寺の門です。8世紀に建てられた白雲寺は現存していません。
黒門を越えると登山道は石段に変わりいよいよ山頂が近づきます。愛宕神社の手前にはトイレと休憩所があります。愛宕神社の手前にはきつい階段があり、最後に難所が待ち受けていました。
階段を登りきり神社の本殿に到着です。
愛宕神社のあるところが愛宕山の最高地点ですが、標高889mの三角点は別のところにあるのでそこまで行ってみました。三角点は見晴らしがよく、素晴らしい景色が広がります。三角点から本殿へ戻り、表参道コースで下山しました。
愛宕山の表参道登山口清滝駐車場(さくらや青木駐車場)情報
標高 | 74m |
駐車スペース | 50台 |
駐車料金 | 普通車:平日700円 土日祝1,200円 |
トイレの有無 | あり |
登山ポストの有無 | なし |
清滝駐車場は営業時間が季節によって異なるため注意が必要です。日の出前や日没後の時間帯は駐車できません。営業時間は時期によりますが、6:30〜17:00前後です。駐車場付近には公衆トイレがあるので、登山前に済ませておきましょう。千日参や初詣の時期、ゴールデンウィークは満車になる可能性があります。
愛宕山の駐車場や登山口に登山ポストは設置されていません。京都府はインターネットで登山計画書を受け付けているほか、警察署や交番に直接届ける方法があります。
空也の滝としぐれ桜を堪能する|月輪寺コース
①清滝バス停→1時間15分→②月輪寺登山口→1時間10分→③愛宕神社→2時間10分→④表参道登山口→10分→⑤清滝バス停(休憩時間20分含む)
必要日数 | 日帰り登山 |
総コースタイム | 4時間45分(休憩時間20分含む) |
距離 | 9.9km |
累積標高 | 946m |
難易度 | ★★☆☆☆ |
月輪寺コースと表参道コースの周回で登山しました。月輪寺コースは表参道コースと同じ清滝からスタートします。月輪寺登山口へは表参道コースからの分かれ道を2kmほど歩きます。
登山口には大きく「月輪寺のぼりぐちです」と大きく書いてあるので、迷うことはありません。
登山道に入り、まず空也の滝を目指します。
空也の滝は落差15mで迫力を感じます。
登山道に戻り月輪寺を目指しました。月輪寺は見晴らしがよく、春にはしぐれ桜がきれいに咲きます。
月輪寺を越えて登山道をすすむと絶景スポットがあらわれました。ここからは京都の街を眼下に見ることができます。
さらに坂を登ると山頂の愛宕神社に到着です。
神社で参拝したあと、下山は表参道コースを利用し清滝へ向かいました。
愛宕山の月輪寺登山口清滝駐車場(さくらや青木駐車場)情報
標高 | 74m |
駐車スペース | 50台 |
駐車料金 | 普通車:平日700円 土日祝1,200円 |
トイレの有無 | あり |
登山ポストの有無 | なし |
月輪寺コースの駐車場は表参道コースと同じ清滝の駐車場を利用してください。
渓谷の上にあるJR保津峡駅から登る|水尾コース
①水尾登山口→1時間50分→②愛宕神社→1時間40分→③水尾登山口
必要日数 | 日帰り登山 |
総コースタイム | 3時間30分(休憩20分含む) |
距離 | 7.3km |
累積標高 | 700m |
難易度 | ★★★☆☆ |
水尾コースの登山口はJR保津峡駅から登山口へ向かいます。JR保津峡駅は桂川にかかる鉄橋の上にある駅です。
水尾コースは表参道コースや月輪寺コースに比べると、少し難易度の高いコースといえます。水尾コースの登山口はJR保津峡駅から3.5kmほど歩きます。また、水尾自治会が運営するバスで行くことも可能です。
水尾コースは表参道コースとは違って階段で舗装されていない道を登るルートです。登り始めから急登が続くため、体力を奪われます。
急登を登り切るとしばらく緩やかなアップダウンのある道に変わりますが、再び長い急登が続きます。急登をしばらくすすむと、水尾の別れに到着し表参道コースと合流しました。さらに、登山道をすすむと黒門があらわれ、石の階段を登ると愛宕神社に到着です。
愛宕神社の本殿をお参りし、少し休憩を取ったあとで下山しました。
愛宕山の水尾登山口駐車場(水尾自治会駐車場)情報
標高 | 240メートル |
駐車スペース | 6台 |
駐車料金 | 500円 |
トイレの有無 | なし |
登山ポストの有無 | なし |
水尾自治会駐車場は無人営業の駐車場です。駐車料金の500円はポストに入れてください。
愛宕山のQ&A
愛宕山は京都にある有名な低山であるため、人によって登山難易度のイメージが異なっているようです。愛宕山にこれから初めて登る人から、多くの質問をいただきました。
Q.愛宕山に小学校高学年の子どもと登ろうと思っているのですが、子供でも登山可能ですか?
A.愛宕山は初心者向きの山で、小学校高学年の子どもなら登山可能です。ただし、登山靴かトレッキングシューズは必須です。また、登山口と山頂では気温が10度ぐらい違うので、季節によって着脱のしやすい防寒着の用意が必要かもしれません。
Q.嵐山観光とセットで愛宕山に登ろうと思っていますが、登山難易度は関東の高尾山ぐらいでしょうか?
A.愛宕山は高尾山よりも難易度が高く、観光のついでに登る山ではありません。登山口から山頂まで約4kmの道のりがあり、きつい登りが続く箇所があるのでしっかり登山計画を立ててから登る必要のある山です。
Q.愛宕山の千日参に行こうと思っているのですが、ヘッドライトなどの照明器具は必要ですか?
A.愛宕山の千日参当日は登山口から山頂の愛宕神社まで照明があるので、ヘッドライトは必ずしも必要ありません。しかし念のため、懐中電灯などの照明器具は持参した方がよいでしょう。
愛宕山の登山口情報
愛宕山の登山口は車と公共交通機関のどちらでもアクセス可能です。ただし、車の場合は土日祝日やGW、千日参などの繁忙期は止められない場合があるので注意してください。
愛宕山の表参道登山口情報
表参道登山口は愛宕山のメイン登山口です。登山口には赤い鳥居が建っています。
愛宕山の表参道登山口への車でのアクセス
愛宕山の表参道登山口へ車でアクセスする場合は嵐山・高雄パークウェイの清滝出入り口で下りて府道50号(愛宕街道)に入ります。府道50号から府道137号に入り約1kmでさくらや(青木駐車場)です。
さくらや(青木駐車場)から徒歩約5分で表参道登山口に到着します。
愛宕山の表参道登山口への公共交通機関でのアクセス
愛宕山の表参道登山口への公共交通機関でのアクセスは、JR嵯峨嵐山駅から徒歩7分のところにある野宮バス停で清滝行きのバスに乗ります。野宮バス停から約16分で清滝バス停に到着します。
清滝バス停から徒歩約10分で表参道登山口です。
愛宕山の月輪寺登山口情報
月輪寺の登山口の駐車場と公共交通機関でのアクセス方法は同じです。
月輪寺登山口までの駐車場からのルート
さくらや(青木駐車場)から月輪寺登山口までは徒歩で1時間12分かかります。
月輪寺登山口までの清滝バス停からのルート
清滝バス停から月輪寺登山口までは徒歩で1時間16分です。
愛宕山の水尾登山口情報
愛宕山の水尾登山口は柚子の里で有名です。公共交通機関でのアクセスがおすすめですが、自治体が運営する駐車場があるので車で行くことも可能です。
愛宕山の水尾登山口への車でのアクセス
愛宕山の水尾登山口への車でのアクセスは水尾自治会駐車場を目指します。嵐山・高雄パークウェイの清滝料金所を下りて府道50号で約8km、19分ほどで到着します。
愛宕山の水尾登山口への公共交通機関でのアクセス
愛宕山の水尾登山口への公共交通機関でのアクセスはJR保津峡駅から徒歩で登山口を目指す方法と、保津峡駅から水尾自治会バスを使う方法があります。徒歩約45分、バス約10分で登山口に到着します。
愛宕山周辺のおすすめ山旅スポット
愛宕山は全国的に有名な観光地である嵐山から近く、登山を終えた後に訪れたい場所がいくつもあります。
その中で、厳選した3つのおすすめ山旅スポットを紹介します。
愛宕山のおすすめ山旅スポット|嵯峨野トロッコ列車
嵯峨野トロッコ列車はJR嵯峨嵐山駅に隣接しているトロッコ嵯峨駅からトロッコ亀岡駅を結ぶ路線で、保津峡渓谷の眺望を楽しめる列車です。特に紅葉シーズンは保津峡の赤く色づいた木々の間を通り抜けます。夜間にライトアップされ、車内から見る暗闇に照らされる紅葉は幻想的な世界を作り出しています。
愛宕山登山のあとは、嵯峨野トロッコ列車で保津峡の自然を楽しんでみてはいかがでしょうか。
愛宕山のおすすめ山旅スポット|嵯峨野コロッケ
嵯峨野コロッケは嵐山にあるコロッケ専門店で、北海道産の男爵芋と淡路産の玉ねぎを使用し、素材にこだわりながらも素朴な味わいのコロッケを食べさせてくれます。嵯峨野コロッケは1個100円、たけのこ入りコロッケは150円、和牛の入った金賞コロッケは200円とリーズナブルな値段で揚げたてのコロッケを味わえます。
少し行儀が悪いですが、コロッケをほおばりながら嵐山を散策してみるのもよいかもしれません。
愛宕山のおすすめ山旅スポット|京都嵐山温泉 風風の湯
風風の湯は嵐山にある日帰り温泉で平日は大人1,100円、土日祝は1,300円で入浴できます。泉質は低張性弱アルカリ性温泉で筋肉痛や関節痛、うちみ、くじきなどに効果があり登山のあとにぴったりの温泉です。
シャンプーやボディソープが備え付けられていて、貸しバスタオルなどの有料サービスも充実しているので、手ぶらで気軽に行くことのできる施設です。
桂川のせせらぎを聴きながら入る温泉は、登山と日頃の疲れを癒やしてくれるでしょう。
愛宕山は自分のレベルにあった登山ルートを選びましょう
愛宕山は全国にある愛宕神社の総本宮のある霊山です。日本各地から参拝登山に多くの人が訪れます。愛宕山には初心者でも登れる登山ルートがいくつもあり、愛宕山で初登山を迎える人も多くいます。ただし、きつい登りが続くため、体力が必要な山でもあります。
愛宕山はしっかりと装備を整え、自分にあったルートで登山を楽しんでください。