2004年にユネスコ世界文化遺産に登録されてちょうど20年。
神々のいる特別な地、霊場として熊野の地は崇拝され平安時代に開かれた参詣道(さんけいみち)は「熊野古道」と呼ばれて親しまれています。
明治時代の神社合祀(ごうし)で多くの社殿は壊されてしまいましたが自然崇拝、スピリチュアルなこの地に惹かれて訪問者が絶えることがありません。
絶対いつかは歩きたい、憧れの熊野古道
「伊勢路」「中辺路」「小辺路」「大峯奥駈道」「大辺路」「紀伊路」と主に6つの路があり全部合わせると1000キロもある大縦走路となります。
今回はその中の「中辺路(なかへち)」を歩いてきたので紹介します。
目指すのは「熊野本宮大社」「熊野那智大社」「熊野速玉大社」の熊野三山のうちの「熊野本宮大社」です。
昔の人は京都から1か月かけて歩いていましたが、そういうわけにもいかないので、特に人気のルート2か所を二日に分けて歩いてきました。今回は一日目【滝尻~近露】聖域の入口から歩く人気コースを紹介します。
滝尻~近露コースを歩くためのアクセス方法
明光バス 「熊野古道1号」利用(時間は2024年2月現在のもの)
乗車場所 白浜バスセンター 7:31発 →滝尻 8:40着
南紀白浜に前泊したので民宿から最寄りのバス停からの出発になりました。
※白浜からだと「熊野古道1号」より早い出発のバスはありません。
JR紀伊田辺周辺に前泊していたら8:02田辺駅発で同じ「熊野古道1号」に乗れます。
しかも6:16発(龍神バス)で当駅始発の便があるのでたっぷり歩きたい人は田辺泊がいいでしょう。滝尻には6:52に着きます。
※車の場合は一旦「道の駅 熊野古道中辺路」か「近露美術館バス停」の無料駐車場に車を止めて、バスで滝尻へ移動してからのスタートになります。
始発に乗ると滝尻7:12着、次の便だと滝尻9:28着なので始発がおすすめです。
※明光バスのサイトが龍神バスも含めて全便載っているのでわかりやすいです。
https://meikobus.jp/kumanokodo/
滝尻~近露コースの行程(日帰り)
- タイム6時間45分(休憩込) 距離13.5km のぼり1108m くだり903m
- YAMAPのコース定数26きつい
目指すのは熊野本宮大社・熊野那智大社・熊野速玉大社の「熊野三山」のうちの
「熊野本宮大社」です。でも二日に分けるので今日のゴールは牛馬童子口か近露です。
滝尻王子→不寝王子→高原熊野神社→大門王子→十丈王子→大坂本王子→牛馬童子口(道の駅 熊野古道近露)
時間があったので更に 牛馬童子→近露
バスを滝尻で下車してすぐに目につくのが三角屋根の建物「熊野古道館」。
橋を一旦渡ってスタンプ帳(押印帳100円)を買いに寄り道しました。
8:30オープンなのでスタンプ帳がどうしても欲しかった身としては8:40着のバスは都合がよかったです。
外にトイレがあり向かいに自販機がありますが、食料は販売していないので事前に調達する必要があります。
9:00 滝尻王子
熊野古道始まりの地、滝尻王子から入山します。かつては先ほどの川で身を清めて入山したそうです。
滝尻王子にはスタンプ台があって出発前に購入した押印帳を早速取り出しました。今から進む先にも所々スタンプスポットがあって、それを集めながら歩くというのも古道歩きの楽しみの一つとなります。
9:25 胎内くぐり
この狭い岩の隙間を通ると罪や穢れ(けがれ)がなくなり生まれ変われるそうです。
また安産祈願の場所でもあるそうです。
9:35 乳岩
生まれたばかりの赤ちゃんにオオカミが寄り添って守って、この岩から落ちてくる清水(乳)で赤ちゃんの空腹を守ったといわれのある乳岩です。
10:00 剣ノ山山頂
不寝王子を過ぎ森の中を登り進めると三角点も展望もない「剣ノ山」山頂に到着します。
もう少し進んで分岐を左に行くと(のちに右の道とまた合流します)飯盛山の山頂です。
こちらには三角点と展望があります。久々視界が開けるので爽快です。
熊野古道は老後の楽しみとかハイキング程度とか思われがちですが、なめてはいけません。
整備が行き届いて危険個所名はほぼ無いものの、YAMAPのコース定数にもあるように「きつい」で、しかも見ての通り急な登りが続いています。
遠く平安の世に白装束をまとった上皇も自ら杖をついてここを歩いて登ったそうなのでそういうことを想像しながら歩くのもまた楽しいです。
11:00 高原熊野神社
山道をやっと抜けて舗装道路になりました。
まもなく右手に現れるのは高原熊野神社です。
高原熊野神社は室町時代に建立され、熊野古道沿いの神社では現存最古のものです。
敷地内には樹齢1000年と言われる立派な御神木がありました。
11:10 高原霧の里休憩所
高原熊野神社から殆ど移動することなく「高原霧の里休憩所」に着きました。
ここは無料で使用できる屋根付き休憩所やトイレと公衆電話となんと駐車場まであります。
実はここは果無(はてなし)山脈が一望できる絶景のスポットなのです。
売店があるらしいけど何もなく、念のため持ってきていたカップ麺とステンボトルのお湯が大活躍しました。
閑散期の2月の熊野古道歩きなのでほぼ人に会わなかったけど、ここは人気の場所、私達の他にも2組休憩されていました。昔もここにはお茶屋さんがあり、道行く人の休憩所になっていたようです。大体20分くらいの休んですぐにスタートしました。
また未舗装道路になりました。
しばらくはキラキラ木漏れ日の美しい杉林に囲まれた静かな道を歩きました。
12:10 突然現れた緑色の池を通り過ぎると大門王子に着きました。
中央に見えるのはスタンプ台です。その奥にはお雛さまが飾られていました。
どなたかの手によって大切に守られている場所なのですね。
12:35 十丈王子
大門王子を過ぎてここでは珍しいヤセ尾根を通り抜けると、十丈王子に到着しました。
バイオトイレとベンチがあり広いのでちょっとした休憩をするにはいい場所です。
でも私たちは止まることなくちょっとピッチを上げました。
13:00 上多和茶屋跡
一番の頑張りどころ!最後の一番きつい坂を登り切ったら、今日のルートの最高地点
687mの上多和茶屋跡に着きました。昔はお茶屋さんと民家があったそうですが、今は何もありません。何もなくてもまあ許そう、今からはもう殆ど下りばかりなので(笑)
13:50 大坂本王子
沢を渡った先に大坂本王子がありました。
神の使いの八咫烏(やたがらす)発見。足が3本あるのが特徴です。
八咫烏はサッカー日本代表のシンボルにもなっていますね!
ところでさっきから再々出てくる「王子」とは何?て思っているかもしれませんね。
「王子」とは熊野三山の神様の子供の事で、九十九人いるそう。それが熊野の各地にちりばめられて、九十九の祠を建てて祀ってあるそうです。すごく簡単に言うとそんな感じです。
九十九の祠の数は正確な数ではないけど、明治時代の合祀(ごうし)で随分取り壊されているのが残念でなりません。
14:10 牛馬童子口(道の駅 熊野古道中辺路)
すぐに国道沿いに出ました。道を挟んだ向かいに「道の駅 熊野古道中辺路」があります。
予定では15時に到着して一旦ゴール、休憩後15:49発のバスに乗ろうとしていましたが、1時間も早く着いてしまいました。
だから、時間に余裕があった場合に進む予定だった「牛馬童子→近露」の行程に入ることができます!しかも「道の駅 熊野古道中辺路」で休憩する時間もありそうです!
ということで軽く食事をすることにしました。
「鮎のひつまぶし」はJAF割引があり880円が800円になりました。連れはこのメニュー。
私は紀州と言えばやっぱり梅でしょ!ということで「梅うどん」(750円)です。
生地にも梅が練りこんであって綺麗なピンク色!
もっちもちなのにさっぱりして程よい塩分がつかれた身体にしみました。
写真左下の緑色は名物の「めはり寿司」(130円)です。地物の「ぽんかん」(4個200円)も食べて大満足です!
(お土産メニューは、イートインメニュー注文の場合のみ店内で食べていいそうです)
「道の駅 熊野古道中辺路」
9時~17時 店内飲食はラストオーダーが2時半でした。
冬季売店店休日が書いてあって私たちが行った2月は全部の木曜日が休みでした。
2024年は5/4(土)5/5(日)が休みなのでゴールデンウィークで計画されている人は気を付けてください。
(食事されたい人は念のため確認を 電話番号: 0739-65-0671)
14:50出発
国道を渡り返し、本線に戻って今度は牛馬童子像を目指します。
階段を上った先で一旦舗装道路に出ますがすぐにまた森の中に入ります。
15:05 牛馬童子
やっと会えました、中辺路のマスコット的存在の牛馬童子(ぎゅうばどうじ)です。
頭巾をかぶってなぜか牛と馬に一度にまたがっている姿は可愛いですよね!
モデルは平安時代の花山天皇、わずか50センチの大きさです。
2024年大河ドラマ「光る君へ」では渦中の人、妻の藤原忯子(よしこ)が毒殺され心が弱っている時に出家の道へはめられてしまい、わずか2年の即位期間だったあの花山天皇です。像の表情が物悲しい感じがするのはそういう背景があるからでしょうか。
少し歩くと森が開け、東屋の向こうに近露ののどかな風景が見えてきました。
15:30 近露王子
ここからは石畳の道を滑らないように慎重に下りていくとまもなく近露王子に到着。
石碑があったので参拝をすませ、本日最後の8個目のスタンプをゲットしました。
道の駅であきらめずにここまで歩いてきて本当に良かったです。
近露王子からわずか数分の「中辺路美術館バス停」へ移動してついにゴールです。
熊野古道を歩いた後の休憩スポット
16:03発のバスを待ちました。やってきたバスは全区間合わせると2時間走るため、ここのバス停でトイレ休憩が設けられています。
この後バスは「道の駅奥熊野」までむかう途中、【熊野三大温泉】と呼ばれる温泉地を
「湯の峰温泉」「渡瀬温泉」「川湯温泉」と順番に通りますが、このうち「川湯温泉」が
今日のお宿です。
翌日たっぷり時間がある人は近露で一泊して、「近露から熊野本宮大社まで連続で歩き切る」ことができます。でも私たちは翌日中に広島に帰らないといけないので
「近露~発心門王子」の行程はカットしています。歩き残しはまた次回のお楽しみに取っておけばいいのです。
宿泊場所「山水館 川湯みどりや」
ところで、二月の閑散期ということもあり出発2週間前でもお宿の予約が取れました。
山の中の温泉地は食べるところを探すのに苦労することが多いのでご飯付きにするのがポイントです。その点みどりやさんは朝晩二食付いているだけでなくなんとなんと、次の日のお昼用のおにぎり弁当までついていました!(買う所がなく後々助かりました)
しかも、チェックイン時に予約しておけば、翌日主要場所まで送迎してくださるサービス付き!朝8時出発で発心門王子まで送っていただくことにしました。(ちなみに建物前がバス停で始発8:07発のバスに乗っていくこともできます)
至れり尽せりでお湯もとてもよく、また川湯温泉に行くことがあれば絶対に泊まりたいです。
熊野古道ビールで乾いた喉をうるおしました。本場のごま豆腐もついてて嬉しい上にお刺身に牛鍋が前菜。他に食べ放題メニューまでついています。せっかくなので鮎の塩焼きを食べまくりました(笑)
川湯温泉「仙人風呂」
でも川湯温泉の醍醐味はここから!
12月から2月限定の露天風呂「仙人風呂」に入ります!
河原をせき止めて作る大露天風呂は、老若男女無料で入れます!
もちろんみなさん水着や湯あみ着を来て入りますよ!岸で上着を脱いだらドボ~ン。
川底から絶えず湧き出す73度の源泉に、大塔川の清流を引き入れていい湯加減に調整してあります。私たちが入った日は38度でした。
毎土曜日は湯けむり灯籠イベントがあるとのことで、この日は夜8時からとうろうに火がともりました。それに合わせて暗くなってから入りに行きました。
上はアツアツ、真ん中はちょっと寒い、川底を掘ると熱い(笑)
これは楽しい!みんな楽しそう!貴重な河原風呂体験でした。
以上が熊野古道一日目【滝尻~近露】まで歩く人気コースの紹介でした。
次は【発心門王子】からいよいよ【熊野本宮大社】まで歩きます。
朝から雨が降ってしまいましたが果たしてどんな感じで総本宮の【熊野本宮大社】まで歩くのか、二日目に続きます。
Youtubeでの紹介動画
初めての【熊野古道】はここから!【中辺路】の滝尻王子~近露王子の歩き方解説!