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上高地 / 雪中ラーメン

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06 | 上高地、上から見るか横から見るか

これから歩く道のどこのことを人は「上高地」と呼んでおり、どの部分が人気なのだろう。その名前の響き以外何も知らない上高地に、どんなギミックがあるのかとワクワクしながら一歩一歩進む。ずっと車道を歩いていたが、徐々にあらわになる北アルプスの山々。真っ白な山頂も綺麗だけど、焼岳方面はグレーの山肌が見えていてラメが輝いてるみたいに見えるな。
と思っていたら、壁紙みたいにどどーんと穂高!今日はこれにどこまでも近づいていくらしい。山に登っていないのにこんなに山の生命力をダイレクトに感じる。まだチェンスパはつけなくても大丈夫。

道の左側には川が流れていた。ジュンが「上高地は川が綺麗なんだよ」と教えてくれた。あ、それは知ってる!去年の夏焼岳に登った時、上から川が見えて、その時にジュンが「あそこが上高地だよ」と教えてくれた。その時もエメラルドの川の色がものすごく綺麗だったな。上から見ると人がたくさんいることは見えなくて、ただただオアシスみたいな場所に見えた。「上高地は北アルプスの玄関口なんだよ」とジュンが教えてくれた。そうだね確かに、ここから先は神聖な場所です、って言わんばかりのこのスケールと、立ち入る人をふるいにかけるかのようなあのトンネル。

朝ごはんを食べたのはもう4時間くらい前の話なので、すでにすっかりお腹が空いてしまっている。ゴープに入れてきたコアラのマーチが冷えてて美味しい。ジュンの補充されてないゴープはすぐに空になってしまっていたので、遠足前の私が用意したコアラのマーチを分けてあげた。

07 | 大正池を歩く

川幅が徐々に広がって、大正池に辿り着く。車道から逸れたところで雪の量が増えたので、チェンスパを装着した。いつ降った雪なのかな。まだまだ積もってるけど、溶ける方向に向かっているように見える。ホテルの上に積もった雪が、たまにすごい勢いでバシャバシャと地面に落ちる。馬のフンみたいだなと思った。

大正池に近づいてみる。水面が揺れて、風の流れの可視化ができる。どのハイカーも、みんなここで止まって休憩している様子。緑色の池なのに透明度が高くて、向こう岸の川の底まで見えそう。川くさくない、空気も透き通った感じ。防水のスマホで水の中を撮影してみたら、水面のゆらゆらが川底に落ちていた。


穂高を見上げると、ずっと同じ場所に雲があってその全貌がずっと見えない。風に流されているように見えるけど、次から次から同じ場所に雲がかかる。あの雲が取れてスッキリと山が見えないかな、とフラストレーションがたまる。自分と山との距離に因果関係はないけど、なんとなくじっとしていられず勝手に山に近づく活力にしてまた歩く。山を見るときにどうしても上を見上げるようになる構図になるのが、山に魅せられた人間って感じになってて風刺画にできそう。近づいても、あの雲を掴んで退かせるわけじゃないのに。でもひたすら歩く。近づいたら、何かがあると期待しちゃう。

池の辺りで「山歩きJPですか?」と声をかけられたと思ったら、お友達だったので30分くらいおしゃべりをした。この子達とは不思議で、たまたま山でバッタリ会うのがもう3回目。初めて会った時も含めたら、年に1回は山で遭遇していることになる。正月の竜ヶ岳、桜の光城山、冬の上高地、どれも全部晴れているので、彼女らは晴れの精なんじゃないか。
おんなじ趣味の同世代に出会うと嬉しい。みんな山に行きたいなと思いながらも自分と同じように平日を頑張っているんだなと思うと、勝手に仲間意識が芽生える。今日はテント泊をするらしい。

08 | 雪と林

今日の目的地は河童橋というらしい。なんだかよくわからないけど、目的地らしい名前の場所が目的地で嬉しい。とにかくあの山たちに近づいていけばいいんだね。
大正池を越えると橋の上を通るのだけど、その橋が完全に雪に埋まっていて、でも橋の柵だけは見えているからここが橋であるということはわかって、この雪がどれだけ積もっているのかしっかりわかる道も珍しいから嬉しい。柵によって道がしっかり示され、どう歩いたらいいかよくわかる。すごく降ったんだな。看板も何もかも埋まっている。

林道を歩くと、やっぱり今日も木と影の縞模様が素敵だった。針葉樹の葉に乗った雪が、どどどと落ちる。森が生きている感じする。
歩いていた私たちがそれに撃ち抜かれることもあり、ジュンのサングラスと肌の隙間に雪が落ちてきたらしいのは凄まじい射撃力。
だんだん足の先が冷たくなってきたけど、気づかないふりしてとにかく進む。やっぱりお腹が空いたので、ポテチを開けた。歩きながら、前をいく私が後ろに手を伸ばしジュンにポテチを届ける。側から見たらジュンがポテチに釣られないと歩けない人みたいになっていて面白いなと思った。七味とごま油の型あげポテトはもう食事だ。
ジュンが前を歩くと、新しいザックのメッシュから韓国海苔と目が合い、またお腹が空いてしまう。
ラーメンを作って食べること、バスの時間が限られていることを考えると、そんなにのんびりは仕切れないらしい。ラーメンを食べる時間だけは死守しないといけないので、頑張って歩くぞ。

林を抜けると、今まで木で見えていなかったあの山々に一気に近づいた!ここまで近くに来られるのか、北アルプスが、確実にこの目と鼻の先に存在しているってことを信じられる距離だ。山肌の、どこに雪があってどこは積もっていないのか、その境界線が鮮明にわかる。

09 | 河童橋にタッチ

河童橋に着いた。雪の溜まった穂高岳と、梓川と、そこにかかる大きな橋と、全て同じ画角で見られる、ゴールにふさわしいスポットだった。先についたお友達二人がどこかに向かって手を振っていたので、何しているのと聞いたら「家族が今ライブカメラで見ているらしくて、手を振ってみた」と言ってて、今日の行き先を告げて家を出てきていることとか、到着の時間に合わせて連絡をとっていることとか、その背景を勝手に想像して素敵だなと思った。
橋の手前の川は浅く、川底が近いような感じがした。まんまるになった石たちがさっきよりもよく見える。水面のキラキラと、川底の石たちがレイヤリングされて、立体の迷彩柄に見える。川の脇には、白い額縁。

とても気持ちいいけど、風も強い。お友達にお別れして、ラーメンを食べるために引き返す。どこで食べてもいいんだけどね。
食べ物の力はすごい。同じ道を倍以上の速さでスタスタ歩いた。行きの時にはジュンとおしゃべりしながらダラダラ歩いていたけど、帰りはしゃくしゃくと鳴る雪の音を聴きながら無言で歩く。でもこれはこれで楽しいなと思った。

10 | 札幌塩ラーメン

途中、行きの時には1匹も見なかった猿がたくさん木にくっついているのを見つけて、毛むくじゃらなのがなんか面白くて動画を撮った。風に煽られていたので、ジュンが「寒そう」と言っていたけど、どう考えても顔以外もこもこすぎるファーに包まれているのであったかいと思う。全体的にみんなまんまるく縮こまってて、でっかいいが栗みたいだった。

猿がおもろいという誘惑にも大して足を止めぬままラーメンのために歩き抜いた。途中人気のないところで東屋を見つけたので「ここでゆったり食べれるかも!?」と期待したが、近づいてみたら東家の中が全て雪で埋まっており無理だった。
目的の大正池に着くと、約1時間ラーメンに時間を取れる時間だった。やったね!

ジュンがタイベックシートを引いてくれた。そっちに荷物を置く。雪から守りたい自分たちのお尻は、ちゃんと持ってきたマットの上に。これを見越してちゃんとマットを持ってこられるようになっているのは、この3年間の登山暦の成果である。
お湯を沸かして、買ってきた具材を並べる。鼻の穴を膨らませながら昨日の22時すぎにセブンで買ったラーメンの具材たちをザックから取り出した。褒めてもらった。嬉しい。
とにかくスペシャルにするということで、乗るかどうかという論点は無視してラーメンに入ってそうな具材をありったけ用意した。
メンマ、チャーシュー、のり、半熟煮卵、コーン、もやし、胡麻、そしてバター。サッポロ一番塩ラーメン全部のせ豪華セット、フューチャリング上高地。腹ペコなのもあるし、ラーメンをおいしくする外的要因は揃ってるので、存分にその実力を発揮してもらってどうぞ。
暖かいお湯を水筒に入れて持ってきていたので、あっという間にお湯が沸き、ものの5分でラーメンが食べられる状態になった。

たくさん持ってきた具材を先割れスプーンで頬張る。うん、美味しい〜!卵が絶妙なのと、野菜がシャキシャキ、そんでバターがめちゃくちゃ効いてる!全部コク深くなっておいしさ1.5倍増しだ。
風はないけど寒いから、スープだけでも嬉しい。具材がたくさんあって2回分作れたので、量もガッツリ満足感。そりゃそうだという感じなのだけど、具材を乗せるときに雪の上に器を置かねばならず、温めたラーメンを一度雪で冷やす構図になってしまう。そうでなくてもさっさと食べないと冬の気温ですぐ冷めるのだけど。バスの時間もあったがラーメンが冷めるのが嫌で、いつも以上にガッツリかき込んだ。

お腹いっぱいになった頃、もう周りにはほとんど人がいなかった。車道に戻って、またあのトンネルを歩く。帰り道はジュンとおしゃべりをしていたので、入り口付近にいた人たちにも私たちのおしゃべりの内容筒抜けな可能性あるな。行きの時には気づかなかったけど、天井を見てみたら汚れが水墨画みたいな渋いデザインに見えてカッコよかった。

11 | 家に帰ってからも上高地

帰り道、せっかく長野に来たのでということでつるやスーパーに寄ってお土産を買い込んだ。ドライフルーツをたくさん買ったので、食べるのが楽しみだな。
明日は会社の後輩とアフタヌーンティーに行くんだ、と言ったら、幅がすごいねと言われた。

街で生きているだけでは、トンネルの向こう側に行くことはないんだよな。山に行く時、いつでもトンネルの向こう側に遊びに行く感覚でいる。私の死後の世界は、釜トンネルの向こう側みたいな感じなんだと思うよ。

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