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鹿岳 /ぐんま百名山とスペシャルな山ごはん

鹿岳 /ぐんま百名山とスペシャルな山ごはん

この文章は、11/26に公開した動画のナレーション原稿です。

01 | 母と登山

11月下旬のよく晴れた土曜日。今日はちょうど、秋が終わる日か、冬が始まる日か。冬って、真っ直ぐな晴れが多い。唯一外気に触れている部分である顔に当たる空気が冷たくて、でもこの水色の空のおかげで、その空気になんの不純物も混ざっていないように思えるから、それも心地よくて。

今日私たちは、私ユウの母と一緒に、群馬県の鹿岳に登る。
私の母は、昔から登山好き。私は記憶もない幼少期の頃から父と母に連れられて、日本中のいろんな山に訪れてた。
しばらく山から離れていた母だったが、8年ほど前に近所のママ友たちを集めて「お気楽隊」という登山グループを発足した。
お気楽隊の活動は山歩きJPより盛んだ。母は毎週末、お気楽隊の中の誰かしらのメンバーと山に行く。メンバーが全員休みなら、愛犬と山に登る。雨だったら、雨でも楽しめる山を探して登る。山に登った記録は、すべて文章に起こしてブログで発信する。その名も「50代からのお気楽山登り」。とにかく、活動的な母なのだ。

山歩きJPを始める前はもっぱらお気楽隊と一緒に登っていた私だったが、今日は久しぶりにお気楽隊の皆さんにおもてなしをしてもらうべく、彼女らの活動エリアである北関東に足を運んだ。

そこで母が提案してくれたのが、群馬県の「鹿岳」。おもてなししてもらう気満々で、自分の荷物は最低限に、かつ事前情報を入れすぎないようにして、今日の山行がスタートした。今日は母以外に、お気楽隊の幹部が2人同行してくれる。5人での賑やかな山歩きだ。

今日の行程です。鹿岳登山口駐車場に車を停めました。四ツ又山・鹿岳登山口から入山し、分岐から天狗峠を通って四ツ又山登頂します。母たちは私たちのおもてなし準備があるとのことで、マメガタ峠まで緩やかな登りでショートカット。鹿岳は2つのコブのような山頂がある山で、一ノ岳、ニノ岳と順にピークハント。一ノ岳の山頂付近でお気楽隊と合流し、それぞれの山頂でおもてなしされながらたっぷり休憩をとりました。距離7.2km、獲得標高982mでしたが、のんびりしすぎて8時間23分も山の中にいたけど、そのうちの3時間は休憩でした。

02 | さっそく別行動

歩き始めて1.3km。30分もないくらいのタイミングで、お気楽隊と分かれる分岐が訪れた。一旦ここでお別れして、私たちは四ツ又山を周回して、鹿岳登頂を目指す。お互いの位置がわかるように、YAMAPで位置情報を共有した。私たちは遠回りをしながら母たちを追いかける。母たちは私たちに追いつかれないように鹿岳を登頂し、お昼ご飯を仕込む。今日は本当に私たちを楽しませることを目的としてくれているみたい。とても嬉しい。

秋冬って、低山が楽しく登れる季節で、好きだな。鹿岳みたいな標高が1000m程度の山は、夏は暑いし虫も多いしで、とてもとても登れない。地面に落ちた枯葉をしゃくしゃく踏んで歩く音とか、地面から木の表面までおんなじ彩度に統一された色とか、これはこれで、ここにしかない世界観がある。今日はまだ紅葉が残っているので、陽が当たっているところとそうでないところでこんなに色が違う。太陽のパワーを、間接的に目で見ている。
陽が当たるところまで出ると、流石に黄色が眩しい。まだ8時半なのに、この夕方みたいな物悲しい色合いはなんなんだろう。紅葉した葉がセロファンみたいに陽の光を通して、ここまで届いているんじゃないかって思う。

1時間半ほど歩いて四ツ又岳が近くなったところで、鹿岳の山頂である一ノ岳とニノ岳が姿を現した。でもこの時は2人とも、あれに登れるなんて思ってない。だってこんなに岩岩しい。

低山で電波が通じるのをいいことに、母から電話が来た。「マメガタ峠の少し先に見晴し台があって、そこからの景色がとてもいいのでサムネを撮ってきたらいい」とのこと。理解があって助かる。その後も2度ほど着信履歴があったようだが、まあそんな感じの内容だろうと思って特に折り返しをしなかった。母にトランシーバーとか渡したら大変なことになりそう。

母に「行っといで」と言われた道のアップダウンはなかなか激しめで、加えて風が強く吹くので、久々にしんどい環境下での登山をしている気分になった。キャップが飛ばされそうになるので、顎で止めるために耳を下ろした。今日の私のフライトキャップは、通称「チルタリス」、ジュンのは通称「ゲンガー」だ。わかる人だけわかればいい。

指示された通りに周回したコースも終盤、最後の下りを降りている。低山だからと油断していただが、なかなかアップダウンがある。母たち、よほど追いつかれないか心配なのか。風もつよい。

谷に落ちていく葉っぱが、キラキラした紙吹雪みたいに見えるの、わかりますか。ちょうど黄金色なので、すごくおめでたい感じ。

鹿岳までの道は、「え、本当にお気楽隊通れた?」と心配になるくらい激しい道だった。母が別行動を指示した理由も理解できた。

やっとの思いで登り切る。ずっと近くに見えていた巨大な岩の塔が鹿岳の2つのピークだと気づき、本当にここに登れるのかと不安になった。が大丈夫。なぜならお気楽隊が登れているのだから。

03 | 合流、おもてなし

一ノ岳を登る途中で、母たちと再会。というか、めちゃくちゃ遠くからでも母たちのキャッキャが聞こえるので、そこにいることはだいぶ前からわかっていたのだが。


JPが来たぞといそいそと準備をしてくれ、具沢山のビーフシチューに、茹でたブロッコリーをさらにトッピングし、そこにポーションをかけて本格感を出す。このポーションがポイントなんだとか。フランスパンと、ミニトマトと、シャインマスカットをお皿に盛り付け「映え」まで意識してくれた。親子2世代の山女子会。めちゃくちゃ楽しいね。

母たちはこれを準備するために色々と主婦の手を動かしたいのに、寒いし狭いしでめちゃくちゃ時間がかかってて面白かった。私たちはただ見てるだけ。ジュンは3人のやり取りを見てずっと笑っていた。

山で煮込んでくれたビーフシチュー、めちゃくちゃ美味しかったぞ!マッシュルームとかブロッコリーとか、ちょっと高級な具材が入っているのも、細かいところにおもてなしを感じて嬉しいね。お鍋まるまるいっぱいに作ったビーフシチューを5人で分けて、私とジュンにはおかわりまでさせてくれて、鍋が空になった。私たちばっか食べすぎていいのかな?と思っていたら「あー全部なくなってよかった」と言っていたので、どうやら残すよりよっぽどよかったらしいということを知った。

デザートもあるらしいけど、それは二ノ岳で食べることとして再出発。みんなで一ノ岳をピークハントしたら「この先に秘密のテラスがあるの知ってる?」と言われ、行ってみることにした。少し降りたところに、広くて平らなスペースと、身を乗り出すと足が震えるほどの高所感を味わえる場所があった。岩の先に立ってみたら、足が震えて立ちくらみがした。ここでふらっとしたら確実に死んじゃう。ピョーンって飛び込みたくなっちゃう、とジュンが言ったら「ダメダメ〜」とお気楽隊が言ってみんなで笑ってた。
一つの山でも、こういう小さなスポットを見つけて、「秘密のテラス」とか「穴場」とか言って、自分たちだけの地図にしちゃうのがお気楽隊は本当に上手。山は、ただの場所だし、行って帰るだけでは本当は何も世界は変わらないはずなのに、誰かと登って笑い合って、その場所その場所に勝手に意味を見出すことができちゃう。母はお気楽隊と8年間で、そうやっていろんな山を旅してきている。新しい山の楽しみ方を教えてくれるので、お気楽隊と登ると面白い。

二ノ岳を登る。私たちの方が先に山頂についた。上から母たちがまだ遠くにいるのが見えまだ時間がありそうだったので、その時眠たすぎた私は適当なスペースを見つけてザックを枕にして昼寝をした。その間、ジュンはあの特徴的な山頂をスケッチしていたらしい。

ジュンと2人で二ノ岳のピークに立った。遠くから見たらものすごい高台にいるように見えたのに、登ってみたらとても広くて、ちっとも怖くなかった。

再び5人揃ったので、山頂でお茶会。インスタントコーヒーを入れて、お気楽隊のとっておきのおやつを出す。その名も「フルーツあんみつ大福」。これが、食べてみたらとんでもなく美味しかった。
大福の記事の中に、あんこと、黒蜜寒天ゼリーと、パインとみかんとクリームが入っている。一口食べるごとに違う味がして、しかもフルーツは瑞々しくて、コーヒーに十分合うあんこの甘さもあって、最高。一口食べるごとに「美味しい!」と感動して、一口食べるごとにコーヒーをすすった。

コーヒーは、お湯を沸かすわけではなく、山専ボトルに入れてきた熱湯で作ってくれた。山専ボトル、ジュンが持ってきてくれたことあったけど、改めて使うとめちゃくちゃ便利ね。スペシャルおやつ食べる時のお供のコーヒー入れるのに、ちょうどいいクイックさ。このあと私も山専ボトルを買った。

いつもバームクーヘンとかも、行動食としてささっと食べちゃってたし、コーヒーはトイレ行きたくなっちゃうからあんまお茶会してなかったけど、こうやってゆっくり座ってとっておきのおやつ食べるのって最高だなーって思い出した。行動食と一緒にささっと食べちゃうには、勿体なさすぎる美味しさだった。フルーツクリーム大福。

04 | 登山のルーツ

下山も私たちの方が早いので、ちょくちょく休みながら3人の声がだんだん近づいてくるのを、タイベックシートにすわってのんびり待った。

私の登山のルーツは母である。山は楽しむ場所。山は心を開放する場所。山は仲間とつながる場所。山は四季を楽しむ場所。山はちょっといいおやつを食べる場所。冷えた空気を胸いっぱいに吸ったら、頭の中まで透明になる。とか。いくつになっても、心の赴くままに大声ではしゃいでいい。とか。山に行くと、その日1日が絵日記みたいに頭の中に保存される。とか。

体力があるとかないとか、山に詳しいとか疎いとか、経験豊富とか初心者とか、オシャレと流行とかULとかジャンルとか、そういうものさしとかなくて、ただ山が好きで、それでいいって私が思っているのは、全部母から教わったことだなって、今日改めて思った。

今日も最後まで見てくださって、ありがとうございました。次の動画でまた、お会いしましょう。

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