島旅パッキング解説 〜ザック&海道具編〜
先ずは僕のアウトドアスタイルについて自己紹介
日本は山地の割合が75%、海の面積は世界第6位で現在の集計では約14,125の島が点在する、海岸線の距離は地球一周の8割以上の長さで、これもまた世界で6番目に長いいわば海洋と山岳の国だ。この特異性を活かさない手はないと思っている。そこで僕が実践しているのが、海と山、川、はたまた島をフィールドとする水陸両生(Amphibious)スタイルである。

今回は、その中でも島旅にフォーカスして実際に使い込んできた個人装備を簡単に解説してみたい。これは仲間と過ごす場合の団体装備とは別に、海況次第で荷物が届かない時でも現地で最低限の活動ができる装備をパッキングしたものだ。アイテムの詳細な使い方や団体装備については今後もインスタグラムなどでも発信していく予定である。

インスタグラム名:yuki_amphibious_outdoor
島旅の個人装備 山岳用ザック編
CRUX AK-37X

CRUX AK-37Xを選んだ理由は明確だった:
- 完全防水性能:島旅の絶対条件。船での移動やスコールに対応
- 頑丈な素材:岩場の多い島の地形に耐える耐久性
- しっかりした腰ベルト:食料・水・テント・海中装備の重量を分散
- トップリッド着脱可能:日帰りから長期まで自由度が高い
- サイドストラップによるロングフィン外付け対応:他の完全防水ザックには少ない島旅に最適な機能
通常フィンをつけるとなるとダイビングバッグなどが挙がる、しかしながら街中から船舶、海岸まで長期の移動が発生する島旅には構造上体への負担が大きいので登山用ザックが最適だ。このザックは僕が山で活動している沢登りや厳冬期のテクニカルな山行でも使用でき、僕の道具選びの基準である汎用性を満たしている。

CRUX AK-37Xのスペック
- 容量:37+5L(トップリッド使用時)
- 重量:1,300g
- サイズ:Regular(背面長48cm)、Large(背面長55cm)
- 素材:ケブラー40%、コーデュラナイロン60%
- フレーム:7mm径チタンステー×2本(取り外し可能)
- 防水性:TPUラミネート加工+フルウェルディング構造
- 生産国:インドネシア
軽量かつ完全防水という特性をそのままに、トップリッドを可動式(取り外し可能)にしたことで使い勝手の幅を広げた、まさに実用性を追求したバックパックだ。
CRUX AK-37Xのパッキングと使用感

完全防水の安心感
このザックを使い始めて最も感じるのは、完全防水による安心感だ。船での移動中に波しぶきを浴びても、突然のスコールに見舞われても、中身を心配する必要がない。なんならこのザック背負ったままスノーケルを着けて泳いだりもする。

外付けシステムの活用
ロングフィンの外付けはもちろん、濡れたウェットスーツやテントを外側に固定できるアタッチメントポイントが豊富にある。
重量バランスの良さ
完全防水ザックでありながら流石は山岳ザック。フレーム入りで腰ベルトもしっかりしているため、海中装備を含む重い荷物でも体への負担が少ない。島での本格登山やベースキャンプへの移動では、この重量分散が疲労軽減に直結する。
島旅の個人装備 サブバック&メッシュ編
NATURE HIKE 防水バックの実用性

NATURE HIKE 防水バックは島旅に欠かせないサブバッグだ:
- 完全防水性能:IPX6相当の防水レベル
- 多様な用途:小物収納からストリンガー取り付けまで
- コンパクト設計:使わない時は小さく折りたためる
軽量、コンパクト、完全防水の三拍子が揃った、まさに島旅のためのアイテムだ。

NATURE HIKE 防水バッグのスペック
- 容量:30L/40L(サイズ展開)
- 重量:約550g(30L)
- 素材:420D TPUコーティングナイロン
- 防水性:IPX6相当
- 構造:ロールトップ式完全防水
- 機能:調整可能ショルダーストラップ付き
NATURE HIKE 防水バッグの使用感
完全防水の安心感
ロールトップ式の構造に加え中のビニールのスカートが密閉力を高め、水の侵入を完全にシャットアウトしてくれる。
多用途性の高さ
単なる防水バッグではなく、島旅での多くのシーンで活躍する。
島の低山ハイキング、スキンダイビングの際に小物を入れ、スピアフィッシングでは突いた魚を吊るしておく「ストリンガー」を取り付けて曳航、エアー枕を入れてフロート代わりに、濡れたウェットスーツの運搬、バケツに、、など数えきれないほど重宝している。
※軽量化のため、購入時に付属していたショルダーパッドなどのパーツは外して運用している。
Chant! Front Mesh Sackの革新性

Chant! Front Mesh Sackは、新潟県妙高市のアトリエで生まれた革新的なアイテムだ。
- 軽量設計:わずか90gの軽さ
- 汎用性:様々なザックに取り付け可能
- 日本製の品質:フィールドに根差したものづくり
ソーラーランタンを充電しながら運搬したり、濡れたウェットスーツやテントを乾かしながら歩けるのが良い。島の湿気は想像以上に厳しく、一度濡れた装備はなかなか乾かない。歩きながら自然乾燥できるこのアイテムは、島旅では本当に重宝する。
※冬季の山行などCRUXを持っていく際には、雪の付着を防ぐため、こちらは外せるので便利だ。
Chant! Front Mesh Sackのスペック
- 容量:8L
- 重量:約90g
- 素材:高強度メッシュ生地
- 取り付け:バックパック外付け対応 (単体での運用も可能)
濡れ物対策の決定版
島旅では濡れた装備の処理が常に課題となる。このメッシュサックがあることで、濡れたものを気兼ねなく外付けでき、歩行中に乾燥させることができる。まさに島旅の必需品だ。
島旅の個人装備 海道具編
OMER CAMU 3D(ウェットスーツ)の重要性

OMER CAMU 3Dは僕の島旅に欠かせない装備だ:
- 保温性能:長時間の海中活動をサポート
- 浮力確保:緊急時の安全性向上
- 身体保護:危険生物や岩からの擦れ防止
- 迷彩パターン:スピアフィッシング時の迷彩効果
- 耐久性:ラフな使用に耐える頑丈な作り
海を甘く見てはいけない。水着だけで海に入るのは、登山で例えるなら裸で藪に入るようなものだ。特に初めて訪れる海なら、シャツ一枚でもいいから肌の露出は避けた方が賢明だ。
OMER CAMU 3Dのスペック
- 厚さ:3mm
- 素材:ネオプレン
- デザイン:カモフラージュ3Dパターン
- カット:スピアフィッシング専用設計
- 機能:膝パッド付き
- 構造:2ピース(ジャケット+パンツ)
山はもちろん、海も甘く見てはいけない。海水浴場に行く感覚で水着だけで海に入るのは、登山で例えるなら裸で藪に入るようなものだ。特に初めて訪れる海なら、シャツ一枚でもいいから肌の露出は避けた方が賢明だ。
AQUALUNG technisub LOOK2(マスク)との長い付き合い

AQUALUNG technisub LOOK2は探検会時代から使い続けているマスクで、もう長い付き合いになる。
選択理由:
- 視界の広さ:低容積かつ周辺視野まで確保できる設計
- フィット感:長時間使用でも疲れにくい
- 耐久性:ガラスレンズで傷つきにくい
- 信頼性:長年使い慣れたモデル
一時期、軽量のフリーダイビングマスクも試してみたが、プラスチックレンズは砂で傷つきやすく、ラフに扱う島旅には不向きだった。結局この相棒に戻ってきた。道具というのは不思議なもので、長年使い込んだものには新しいものでは得られない信頼感がある。
スキューバプロ アプネア(スノーケル)

こちらはスキューバプロ製の「アプネア」というモデル。
このスノーケルの特徴
このスノーケルの最大の特徴は、なんといっても折り曲げて運搬できることだ。先端も短くできる機能を持っている。山で言えば、折りたたみ式のトレッキングポールのようなものだろうか。
排水弁がないシンプルなモデルであるが、これがまた良い。余計な機構がない分、故障のリスクも少ないというものだ。ただし、スキンダイビングに慣れていない方には排水弁付きのモデルをお勧めする。水が入った時のスノーケルクリア(排水処理)が少ない息で出来るので楽である。
スキューバプロ アプネアのスペック
- メーカー:SCUBAPRO(スキューバプロ)
- モデル:Apnea Snorkel(アプネア)
- 特徴:折り曲げ式、先端短縮機能付き
- 用途:スキンダイビング、フリーダイビング専用
OMER BELTD(ウエイト&ウエイトベルトセット)
続いてはウエイトベルト。同じくOMERというブランドのラバー製のモデルを使用している。

ウエイトベルトの重要性
ラバーベルトに鉛のウエイトという、いたってシンプルな構成だ。潜る際には着ているウェットスーツによって浮力が発生するが、こちらの重さで相殺する必要がある。
自身の体格によって適正なウエイト量を決定するのだが、僕は運搬の負荷を減らすため、適正よりも僅かに軽めに設定している。
装備取り付けベースとしての活用
このベルトにはカラビナを装着して、ダイビングナイフやカメラなどを取り付けている。山でのギアラックのようなものだ。海中で必要な道具をすぐに取り出せる位置に配置することで、安全性と利便性を両立している。
GULL MEWブーツ(ネオプレンソックス)

ロングフィンを履く前に必ずこのネオプレンソックスを着用している。目的は保温だけでなく、岩場からのエントリーやエキジットの際に擦れなどの怪我を防ぐためだ。また島の低山ハイキングの際には山サンダルから履き替えることで薮や虫から守ってくれる。
Omer Camu 3D Composite 25(ロングフィン)

同じくOMER製のロングフィンである。スキンダイビングにおいて、フィンは推進力を生み出す最も重要な装備の一つだ。
ロングフィンの効果
これは水中での推進力を格段に向上させてくれる重要なギアだ。山でのトレッキングポールが歩行をサポートするように、このフィンは海中での移動を助けてくれる。
ロングフィンは通常のフィンよりも長く設計されており、少ない脚力で効率よく推進できるのが特徴だ。深く潜るためには、この効率の良さが何より重要になってくる。
カモフラージュパターンも、海中での魚への警戒心を和らげる効果があるとされている。
Omer Camu 3D Composite 25のスペック
- メーカー:OMER(オマー)
- モデル:Stingray Camu 3D Composite 25
- ブレード材質:プラスチック製(3D Composite)
- パターン:3Dカモフラージュ
- フットポケット:2種類の硬さのサーモラバー素材
- 用途:スピアフィッシング、スキンダイビング
スパイダルコ カスピアンソルト(ナイフ)

廃盤品になってしまったが、スパイダルコのカスピアンソルトを愛用している。
安全装備としてのナイフ
こちらは魚を〆たり調理の際に使用するのはもちろんだが、万が一釣り糸やロープが体に絡まった際に切断して脱出できるよう、安全装備として必ず持って海に入る。
山でのエマージェンシーキットと同じような位置づけだ。何が起こるかわからない海という環境では、こうした道具があるという安心感は大きい。
海水環境への対応
海水は金属にとって過酷な環境だ。このカスピアンソルトは完全耐食性のH-1ステンレス鋼を使用しており、塩水に長時間晒されても錆びることがない。
スパイダルコ カスピアンソルトのスペック
- メーカー:Spyderco(スパイダルコ)
- モデル:Caspian Salt(カスピアンソルト)
- ブレード材:H-1ステンレス鋼(耐塩水仕様)
- ハンドル材:耐海水性樹脂
- 用途:調理用、緊急時脱出用
- 特徴:耐食性、軽量
ウィンドストーム(ホイッスル)
同時にホイッスルをナイフに装着して運搬している。

緊急時の生命線
山でも緊急時の合図として重宝するホイッスルだが、海でも同様に重要な役割を果たす。万が一の際に自分の位置を知らせる手段として、これほど確実なものはない。
海は山以上に人に発見されにくい環境だ。流されてしまった時、体力を消耗せずに救助を求められる手段として、ホイッスルは欠かせない装備なのだ。
全天候対応の信頼性
使用しているのはAll Weather Safety Whistle社製のウインドストーム・ホイッスルだ。水上でも確実に音が届く設計になっている。
ホイッスルのスペック
- メーカー:All Weather Safety Whistle Co.
- モデル:Windstorm Whistle(ウインドストーム・ホイッスル)
- 材質:高強度プラスチック
- 音量:最大120デシベル
- 重量:約14g
- サイズ:長さ約8.5cm
- 用途:緊急時位置通知、安全確保
曳航用のコード

曳航するコードで、防水バッグやフロートを曳航する際に使用する。
構成としては下記の通り。
・ブランチハンガー
釣具屋等で販売されており、簡単に接続できる。
・芝刈りライン
一番身体に近いラインはコシのある芝刈り用ラインを使用
海中で溜まりケーブル同士絡まりを防ぐ
ラインの末端には接続のため、カシメを用いて輪っかを作っている。
・中間フロート
潜水時中間フロートがロープのテンションをかけてくれる事でフィンに絡まりにくい。
・ポリエチレンロープ
浮力のあるメインロープロープで普段は巻いてあり、長さを調整できる。
・カラビナ
大事なものを曳航するのであまり簡素なカラビナは避けている。かといってクライミング用は勿体無いので衝撃荷重12knのワイヤーゲートの捨てカラビナを使用している。
縁の下の力持ち

目立たない道具だが、実際の活動では重要な役割を果たしてくれる。山でのロープワークと同じように、海でもこうした補助的な装備が安全と快適性を左右するものだ。
防水バッグには貴重品や着替えを入れ、フロートには休憩時の浮力確保や目印としての役割がある。これらを確実に牽引できるコードは、長時間の海中活動には欠かせない。
最後に
ULの登山装備は軽くなった分、他のジャンルの装備をパッキングできる。僕はタンクもBCもいらない海のULなアクティビティである「スキンダイビング」、地域によっては「スピアフィッシング」を組み合わせて島旅を行っている。
これらの山と海の装備は、すべて実際のフィールドで何度も試行錯誤を重ねて選び抜いたものだ。カタログスペックだけでは分からない、本当の使い勝手や耐久性を重視している。
山と同じで、島という制限された環境では、装備はなるべく必要最小限に。そして命に関わる状況もあり得る以上、信頼できる道具だけを持っていく。それが僕の装備選択の基準だ。
道具は使ってこそ価値がある。そして長く使い込むことで、その道具の本当の良さが分かってくる。僕と島旅を重ねてきた、これらの相棒たちがその証だ。
※次回は動画中編でご紹介いただいた、テントや寝具・調理器具類を解説します。
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