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赤城山 / 樹氷探索からワカサギ釣りまで

赤城山 / 樹氷探索からワカサギ釣りまで

01 | 平日

1週間なんてあっという間に過ぎる。上司や同僚に言われたことを言われた通りにやっていたら、気づいたら仕事を詰め込みすぎてしまったなんてこともある。今週がそうだった。
タスクとアポに追われ、家に帰ってきてもお風呂に入って寝るのが精一杯。せっかく新しい家に引っ越してきたのに、何一つ快適に過ごせないまま毎日がすぎていく。今までの狭すぎた1Kから、2LDKに引っ越してきたんだ。もう自分の車をピックアップするのに、家から15分も歩く必要もない。都会の真ん中から、都会の端っこに越してきた。
狭い部屋に工夫して収納されていた荷物たちが、広いフローリングに投げ出されている。前の家には収納グッズを置くスペースもなく、モノたちが綺麗に収まっていた。モノだけピックしてこちらの家に持ってきても、きれいに置くための仕切りがないのだ。なんとなくこれはここに置こうかなという構想こそあれど、まるで片付けられる気がない洋服たちの山。家具を買いにIKEAに行く時間もなければ、それらをネットで探す暇もないのだ。

「忙しい」って、言い訳だと思う。忙しさに明確な線引きはなく、どこまでも本人の相対評価。忙しいということをやらない言い訳にしたい時、大体メンタル的に余裕がない。忙しいの正体は、本人のバイタリティのキャパによる。仕事が22時に終わっても、そのあとで今構想中のLINEスタンプのデザインを考えることだって、バイタリティがあればできるんだ。心が健康で、内側からエネルギーが湧き出てくる感覚。体の疲労や時間的な制限とは関係ない。

先週の土日は、何をしていたかな。
そうだジュンと、友達の家に泊まりに行っていたんだ。

02 | ありを邸へ

2025年が始まって「登山の漫画家ありを」さんと2回めの登山。今回は、群馬に引っ越してきたありちゃんたちの新居にお泊りをする。ありをさんとの出会いの記事は、こちらに書いてます。

窓から群馬の山波が見える街にやって来たと聞いた。赤城山の裾野を感じる場所に住んでいるらしい。冬の赤城山といえば、赤城ブルーに映る樹氷と、分厚く凍った小沼だ。個人的に、赤城は人生で一番訪れている山だし、2年前にYouTubeの動画にしたこともあるけど、その場所に住人として暮らすことになったありちゃんと、改めて一緒に登ってみたかった。

早朝に訪れて、たわわに実った樹氷をお迎えする予定。と思って、早朝出発の計画を立てていたけど、珍しくジュンが寝坊した。ほんと珍しい、初めてじゃないかな。
少し遅れてしまったね…と言いながら北上するものの、関越で大規模渋滞。今日はなかなか、時間のコントロールがうまくいきませんな。ノロノロ運転の中で、ありちゃんに「渋滞で遅れてしまう」と連絡したら「むしろたくさん寝られるからありがたい」と帰ってきた。相変わらず優しすぎるだろ。

ありちゃん邸に到着したのは結局9時ごろ。渋滞にハマって予定より2時間も遅くなってしまった。まだ樹氷あるといいな。ありちゃんを後部座席に乗せて、いざ赤城山の麓へ。ありちゃんは前回トイレに行きそびれて大変だったという話を一生している。早めのリスク回避ありがとう。

03 | 小沼を横目に

凍った道を走るのはいつも緊張する。前橋の市街を走っている時、見上げた赤城山には雪が残っていないように見えていたけど、道路が凍るほど近くまで来たら、黒檜山全体が真っ白に凍っているのが見えた。あー!このままあの中に突っ込みたい!あの白いのがいなくなる前に、私たちもあそこに飛んでいかなければ。

除雪車とすれ違う。あなたのおかげでここまで来られているので、本当にありがとうございます。と思いながらすれ違ったら、ちょっとだけおじさんが笑っているように見えた。かわいい。

長時間の運転に疲れて、車内に置いておいたはずなのにバキバキになったドーナツを齧りながら、今日私たちが目指すのはここ。真っ白の黒檜山。

登山口へ歩くまでの道も、雪山へのウォーミングアップ。歩くこともだし、傍に除雪された雪で、雪遊びの練習。これから泳げるほどの雪と対面するのに、こんな脇道の雪でもちゃんと遊んじゃう。つるんとした雪面見ると、どうしても嬉しいんだよね。

真っ白で平らな小沼が、空をより広く広く映している。ここ、図工の授業の風景画に書くときに選んだら、空の面積が広いから楽で良さげだな。息子ができたら教えてやろうっと。

04 | 樹氷を目指して

もう昼が近いからか、いつもの登りとは違った角度で光がさしているように思える。影がいつもよりも濃い感じがして、太陽の白い光が雪をさらに白くしてる。全部がキラキラしているんだ。めちゃくちゃかっこいい。

まだまだ樹氷には対面できず。山頂のお楽しみ。でも、下から見上げる山頂はずっと白いので、まだまだ保ってくれ〜って祈りながら。早くあそこに行きたいのに、アイゼンや靴が重たくて、一歩一歩がもたつく。雪山歩くの苦手だな。いつか慣れるんだろうか。自分の登山レベルが上がっていることを数値で実感できたらいいのにな。レベルアップした瞬間に、ティロリンとか音が鳴ったりすればいいのに。経験値を貯めて、次のレベルへ。頭の上にその人のレベルが表示されててもいいな。でもそしたら私の嫌いなマウント合戦になっちゃうか。そんなこと考えてても、現実世界では20歩分しか進んでいない。早く着かないかな。

地蔵岳を眺めながら休憩をしていたら、今日地蔵岳に登っているという母から着信があった。そしたら、今山頂に到着したところらしい。まじか、頑張ったら見えないかな?
と思って、お互いに大声を出したり手を振ったりしたら、ジュンのiPhone proの15倍の機能でやっと人影が確認できた。いつも賑やかなお気楽の声も、さすがに黒檜山までは届かないか。

05 | 真昼の樹氷

冬のはげた木の間からよく見える、遠くの山の白い壁紙。雲が少ないから、雪の白がより青空に際立つ。この景色のそばに来たくて、群馬に来たんだろうな。家から1時間移動して、これが見られるっていいな。東京に住んでいると、子供の頃地元で見えてた当たり前の景色が、当たり前に見えないことが日常になっていく。私は何を求めて毎週山に登ってるんだろ。無邪気な子供の頃の心をまとめて週末に解放させて、平日街でいい子に過ごすためのバランスをとっているのかもしれないな。

1時間一生懸命歩いて、樹氷エリアに来た。早起きを頑張れば、もっと早くこの景色に辿り着けたのかな。ぬくぬくお布団の中で過ごす時間を取るのか、この青と白の世界を取るのか。わかっていてもいつもあと5分、ってしちゃうんだよな。
今日ここに辿り着いたのは12時半。樹氷に出会うにしてはかなり遅めの時間だけど、それでも待っててくれたこいつらには、ありがとうだ。
真昼まで残った樹氷はほぼ溶けかけの残骸たちで、茶色い枝もかなりよく見える。所々に残った白が、青空の輪郭をより濃く見せている。
もっと大ぶりな樹氷が見たかったな、としょんぼりしていたら、ありちゃんが「樹氷が少ないから線がより繊細だね」と表現していて確かに文字通り消え入りそうな雪の儚さは、今が一番かもしれない。

もう一つ、今だから見れる景色が。雪との設置面が溶け出した樹氷が、雹のように山に降り注ぐ。こんなにも快晴なのに、雨のようにしとしと、コツコツと氷が落ちる音がそこらじゅうから聞こえる。山って生きてるな。

06 | 登頂、下山、そして

登りが終わった。赤城山は、山頂まで数100メートル歩くこの平らな道が、ボーナスステージのようで大好き。今まで断片的に見えていたアルプスたちを存分に眺めるべく、展望エリアへ。

展望エリアで休憩をする。バレンタインが近かったので、私からチョコをプレゼントした。雪でパキパキになったチョコレート、100円のでもスペシャルに美味しいんだよね。

下山は小沼を見下ろしながら。ワカサギ釣りをしている人たちを上から見ていたら、私たちもあの氷の上に立ちたくなった。せっかく群馬に一泊するから、明日晴れていたらワカサギ釣りに行こうか。

翌朝。早く起きられなかった私たちは、開き直って前橋のカフェでモーニング、のんびりのんびり、ワカサギ釣り会場へ向かう。
誰も事前知識を入れず、おじさんに言われた通りにワカサギ釣りのアイテムを貸してもらう。この氷すくうやつは、「これはなくても手ですくえるから大丈夫」と説明されたけど、ここに手を突っ込むのは無理すぎない?

全然釣れないし、そもそも釣る気があるとは思えないマインドセットなので、寒くなってきてすっかり飽きてしまい、凍った小沼に無駄に穴を開けたり、すでに誰かが開けた穴を覗き込んだりして遊んで夕方を迎えた。
みんなで言っていた、「ワカサギ釣りは暇を楽しむ遊びだね」って話、ありちゃんとリョータくんはハマったみたいで、ボウズだったのに来週もまた来ようか、なんて言っていた。私は根本的に、自分が釣りには向いていない気がしたよ。

帰り道教えてもらった榛名山は自分が想像している姿よりもずっとずっと大きくて驚いた。
自分の頭の中の姿と、どうしても一致しない。不思議だな。
一緒にパスタを食べて、帰る頃にはもう夜。今回も良き旅でした。また一緒に人生ゲームしようね。

こちらのナレーション原稿を使った動画を今週末に公開します。ぜひチェックしてみてください。

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