登山好きの方や、これから登山を始めたいという人におすすめの「山の本」を厳選して14冊ご紹介します。
登山をテーマにした本は、じつは非常に多種多様。以下のようなジャンルがあります。
・ノウハウ本/コースガイド本
・ノンフィクション
・エッセイ
・山岳小説
・アウトドアレシピ本
・コミック
今回は、山には必ず本を持っていく読書好きの筆者がこれまでに実際に読んできた、「ノウハウ系」「ノンフィクション/エッセイ系」「山岳小説」の3つジャンルから、とくにおすすめの本をピックアップしました。
ノウハウ系|これから登山を始めたい人へぴったりのスターターブック
「登山に興味があるけれど、何から始めたらいいかわからない......」
「専門書は難しそう」
そんなふうに感じている登山入門者におすすめしたいガイド本を4冊ご紹介。どれも写真がふんだんに使用されているので読みやすく、それでいて正しい基礎知識や情報が自然と身に付くスターターブックです。
新しい登山の教科書
監修:栗山祐哉
出版社:池田書店
発売日:2022年6月13日
単行本:192ページ
これから登山を始めたい人のノウハウ本として最適の一冊。
美しい山の写真や、わかりやすいイラスト・図解がふんだんに掲載され、途中でつまずくことなく登山の基礎知識を学ぶことができます。
登山計画の立て方、ウェアやシューズなどの装備の選び方といった「事前準備」に関する情報と、疲れない歩き方や幕営技術などの「登山技術」に関するノウハウが凝縮。この一冊で、登山に必要な知識がひととおり身につきます。
登山に行きたくなる体験談や、山ごはんレシピなど、お楽しみコンテンツも満載。
監修はKuri Adventuresの代表で、登山教室を主催する代表主任講師・栗山祐哉氏です。体系的に登山知識を学びたい人におすすめです。
No.1登山アプリのユーザーの声から生まれた YAMAP山登りベストコース 関東周辺版
監修:株式会社YAMAP
出版社:KADOKAWA
発売日:2022年7月6日
単行本:240ページ
登山を始めようとしたとき、非常に迷うのが「どこにいくか」。一つの山にいくつものコースがあるため、初心者はコース選びにも一苦労するのではないでしょうか。
この本は、初心者から中級者むけの人気コースが簡単に調べられる、とても便利なコースガイドです。ダウンロード数310万人(2022年5月現在)の登山アプリYAMAPがユーザーの登山データを分析し厳選した、関東近郊で人気の山41座、人気のモデルコース97本が紹介されています。
山の特徴はもちろん、歩行距離やコースタイム、高低差グラフもあるので難易度が一目でわかりやすいことも特徴。
「山の服装と装備」や「山の写真の撮り方」といったコラムも充実しています。
時間がある時に眺めて、次にどの山に登ろうか思いを馳せるだけでわくわくしてくる本です。
ソロ登山 ステップアップガイド 山登りを趣味にする
著者:かほ
監修:小俣智範
出版社 : マイナビ出版
発売日 : 2023/4/24
単行本:128ページ
等身大の親しみやすい内容で、登山の基礎知識が身につくスターターブック。人気YouTuberである"かほ"の初の書籍化です。
YouTubeチャンネル「かほの登山日記」は登録者数25万人超え!かほの写真とコメントがふんだんに使われており、難しさが一切なく、登山知識ゼロの人でも抵抗なく読み切ることができます。自分自身も全くの初心者から登山を始めたというかほの実体験を元に書かれているので、初心者が疑問に思うポイントにテーマが絞られていることも読みやすさの理由。
全国33箇所の初級から中級レベルの山も紹介されているので、これ一冊で登山を始めるための基礎知識から、いくべき山の情報まで知ることができます。プロの登山ガイドの監修も入っているので、情報の正確性もお墨付き。
山が大好きになる練習帖
著者:KIKI
出版社 : 雷鳥社
発売日 : 2013/10/19
単行本:256ページ
登山の基礎知識やコースガイドではなく、少し違った観点から山の魅力を紹介したガイド本。
モデル・女優のKIKIが撮影した123枚もの写真に、丁寧なコメントが添えられている写真集のような本です。「Q1 どうして山に登るのですか?」という質問からはじまり、「Q38 夫婦やカップルで登ってもケンカしないで楽しめるものですか?」「Q50 山でおいしいコーヒーをいれたいです」など、山の魅力を、さまざまなQ&A形式で紹介していきます。
はじめての山登りから山小屋宿泊を体験するまでというストーリーがありますが、気になる疑問から読み始めても楽しめます。読み終えるころには、きっと山に登ってみたくなるでしょう。
ノンフィクション・エッセイ系|山の魅力、楽しみ方、そして恐ろしさ
自分でできる登山体験には限りがありますが、読書を通してさまざまな未知の領域を擬似体験できます。ノンフィクション小説では遭難の恐ろしさを、エッセイではそれぞれの登山への向き合い方、山がそばにある行き方を知ることができるでしょう。
日本百名山
著者:深田久弥
出版社 : 新潮社(改版)
発売日 : 2003年4月1日(初版は1964年)
文庫 : 535ページ
「日本百名山制覇を目指す!」という人は数いれど、日本百名山の由来をしっかり学んでいる人は意外と少ないかもしれません。
日本百名山は、1964年に深田久弥という登山家が執筆した山岳エッセイ集がもとになっています。日本各地の山の登った深田氏が、山様や植生、歴史などさまざまな観点から山を分析し、特に素晴らしいと自身が気に入った100の山を紹介したのが「日本百名山」。
深田氏がそれぞれの山を百名山に選んだ理由が丁寧に紹介されているので、日本百名山制覇を目指すのであればぜひ読んでほしい一冊です。文庫版になり読みやすくなったので、登山入門者にもおすすめです。
山は輝いていた 登る表現者たち十三人の断章
編集:神長 幹雄
出版社 : 新潮社
発売日 : 2023年7月28日
言語 : 日本語
文庫 : 304ページ
山岳雑誌「山と渓谷」元編集長が厳選した、13人の登山家によるエッセイを抜粋して掲載。登山家によるエッセイをまるまる1冊読むのはちょっとハードルが高いという人も、著名な登山家の名著から特に心に残る原稿にだけ触れることができます。
25歳という若さでなくなった天才クライマー・中嶋正宏の遺稿や、8000m級の冬季単独登はんに挑み続けた長谷川恒男の見果てぬ夢など、常識を超越したクライマー等の思想に心が震えるでしょう。
一方、高尾山の植物を丁寧に描写したエッセイや、内心ビクビクしながらのビバークの体験記など、身近な山に焦点をあてた原稿も収録。山を愛する人々の、それぞれの山への向き合い方が描かれており、繰り返し手に取りたくなる一冊です。
死に山
著書:ドニー・アイカー
出版社 : 河出書房新社
発売日 : 2018/8/25
単行本 : 360ページ
登山好きだけではなくミステリーファンにもぜひおすすめしたい、一度読むと忘れられない不気味な山岳事故に関するノンフィクション本。
世界一不気味な遭難事故と言われる、1952年旧ソ連でおきた《ディアトロフ峠事件》。9名の大学生登山チームは、氷点下の中で衣服をろくに身につけず、裸足の状態でテントからはるか離れた地点で遺体で発見されます。頭蓋骨を骨折した遺体や、舌を喪失した遺体など、無惨な状態は、ただの山岳遭難とするにはあまりに不可解。しかもゾッとすることに、残されたテントは内側から切り裂かれたような跡がありました。
果たして事故の真相とは.....!?ボリュームのある本ですが、続きが気になって一気に読み切ってしまいます。
ドキュメント生還-山岳遭難からの救出
著者:羽根田 治
出版社 : 山と渓谷社
発売日 : 2012/1/20
文庫 : 304ページ
山と渓谷社の人気シリーズ、遭難者が自ら語る「ドキュメントシリーズ」の代表作。
道に迷って17日間、最後はマヨネーズをなめて命をつないだUさん、厳冬の槍ヶ岳の壕雪のなか8日間を耐え抜いたNさんなど、山岳遭難の実態がリアルな言葉で紹介されています。
山で遭難したとき、極限の状態で生死を分けたものはなんだったのか。実際に遭難事故を生き延びた人々の生還の記録を丁寧に取材し、その「紙一重」の瞬間にせまります。
山に登る以上、決して他人事ではない遭難事故。その実態を知ることで、登山に対する自分の心構えを見直すきっかけにもなります。2024年5月に続編「ドキュメント生還2 長期遭難からの脱出」も発売予定。
山岳小説|未知なる領域を本で楽しむ
山岳小説は、過酷な環境下で繰り広げられる人間ドラマを描いたものや、人生に悩んだときに登山を通して答えを見つけていくものなど、さまざまなテーマを扱っています。
神々の山嶺
出版社 : 集英社
発売日 : 1997/8/5
単行本 : 464ページ(上)、576ページ(下)
映画化もされた不朽の名作。
登山家としても写真家としても夢破れた深町が、ネパール・カトマンズで偶然出会った古いカメラがきっかけで巻き起こる、山岳史を揺るがす事件。エベレストに初めて登頂したのはエドモンド・ヒラリーと言われています。しかし、その29年前に山頂付近で行方不明になった登山家ジョージ・マロリーが登山時に携帯していたカメラが発見され......。深町はカメラの行方を追ううちに、日本で消息をたった天才クライマー・羽生に出会い、再び登山家としてエベレストに向き合うことになります。ミステリー要素と、深町・羽生という二人のクライマーの人間模様が織り交ぜて描かれており、かなりの読み応えがあります。全5巻のコミック版もおすすめ。
凍
著者:沢木耕太郎
出版社 : 新潮社
発売日 : 2008/10/28
文庫 : 366ページ
ヒマラヤの難峰ギャチュンカン登山に挑んだアルパインクライマー山野井泰史と妻・妙子は、下山時に猛烈な吹雪に襲われます。
まさに「壮絶」という言葉がふさわしい彼らの生きるための闘い。山野井氏の「眼球が凍った」というシーンでは、読み手の方が先に心が折れてしまいそうになります。絶望的な状況、かつてない究極の判断、そして凍つく手足。それでも一歩一歩、確実に下山していく山野井夫婦。
諦めた時に人は死ぬのだという確固たる信念に基づき、一切の道具をもたず体一つで生還を果たすシーンには、胸が熱くなります。事実を元に「深夜特急」の著者・沢木耕太郎が小説化。
山女日記
著者:湊かなえ
出版社 : 幻冬舎
発売日 : 2014/7/10
単行本 : 292ページ
エクストリームな山岳小説は少し敬遠してしまう方におすすめなのは、こちらの女性心理を丁寧に描いた小説。
妙高や槍ヶ岳など7つの山に絡めて、人生に悩みを抱えた30代〜40代の女性を中心にストーリーが展開されます。結婚、不毛な恋愛、仕事.....「こんなはずではなかったのに」と人生に行き詰まる女性たちが登山を通し、一歩一歩明るい未来に向けて心に輝きを取り戻していく、多くの女性の共感をよんだ等身大の物語。
黒部の山賊 アルプスの怪
著者:伊藤正一
出版社 : 山と渓谷社
発売日 : 2014/2/22
単行本(ソフトカバー) : 224ページ
山小屋にいけば生ビールが飲めるほど、北アルプスの登山が快適になった現代。しかし、1960年代には、今からは想像できないほど山は原始的な世界でした。
そんな山の開拓初期の様子を飾らない言葉で綴った山岳名著がこちら。北アルプスの最奥部・黒部原流域の山小屋の開拓者として、三俣山荘、雲ノ平山荘、水晶小屋、湯俣山荘の経営に携わってきた伊藤正一と、山とともに生きてきた「山賊」と称された仲間たち。山の怪物や遭難事件、珍事件に事欠かない山小屋暮らしなどが、軽快な語り口で紹介されています。山の歴史を知ると、北アルプス登山が一層楽しくなるでしょう。
本を通じて、山の魅力を深く知ろう
山というアウトドアアクティビティと実は相性がいい「読書」。
ノウハウ本を一度読めば、登山の基礎知識が身につき、登山をより楽しく安全に行うことができます。
また、自分で行ける山には限りがありますが、エッセイや山岳小説を読むことで、いつか行ってみたい山や、超人的なアルパインクライマーの見た景色を想像して楽しむことができます。
ぜひ、気になる本があったらページをめくってみてくださいね。