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連載
2025.08.23
人と自然の共生

人と自然の共生

ここ最近は大なり小なり熊に関するニュースが増えているのは、山に入らない人間にも周知の事実であろう。

幸いにも僕は山で熊を見たことも遭遇もした事がないが、山に立ち入るひとりの人間として決して他人事ではないとは常々思っている。

SNSなどでたまに見かける動画では熊を遠目に「見ただけで」追い払おうと鈴やスプレー、ホイッスルなどで過剰な威嚇をしてその場から排除しようとする行為には些か疑問を感じる。

人里にも下りていない、ただ生活の場を彷徨っているだけではないか。

ここは人間界とは違う野生の集落。

お邪魔している側、という自然に対するリスペクトを忘れてはならない。

そう言った思いを日頃から持ちつつ、ここでは職場であったとあるひとコマを書き綴りたい。

ーーーーー

職場の野外に設けられている手洗い場には、ほぼ毎日アシナガバチがやってくる。

猛暑を凌ぐためか、虫も水を求めているのだろう。

手を洗うために蛇口を捻ると、待ってましたと言わんばかりにどこからともなく一匹のアシナガバチが毎回飛んでやってくる。

最初は危険を感じて身構えながら手を洗っていたが、次第にこのアシナガバチは人間には興味もくれず、ただ水を求めているだけだという事に気がついた。

それ以降、僕も気にせず手を洗うようになっていた。

この手洗い場は少しだけ水が漏れていて、周辺は常に濡れている。

よく観察すると、苔は育ちアリやカナブンなどの虫がいつもいる。

ここは人にも虫にも人工のオアシスなのだ。

ある時、ひとりの同僚が殺虫剤を片手に手を洗いにきた。

「この手洗い場にはいつも蜂が飛んでいる」と。

その時はたまたまアシナガバチは訪れなかったが、どこか複雑な気持ちになった。

それは本当に奪うべき命なのか。

後ほど調べてみると、アシナガバチは基本的に温厚でこちらから危害を加えたり、敵意を示さなければ害はないと。

もちろん、相手は意思疎通も出来ない虫なので確実に安全である保証はない。

しかし、ただの思い込みで「自分に危害を加えるかもしれない危険ないき物」に対して、無闇に排除する必要はないのだろうか。

熊も蜂も同じで、人を襲うために生きているのではなく、ただ生きるために動いているだけにすぎない。

それを人間の勝手な恐怖心や利便性のために排除するのは、やや乱暴な衝動として感じる。

いつから僕たちは自然を敵として見るようになってしまったのか。

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