秋冬の寒い季節の登山では汗をかかずに登山をすることがとても重要です。汗をかくことでどのようなリスクが生じるのか?またそのために考えるべきポイントと、僕が実際に行っている秋冬の登山で2023年時点、最も快適だと思う、軽くて快適で暖かいおすすめの登山の服装について紹介をします。
汗をかくことで生じるリスク
登山上級者になればなるほど、登山では汗をかかないで行動することが重要であり、そのために様々なことについて注意するようになります。なぜ汗をかかないことが重要なのか、ここでは代表的な2つのリスクを挙げます。
①汗冷えしやすくなる→体が冷えると体力が奪われる
汗が肌に付着し、またベースレイヤーに付着していると、乾く時に一緒に熱を奪います。これによって著しく体温が低下します。水の熱伝導率は空気の約25倍も高いと言われています。このことから肌がドライな状態と比較すると、汗が付着することで約25倍の速度で熱が奪われていくわけです。
そして体が冷えると、体が熱を作ります。この時にエネルギー(ガゾリン)を使って、筋肉(エンジン)を動かし、熱(動力)を作ります。これによって気づかない間に体力が奪われていきます。
②水分とミネラルが奪われる→水分とミネラル補給が必要になる
体から汗という形で水分とミネラルが奪われます。水とミネラルが不足すると実に様々なトラブルを引き起こします。代表的なのは疲労感、冷え性、筋痙攣、足のつり、食欲不振です。このようなトラブルを回避するために水分補給、ミネラル補給の量と回数が多くなります。
それが元に持ち歩く水と行動食の消費が増えリスクが生じます。それが不安で多くの水と行動食を持ち歩くことが自分のルールになってしまうと、毎回ザックが重く体力を使うことになります。
これ以外にも、冷えが悪化することによる低体温症など、汗をかくことで生じるリスクは様々です。
汗をかかないために考えるべきポイント
汗をかくことで生じるリスクが分かったところで、汗をかかないようにするためにはどのようなことを考えるべきか効果的な対策を紹介します。
①体温調整を容易にするために重ね着をする
体が熱くなったら脱ぐ、寒くなったら着るという方法で体温調整を容易にすることができます。
②心拍数の急激な上昇を控える
運動をしていて心拍数が早いということは、自分の体力以上の運動している可能性が高いため、発汗量が多くなります。心拍数が120以上にならないように行動量を調整し、時には立ち止まって呼吸を整えます。
秋冬の登山でおすすめの登山の服装
今回紹介する秋冬の登山でおすすめの登山の服装は、汗をかいた時に汗冷えを軽減できること、また体温調整が容易で動きやすいスタイルです。暑がりな方と寒がりな方とでアイテムを紹介します。
ベースレイヤーは保温と速乾性のバランスに優れたメリノウールTシャツ
秋冬の登山に着用するベースレイヤーはメリノウール素材がおすすめです。理由は単純で汗の乾きがゆっくりで、冬は暖かく夏は涼しい優れた機能性を備えているからです。Tシャツをセレクトする理由は、体が熱くなったときに涼しく行動することができるからです。
メリノウールのTシャツを選ぶ時はメリノウール以外にどのような素材が使用されているか?その混紡比率と特徴を理解することが重要です。
メリノウール100%は保温力に優れている分、汗をかいたときの拡散力が低いため汗だまりができやすいです。おすすめはポリエステルが混紡されているメリノウールTシャツです。
ポリエステルは汗の拡散力と耐久性に優れています。これが50%も混紡されている山旅の速乾メリノウールTシャツは保温と速乾性のバランスに優れているため1年中登山やトレイルランニングなどで着用することができます。
動画(7分14秒付近)はメリノウール素材で有名なポリエステル混紡のTシャツの拡散力の違いを紹介したものです。拡散力が低いと濡れたTシャツが肌にベタっとまとわりついて、そこから冷えが生じてしまいます。山旅の速乾メリノウールTシャツは勢いよく水が拡散していることがよくわかると思います。
肌に汗を残さないために有効なメッシュレイヤー
メッシュ素材のタイトなアンダーウェアをベースレイヤーと肌の間に着用することで、肌をドライに保つことができます。そこで考えるべきポイントはベースレイヤーのシルエットです。
シルエットがタイトなベースレイヤーであれば汗を吸わず、汗を移動させることに長けたファイントラックのドライレイヤーでも良いのですが、シルエットがゆったりめのベースレイヤーであれば、汗を吸って、汗を移動させることに長けたミレーのドライナミックメッシュがおすすめです。
ドライナミックメッシュの厚みによって常にベースレイヤーが肌から離れているので、肌は濡れた感覚がなく、また汗が乾いていくときに生じる気化熱による汗冷えを軽減します。
通気性と保温力のバランス調整がしやすいミドルレイヤー
ミドルレイヤーはポーラテックのアルファダイレクトを使用したジャケットがおすすめです。この素材は非常に軽く、程よい通気性と保温性を兼ね備えた化選素材です。アルファダイレクトは60、90、120と厚手が異なり、数字が多くなると保温力が高く、少なくなると通気性に優れています。
僕が好んで着用しているのはノローナのリンゲンアルファ90ジャケットです。このジャケットはMサイズで僅か180gのミドルレイヤーです。パタゴニアの最も軽量なR1エアのジップネックでさえも289gあることを考えるととても軽いことが分かります。
寒がりな人にはアルファダイレクト120を使ったジャケットがおすすめです。中でも非常にシンプルで軽量なミドルレイヤーにRabのアルファフラッシュがあります。重量は273gで温浴に対し非常に軽量なミドルレイヤーです。
ノローナのリンゲンアルファ90ジャケットもRabのアルファフラッシュもミドルレイヤーとしての着用を前提としているのでフードがなくハンドウォーマーポケットもありません。胸にはジッパー付きのポケットが備わっており、ちょっとしたものを収納しておくのに活用しています。
防風性と通気性のバランスで体温調整ができるシェルジャケット
アウターにはウインドブレーカーとソフトシェルジャケットを活用しています。アルファダイレクトを使用したミドルレイヤーは強い風に当たると通気性に優れているので肌寒く感じることがあります。程よく風をしのぎたい時にはアークテリクスのスコーミッシュフーディを着用しています。
このウィンドブレーカーは重量は140gで超軽量ではありませんが、ストレッチするので、大きな動きが必要になるクライミングやトレイルランニングでも動きやすくて、様々なシーンで活用することができます。
ソフトシェルジャケットにはRabのキネティック2.0ジャケットを活用しています。このジャケットはストレッチをするレインジャケットで、さらに透湿性にも優れているので行動中快適です。防寒着兼レインジャケットという位置付けで積極的に活用することができるウェアです。本来雨が降らなければ、ずっとザックの中にしまっておくのがレインジャケットですが、それを考えると装備の軽量化にもおすすめです。
まとめ
今回紹介した登山で使用する服装は、秋冬の登山だけでなくオールシーズン着用することができるアイテムです。また行動着とは別で秋冬の登山では必ず防寒着を持っていくので、休憩中寒くなればダウンジャケットなどの綿物を羽織って寒さを凌ぎます。
今回は登山中に汗をかくことのリスクと改善方法、そして快適な登山を楽しむための服装を紹介しました。皆さんの参考になれば幸いです。