春の登山は雪解けが進み、高尾山では梅まつり、神奈川県の丹沢周辺ではミツマタの群生など、各地でお花見登山を楽しむことができるようになります。しかし春は気温が大きく変わる時期で、登山の服装選びに迷う方も多いと思います。今回は春の登山における気温について知り、その上で登山におすすめの服装と選び方のポイントを紹介していきます。
春の登山における気温
春の登山といっても2月4日頃の立春から、5月5日頃の立夏手前まで気温は実に様々です。例えば高尾山の平均気温を月別で見てみると
- 2月:0.5度
- 3月:4.1度
- 4月:10度
- 5月:15度
この平均気温は気象庁データをもとに算出した参考値です。月別で比較すると3月から4月の気温差が最も高く、3月の気温の肌感で4月に登山に出かけてみたらものすごく汗をかいてしまった、と言ったことも考えられます。
ですのでこの時期はできるだけ重ね着と、レインジャケットよりも透湿性に優れたウィンドブレーカーを追加で登山装備に加えるのがおすすめです。
春の登山におすすめの服装と選び方のポイント
春の登山で着用する服装を選ぶ時には、服装の種類とそれぞれの役割を把握することが重要です。以下の表は服装ごとの役割と機能性をまとめたものです。ここに記載されている役割や機能性は春の登山に関わらず1年中共通していることです。
服装 | 役割 | 機能性 |
軽量性の重要度 |
---|---|---|---|
ベースレイヤー | 肌をドライに保ち体を冷やさない | 吸水・吸湿・速乾 | 少 |
ミドルレイヤー | 体を冷やさない | 保温・通気 | 中 |
アウターレイヤー | 風と雨から身を守る | 耐久・耐候 | 大 |
保温着 | 体を暖かく保つ | 保温 | 大 |
パンツ | 歩きやすく肌をドライに保つ | 通気・保温・ストレッチ | 少 |
ソックス | 歩きやすく衝撃を吸収する・足を保温する | クッション・通気・吸水・吸湿・速乾・保温・耐久 | 少 |
登山靴 | 安全に歩行する・足を保温する | 登山道の状況によって異なる | 少 |
ザック | 必要な装備を背負って歩きやすい | 装備の容量によって異なる | 装備重量による |
サングラス | 目の疲れを軽減し視界を確保する・紫外線から目を守る | フィット・偏光・紫外線カット | 中 |
グローブ | 手を保護・保温する | クッション・通気・吸水・吸湿・速乾・保温・耐久 | 中 |
帽子 | 頭をドライに保つ・紫外線から頭を守る・目を保護する・頭や耳を保温する | 保温・吸水・速乾 | 中 |
この表にある役割と機能性を踏まえて、春の登山におすすめの服装を紹介します。
肌をドライに保ち体を冷やさないベースレイヤー
肌をドライに保ち体を冷やさないことを役割として考えると、吸湿性に優れたメリノウールがおすすめです。ポリエステルやナイロンなどの化繊素材は速乾性には優れていますが、吸湿性は加工しなければなく、着用し続けると機能が損われていきます。また肌に汗が付着しやすく肌が冷たくなりやすいため、トレイルランニングなどのハードなアクティビティでは快適ですが、ゆっくりと歩く登山ではおすすめしません。
気温変動が激しい春の登山ではTシャツタイプを着用して、保温はミドルレイヤーやウィンドブレーカーで対応すると、快適に登山をすることができます。
おすすめの春向け登山のベースレイヤーは山旅の速乾メリノウールTシャツです。メリノウール50%、ポリエステル50%の混紡比率で、メリノウールの吸湿効果、更にポリエステルの速乾性と耐久性も備えています。非常に高級感のある独特な光沢を備えているので普段使いにも、また寝汗による体の冷えも防止するので1日中着用したくなるTシャツです。特に縦走登山ではメリノウールの防臭効果で匂いを気にせず気持ちよく登山をすることができます。
体を冷やさないミドルレイヤー
ミドルレイヤーは大きく分類するとフリース素材か化繊中綿素材の2種類です。フリース素材はストレッチをして動きやすく保温性にも優れていますが、化繊中綿素材、いわゆるアクティブインサレーションと比較すると重量があるものが多いです。春の登山では冬の登山と比べるとミドルレイヤーをザックに収納しておくこともあるので、できるだけ軽量で保温性と通気性のバランスに優れた素材がおすすめです。
おすすめの春向け登山のミドルレイヤーはポーラテックのアルファダイレクトを使ったミドルレイヤーです。アルファダイレクトには60,90,120,190の全4バリエーションがあり、数字が高くなると保温力が上がります。これが非常に分かりやすく僕は60,90,120のジャケットを持っていて、2月は120と90、3月から4月は90、5月は60のアルファダイレクトを使用したミドルレイヤーを愛用しています。
ポーラテックアルファダイレクト120を使ったジャケットはRabのアルファフラッシュで、このアイテムは残念ながらまもなく販売が終了してしまいます。
ポーラテックアルファダイレクト90は、最も汎用性が高く、ジャケットタイプで脱ぎ着がしやすいノローナのリンゲンアルファ90ジャケットを愛用しています。
ポーラテックアルファダイレクト60は、アメリカのSenchiDesignsのフードタイプを使っています。ジャケットがあると便利なのですが、今はこれで我慢しています。
風と雨から身を守るアウターレイヤー
春の登山で最も重視しているのがアウターレイヤーです。雨が降ると風が強くなりやすく、標高が1000m以上もあるとかなり寒くなるのが春の登山です。また寒暖差が激しいので透湿性によってレインジャケット内が蒸れづらく、冷たい雨風からしっかりと体を守ってくれるモデルがおすすめです。
僕が好んで着用しているのがRabのキネティックジャケットです。このジャケットはソフトシェルのようにストレッチをして動きやすく、耐水圧10,000mmに対して、透湿性35,000gと脅威のスペックを誇るジャケットです。重量は336gと超軽量なレインジャケットとは言えませんが、動きやすさと高い透湿性は雨が降った時に涼しく快適に行動することができます。
体を暖かく保つ保温着
保温着は登山の休憩中に体を暖かく保つために着用するものです。なので登山中はザックの中に収納しておくことになるので、軽量でコンパクト性に優れたダウンジャケットがおすすめです。ダウンジャケットは濡れてしまうと保温力が失われてしまうので、ドライバッグに入れて持ち歩くようにしています。
ダウンウェアはブランドによってダウンの質が大きく異なるように感じます。背景には良質なダウンを入手できる太いパイプがあるのか?自社で高品質なダウンを管理しているかなど様々な要因があると思います。また面白いことにダウンシュラフの開発からスタートしているブランドのダウンジャケットが軽量で保温力が高いと思うことが多いです。
代表的なブランドにはRab、マウンテンイクイップメント、ウエスタウンマウンテニアリングがあり、これらのブランドの軽量なダウンジャケットをチョイスすることが多いです。
春の登山で好んで着用しているのはRabのミシックアルパインライトジャケットで900フィルパワーの撥水ダウンを80g封入し、ダウン抜けがしづらい極細糸を高密度に織り上げているパーテックスクォンタムをシェルに使用しています。そしてMサイズでわずか252gと軽量です。
歩きやすく肌をドライに保つトレッキングパンツ
トレッキングパンツはストレッチ性が高く、足上げをしても突っ張りがない素材であること、また透湿性があって汗で蒸れづらいモデルを選ぶようにしています。厚手素材のトレッキングパンツは動きづらいと感じることが多いこと、活用することができる季節が少ないことから薄手素材のトレッキングパンツをチョイスしています。
好きなのはパタゴニアのテルボンヌ・ジョガーズで、ストレッチ性による動きやすさ、濡れても速乾性が高く通気性にも優れています。非常に薄い生地なので、このパンツで寒い時には中にタイツを履いたり、レインパンツを活用しています。
歩きやすく衝撃を吸収し足を保温するソックス
ソックスはスマートウールが最も好きで、履き続けていても破れづらく、こだわった作りによる耐久性と通気性とクッション性に毎回納得感を感じさせてくれます。登山ではくるぶしが隠れるタイプのソックスを必ず履くようにしています。
スマートウールのソックスの中で最も汎用性が高いと思うのが「ハイククラシック」で、このモデルは5種類のクッションから選ぶことができます。春になるとライトクッションクルーあたりがちょうど良いと感じることが多いです。クッションはつま先、足裏、すね、ふくらはぎに備わっており、3シーズンフルで活用することができます。足の筋力に自信がない方は同モデルのフルクッションがおすすめです。