ツエルトは緊急時や休憩時に風を防ぐため、かぶったり包まって使用することで、急激な体温低下を防ぐことができたり、ツエルトのフロア部分を解放してタープとして使用することで広い面積で雨を凌ぐことができたり、ストックやポール、スキー板などを利用してテント代わりに使用することができるなど、様々な使い方ができる有能なアイテムです。
この動画を見て、登山装備の軽量化のためにこれからツエルト泊をしてみようと考えていただくのも良いのですが、ツエルトは登山における「もしも」を「助ける」アイテムなので、是非登山装備に取り入れていただくことを検討してみてください。
今回はそんなツエルトの中でも僕が愛用しているファイントラックのツエルト2ロングについて紹介をします。なぜファイントラックのツエルト2ロングを選んだのか、他のメーカーのツエルトと比較しながらその特徴を紹介します。
他のメーカーのツエルトと比較
登山向けのツエルトで代表的なモデルを挙げてみました。
ツエルトの代表的なメーカーはファイントラック、モンベル、アライテントでこれら3つの代表的なツェルトを比較した表です。いずれも登山装備の軽量化にインパクトを及ぼすことができる軽量性に優れたモデルをピックアップしています。
ツエルトの価格を比較
まずはじめに価格から見ていきましょう。
メーカー | ファイントラック | ファイントラック | モンベル | アライテント | アライテント |
モデル名 | ツエルト2ロング | ツエルト1 | U.L.ツェルト | スーパーライト・ツェルト1 | スーパーライト・ツェルト2 ロング |
税込価格(2024/8現在) | ¥29,040 | ¥21,120 | ¥22,000 | ¥11,990 | ¥17,490 |
高さ | 95cm | 90cm | 90cm | 90cm | 110cm |
長さ | 220cm | 200cm | 200cm | 200cm | 210cm |
横幅 | 100cm | 80cm | 80cm | 90cm | 130cm |
重量(スタッフバッグ込み) | 340g | 230g | 275g | 280g | 395g |
出入り口 | 2箇所 | 1箇所 | 2箇所 | 1箇所 | 1箇所 |
出入り口の形状 | 少し斜め | 少し斜め | 斜め | 垂直 | 垂直 |
出入りのしやすさ | 程よい | 程よい | しやすい | しづらい | しづらい |
居住空間 | 中間 | 中間 | 少ない | 広い | 広い |
フロア | 有(フラップ付き) | 有 | 有(フラップ付き) | 有(フラップ付き) | 有(フラップ付き) |
サイドリフター | 有 | 無 | 有 | 無 | 有 |
素材 | 15dリップストップナイロン100% | 15dリップストップナイロン100% | 10デニール・バリスティック エアライト®ナイロン・リップストップ | 28dnリップストップナイロンPUコーティング | 28dnリップストップナイロンPUコーティング |
耐水性 | 1,000mm(初期値) | 1,000mm(初期値) | 1,000mm(初期値) | 不明 | 不明 |
透湿性 | 8,000g/m2・24h(A-1法) | 8,000g/m2・24h(A-1法) | 不明 | 不明 | 不明 |
ファイントラックのツエルト2ロングは価格は最も高く2024年8月現在で税込29,040円です。最も安いのはアライテントのスーパーライト・ツェルト1です。それ以外のツエルトは2万円前後ですが、アライテントが比較的安価に購入できるイメージです。これは素材の薄さ、素材が薄いことによる縫製のしにくさ、などから影響されていると思います。薄い生地は価格が高い傾向があり、テントやツエルトなど多くのギアは軽量であると価格が高くなります。
ツェルトのサイズを比較
続いてツェルトのサイズを比較していきましょう。
メーカー | ファイントラック | ファイントラック | モンベル | アライテント | アライテント |
モデル名 | ツエルト2ロング | ツエルト1 | U.L.ツェルト | スーパーライト・ツェルト1 | スーパーライト・ツェルト2 ロング |
高さ | 95cm | 90cm | 90cm | 90cm | 110cm |
長さ | 220cm | 200cm | 200cm | 200cm | 210cm |
横幅 | 100cm | 80cm | 80cm | 90cm | 130cm |
高さはアライテントのスーパーライト・ツェルト2ロングが最も高く110cm。その次に高いのがファイントラックのツエルト2ロングで95cmです。その他のツエルトは共通して高さ90cmです。身長180cmの僕自身が座って天井に当たるか当たらないかのギリギリの高さがおよそ95cmです。
長さはファイントラックのツエルト2ロングが最も長く220cmです。その次に長いのがアライテントのスーパーライト・ツェルト2ロングで210cmです。その他のツールとは共通して長さ200cmです。
身長180cmの僕の場合はどのツエルトとも平面だけ見ると問題ないように思えるのですが、出入り口部分が垂直に立っているアライテントは寝た時の居住空間は非常に広く感じます。出入り口部分が斜めになっているモンベルは寝た時に少し圧迫感を感じます。ファイントラックはアライテントとモンベルの中間ぐらい、少し斜めになっているデザインなので寝た時の圧迫感はツエルト1の場合は少し感じますが、ツエルト2ロングであれば全く問題ありません。
身長が170cm以下の方であれば長さ200cmで十分だと思いますが、ツエルトは長さだけでなく横幅も重要なポイントなので、一概に自分の身長とツエルトの長さだけで最適なモデルと言い切れないのがポイントだと思います。
横幅はアライテントのスーパーライト・ツェルト2ロングが最も広く130cm。その次に広いのがファイントラックのツエルト2ロングで100cmです。横幅を見る時のポイントは、ツエルトをテント代わりに使用した時に荷物を全てツエルトの中に入れる必要があり、寝た時に置くスペースが確保できているかという点です。
また肩幅を測り、シュラフに潜り込んだ時のイメージをして、ツエルトの壁に体が当たりづらいかという点もチェックすべきポイントです。テントマットの多くが横幅50cmなので、ツエルトの真ん中にマットを敷いた時に、左右どれだけのスペースができるか?このように考えるとファイントラックのツエルト2ロングは「ちょうど良いサイズ!」と言えます。
ツェルトの重量を比較
メーカー | ファイントラック | ファイントラック | モンベル | アライテント | アライテント |
モデル名 | ツエルト2ロング | ツエルト1 | U.L.ツェルト | スーパーライト・ツェルト1 | スーパーライト・ツェルト2 ロング |
重量(スタッフバッグ込み) | 340g | 230g | 275g | 280g | 395g |
素材 | 15dリップストップナイロン100% | 15dリップストップナイロン100% | 10デニール・バリスティック エアライト®ナイロン・リップストップ | 28dnリップストップナイロンPUコーティング | 28dnリップストップナイロンPUコーティング |
ツエルトの重量は、今お話ししてきたサイズと、使用している素材で大きく変わります。モンベルのツェルトは10デニールの素材ながらもエンドチップ用のループや、出入り口が2箇所あること、出入り口の上部にベンチレーションが備えられているなどで、同じサイズスペックのファイントラック「ツエルト1」よりも45g重量があります。
軽量性を重視するならばファイントラック「ツエルト1」という選択もありますが、僕の場合は荷物を置くスペース、身長が180cmあるので寝た時に狭く感じる点からやめました。
ファイントラックのツエルト2ロングは軽量性、サイズという点で最も自分に合ったツエルトだと判断しています。これはツエルトをテント代わりに使用するという目的だからなので、テントではなくビバーグ用、いわゆるエマージェンシーキットという目的であれば、ファイントラックのツエルト1、モンベルのU.L.ツェルト、アライテントのスーパーライト・ツェルト1は賢い選択肢だと思います。
出入り口のデザインを比較
先ほどサイズの部分でも触れましたが、出入り口のデザインが垂直になっているのがアライテント、ベンチレーションがあり他のツエルトと比較すると斜めに感じるのがモンベル、その中間的な位置づけがファイントラックだと個人的に感じています。
寝た時の居住空間の広さの違い以外で、出入りのしやすさというのもポイントで、垂直だと入る時にどうしても天井に体がぶつかってしまいます。この出入りのしやすさが最も良かったのがファイントラックのツエルトでした。この辺りは体の大きさ、出入りする時の体の動きなど、個人的な部分が多くあるので参考程度に聞いてください。
フロアのデザインを比較
メーカー | ファイントラック | ファイントラック | モンベル | アライテント | アライテント |
モデル名 | ツエルト2ロング | ツエルト1 | U.L.ツェルト | スーパーライト・ツェルト1 | スーパーライト・ツェルト2 ロング |
フロア | 有(フラップ付き) | 有 | 有(フラップ付き) | 有(フラップ付き) | 有(フラップ付き) |
ファイントラックのツエルト1以外は全てフロア部分にフラップが付いています。いわゆる紐のようなもので、これを取り外すことでツエルトを1枚の生地のように使用することができ、ビバーグ時にタープとして、また複数人の体を包み込む毛布のような使い方がしやすい特徴があります。
テントとして使う時はフロア部分の紐を結んで地面からの冷え、また雨の侵入を防ぎますが、雨の日はどうしても隙間から水が入ってきやすいので、テント内シートをテントマットとは別に敷くようにしています。タイベックシートやホームセンターなどで売ってる非常に薄い銀シートなどを使用しています。タイベックシートはグランドシートにも活用できるのでおすすめです。
サイドリフターのありなしを比較
メーカー | ファイントラック | ファイントラック | モンベル | アライテント | アライテント |
モデル名 | ツエルト2ロング | ツエルト1 | U.L.ツェルト | スーパーライト・ツェルト1 | スーパーライト・ツェルト2 ロング |
サイドリフター | 有 | 無 | 有 | 無 | 有 |
サイドリフターとはツエルトの長編に設けられたループで、このループにガイラインを通してテンションをかけることで居住空間を広げることができます。これがあるかないかはツエルトをテント代わりに使用する時に重要で、強い風に当たった時に結露が多いとしづくが飛んできてシュラフを濡らすことがあるのですが、サイドリフターがあるとこれを大幅に軽減できます。
これ以外に耐水性や透湿性の違いも比較したいところですが、比較できるような情報が揃っていないためここでは省きます。ポイントとしてはテントと比較すると耐水性は低く、大雨の可能性がある時はツエルト泊は厳しいと感じます。
このような点から、ある程度天気予報がわかるような縦走登山などで使用するようにしています。
ファイントラックのツエルト2ロングをレビュー
ファイントラックのツエルト2ロングをレビューをしていきます。
居住空間の広さ
ツエルトにおける居住空間は前室がないので、登山靴やザックもツエルトの中に入れる必要があります。だから自分が寝た時の足元や横にスペースがあることがとても重要です。ファイントラックのツエルト2ロングはそういう意味でもベストサイズで、初めてツエルト泊をしても僕の場合はストレスを感じづらかったです。
またサイドリフターによって長編部分も広げられるので非常に広く感じます。
結露について
ツエルトはクロスオーバードームなどのシングルウォールテントと同様に結露が発生します。ヘリテイジのクロスオーバードーム2Gも、今回紹介しているファイントラックのツエルト2ロングも透湿性は8,000g/m2・24hです。この数値はASTM規格で、世界最大規模の標準化団体であるASTMInternational(旧称AmericanSocietyforTestingandMaterials:米国試験材料協会)による数値です。
透湿性8,000g/m2・24hという数値を見てもピンとこないと思うのですが、実際に使用して感じるのは、この透湿性はないよりかマシという程度で、しっかり結露します。透湿性の数値はASTM以外にレインジャケットで使用される透湿性実験JISL-1099などあり、レインジャケットの透湿性とも違いがあると思われるので、一概に比較が難しいところです。
なので就寝時には結露でシュラフが濡れないようなサイズ感、シュラフカバーを活用、結露拭き用のタオルを準備しておく、などの対処を重視していて、僕はシュラフカバーには透湿性のあるSOLのエスケープライトヴィヴィの活用、結露拭きにはスピードのセイムタオルを活用しています。
出入り口の使いやすさ
出入り口の傾斜における出入りのしやすさや、寝た時の居住空間の広さについては先ほどお話しした通りなのですが、それ以外にファイントラックのツエルト2ロングの良いところはダブルジッパーになっているので、外がどのような状況になっているのか上部からジッパーを少し開けて見ることができる点です。
また頭側にも足元部分も開口するので、凄く暑い時にはどちらも少し開けて空気の循環を促すことができます。さらに出入り口上部にメッシュ部分がありここがベンチレーションになっています。
最後に設営方法ですが、別の記事で詳しく紹介しているので、是非そちらをチェックしてみてください。一度覚えてしまえば難しいことは1つもありませんし、覚えることで登山におけるリスクを大幅に軽減できると思います。