広がる草原を「浅い草」と見立て、これが名前の由来といわれる浅草岳。先人の感性というものはすばらしいですよね。
夏まで残る雪渓、伸びる木道、広がる湿原、野鳥のさえずり、豊かな高原植物、山頂からの眺望と冬はバックカントリーで登山者を魅了する日本三百名山。
そして、うつむくように咲くヒメサユリは別名オトメユリ。浅草岳は、6月から7月にかけて咲くこの薄ピンクの花の宝庫としても知られる花の百名山でもあります。
あなたの行きたい山リストに、またひとつ加わること必須の「浅草岳」です。
浅草山の基本情報と魅力
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越後三山只見国定公園に属する浅草岳は、新潟県の魚沼市と福島県会津郡の只見町にまたがる越後山脈に位置する第四紀火山です。
玄武岩、安山岩からなる成層火山で、噴火活動時期が170万年前から150万年前と古いため侵食が進み火口は確認されていません。
福島県側は、鬼が面山とともに雪崩による雪食地形を形成していて、北側から北西側の円錐形とは非対称の山容となっています。積雪は3mを優に超える、まさに秘境中の秘境です。
要害山、蒲生岳、会津朝日岳とともに「只見四名山」と呼ばれますが、浅草山が登山者を迎えるようになったのは昭和になってから。国鉄が開通し、六十里越の車道が通って交通の便が良くなってからなのです。
山の名前 | 浅草岳(あさくさだけ) |
都道府県 | 新潟県魚沼市・福島県南会津郡只見町 |
山域 | 越後山脈 |
標高 | 1585.5m |
天気と登山指数 | てんくら |
魅力①山頂付近に見る美しい景色は全方位!
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先人がつけた名のとおり、山頂部は草原が広がって湿原には池塘が点在しています。夏でも雪渓が残り、そのコントラストはまさに評判どおりの美しさ。
眼下には十字型の田子倉湖と雲海に浮かぶ小島のような山々、南西に目を移せば鬼が面山の迫力の大岩壁がそびえるのです。
前岳付近からの草原の中を伸びる木道と天狗の庭のすがすがしさ。秋になれば草原は、あざやかな黄金の草紅葉に変わります。「いつまでもここにいたい」とあなたもきっと思うはずです。
魅力②うつむくように咲くヒメサユリと豊かな高山植物
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ヒメサユリは、宮城県南部及び新潟県、福島県、山形県が県境を接する飯豊連峰、吾妻山、守門岳周辺に自生する日本国有のユリ科の植物。野生種は環境省の準絶滅危惧種に指定されています。
例年6月中旬から7月上旬には桜ゾネ、六十里(南岳~北岳)付近に多く群生しており、毎年多くのハイカーがヒメサユリを見ようと訪れるほど。
また初夏には、シラネアオイやアカモノ、ワタスゲなどが可愛く揺れて歓迎してくれます。
一方、ふもとから中腹にかけてはブナの森。豪雪地帯で知られる会津只見の周辺は、世界遺産の白神山地に勝るとも劣らないブナの原生林が広がるため新緑や紅葉も見事です。
魅力③浅草岳のバックカントリー
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浅草岳のあるこの地方は日本有数の豪雪地帯。このたっぷり積もった雪を堪能すべく多くのスキーヤーやボーダーが浅草岳に集まります。
ブナ林は霧氷に彩られ青空とのコントラストが絶妙、幾重にも連なる山々と雪化粧した鬼が面山の大岩壁は力強くも美しい。
難易度別ルートのご紹介
浅草岳へ登るには福島県側に2か所、新潟県側に3か所の登山口がありますが、今回は代表的な登山口3か所からのルートをご紹介します。
①ネズモチ平登山口~前岳~浅草岳~カへヨノボッチ|周回
このルートは最短で浅草岳までほぼ一直線に登るルートですが、雪渓を歩きますので状態によっては軽アイゼンなどそれなりの準備は必要です。意外に体力を使いますから体調は万全に整えましょう。
登山口 | ネズモチ平登山口 |
下山口 | 桜ゾネ広場~ネズモチ平登山口 |
最適日数 | 日帰り |
コースタイム | 4時間40分(休憩含まず) |
距離 | 7.5Km |
累積標高 | 773m |
難易度/体力 | ★★☆☆☆/★★☆☆☆ |
*このコースはネズモチ平駐車場を利用します。
コースタイム
- のぼりタイム 2時間28分
ネズモチ平駐車場→15分→ネズモチ平登山口→35分→標高1,103地点→83分→前岳→15分→ 浅草岳 - くだりタイム 2時間12分
浅草岳→15分→ 前岳→22分→カへヨノボッチ→60分→ 桜ゾネ広場→20分→標高955m地点→5分→ネズモチ平登山口→10分→ネズモチ平駐車場
コース詳細
登山届けを出して、ネズモチ平登山口からスタートします。
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登山口を過ぎると沢沿いを歩くためぬかるんだ道です。渡渉箇所も出てきますので滑らないように注意して進みます。
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ブナ林のなかを進むと次第に急登、ロープのある岩場なども登ります。後ろには守門岳が見えます。
視界が開けるのは1,200m~1,300m付近、稜線に出れば守門岳が目の前に。前岳に到着すれば浅草岳までは15分程度の道のりです。
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山頂までの気持ちの良い木道をのんびり歩いてみましょう。稜線上には雪渓も登場します。タイミングが良ければ雲海に浮かぶ孤島群も見ることができます。
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山頂からは360°のパノラマビュー。鬼が面山の迫力ある岸壁と十字型の田子倉湖、そして越後三山がドーンと控えます。少し離れて燧ケ岳も。
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時間があれば北東にある天狗の庭まで足を延ばしてみることをおススメします。ここは「ふくしま緑の百景・浅草岳山頂の大草原」。秋には黄金の草紅葉と池塘が広がる気持ちのいい場所です。
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下りは前岳に戻りカへヨノボッチ~桜ゾネ広場を経て下山。林道を約2Km歩き駐車場へ戻ります。
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②六十里(ろくじゅうり)登山口~鬼が面山~浅草岳|ピストン
このコースは距離が長くアップダウンがあるため、かなりの体力を必要とします。また、やせ尾根歩きもありますので難易度も若干高くなります。加えて夏は、日差しを遮るものがありません(森林限界は約1,200m)ので暑さ対策は必須です。
6月中旬からのヒメサユリ、10月初旬から始まる紅葉の時期にぜひおすすめしたいルートです。
登山口 | 六十里登山口 |
下山口 | 六十里登山口 |
最適日数 | 日帰り |
コースタイム | 9時間35分(休憩含まず) |
距離 | 13.8Km |
累積標高 | 1,581m |
難易度/体力 | ★★★☆☆/★★★★☆ |
*このコースは六十里越トンネル駐車場を利用します。
コースタイム詳細
- のぼりタイム 5時間11分
浅草岳六十里登山口 →35分→ 六十里越 →40分→マイクロ中継局→65分→南岳→30分→鬼が面山→38分→北岳→38分→狢沢カッチ→50分→前岳→15分→浅草岳 - くだりタイム 4時間24分
浅草岳→15分→前岳→39分→狢沢カッチ→70分→鬼が面山→25分→南岳→50分→マイクロ中継局→35分→六十里越→30分→浅草岳六十里登山口
コース詳細
六十里登山口からスタートします。登山届は忘れずに。
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序盤は急登の樹林の中を、マイクロ中継局を過ぎるまで進みましょう。ここを過ぎれば南岳までは緩やかな傾斜になります。
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南岳付近に来ると条件が合えば雲海の中に田子倉湖が見えてきます。この辺りから視界が開け絶景の連続となり、初夏ならルート沿いにはヒメサユリが見られるようになります。
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ヒメサユリの群生はここから。足元は尾根道、写真撮影に夢中になり足を踏み外すことのないように注意してください。
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また秋には彩った鬼が面山の大岩壁が目に飛び込み、さらに鬼が面山山頂からは浅草岳の雄姿が見えます。
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天空の稜線歩きはまさに絶景。前を見ても後ろを振り返ってもすばらしい景色、もう言葉になりませんね。
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北岳を過ぎると待っているのは、やせ尾根のアップダウン。浅草岳まで続きますので呼吸を整えてから臨みましょう。
前岳に近づけば草原の中。木道を歩き浅草岳へ。
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浅草岳山頂からのパノラマビューを楽しんだ後は天狗の庭へ。夏の草原のさわやかな風。秋の黄金の草紅葉。まるでハイジかナウシカにでもなったよう。
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下山は、浅草岳~前岳~鬼が面山と反対方向から見る絶景を楽しみながら下りましょう。
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この断崖絶壁上の稜線を戻る。こうやって見るととてもスリリング。下山の道のりも長いですから気を抜かずに慎重に。
③田子倉(たごくら)登山口~剣が峰~浅草岳|ピストン
このコースはひたすら登るコース。岩が濡れていたり滑りやすい箇所が多いため注意が必要です。
登山口 | 田子倉只見沢登山口 |
下山口 | 田子倉只見沢登山口 |
最適日数 | 日帰り |
コースタイム | 6時間45分(休憩含まず) |
距離 | 8.2Km |
累積標高 | 1,252m |
難易度/体力 | ★★☆☆☆/★★★★☆ |
*このコースは田子倉駐車場を利用します。
コースタイム詳細
- のぼりタイム 3時間40分
田子倉只見沢登山口→45分→標高661m地点→85分→剣が峰→90分→浅草岳 - くだりタイム 3時間5分
浅草岳→70分→剣が峰→75分→標高661m地点→40分→田子倉只見沢登山口
コース詳細
田子倉只見沢登山口から入山します。登山ポストがありますので忘れずに提出しましょう。
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少しの間は沢沿いの平坦な道。その後、幽ノ倉沢にかかる橋を渡ります。このルートはブナ林がすばらしく、新緑や紅葉の時期には見応えがあります。
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大久保沢の水場を過ぎると傾斜がきつくなり、田子倉湖が見えるあたりまで急登は続きます。
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尾根に出れば右手に浅草岳が見えてきます。
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剣ヶ峰に近づけば、左手に鬼が面山の大岩壁があらわれ度肝を抜かれます。剣ヶ峰周辺は岩場で、左側は沢への急斜面ですので注意が必要です。
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鬼が面眺めに出ます。ここはひと休みするのにいい場所。ここで呼吸を整えて浅草岳に向かって始まる急登に備えましょう。
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山頂に到着したら絶景を独り占め。疲れた体に最高のご褒美ですね。
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浅草山登山口へのアクセスと各種情報
浅草岳へのアクセスはマイカーが基本です。公共交通機関を利用の場合、駅からバスはありませんのでタクシーを利用することになります。JR只見線と合わせて十分に情報を取得し計画してください。
①ネズモチ平駐車場
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駐車台数 | 100台 |
駐車料金 | 無料 |
標高 | 873m |
トイレ | 有り |
水場 | 無し |
マイカーでアクセス
- 関越道小出IC下車⇒県道371号線へ直進
- 国道252号線を右折⇒県道346号線大白川方面左折
- 大原スキー場分岐~浅草岳温泉から6.8Km
*登山道へ至る県道385号線・魚沼市道は浅草岳温泉より先は冬季閉鎖(11月中旬から6月上旬)
②六十里越トンネル(鬼が面山登山口)駐車場
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駐車台数 | 30台 |
駐車料金 | 無料 |
標高 | 743m |
トイレ | 無し |
水場 | 無し |
マイカーでアクセス
- 関越道小出IC下車⇒県道371号線へ直進
- 国道252号線を右折し只見・会津若松方面
- 六十里越トンネル手前右側
③田子倉駐車場
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駐車台数 | 120台 |
駐車料金 | 無料 |
標高 | 515m |
トイレ | 有り |
水場 | 無し |
マイカーでアクセス
- 関越道小出IC下車⇒県道371号線へ直進
- 国道252号線を右折し只見・会津若松方面
- 六十里越トンネル~白沢トンネルを過ぎ只見沢橋を渡り左側
浅草山の質問箱
浅草岳の山開きはいつですか?
例年6月の第四日曜日です。2023年は6月25日でした。
ヒメサユリの開花時期・見頃は?
6月の中旬あたりから咲き始め、6月下旬から7月上旬が見ごろとなります。
ヒメサユリの咲く時期の週末は、ネズモチ平駐車場および六十里越駐車場は大変混み合いますので早めの到着をおすすめします。
浅草山周辺の山旅スポット
浅草山荘の日帰り温泉
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入広瀬地区で数少ない温泉。ぬるめの長く浸かれるお湯は鉄分たっぷりで山行や日頃の疲れを癒せます。
温泉入口にある、10種類以上のシャンプー・リンスは自由に選ぶことできるので女性に人気です。
営業期間 | 通年(施設定休日に合わせて休館) |
営業時間 | 11:00~22:00(最終受付21:30) |
入浴料金 | 大人600円 小人300円 |
TEL | 025-796-2331 |
只見川とJR只見線
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阿賀川の支流で尾瀬沼を源流とする只見川。冬の期間は「丈余りの雪」と呼ばれる3メートル以上に及ぶ国内有数の豪雪地帯。この雪解け水にはミネラル分が多く含まれているため、生息している動植物に豊かな環境を提供しています。
只見町から会津坂下町にかけて、只見川沿いに走るJRの只見線の車窓からは美しい風景を楽しむことができます。雑誌や新聞の調査でたびたび1位に選ばれる路線なのです。
只見町・三石屋のなめらかはちみつプリン
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尾瀬・檜枝岐産はちみつを利かせた素朴なカスタードの優しい味わいと、とろとろの食感が魅力。生クリームを使用していないため、口どけはさわやかです。 只見駅近くの菓子店『三石屋』の人気商品。クセになる味わいです。
その他、ロングセラーのそぼろパン(中にはバタークリームがたっぷり)や、こしあんたっぷりの玄米パン、サクサクした食感の鬼ヶ面山に可愛いかぼちゃパイもお勧めです。