登山用コップには、ドリンクを飲む以外にも便利な使い方があります。どんな使い方をしたいかによって選ぶコップタイプが変わってくるので、自分の理想の使い方をイメージしてみましょう。
直火でお湯をわかす
コップの素材によっては、バーナーで直に火にかけることができるタイプがあります。大きめサイズを選べば、お湯を沸かすだけではなく煮たり茹でたりと、簡単な調理もできます。
調理器具としてもコップとしても使えるので、荷物の軽量化につながりますね。
お皿としてつかう
複数名での山行のときに、料理をとりわけたりおつまみを入れたりするお皿がわりとしても役立ちます。
計量カップにもなる
カップの内側にメモリがついているタイプであれば、計量カップにもなります。調理中、正確に水の量を測りたいときに便利です。メモリがなくとも、自分のカップの容量が何ccかを覚えておくと計量に便利でしょう。
登山用コップの選び方のポイント
ポイントは「素材」「容量」「機能」の3つ。ここから詳しく解説していきましょう。
素材|金属(ステンレス・チタン)、プラスチック、シリコン
登山用コップの代表的な素材は以下の4種類です。
・ステンレス
・チタン
・プラスチック
・シリコン
それぞれ、特徴やメリットが異なります。
ステンレス
ステンレスは腐食に対する耐性を持つ合金鋼のこと。チタン同様、耐久性が高く、錆びにくいという特徴があります。
熱伝導が低く、保温・保冷効果もあります。
チタンと比べてのデメリットは、ステンレスの方がやや重いこと、金属臭が気になる時があることでしょう。価格はチタンに比べて安価なので、コストパフォーマンスを重視する人にはおすすめです。
チタン
チタンは「強い」「軽い」「錆びない」の3拍子がそろった金属です。
耐久性が非常に強いので、長期間にわたって使用することができます。非常に軽量で、荷物を軽くしたい人にはピッタリ。
そして、金属なのに金属くささがなく、錆びにくいので、とても扱いやすい素材といえるでしょう。
熱伝導が低いので、保温・保冷効果が期待できるのも魅力。
シングル構造であれば直火にかけられるタイプもあります。
プラスチック
価格が安く、カラーやサイズのバリエーションも多いので手に取りやすいことが魅力。
厚みがなく非常に軽量なものから、厚手でしっかりとしたつくりのものまでさまざまな形状があります。
耐熱温度が低く、熱い飲み物に対応していないものもあるので、必ず耐熱温度を確認しましょう。
シリコン
シリコンはプラスチックのようにみえますが、石油由来ではなく天然に存在する「けい石」という素材から作られています。
プラスチックとは異なりゴムのような柔らかさを持っているので、折りたたんで収納することがでることが最大の特徴。
熱伝導率も低いので、熱い飲み物をいれることができるのもシリコンのメリットです。
ただし、シリコン制のコップには独特のにおいがあるため、気になる人もいるでしょう。
メリット・デメリット比較
メリット | デメリット | |
ステンレス | 耐久性が高い チタンに比べると価格が手頃 直火OKなものものある | チタンよりは重い やや金属臭がする |
チタン | 非常に軽量 耐久性が高い 直火OKなものものある | 価格が高め |
プラスチック | 価格が安い カラーバリエーションが豊富 割れにくい | 耐熱性が低いものもある 匂いがつきやすい |
シリコン | 価格が安い 割れにくい コンパクトに収納できる | シリコン独自のにおいがある |
容量|コップを使う目的を考える
ドリンクを飲むというコップ本来の目的をメインであれば、200mlから300mlがちょうどよいでしょう。お水の目安は以下の通りです。
・ドリップコーヒー1杯分(コーヒー豆10g)に必要な水量=およそ120ml
・コーンスープ1袋分に必要な水分量=およそ150ml
・フリーズドライのお味噌汁=160ml
直火にかけてお湯を沸かしたり簡単な調理をしたいという場合は、400mlがおすすめ。2人以上で行く場合も、これくらいの容量があれば一度に必要なお湯が沸かせるので便利でしょう。カップラーメン(筒状)に必要な水分量は300mlです。ドリンク用のコップとしてはやや大きい感じはしますが、不便さを感じるほどではありません。
また、600mlであればバーナーや小さいガス缶であれば収納可能なので、荷物をコンパクトにまとめることができます。
機能|保温・保冷機能や、コンパクト性など
特に注目したい機能性には、「保温・保冷機能」と、「コンパクト性」があります。
保温・保冷機能
コップには「シングル(一重)構造」と「ダブル(二重)構造」という作りのタイプのものがあります。写真の左側がシングル、右側がダブルです。みためでも厚さが違いますね。
ダブル構造とは、その名前の通りコップの壁が内側と外側の二重になっているタイプ。温かさ、冷たさをキープします。
ダブル構造はさらに細かく「中空二重構造」と「真空断熱構造」に分かれます。
「中空二重構造」=壁の間に空気が入っている
「真空断熱構造」=壁の間が真空
真空断熱構造の方が保温効果は高くなります。
ダブル構造は、直火NGなので気をつけましょう。
コンパクト性
シリコンタイプのコップには、折りたたんでコンパクトに収納できるタイプがあります。
コップは形状的にどうしてもかさばりがちですが、このタイプは非常にスリムになるので、荷物をコンパクトにしたい人にはおすすめです。
登山用コップおすすめ17選
素材別におすすめの登山用コップをご紹介します。
ステンレス 6タイプ
シングルウォール構造
ベルモント BM-101 ステン シングルマグ
おすすめポイント:シンプルでコスパ抜群の国産ステンレスカップ
新潟県燕三条市に拠点を置くブランド「ベルモント」。とてもシンプルなデザインで使うシーンを選びません。直火OK。
ハンドル部分は折り畳めないので、収納時にはややかさばります。
モンベル ステンレスカップ 390
おすすめポイント:さびにくく、耐久性もあり長持ち。
さびにくく、丈夫な18-8ステンレスを使用。71gと軽量です。シンプルなデザインで、あきがこず長くつかるでしょう。
DUG 環付カラビナマグ
おすすめポイント:ハンドルがカラビナというデザイン性
ハンドル部分がロック付のカラビナになっていることが特徴的なデザイン。ザックやベルトループにかけることができるので、紛失防止にもなります。
ダブルウォール構造
スノーピーク ステンレス真空マグ 300
おすすめポイント:超軽量な真空マグ。おりたたみハンドルで収納も便利。
保温・保冷機能があるダブルウォールの真空構造。それなのに非常に軽量です。飲み口も滑らかになっていて、口当たりも抜群。
サーモス アウトドア 真空断熱マグカップ350
おすすめポイント:高い保温・保冷機能にこだわりたい人に。ハンドル付きでもちやすい。
「山専ボトル」で有名なサーモスの魔法瓶技術を採用した、真空二重構造のアウトドア用マグカップ。外側が熱くならず、結露もににくいです。気温差の激しいアウトドア環境で、飲み頃をキープしてくれます。
サーモス 真空断熱カップ ROD-004
おすすめポイント:スタッキングしやすい魔法瓶タイプのコップ
同じくサーモスの保温・保冷機能つきのカップですが、こちらはハンドルなしのタイプ。スタッキングしやすいので、複数個もっていきたいときに便利です。
チタン 6タイプ
シングルウォール構造
エバニュー Ti FH Mug 300
おすすめポイント:直火OK。汚れが落ちやすい特殊加工。
シングルウォールマグカップの人気モデルです。ハンドル部分は熱くならないようにラバー付き。チタンはどうしてもススや茶渋の汚れがつきやすいのですが、こちらは汚れが落ちやすい特殊加工がされています。
スノーピーク チタンシングルマグ 300
おすすめポイント:直火OK。複雑な形状のハンドルが握りやすさの秘密
軽量で丈夫なことはもちろんですが、スノーピークのマグカップはハンドルにもこだわりがあります。軽量化のためにハンドル自体は非常に細いのですが、2本のハンドルの取り付け方に独自の工夫をすることで、握りしめた時のホールド感が高まっています。
モンベル チタンカップ450
おすすめポイント:容量が大きいのに軽量で、持ち運びやすい
高い強度と軽量性を誇り、耐久性・耐食性にも優れています。70gと軽量で、ハンドルもおりたためるので収納しやすく持ち運びに便利です。
ベルモント スタッキングマグ330
おすすめポイント:スタッキングできるので、複数持ち歩きたいときに便利
重ねて収納できるタイプ。ハンドルのデザインも可愛らしいです。
ダブルウォール構造
スノーピーク チタンダブルマグ300
おすすめポイント:保温・保冷機能も備えた軽量マグ
人気のスノーピークチタンカップの二重構造タイプ。直火使用はできませんが、ゆっくりドリンクを楽しみたいときに適度な温度をキープしてくれます。リニューアルモデルではさらに軽量化して84gになりました。(参考:モンベル チタンサーモグ300は120g)
FIELDOOR チタンマグカップ 蓋付き
おすすめポイント:メモリ付きで軽量に便利。ふた付きなのも嬉しいポイント
内側にメモリがついているので、水の量を測るのに便利!しかもふた付きなので、飲み物の中にゴミや埃が入ることを防ぐことができます。(スノーピークやモンベルでは現行モデルは目盛りなし。ふたは別売り)
ノルディスク チタンダブルウォールマグ 220ml
おすすめポイント:ハンドルなしの湯呑みタイプ
熊のマークがかわいいノルディクスのダブルウォールマグはハンドルなしタイプ。外側があつくなることがないので、本体部分を直接持っても熱くありません。
プラスチック 3タイプ
ダイネックス 8オンスマグ
おすすめポイント:軽くて、保温・保冷機能あり。耐熱性も◎。
プラスチック性なのに、耐熱温度が120℃あります。「ダイネックス」はアメリカの保冷保温食器ブランドとして人気があります。カラーバリエーションも豊富なことも魅力です。
ウィルドゥ フォールダーカップ
おすすめポイント:超軽量、コンパクト。しかも使用後に液だれしにくい。折りたたんでコンパクトになるタイプ。わずか25gと超軽量です。
柔らかい素材でできており、丸みのあるデザインは隅に汚れが溜まることが少なく、汚れがするんと落ちやすくなっています。
しかも蛇腹状に折りたたむタイプと違って、内側に折りたたむ構造なので、カップが濡れた状態で折りたたんでも液が垂れてくることを防ぐことができます。
ユーコ スタッキングカップ
おすすめポイント:深さや安定感があり使い勝手よし。
底半分を内側におりこんで収納できるタイプ。耐熱性もあるので、暖かいドリンクも注ぐことができます。折りたためるタイプの中では深さがあるので、ラーメンなどドリンク以外にも使い勝手がよいです。
シリコン 2タイプ
シートゥサミット フロンティアULカップ
おすすめポイント:フラットに折りたため、携行性抜群
全体を折りたたむと、フラットになりあらゆる隙間に収納できる超コンパクトモデル。容量は小さめですが、コップとしても、ちょっとしたお皿がわりとしても一つはもっていて損をしないアイテムです。
ふちに硬いナイロンリングがあるので、形状が維持され使いやすいことも特徴です。
Montagna カラビナ付きシリコンカップ
おすすめポイント:カラビナやふた付きで安心
ふたつきなので、ドリンクをこぼす心配が軽減されます。耐熱性・耐冷性もあります。カラビナでザックにつけることもできます。
こぼればなし
筆者はさまざまなタイプのコップを使ってきましたが、いまは600mlのチタンカップと、120mlのプラスチックカップを併用しています。
お湯を沸かしたり、たっぷりドリンクを楽しみたい時はチタンカップが断然便利。しかし、ちょっとだけ取り分けたりするときや、仲間と飲み物をシェアしたいというときは、やはり小さい容量のものが活躍します。
例えば仲間からワインやウイスキーのおすそ分けをいただくとき。容量が大きいチタンカップより、コンパクトなサイズのコップのほうがスマートな気がします。
チタンカップの中にはガス缶(小)とバーナーが入っています。
お気に入りのコップで、最高のひと時を
用途によって選ぶコップのタイプもさまざまですが、1つ持っていて損はしないアイテムです。山で過ごすひと時が、いっそう豊かになりますよ。
コップはいくつか違うタイプのもの持っていても使い分けが楽しいので、アウトドア好きの方へのプレゼントとしても喜ばれるでしょう。
山小屋や登山口で、オリジナルデザインのコップも売っているところがあるので登山の記念品としてもおすすめです!