着心地がよく、多くの機能を持つ「ソフトシェル」は、登山のあらゆるシーンで活躍する「万能ウェア」です。
ソフトシェルといえば「ジャケット」を思い浮かべがちですが、実は「パンツ」や「プルオーバー」などのアイテムも充実しています。
そこで本記事では登山で活躍するソフトシェルについて、選び方やアイテムごとの特徴、またアイテムごとのおすすめ製品を紹介します。
1枚プラスすることで、登山中のいろいろな課題を解決してくれるソフトシェル。ジャケット以外のアイテムも気になっている方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
ソフトシェルとは?
「ソフトシェル」「ハードシェル」「ウインドシェル」など、登山ウェアによく用いられるのが「シェル」というワードです。英語で「殻」を意味し、雨・風・雪などから体を守るウェアを表します。
中でも「ソフトシェル」は柔らかく、ストレッチ性の高い生地で作られたシェル製品のカテゴリーです。
▶機能満載なソフトシェル
ソフトシェルには「ストレッチ性」「透湿性」「撥水性」「防風性」「保温性」など、多くの機能が備わっています。各機能について詳しく解説します。
ストレッチ性
「ソフトシェル」の名前の由来になっているのが、柔らかく「ストレッチ性」の高い生地です。動きやすく着心地がよいので、登山の「行動着」としても活躍します。
またキャンプや釣りなど、さまざまなアクティビティでの着用もおすすめです。
撥水性
近年「防水性」を持つソフトシェル製品がいくつか販売されていますが、まだその数が多くはありません。
しかし、水を弾いて生地に浸みこみにくくする「撥水性」はほとんどのソフトシェル製品に備わっており、ソフトシェルの主要な機能となっています。撥水性によって生地の上を水が転がっていき、衣服内に浸みこみにくくなります。
通常、登山中は雨が降ったらレインウェアの着用が必要です。しかし小雨程度であれば、ソフトシェルでも充分しのぐことができます。
透湿性
登山ウェアは、汗による蒸れを放出する「透湿性」が重要です。透湿性が低いと、登山中にかいた汗が冷え「汗冷え」を起こし「低体温症」の原因となります。
ソフトシェルは防水性が無い分、通気性がよく、ハードシェルやレインウェアに比べかなり「透湿性」に優れています。汗をかいても衣服外に汗蒸れを放出し、衣服内を快適な状態にキープすることが可能です。
防風性
ソフトシェルは、風をブロックする「防風性」にも優れています。風が衣服内に入らないので、山の強風が吹きつけて体温が低下するのを防げます。
また登山だけでなく、釣り・スポーツ観戦などのアクティビティや、自転車・バイクでの通勤通学でも、「ウィンドシェル(ブレーカー)」として活躍するでしょう。
保温性
秋冬用のソフトシェルは、厚手素材や起毛素材が使われ「保温性」に優れています。フリースを着込むほどではない気温の時に使い勝手がよいでしょう。
少し肌寒さを感じる程度なら「アウター」として、また寒さが厳しい時期はアウターの下に着込む「中間着」として、体温調整の役割を果たします。
しかしオールシーズン対応の薄手のソフトシェルは「防風性」があるので風で体が冷えるのを防げますが、体を温める機能は無いといってよいでしょう。
ハードシェルとの違いは?
「シェル」と呼ばれる登山ウェアには、ソフトシェル以外に「ハードシェル」もあります。
ハードシェルは、冬山登山やスキーなど過酷な環境で着用されるアウターです。「防水性」「防風性」「防雪性」に優れており、冬山の吹雪もしっかりブロックします。
生地は硬く、ストレッチ性はほとんどありません。また転倒した時に雪面を滑落しないよう、生地表面はザラザラしています。
また生地が厚手なので寒さはある程度防げますが、ハードシェル自体に保温性はありません。ハードシェルの下にソフトシェル・フリースなど中間着を着用し、保温性を高める必要があります。
「防風性」に特化したウインドシェル
「ウインドシェル」は防風性に特化したアウターです。100g以下の非常に軽量な製品が多く、日常的にも携帯しやすいアイテムです。
さらに「ストレッチ性」や「透湿性」にも優れた製品が多く、登山中に汗をかいても衣服内を快適な状態に保ちます。
ソフトシェルはジャケットだけじゃない!
ソフトシェルというと「ジャケット」をイメージしがちですが「パンツ」や「プルオーバー」などのアイテムも展開されています。
ここでは、それぞれのアイテムの魅力や活用シーンを紹介します。
▶さまざまな活用シーンがあるジャケット
ファスナーでフロントをフルオープンできる「ジャケット」は、脱ぎ着のしやすさが魅力です。登山中でも気温や気候に合わせて、サッと脱いだり着たりできます。
ジャケットタイプのソフトシェルは、春秋の気候のよい時期の「行動着」、肌寒さを感じた時の「アウター」、小雨の際の「レインウェア」、アウターの中に着る「中間着」など、さまざまな役割を果たします。
▶登山をより快適にするパンツ
「ジャケット」や「プルオーバー」タイプは重ね着が前提ですが、「パンツ」タイプは素肌やタイツの上に着用します。
ソフトシェルパンツの大きな魅力は、通常の登山用パンツには無い「撥水性」「防風性」を備えている点です。
登山中の急な雨でレインウェアが必要になった時に、レインジャケットはサッと羽織れますが、そうもいかないのがレインパンツです。特に足場の悪い時などは、着用に四苦八苦することもよくあります。
「撥水性」に優れたソフトシェルパンツを着用していれば、小雨程度なら「レインパンツ無し」で登山の継続が可能です。
また登山中に風が冷たい時は、ほとんどの人が「ウインドシェル」などのアウターを重ね着します。しかし下半身に関しては、何ら対策をしない人の方が多いのではないでしょうか。「防風性」のある「ソフトシェルパンツ」であれば、強風をブロックし下半身が冷えるのを防ぐことができます。
▶ミドルウェアにおすすめのプルオーバー
フロント部分がクローズしている「プルオーバー」タイプ。ファスナーによるもたつきが無く、スッキリしたシルエットが魅力です。またファスナーが無い分、体温が逃げにくく保温性が高い点もメリットといえます。登山では「行動着」や「中間着」としての着用に適したアイテムです。
ただし「中間着」にしていると、暑くなった時に脱ぐのが面倒です。そのため途中でプルオーバーを脱ぐことが想定される登山には向きません。アウターを脱ぎ着するなど、プルオーバー以外のアイテムで体温調整するとよいでしょう。
ソフトシェルの選び方
ここからは、ソフトシェルを選ぶ際のポイントを紹介します。
ソフトシェルは「機能性」「生地の厚み」「ベンチレーションの有無」「フードの有無」をチェックすると、登山がより快適になる製品が選べます。
機能性をチェック!
ソフトシェルは「ストレッチ性」「撥水性」「透湿性」「防風性」「保温性」などが備わった多機能なウェアです。
また製品によっては「耐久性」「UVカット機能」などが備わっているものもあります。
しかし、ソフトシェル製品全てが同じような機能性を持つわけではありません。製品によって、どの機能が重視されるかが違います。例えば「透湿性」を高めるために「防風性」は抑え気味、または夏も着用できるよう「保温性」が無いなど、製品ごとに機能性に個性があります。
どんな季節にどんな目的で着用するか考慮して、必要な機能が優れたソフトシェルを選びましょう。
生地の厚みをチェック!
ソフトシェル製品はオールシーズン対応のものも多いですが、ブランドによっては季節に合わせた製品をリリースしている場合があります。
そういった場合、春夏は薄手、秋冬は厚手生地の製品が販売されます。
生地の厚さによって着用感や保温性がかなり違うので、気候に適した生地の製品を選びましょう。
ベンチレーションの有無をチェック!
「透湿性」に優れたソフトシェルですが、さらに衣服内の換気をよくするため「ベンチレーション」が付属した製品もあります。
運動強度の高い登山では、寒い環境でもたくさん汗をかきます。わざわざ1枚脱がなくても、ベンチレーションを開放することで汗による蒸れを放出し、衣服内を快適な状態に保つことが可能です。
フードの有無をチェック!
ソフトシェルジャケットは、風雨を防げる「フード付き」の製品が多数販売されています。ソフトシェルジャケットを「行動着」や「アウター」として着用する場合はフードがかなり活躍します。
しかし専ら「中間着」として着用するなら、フードはさほど必要ありません。アウターのフードと重なってもたついてしまう場合は、フード無しのジャケットを選ぶのもよいでしょう。
ソフトシェル・アイテムごとのおすすめ製品9選
ここからは「ジャケット」「パンツ」「プルオーバー」ごとに、おすすめ製品を紹介します。
▶おすすすめソフトシェルジャケット4選
登山ではアウター・行動着・ミドルウェア・レインウェアとして着られる最も汎用性の高い「ジャケット」タイプ。着脱しやすく、通勤・通学など日常的にも使いやすいアイテムです。
【ノースフェイス】マウンテンソフトシェルフーディ
ブランド | ザ・ノースフェイス |
商品名 | マウンテンソフトシェルフーディ |
メーカー参考価格 | 17,600円(税込) |
重量 | ー |
サイズ展開 | S・M・L・XL |
レディースモデル展開 | 有り |
特徴 | ストレッチ性・撥水性 |
【patagonia(パタゴニア)】メンズ・フーディニ・ジャケット
パタゴニアの定番ソフトシェル「フーディ二・ジャケット」。105gと非常に軽量で、胸ポケットに収納できるポケッタブル仕様。携帯性の高さが魅力です。バックに入れたまま日常的に持ち歩いても、負担になりません。
防風性に優れており、ウィンドシェルとしても活躍します。フードや裾部分にドローコードが付属しておりフィット感の調整可能で、冷たい風の侵入をしっかり防ぎます。
トレンドを押さえたパターンも含めた、カラー展開の豊富さも魅力です。きっとお気に入りのカラーが見つかります。
素材にはリサイクルナイロンが使用され、環境への影響にも配慮されています。
ブランド | パタゴニア |
商品名 | メンズ・フーディ二・ジャケット |
メーカー参考価格 | 15,950円(税込) |
重量 | 105g |
サイズ展開 | XS・S・M・L・XL・XXL |
レディースモデル展開 | 有り |
特徴 | ストレッチ性・撥水性・UVカット機能 |
【MAMMUT(マムート)】アクティブ ソフトシェル カーディガン アジアンフィット
シンプルなジャケットを探している方におすすめな、カーディガンタイプのソフトシェルジャケットです。
フード無しのデザインで、フード付きアウターを重ね着した時のもたつきがありません。登山では行動着や体温調整のミドルウェアとして役立ちます。
撥水性や防風性、さらにストレッチ性が高く動きやすいので、低山登山やハイキング、キャンプなどのさまざまなアウトドアで活躍します。
カジュアル過ぎないため、オフィスや旅行でも使いやすいデザインです。同素材のジャケットやパンツ、ショーツなどのラインナップも充実しており、セットアップでの着用もおすすめです。
ブランド | マムート |
商品名 | アクティブ ソフトシェル カーディガン アジアンフィット |
メーカー参考価格 | 20,900円(税込) |
重量 | 235g |
サイズ展開 | XS・S・M・L・XL |
レディースモデル展開 | 無し |
特徴 | ストレッチ性・撥水性・防風性 |
【finetrack(ファイントラック)】フロウラップEXPフーディ
同ブランドのオールシーズン対応の「フロウラップフーディ」に続いて登場した、冬季専用ソフトシェルジャケット「フロウラップEXPフーディ」です。雪山など過酷な環境での着用を想定しています。
「フロウラップEXPフーディ」は「フロウラップフーディ」に、軽量で温かく、水濡れに強い保温材「ファインポリゴン」の層をプラスしています。
保温性に優れていますが、透湿性や吸汗速乾性にも優れている上、脇下にはベンチレーション付きで、深雪で汗をかいても汗冷えを起こしません。
フードは襟部分に収納でき、フード付きアウターを重ね着する場合はフード無しで着用可能です。
ブランド | ファイントラック |
商品名 | フロウラップEXPフーディ |
メーカー参考価格 | 46,200円(税込) |
重量 | 455g |
サイズ展開 | S・M・L・XL |
レディースモデル展開 | 有り |
特徴 | ストレッチ性・透湿性・撥水性・保温性・防風性 |
▶おすすめソフトシェルパンツ3選
「防風性」や「撥水性」があり、小雨程度ならレインパンツ要らずのソフトシェルパンツ。レインパンツを途中で着用する面倒な手間から解放されます。
【karrimor(カリマー)】アリート ベンチレーションパンツ
ジャケットと共に定番人気となっている、カリマーのソフトシェルパンツ。裏地にはグリッド構造のトリコット素材を圧着しており、保温性と透湿性を併せ持っています。
名前通り、ベンチレーションを4つも配置。激しく動いて汗をかいても、快適な状態を保てます。
また抗菌・防臭性能も備えているため、宿泊を伴う登山でも毎日気持ちよく着用できます。
ブランド | カリマー |
商品名 | アリート ベンチレーションパンツ |
メーカー参考価格 | 20,900円(税込) |
重量 | 510g |
サイズ展開 | S・M・L・XL |
レディースモデル展開 | 無し |
特徴 | ストレッチ性・透湿性・撥水性・防風性・保温性・抗菌・防臭・耐摩擦性 |
【MILLET(ミレー)】ティフォン50000 ストレッチ トレック パンツ
20,000mmの「耐水圧」と50,000g/m2/24hの「透湿性」を備えながら、柔らかでストレッチ性が高い「3層ティフォン 50000防水透湿素材 」。ティフオン50000生地を採用した防水登山用パンツです。ソフトシェルの着心地のよさと、ハードシェルの防水性を併せ持っており、レインパンツを携帯せずに登山できます。
両サイドには、ベンチレーションを兼ねたポケット付きです。さらにポケットにコンパクトに収納できるポケッタブル仕様で、携帯性にも優れています。
スタイルをよく見せてくれる、美しいシルエットも魅力です。
ブランド | ミレー |
商品名 | ティフォン50000 ストレッチ トレック パンツ |
メーカー参考価格 | 24,200円(税込) |
重量 | 214g |
サイズ展開 | XS・S・M・L・XL |
レディースモデル展開 | 有り |
特徴 | ストレッチ性・防水性・撥水性・透湿性 |
【MAMMUT(マムート)】ヤドキン 2.0 ソフトシェル パンツ アジアンフィット
中厚手で、温かい履き心地の秋冬用ソフトシェルパンツです。ストレッチ性が高く、裏地の柔らかな感触も魅力です。
環境に配慮したPFCフリーの耐久撥水加工が施されており、しっかり水を弾きます。
両サイドに、冷えた手を温められるハンドポケット付きです。さらにファスナー付きポケットが2つあり、スマホなどを収納できます。
ブランド | マムート |
商品名 | ヤドキン 2.0 ソフトシェル パンツ アジアンフィット |
メーカー参考価格 | 22,000円(税込) |
重量 | 476g |
サイズ展開 | XS・S・M・L・XL |
レディースモデル展開 | 有り |
特徴 | ストレッチ性・撥水性 |
▶おすすめプルオーバー2選
フルオープンするファスナーが無い分、デザインがスッキリしており、レイヤリングした時の違和感が少ないプルオーバータイプ。体温が逃げにくい、保温性の高さも魅力です。
【Arc'teryx(アークテリクス)】 ガンマ ライトウェイト クルー ウィメンズ
薄手生地で温暖な環境下で使いやすい、プルオーバータイプのソフトシェルです。シンプルなデザインで、アウターを重ねても違和感の無い着心地です。
4方向に伸びるストレッチ生地に、立体裁断が施されており、抜群の動きやすさは大きな魅力です。
「耐摩擦性」も高く、枝や岩などで擦れても破れにくい点もメリットとなります。またUPF40+の「UVカット機能付き」で、山の強い紫外線を防いでくれます。
ブランド | アークテリクス |
商品名 | ガンマ ライトウェイト クルー ウィメンズ |
メーカー参考価格 | 37,400円(税込) |
重量 | 230g |
サイズ展開 | XS・S・M・L・XL |
メンズモデル展開 | 無し |
特徴 | ストレッチ性・耐摩耗性・撥水性・UVカット機能・透湿性 |
【OUTDOOR RESEARCH(アウトドアリサーチ)】メンズ フェロッシーアノラック
アウトドアリサーチを代表する「フェロッシー生地」を使ったハーフジップフーディです。プルオーバータイプですが、ハーフジップが付いているため、脱ぎ着しやすさはメリットといえます。
「ストレッチ性」「撥水性」「透湿性」に加え、高い「耐久性」も備えており岩場で擦れても安心です。
フロントに、大きなカンガルーポケットを配置。スマホやガイドブックなどが収納可能です。デザイン的にも楽しさを加えています。カジュアルな雰囲気は、タウンユースにもおすすめです。
ブランド | アウトドアリサーチ |
商品名 | メンズ フェロッシーアノラック |
メーカー参考価格 | 17,600円(税込) |
重量 | 340.2g |
サイズ展開 | S・M・L |
レディースモデル展開 | 無し |
特徴 | ストレッチ性・撥水性・防風性・透湿性・速乾性・耐久性・UVカット機能 |
ソフトシェルはジャケット以外にもおすすめアイテムがいっぱい!
「ストレッチ性」「着心地」「透湿性」「撥水性」「防風性」「保温性」など、さまざまな性能に優れたソフトシェル。一年中、登山のさまざまなシーンで活躍します。
ソフトシェルは「ジャケット」だけでなく「パンツ」や「プルオーバー」などのアイテムも販売されており、使い分けることでさらに登山が快適になります。
ぜひジャケット以外のアイテムにも着目して、お気に入りの一枚を探してみてはいかがでしょうか。さらに登山が快適に身軽になりますよ。